白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―有機質肥料の養液栽培への利用―

2015年09月07日 | 農法

有機野菜と言うと、一般に栽培されている野菜より何か優れているような印象があるのか、有機なる言葉を野菜に付けるとその価値が上がるかのような意味で良く用いられて居ますが、其の「有機」の持つ真の意味、正しく理解されている方が、一体どれだけ日本には居られるでしょうか。

有機野菜は農薬を一切使わず、有機質肥料だけで育てられる野菜を指していると、大方の人が理解されて居られるのでしょうが、有機栽培と言えども実際には、一部の無機質肥料の施肥や特定の農薬の使用は許可されているのであり、法律では其の利用の表示義務は無く、有機認証さえ取得すれば、皆等しく有機野菜と称する事が出来るのです。

 

―オルガニックのイメージイラストーWebImagesより

皆さんは無農薬、有機肥料のみで栽培された有機野菜と、其の利用が許可された無機肥料や農薬を使って栽培された有機野菜との相違をどのようにお考えになりますか。

同じ有機野菜でも、全くの無農薬で、有機質肥料と言ってもいろいろあるのですが、それのみで栽培した方が好ましく、その上栄養的にも優れていると思われている方が、中には居られるでしょう。

それは、有機野菜なら全くの無農薬だから安全であり、無機肥料はイコール化学肥料と捉えて、野菜の肥料成分としては何か好ましく無いと感じる、「有機」と言う用語のイメージに捉えられているからです。

固より有機野菜は 「有機」とラベル表示する事で、公認による差別化を出来るようした制度に依るものであり、それで市場での付加価値が生まれているのであって、消費者に認知されるこの制約を受ける背景の持つ価値が、実は大切な要点であります。

従って、有機農産物の価値は、言うなれば、先ず法律で規定された栽培法上の制約要件を満たしている証左にあって、産物自体の実質的な価値は、各々の生産者の制約条件下での栽培技能で決まるのであり、其の有機野菜の美味しさや持つ栄養価など、酷な言い方ですが、別カテゴリーとして捉えて評価しなくてはならないと言えるのです。

 

―何を以ってオルガニックとする!-WebImagesより

それですから、消費者とて有機認証制度の法制化の原点となった背景、そもそもそれを知らねばならず、慣行農業で一般に用いられる肥料や農薬に対して有機認証制度では、それらをどう捉え、如何に区別し、何故それに拘るのか、其の正しい認識の理解から始める必要があると言えるのです。

FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同委員会であるコーデックス委員会は、有機農産物を国際取引するためには、国によって有機農業の生産基準が、まちまちでは混乱が生ずるとの理由から、食品の安全性や品質表示の国際的ガイドラインを作って居ります。 「有機農産物の日本農林規格」も亦、そのコーデックス委員会の表示基準に従って作成されて居るのであり、其の一部を抄訳で紹介致します。

 

―コーデックスの表示ロゴーWebImagesより

其のコーデックス委員会のガイドラインの序章には、其の設定の目的を次ぎように述べています:

• 市場での偽りや詐称、不当表示の生産物から消費者を守る

• 有機生産物の生産者を、他の有機栽培と違って表示される農産物から守る

• 生産物の生産、準備、保存、輸送、販売の全ての段階で検査に従っての本ガイドラインに確実に準拠させる

• 有機栽培生産の持つ、生産、検査、証明、ラベル付けの提供を統一させる

• 有機食品の管理システムが輸入目的では同等に成るように、其の認知が容易な国際システムとしての国際的なガイドラインを準備する

• 各国の地域及び地球規模で貢献するように有機農業システムを維持し向上を図る

続いてのコーデックス委員会のガイドラインで定義する有機農業では、生物多様性、生物学的循環や土壌の生物活性及び農業生態系の健全性を含め、それらを向上させて促進する綜合生産管理システムと位置付けしています。

それには、その地域に適応しての必要なシステム条件を考慮して、圏外からの資材を優先して投入する、実践管理法を用いる事を強調して居ます。

人工的な資材を使用するのとは反対に、システム内の如何なる機能をも利用して、可能な限りの栽培的、生物学的及び機械的な方法を用いる事で達成するのが有機農業であります。その有機な生産システムの設定には、下記の項目を満たす事が要件として揚げられています。

