IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

3ケタの気温ですってよ

2005-07-26 15:13:58 | テロリズム
サンドラ・ブロックがつい最近結婚して、その相手の男性がジェッシ・ジェームズというタトゥーの似合う体育会系の(あくまでも「それっぽい雰囲気」という事で、タトゥーを幾つも入れた大学スポーツの選手を何人か知ってるけど、僕の大学時代の友達に彫り物をしたヤツはいなかったので…)セレブなんだとか。ジェッシ・ジェームズっていえば、どうしても思い出すのが西武開拓時代に名を馳せた実在のアウトローだけど、ブロックの旦那さんはこの西部開拓時代のヒーローの子孫になるらしい。で、なぜジェームズがセレブなのかと言えば、テレビの世界に入る前にカスタムバイクの店を経営してて(今もあるのかは不明)、その時の顧客に俳優やスポーツ選手が多かったから。日本で言うところのカリスマ店員兼経営者みたいなもんでしょうか。

ジェームズの話をハリウッド好きの友人から聞いたとき、僕はブロックの旦那よりも、その祖先にあたるアウトローに興味を持った。僕も西部劇は好きなほうだけど、西部開拓時代って要するに野心溢れるオッサン達がピストルの弾で利権を拡大していった時代なわけで、映画で描かれるようなヒーロー像とはかなり違うような気もする。共産主義政権崩壊後のロシアで、ビジネス絡みで多くの人が命を失ったけど、これは本質的に西部開拓時代と近いのではと思ったりもするわけで。そんな時代にジェッシ・ジェームズは荒野のガンマンとは無縁の東海岸メディアによって一種神格化されていたらしく、今の時代で言うところのセレブ(メディアによって作り出された)の先駆けだったのかなとも思う。それにしても、セレブって何よ?少なくともアメリカでセレブって言うと、頭の中身があんまり無いマテリアルな人々を意味するけど、日本では少しニュアンスが違うんだなぁ。でも、セレブリティっていう発音だけは、恥ずかしいので止めたほうがいいかもね。

アメリカ各地では数週間にわたって熱波が猛威を振るい続けているが、すでにアメリカ全土の約3分の1が華氏90度(摂氏32度)以上をほぼ毎日記録しており、最高気温が摂氏で3ケタに達する場所も珍しくない。熱波によって干ばつの被害が増加する地域も見られるが、各都市では熱波そのもので死亡者が出るケースを未然に防ぐため、市内にクーラーを完備した休憩施設が急ピッチで作られている。シカゴでは熱中症による3人の死亡が確認されており、アリゾナ州フェニックスでは先週土曜日までに少なくとも21人が命を落としている。フェニックスの場合、死亡者のほとんどが路上生活者だったため、市当局はシェルターを日中も開放するなどして事態の打開を図ろうとしている。フェニックスのフィル・ゴードン市長はCBSニュースの番組に出演し、ホームレスの安全確保こそが今一番重要な問題であると語っている。

先週はじめにフェニックスや近隣のカリフォルニア州ニードルズで記録した殺人的な暑さ(ニードルズでは華氏125にまで達している)は、やがてアメリカ各地に広がりを見せ、ラスベガスでも先週117度を記録している。「こういった熱波は数年毎に発生していますが、今年の暑さはこれまでの記録を確実に破るものとなるでしょう」、CBSニュースの気象予報士マイケル・ストルツはそう語った。ストルツの話では、気象予報士の間でもこのような熱波の原因が完全には解明されていないようで、地球温暖化の影響を指摘する者もいれば、自然界のサイクルだと主張する声もあるのだという。日曜日午後にはシカゴのミッドウェイ空港周辺の最高気温が華氏104度にまで達し、シカゴのこれまでの最高気温(105度)に肉薄する勢いだった。アイオワ・シティ(アイオワ州)やセント・ルイス(ミズーリー州)でも最高気温は100度を超えている。

シカゴでは1995年7月に発生した5日間の熱波で739人が死亡しており、これはイリノイ州の自然災害で最悪のケースとして知られている。6年ぶりに最高気温が100度を超えた事もあり、シカゴ市当局は市内に住む老人の所在確認をしながら、同時にできる限りのコミュニケーションを図ろうと必死だ。すでに市内在住の4万人の老人には毎朝9時に市から電話サービスが行われ、その日の天気や気温を伝えるとともに、できる限り外に出ずに水を飲むようにといったアドバイスが行われている。シカゴ市保険局のウイリアム・ポール博士はAP通信の取材に対し、1995年の熱波の犠牲者のほとんどが野外にいた人達ではなく、1人暮らしの老人だったと語っている。公式記録では、シカゴの最高気温(華氏105度)は1934年6月の事で、今年の夏にその記録が塗り替えられる可能性は大いにある。

