IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ジョージ・ミッチェル、メジャーリーグ薬物問題の調査を開始

2006-03-31 13:51:16 | スポーツ
大物ロビイストのジャック・エイブラモフに5年10ヶ月の実刑判決が下った。この人、ワシントンでロビー活動を行う前には、ハリウッドで映画プロデューサーもやってた時期があり、西海岸の「愛国的なアメリカ人」から資金を調達して「レッド・スコルピオン」というB級アクション映画の製作に携わったこともある。その映画で主役のロシア人を演じたアクション俳優ドルフ・ラングレンがフルブライト奨学金でマサチューセッツ工科大学に入学していたのもビックリだったけど、このエイブラモフがビバリーヒルズ高校出身者だった事を最近知って2度目のサプライズ。アンジェリナ・ジョリーやニコラス・ケイジといったスター(というよりはスターの子息が多いみたい)と同じ高校の卒業生にエイブラモフまでいたとは…。さて、今日は以前から何度かこのブログで取り上げてきたバリー・ボンズ選手のステロイド使用疑惑で、メジャー機構がようやく重い腰を上げたというニュースを。ただ、出来レースのような臭いがプンプンするのも事実なんだけど…。

バド・セリグ大リーグ機構コミッショナーは30日、ニューヨークで記者会見を開き、以前から複数のメディアによって指摘が繰り返されきたバリー・ボンズを含む数名のメジャリーガーのステロイド使用に関する調査を開始し、調査責任者に元民主党上院院内総務でウォルト・ディズニー社会長のジョージ・ミッチェル氏を任命した。記者会見は全米にテレビ中継され、セリグ・コミッショナーはボンズ選手以外のメジャーリーガーも調査対象になるだろうと示唆している。アメリカ国内では最近、2人のサンフランシスコ・クロニクル紙記者によって書かれた「ゲーム・オブ・シャドウズ」という本が発売されており、本の中ではボンズの他にもギャリー・シェフィールドやジェイソン・ジアンビといったスター選手が、バルコ社から提供されたステロイド剤を使用していたと指摘されている。記者会見の行われた30日、奇しくもバルコ社創設者のビクター・コンテ氏が刑務所から出所したとの声明も発表されている。コンテ氏はメジャーリーガーへの薬物供与を認め、4ヶ月間を刑務所で過ごしていた。

記者会見でセリグ・コミッショナーは、「ゲーム・オブ・シャドウズ」の発売とバルコ社幹部のステロイド汚染への関与を非常に気にしていたと語り、それらが今回の調査実施の引き金になったと認めている。「野球の品位を守る事より大切なものはありません」、セリグ氏はそう語った。調査責任者に任命されたミッチェル氏だが、1980年から95年まで民主党上院議員(メーン州)を務め、政界入りする以前の60年代にはワシントンにある司法省で独禁法専門の弁護士として働いていた。1994年には当時のクリントン大統領がミッチェル氏を連邦最高裁判所判事に指名しようとしたが、氏はこれを固辞している。近年では90年代中旬から始まった北アイルランド和平交渉で中心的人物として活躍しており、1998年のベルファスト合意は彼の功績だと評価する声も多い。ミッチェル氏が2004年に会長として就任したディズニー社は、全米でメジャーリーグの主要な試合を放送しているスポーツ専門局ESPNの親会社でもある。

「完璧かつ公正な調査に尽力したいと思います」、そう語るミッチェル氏は以前から球界とも結びつきのある事で知られている。現在もボストン・レッドソックスのフロントで取締役の地位にあり、以前はフロリダ・マーリンズで同様のポジションにいた。また、セリグ・コミッショナーとも経済の勉強会を通じて親交が深い。ミッチェル氏は元連邦検事らの協力を得て調査を進めていく模様だが、調査後にどのような罰則が関係者に科せられるのかは不明のままだ。アメリカ球界は数年前から選手のステロイド使用に甘いと一部で非難されており、昨年3月には連邦議会が複数の有名選手を召喚して公聴会を開いている。MLBは2002年シーズン終盤までステロイドなどの使用を禁じておらず、ボンズらの使用が明らかになった場合でも、罰則の適用は現実的に不可能だ。しかし、ベーブ・ルースやハンク・アーロンといった歴代のホームラン王とボンズを一緒にすべきではないと指摘するメディアも出てきており、MLBの対応が注目される。ボンズ選手の所属するサンフランシスコ・ジャイアンツは、来週月曜日にサンディエゴで開幕戦を迎える。