 (a) システム全体の生物多様性の向上

 (b) 土壌の生物活性の増強

 (c) 土壌の肥沃度の長期的な維持

 (d) 農地へ養分を還元させるための植物及び家畜起源の廃棄物リサイクル、非再生可能資源の使用の最小化

 (e) 現地組織の農業システム内で再生可能な資源への依存

 (f) 土壌、水、大気の健全な使用を促進し、且つ亦農業活動で発生する全ての形態の汚染を最小化

 (g) 全ての段階で農業生産物は、有機としての完全性や重要な品質を維持するために、慎重な加工方法を重視して取扱う

 (h) 既存の農場では転換期間を経て有機農業を確立するが、適切な転換期間は、農地の履歴、生産する作物や家畜のタイプ等の固有の要因によっ て設定する

有機農業は、化学農薬や化学肥料等の化学資材を排除すれば良いというだけでなく、土壌や身近な環境と共存しつつ、それらを活用しながら、できるだけ人為的なものを排除して、持続可能な生産活動を進める事に其の意味が有ると言うのです。

 

―商業化されているアクアポニックスーWebImagesより

扨て、理屈っぽい話はこの辺までにして、表題の「有機質肥料の養液栽培への利用」の話ですが、実は施設園芸での有機栽培認証の取得が、兼ねてより世界でも課題に成って居り、色々議論されているのです。

其の中で問題とされるのが、化学合成肥料に替わる有機物由来の肥料を利用して行われる水耕栽培であり、そのような土壌を媒体として用いない有機養液肥料に依る養液栽培の有機栽培認証であります。

其れが今尚、土壌に替わる媒体の利用では、有機栽培の定義で求められている要件を実質上は満たし充足されているとしても、その有機認証が取れないのです。

其の意味する所は、農産物の商業生産で、市場での差別化が出来る付加価値だけの問題と言えば、事は簡単ですが、問題とされるのが、前述の有機的な生産システムの要件として揚げられて居る 「システム全体の生物多様性の向上」、「土壌の生物活性の増強」、「土壌の肥沃度の長期的な維持」と言う事の解釈になるのでしょう。それは土壌に拘る、有機農業の本来的な理念であって、科学的検証を以って、其の要件の違いを具体的に定義する立場には、ガイドラインを作成したコーデックス委員会とて当然その権限がある訳では有りません。

 

―アクアポニックスのシステムのイラストーWebImagesより

欧米では、既に実用化されているアクアポニックス、正しく有機物由来の栄養成分を肥料している水耕栽培ですが、それが全くの無農薬でもありながら、水耕栽培故に有機認証が得られて居ないのです。

アメリカ合衆国では、其の認証基準を決める権限を持つのは、全米オーガニック認証基準委員会」(National Organic Standards Board: NOSB)であります。

其の構成委員は、アメリカ合衆国農務省長官に依る5年毎の任命制であり、構成メンバーは、4名の農業従事者/農業生産者、3名の環境保護者/保全活動家、3名の消費者/公共利益代表者、2名の有機関連従事者/加工業者、1名の小売業者、1名の毒性学、生態学、生化学関係科学者、1名の農務省委嘱代理業者の合計15名であります。

以上の構成メンバーの割り振り構成から見て判る事は、有機農産物の認証基準が、どの様な形で決定されるのか、其の公正性の維持は、各界からの任命される構成委員の合議で決定される事柄であると言う事です。

  

―アメリカの盛んな有機農業システム活動-WebPagesより

実は日本の農学関連界の第一人者で居られる西尾道徳氏が、其の農業保全リポートNo.253の中で 「アメリカは有機水耕栽培を認める方向?」と題する記事を紹介されて居りました。

しかし、同氏は其のレポートの最後で、「全米オーガニック認証基準委員会は、以前に、農務省が遺伝子組換え作物の栽培、都市下水汚泥の利用、ガンマー線によるジャガイモの照射を承認する条文を提出したが、パブリックコメントで猛烈な反対意見が寄せられて、この3点を撤回した経緯があり、そのことを思い出すと、有機水耕栽培が認められることについては疑問もある。」と書いて居ます。

 

―JONAのオルガニックコンセプト広報イラストーWebPagesより

日本では、差し詰めどんな経過で有機認証基準の判定要件が決って行くのか、その経過事情を知る由も有りませんが、各界のステークホルダーの多数決原理で決ると言う様な事ではなさそうであり、其の意味では日本の有機農業規模レベル、未だ先進国並みとはとても言えない状況にあるようです。

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