都市部では今、容器用土栽培の古土の捨て場が無くて困っていると良く聞きます。それで、一度使った土を広げて日光消毒し、ふるって微塵を抜いたり、土壌再生材なるものを配合して再利用するなど、いろいろ試みている方が居られます。そこで、一度利用した鉢土は、本当に捨てる必要があるのかどうか、一寸、考えて見ました。
ー昨年の新プランター栽培のトマト「アイコ」と「おどりこ」-
園芸培養土は、「通気性・排水性・保肥力に優れ、土中の空気と水分のバランスやpHが適正で、土壌微生物のえさとなる有機質を適度に含み、植物の根が張り易い条件を持つ土」と定義され、赤玉土や鹿沼土、腐葉土や堆肥などに、ピートモス、パーライトやバーミュキュライトなどの様々な素材を加え、更に肥料成分なども添加した特別ブレンドの配合土です。
ー新プランター栽培の赤玉ネギ「湘南レッド」-
しかし、園芸培養土には、主原料成分や副原料成分の表示、添加した肥料成分の種類、仮比重、溶水量、透水性、pH、電気伝導率、或いは硝酸性窒素量等の品質基準となる表示はありません。購入者は、野菜用とか草花用などの特定の適用植物の表示や単価の高低でしか選択の判断基準が無く、その培養土の水の与え方や施肥量など、正しい使い方も良くわかりません。
ー新プランたー栽培のキャベツ「いろどり」-
そんな事ですから、一度使った培養土が結果的にどう変化し、どうしたら再利用できるのかも見当が付かないのが普通です。唯、先に揚げた培養土の条件である「通気性・排水性・保肥力、適正なpH、含まれる有機質の量、植物の根が張り易い条件」などの性質が、一度利用すると失われ、其の儘では、前と同じようには育てられないのだと一般には思われています。
ーべランダーのプランター菜園のブロッコリー
本来、品質基準となるものが無いので、土壌再生材なるものを配合すると培養土の条件がどう良くなるか明確なところは分かりません。唯、堆肥などの腐植分やpHの改善材、微量要素などの肥料成分などが、再生材で添加されるなら、それなりの効果はあるとは考えられます。しかし、市販の家庭園芸培養土31種の理化学性を分析し、栽培試験まで行った東京農大の先生は、「品質と価額が一致していない商品が培養土」と評しています。あいまいで良く分からないのが培養土の良し悪しと言う事です。
ー収穫期を迎えた新プランター栽培のブロッコリー
植物は土壌栽培すると、根部から「アレロパシー」、日本語では「他感作用」と訳されている忌避物質を土壌に分泌します。又、その植物特有の線虫や根圏微生物がその土壌に多くなるなど、所謂、嫌地現象が発生します。それで、腐植分やpHの改善材、微量要素などの肥料成分の再添加のような土壌の改善では、連作障害を避けるのは難しいと事も確かです。
ー収穫期に入った新プランター栽培スナックエンドウー
一般に果樹や薔薇などの容器園芸栽培では、植替え時の用土交換は選択の余地は無いのが普通です。唯、そうした心配の殆ど無い草花園芸では、天日乾燥や残根の除去に土壌再生材の添加で古土の再利用が充分できると考えて良いと思います。但し、種を蒔き付ける播種用土には薦められませんし、特に未分解の有機物である枯葉や植物根などの植物残渣は混ぜない事が大切です。
ー収穫した新プランター栽培のさやえんどう ー
そこで培養土に替り、培養土の必要条件を超える機能性を持つ特殊培地を利用する新しい容器栽培法を考案しました。この培地は、通気性・排水性・保肥力が培養土より遥かに優れ、その上、用土栽培の半分以下の容積で栽培が可能であります。栽培後は、簡単に徐根して洗浄でき、物性の変化や劣化が無いので通気性・排水性・保肥力が変わりません。連作障害も無く、完全リサイクルの再利用が可能な培地です。
ー植物の養分摂取ー