ワーナー・ブラザーズが27日に発表したところによると、ジョージ・クルーニーとマット・デイモンの「オーシャンズ13」への出演が決まったそうだ。これまでの2作同様に監督はスティーブン・ソダーバーグで、最新作ではヨーロッパから再びラスベガスに舞台が移されるらしい。製作発表が行われたばかりで詳しい情報が入ってきていないんだけど、28日のAP通信の記事はワーナー・ブラザーズ関係者の話として、3作目にジュリア・ロバーツとキャサリン・ゼタ・ジョーンズは出演しないだろうと語っている。僕は前の2作ともに心地よいファミリー感を堪能したので(そりゃ、オリジナル版はシナトラ・ファミリーで作ったんだから)、3作目も劇場で見たいなぁとすでに思ってるんだけど、質的に1作目のほうが2作目よりも微妙によかった事が少し気になってもいる。2人の看板女優が抜ける可能性大だけど、ドン・チードルやバーニー・マックといった面々は戻ってくるらしい。「オーシャンズ13」来年夏に全米で公開予定だそうです。


写真:30日にニューヨークで開かれた記者会見に出席したジョージ・ミッチェル氏 (AP通信より)

ハイベリーの悪魔、美しくも残酷に牙をむく

2006-03-29 13:48:53 | ニュース
今日も移民問題のニュースを紹介したいんだけど、ロサンゼルスで5日前に始まった反移民法案に反対するデモは、いつの間にか全国へと広がりを見せた。昨日はボストン市内でもボストン・コモンに3000人近い移民が集まったそうで、アイルランド人やブラジル人、ハイチ人といった様々な移民がプラカードなどを持ってデモに参加している。ワシントンから車で10分足らずのバージニア州北部でも、昨日と今日の2回にわたって地元高校生が参加したデモ行進が行われ、4月10日にはワシントン市内で別のデモも予定されているらしい。夕方になって、僕はワシントン周辺で広く読まれているスペイン語新聞「ワシントン・ヒスパニック」の編集部に連絡をとり、スタッフの女性と今回のデモについて気になった事を質問してみた。大統領選挙が行われる直前の2004年10月、僕はここの編集部員と記者に初めてインタビューしたんだけど、2人は当時から「移民問題がアメリカ社会の時限爆弾になるだろう」と語っていた。今から思えばもっと移民問題の取材に時間を費やしておくべきだったんだけど…。今日は全国で展開されるデモの続報です。

連邦議会で論議されている反移民法案に対し、全米各地で抗議集会が繰り返されているが、ワシントン近郊のバージニア州北部でも27日から2日間にわたって、数百人の高校生によるデモが行われた。ウッドブリッジ市内の高校前では300人近い高校生がプラカードや国旗を手にして集まっている。参加者の多くはワシントンポスト紙の取材に対しウッドブリッジ周辺からやって来たと答え、この地域はヒスパニック系人口が多い事でも知られている。また、フェアファックス郡では数十人の高校生が法案の反対を訴えて行進を開始し、アーリントン市内の高校に到着する頃には参加者が100人以上にまで増加していた。ワシントン・リー高校前でデモ参加者達は警察官から、「学校の敷地内に入った場合には、即逮捕します」と警告を受けている。デモに参加した高校3年生のラシュワン・グリーンさんは、彼の友人の半分以上が移民家庭の子供だと説明し、「みんなアメリカの意味を忘れてしまったのではないでしょうか?」と語っている。