7月7日にロンドンで発生した連続爆破テロ事件の容疑者の1人が米捜査当局からも追われていた事が明らかになり、この人物にはアメリカ人に対する聖戦を行うためにアメリカ西海岸に軍事訓練施設を建設しようとしていた疑いがある。FBIの捜査官はロサンゼルス・タイムズ紙の取材に対し、インド系イギリス人でイスラム教徒のハーロン・アスワト容疑者の行方を追っていることを認めながらも、その所在に関して全く情報をつかめていない状態だと語っている。すでに逮捕されているアスワト容疑者のシアトルでの協力者には司法取引が行われた模様で、捜査当局はこの協力者からの情報をもとに追跡を継続する構えだ。司法省はロンドン在住のエジプト人イスラム教指導者アブ・ハムザ・アル・マスリを起訴しているが、起訴を行うまでの過程の中でシアトル在住男性の証言が大きな役割を果たしている。しかし、アスワト容疑者に関する情報はほとんど出てきていないのだという。

アメリカ側の捜査関係者は、もしアスワト容疑者を逮捕していれば、ロンドンで7日と21日に発生したテロ事件を未然に防げた可能性があったと悔しがる。英捜査当局はアスワト容疑者が自爆テロ実行犯と約20回ほど携帯電話で会話を行った形跡があると語っている。シアトル・タイムズ紙は24日、アスワト容疑者のシアトルでの起訴を準備していた関係者らの話として、同容疑者の起訴が最終的にワシントンによってブロックされたと報じている。2002年に起訴されていれば、逮捕状の発行とともに当時イギリス国内に住んでいたアスワト容疑者のアメリカへの移送も可能だった。最終的に起訴が見送られた理由だが、アスワド容疑者のように国外に住む者を起訴する場合、ニューヨークの連邦検事局がその担当として知られており、検察側の縄張り意識が存在したことも考えられる。

シアトルの協力者はアメリカ生まれのジェームズ・トンプソンという男性だったが、1999年にアーネスト・ジェームズ・ウジャーマと名前を変え、その後ロンドンに渡っている。ロンドンでは、アル・マスリの運営するウェブサイトで働いており、そのウェブサイトではアメリカに対する差し迫ったテロ攻撃が警告されていたりした。アスワトとアル・マスリの関係も親密だった模様で、2人はオレゴン州とブライという町の近くに軍事訓練施設を作ろうと計画を練っていた。アル・マスリが宗教活動を行っていたロンドンのフィンスベリー・パーク・モスクにはアスワトやウジャーマ以外にも最近のテロ事件と関連した人物が出入りしていた形跡が存在し、2001年12月にアメリカ国内を飛行中の旅客機の中で靴に仕掛けた爆弾を爆発させようとしたリチャード・レイドや、911テロ事件の首謀者の1人としてアメリカ国内に収監中のザカリアス・ムサウイも同モスクとの接点が指摘されている。

ブラジル人青年がロンドンで誤射されたニュース、今日になって実は8発の銃弾を受けていたことが明らかになり、ブラジル国内ではイギリス政府の対応に抗議するデモも行われたようだ。トニー・ブレアが謝罪の中で警察の行動に一定の理解を示すようなニュアンスの発言を行ったため、これがブラジル人の怒りに文字通り「火に油を注ぐ」結果を招いてしまったという報道も入ってきている。僕は犠牲者となったミネイロの青年と瞬時の判断でミスを起こした現場の捜査官両方に同情してしまうけど、やはりブレアは公式の場所での発言を少しトーンダウンさせた方がよかったとも思う。イギリス国内で武器の携帯を許可された警察官(全体の1割ほどと聞いている)がこの数十年の間に起こした誤射はわずかに数件で、アメリカと比べると奇跡的な数字だ。これから犠牲者が出ないよう祈るくらいしか僕にはできないけど、警備も必要かなと思ったりもするわけで。未だに何が正しいのか僕には分からない。

明日の夕方、ボストンにあるポルトガル語新聞のオフィスに電話を入れてみようかと思う。学生時代に取材でお世話になった人たちが今も多く働いているんだけど、全米でもブラジル人人口が多いマサチューセッツ州を中心にブラジル内外のニュースを伝え続けている。前にも少し話したけれど、マサチューセッツ州にやってくるブラジル人移民の多くがミネス・ジェライス州の出身者で、アメリカに定住する人もいれば、必死に働いて貯めた金で故郷で一旗上げようと考える人もいる。工事現場や清掃業者のオフィス、レストランの厨房なんかでポルトガル語が話されるのも珍しくなく(ワシントンでは、これがスペイン語に変わる)、みんな必死に働いて、次のステップに行こうと頑張っている。ロンドンでの事件をみんながどのように感じているのか、明日は少しでもそんな事が聞ければなと思っている。