この培地の特性を発揮させる給水法に、サブイリゲーション方式を採用する事により、通気性・排水性・保肥力を確保させながら、保水量が同容積の用土栽培の3倍も大きくなり、給水の回数が減らせ、高い保水エネルギーにより植物の養水分摂取が極めて容易な高い栽培効果が得られる結果になります。
ー2階ベランダーで収穫した新プランター栽培のトマト、きゅうり、なすー
勿論、与える肥料が大切ですが、ご存知のように、独立栄養生物である高等植物は、光合成で生成した糖から様々な物質を合成する為に、根から無機成分を摂取しなくてはなりません。その無機成分(肥料)を植物の栄養生理に最も適した濃度と組成にして無駄なく与える為に、養液栽培用の均衡培養液を利用します。
ー8号プラ鉢3L容積で作ったキャベツ「輝岬」ー
しかし、通常の養液栽培との違いは、この栽培法の水分代謝に相関した養分摂取にあり、贅沢吸収を抑えて成分組成とpHを適正範囲に保ち、且つ、土壌に替わる特殊培地であるので、土壌由来の有機物の肥料成分への無機化の過程は概ね必要としないのですが、土壌と同様に植物根から分泌される有機物を摂取して根圏を守る微生物を涵養して、病原性菌の繁殖を抑える働きを培地は持っています。
ー新プランター栽培の培地主成分の珪藻殻ー
宇都宮大学の学長にもなられた森林土壌学の研究者の大政正隆博士は、その著書、「土の科学」の「あとがき」で、「 ・・・なんとも不思議な事に、我々の生活に最も近く、我々の知識から最も遠いのは「土」である・・・」と書いています。その土に学び、その土を越える機能を、偶々見つけた培地によって生まれたのが、この容器蔬菜栽培法です。
ー新プランター栽培原理図ー
新プランター栽培用一式を分けて欲しいのですが,
根拠にもとづいた実践と、またそこから得た経験で得られた発見を過去の知識人の見解と照らし合わせて端的に記述されており、分かりやすいです。いつも、慕わしく拝見させていただいています。
私も新培養土についてとても感心があります。今、HCやドラッグストアで大量に売られている培養土は翌シーズンには使用できず焼却も不可です。新培養土についてもう少し教えていただくことは可能ですか?
この頃は、やっと日本でもハイドロポニックスが一般の方の関心を集め、容器用土栽培に代わって、色々と試みておられる方が多くなっているように見受けます。
そのハイドロポニックスの問題点を、海外の情報から20年も前に知ったのであり、其の解決法から思いついたのが、新しい容器養液栽培法であります。
そのカギを握っているのが、新培養土の持つ、用土を凌ぐ機能性であります。其の答えは植物から教えてもらったのであり、育てて見れば分かります。
実を言うと、欧米では日本で一般に売られているような園芸培養土は最早時代遅れとされ居ります。
日本の家庭園芸では、今なお多くの方々が、土を良く知らないのであり、今の市販培養土で売れているから日本の園芸培土は変わらないのです。
それに培養土の素材が、使い捨ての安価な土質材であれば原価も低く押さえられ、買い替え需要も大きくて業者側から見れば好都合という事です。
洗浄して再利用が可能な、機能性培養土等、売り出されたら、関係業界から見れば価額面でも迷惑な話であり、説明しても聞く耳を持たないというのが実情にあります。
今頃になっての日本でのハイドロポニックスの流行は、裏返せば用土栽培への不満であり、土を知らないからであり、機能性培土の違いの意味、これでご理解出来ましたでしょうか?
用土栽培に代わってハイドロポニックスを始めるのでしたら、先ずおやめなさい。最早、これも時代遅れです。
また、イソライトとゼオライトの栽培における優位な差が分からず戸惑ったりします。
イソライトを使用されていますか?