以前から国内で議論されてきた不法移民に対する罰則の強化は、すでに連邦議会下院で反移民法案が通過しており、27日には上院司法委員会が下院の法案とは異なる「ゲストワーカー制度」を賛成多数で可決し、今後の動向に注目が集まっている。しかしワシントンには反移民強硬論者も少なくない。そういった政治家達の主張に対抗するように、25日にはカリフォルニア州ロサンゼルスで反移民法案に対する抗議集会が開かれ、地元警察は50万人以上がデモに参加したと発表している。同じ日、コロラド州デンバーでは5万人が、アリゾナ州フェニックスでは2万人が同様の抗議集会を行った。ロサンゼルスの抗議集会は28日も5日連続で行われており、ロサンゼルス・タイムズ紙(電子版)によると、28日午前11時の段階で7000人の学生が市内でデモに参加している模様だ。参加者の多くは中学生で、ロサンゼルス周辺の45校からデモに参加したとの事。

ロサンゼルス周辺では27日にも4万人以上の学生が参加したデモが行われており、28日には市内で全校の休校を発表する学区もあらわれた。27日に上院司法委員会で可決された法案にはアメリカ国内で働く不法移民にグリーンカード取得の機会を設けるといった条項も盛り込まれたが、28日のロサンゼルス・タイムズ紙は週末に全国で展開されたヒスパニック系移民のデモと団結力に、ワシントンの議員が少なからず影響を受けたのだというデモ主催者の談話を紹介している。ロサンゼルス市の歴史上最大規模となる50万人以上が参加した25日のデモでは、周辺のヒスパニック系コミュニティに絶大な影響力を持つスペイン語ラジオ局の有名DJ達が事前にデモの参加を放送で呼びかけたことから、地元警察も予測できなかった人数の参加者が市内に集まったのだという指摘もある。ブッシュ大統領は27日の演説で「アメリカ経済経済を支えてきた人たち」と不法滞在者を含む移民を評価したが、共和党の一部からはメキシコとの国境に壁を建設すべきとの声も出ており、今後の動きに注目が集まる。

昼前、ワシントン市内の書店で本を探していたら、いきなり携帯電話がなった。僕は建物の中に入る時には振動機能だけをONにするんだけど、今回はすっかり忘れていたようで、街中の喧騒が嘘のような静かさの店内に携帯の着信音である「続・夕陽のガンマン」のテーマが響き渡ってしまった。「ごめんなさい」と周囲に言いながら外に出て電話を取ると、間髪入れずに投資会社に務める友人がハイテンションで「今日の1時半からバルサ戦だけど、スポーツバーでも行かない?」と話し始めた。今日はサッカーの欧州チャンピオンズリーグ準々決勝2試合があり、父親がスペインのカタルーニャ地方出身の友人はサッカーの試合を見るために昼から会社を休んでいたのだ。羨ましいと思いながら、僕は夕方6時過ぎまで仕事をしていたんだけど、その間に政府機関に勤める別の友人ら3人からも電話でサッカー観戦の誘いを受けた。外国人人口の多いワシントンではサッカー人気が以外に高いんだけど、それよりも何も、みんな本当に仕事してるのかな?バルサはリスボンでベンフィカと0-0の引き分け。ディフェンスに難ありと思われたアーセナルは本拠地ハイベリーでユベントスを2-0で下している(さっきまでスポーツバーで録画放送を見てました)。2ゴールを許し、2人の退場者を出したユベントス。ロンドンの思い出は最悪だろうけど、トリノよりはマシな美容室が幾つもあるので、カモラネージには滞在を1日延長してもらいたい。


写真:28日にバージニア州アーリントン市にあるワシントン・リー高校前でデモ行進を行った高校生達 (ワシントンポスト紙より)

「スポーツ・イラストレーテッドの呪い」は本物か?

2006-03-28 14:24:10 | テロリズム
マニアの間で有名な「スポーツ・イラストレーテッドの呪い」。僕はジンクスをあんまり気にしないタイプなんだけど、この雑誌のカバーを飾ったアスリートがスランプやらケガに悩まされるケースが実際に少なくなく、気に入った選手が表紙に出ているのを見ると、どうにも心配になってくるのだ。2001年3月にはレッドソックスの顔だったノマー・ガルシアパーラが表紙のモデルとなり、上半身裸でギリシャ彫刻のようなボディを披露している。それからすぐ、ガルシアパーラは手首のケガに見舞われ、そのシーズンは21試合にしか出場できなかった。スポーツ・イラストレーテッドのウェブ版を見ていると、2005年1月から「ジンクス」の被害にあった選手やチーム17例が紹介されていて(なんちゅう悪趣味な)、野球ではアトランタ・ブレーブスのジェフ・フランコア選手が選ばれていた。表紙を飾った2005年8月29日号が発売されるまでの35試合で、フランコアは3割6部2厘と10本のホームランを記録していたが、雑誌発売後の35試合の打率は2割3部6厘でホームランは4本だった。単なる偶然、それとも本当にジンクス?後者なら、4月から毎号ヤンキースの選手を表紙に飾ってほしいものだけど…。さて、今日は911テロ事件のムサウイ被告が新証言を行ったというニュースを。

911テロ事件の首謀者の1人として現在も収監されているザカリウス・ムサウイ被告は27日、バージニア州アレキサンドリアの連邦地裁で証言を行い、2001年9月11日に自ら5機目の旅客機をハイジャックしてホワイトハウスに衝突させるつもりだったと語った。ムサウイ被告は2001年12月に飛行中の旅客機内で靴に隠した爆弾に点火しようとして逮捕されたリチャード・レイド被告と共に、ホワイトハウス突入計画を進めていた模様だ。ムサウイ被告は以前にも旅客機を使ったホワイトハウス突入計画について認めているが、「アメリカがテロ容疑で拘束中のエジプト人宗教指導者を釈放しなかった場合、報復として行おうと考えていた」と発言しており、同時多発テロ事件発生当日に別のテロ事件を計画していたという発言に法廷内は一時騒然となった。27日の証言で、ムサウイ被告はこれまで明らかにされなかったテロ計画の詳細についても触れている。

ムサウイ被告は2001年8月にミネソタ州でFBIに移民法違反で逮捕され、アメリカ国内で航空機の操縦訓練を受けていた被告の行動を不審に思った複数のFBI職員は、彼のノートパソコンを調査する許可を上層部に求めたが、のちに却下されている。ムサウイ被告は27日に行った証言の中で、世界貿易センターへのテロ攻撃を事前に知っていたと明かし、2001年8月の逮捕時に受けた取調べでFBIにその情報を伝えなかったとも語っている。「あなたは自分がアルカイダのメンバーであるという事実を隠したかったため、嘘の証言を行ったのですか?」、そう問いかけたロブ・スペンサー検事に対し、ムサウイ被告は「その通りです」と答えるのみだった。ムサウイ被告は2001年8月以降にアメリカ国内で大規模なテロが実行される事や、世界貿易センターがターゲットに選ばれた事も知っていたと語ったが、世界貿易センターへの自爆テロに関しては「計画に加担もしていなければ、その詳細に関しても知らなかった」と主張している。

ムサウイ被告は以前に「20人目のハイジャック犯」として容疑を認めていたが、27日の証言では「みんなが私を20人目のメンバーと呼んでいたため、面白くてそう言ってみた」と語り、20人目のハイジャック犯としてユナイテッド航空93便(4人のアルカイダ・メンバーによってハイジャックされ、ペンシルバニア州で墜落)に搭乗しようと試みた事を否定している。ムサウイ被告の弁護士は新たな証言を行わないようにと最後まで説得したが、被告はそれを聞き入れず、2001年9月11日にハイジャックした旅客機を自らホワイトハウスに激突させようと計画していたと語っている。ムサウイ被告は前出のレイド被告が5番目の自爆テロに加わるとアルカイダ幹部から聞かされていたが、その他のメンバーについては知らない点も多かったと語っている。27日になってムサウイ被告がなぜ新証言を行ったのかは不明だが、死刑求刑を予定する検察側にとっては非常に有利な結果となった。

昨日のブログで反移民法案に反対する50万人以上の人たちがロサンゼルス市内で抗議集会を開いたと書いたけれど、今日になってワシントンの上院司法委員会は不法移民の一時的な滞在と労働を認める「ゲスト・ワーカー制度」を認可する法案を賛成多数で可決している。この法案ではゲストワーカーとして働く移民たちが、アメリカ滞在中にグリーンカードの取得手続きも行えるようになる(下院ではこのゲスト・ワーカー制度の導入が見送られている)。この問題に関しては、僕はブッシュ大統領を支持したい。「アメリカ人が嫌がる仕事に就き、アメリカ経済を支えてきた」、ブッシュ大統領は27日の演説でそう語っている。建設現場やレストランの厨房、食肉加工工場に深夜のコンビニといった場所で働くのはほとんどが移民で、こういった場所で働く人がいるから社会が動いている事くらい、小学生でもブッシュ大統領でも分かる事。予想通りCNNのルー・ドブスはカリフォルニアでの抗議集会の様子に怒り心頭だったようで、メキシコ国旗を持って歩くデモ参加者達を「非アメリカ的なやつらだ。なぜアメリカで外国の国旗が必要なんだ?」と報道に携わる人間とは思えない発言を繰り返していたけど、彼は聖パトリックスデーのボストンやニューヨークを見た経験が無いのだろうか?気象予報士同様に、僕はアメリカ国旗のバッジをつけるジャーナリストを全く信用していないけど、移民問題を語る「有識者サン」たちは町をゆっくりと歩いてみればいい。


写真:27日にアレキサンドリアで行われたムサウイ被告の証言の様子を描いたスケッチ (AFP通信より)

週末のロサンゼルス、50万人以上がデモに参加

2006-03-27 14:19:43 | ニュース
今日もWBCに関する話を少しだけ。アメリカとメキシコの試合が始まる数時間前、友人と試合の行方を予想していた時のこと。決して論理的ではない理由から、僕は「メキシコが勝つかもしれないね」と言った。自国の圧勝を信じて疑わなかったアメリカ人の友人は、おそらく僕を救いようの無い変人と思ったかもしれないし、2つの代表チームの総合力の差は誰が見ても明らかだった。僕がメキシコの勝利を僅かながらも感じた理由。それはラテンアメリカの人が持つ「グリンゴ、なめんなよ」というメンタリティーの存在だった。クリケットでのパキスタンやラグビーでのオーストラリアがイギリス本国に対して抱いた感情と同じように、メキシコ代表が野球を通じてアメリカの高慢さに平手打ちを加えてやろうと思ったような気がしたのだ。この数年、アメリカ国内では不法移民(イリーガル・エイリアンという言葉で一般のアメリカ人が思い浮かべるのは間違いなくメキシコ人だと思う)に対するバッシングが続いてきたわけで、アメリカを打ち破ったメキシコ代表を祝福するファンの表情をテレビで見ていて、僕は移民問題を真っ先に思い浮かべた。今日は、その移民問題に関するニュースになります。

不法移民に対する取締りの強化を目的とした反移民法案が連邦議会で論議されているが、カリフォルニア州ロサンゼルスで25日、法案に反対する抗議集会が行われ、地元警察の推定では50万人以上が参加した模様だ。抗議集会には多くのヒスパニック系移民が参加しており、人権団体やキリスト教団体などのメンバーも少なくなかった。26日のロサンゼルス・タイムズ紙によると、抗議集会の参加者達はロサンゼルス市中心部の約20ブロックを埋め尽くし、スペイン語で書かれた横断幕などを掲げて反移民法案への反対を訴えた。ロサンゼルスでこれだけの規模の抗議集会は過去に例がなく、ベトナム反戦運動をはるかに上回る人数が集会に参加していた模様だ。下院ですでに可決された反移民法案は、不法入国を重犯罪と定め、不法移民を雇った会社などに対する罰則を強化するというもので、メキシコとの国境に移民流入防止を目的とした壁も建設される。

「移民社会でこれだけ巨大な集会が行われた例はありません。眠っていた巨人が突然叩き起こされたような衝撃でもあり、これが移民の権利保護を求める運動の始まりとなるでしょう」、抗議集会に参加したイリノイ州移民・難民人権連盟のジョシュア・ホイト代表は、ロサンゼルス・タイムズ紙の取材に対しそう答えている。平和の象徴として白色のシャツを着た参加者達は、古くからのロサンゼルス市民に加えて、移民の数も少なくなかった。20年前にエルサルバドルから不法に入国したアルベリカ・ラゾさんは、今では2つのビジネスのオーナーでもあり、毎年7000ドルの所得税を支払っている。グアテマラ出身のホゼ・アルベルト・サルバドルさんは4ヶ月前、妻と5人の子供を残してカリフォルニアにやって来た。家族を養うために不法移民として働き始めたサルバドルさんは、現在1時間10ドルの仕事に就いている。「この国を愛しているだけではなく、必要としているのです。ここでは自国で決して得られないチャンスがありますから」、サルバドルさんはアメリカ国旗を持ちながらそう語った。

反移民法案は27日に上院司法委員会で審議される予定で、民主党のエドワード・ケネディ議員(マサチューセッツ州)と共和党のジョン・マケイン議員(アリゾナ州)によって提出された法案には短期労働プログラムの設立なども含まれている。一方、共和党のビル・フリスト上院多数党院内総務は国境警備の強化や不法移民を雇った会社への罰則を定めた法案を用意しており、28日までにこの法案も審議される可能性が高い。26日の抗議集会はロサンゼルス以外の場所でも行われており、コロラド州デンバーでは地元警察がデモ参加者は数千人と事前に見積もりを出していたが、実際の参加者は5万人を越えていた。また、アリゾナ州フェニックスでは2万人、ウィンスコンシン州ミルウォーキーでは1万人が抗議集会に参加している。一部の政治家や評論家が主張する「中南米からの不法移民によってテロの危険度が増す」というレトリックに怒りを露にするヒスパニック系移民は多く、母親がメキシコからの不法移民だった22歳のデービッド・ゴンザレスさんはデモを取材したAP通信の記者に対し、「世界貿易センターを破壊したのはメキシコ人でしたか?誰が世界貿易センターの建設に携わってきたと思うのですか?」とコメントしている。

最近公開された2本の映画。ナタリー・ポートマンのスキンヘッド姿に驚かされた「Vフォ-・ベンデッタ」と、スパイク・リー監督の最新作「インサイド・マン」を劇場でなんとか見ようと思っている。「ベンデッタ」は、僕も詳しいストーリーを知らないんだけど、昨日見に行ったという友人の話では「マトリックス」と「時計仕掛けのオレンジ」をミックスしたような映画だったらしい(日本でご覧になられた方はいるでしょうか?)。この映画のスチール写真を最初に見たとき、僕はスキンヘッドの人物がナタリー・ポートマンとは気付かずに、一瞬だけどシンニード・オコナーが女優転向でもしたのかと思ってしまった。こちらのコラムニストが「ベンデッタは今の米英社会に対する大きな挑戦でもある」と語っていたので、どんな内容なのかが凄く気になる。「インサイド・マン」はスパイク・リーがメガホンを取った犯罪スリラー。リー作品でお馴染みのデンゼル・ワシントンの他に、ジョディ・フォスターやクライブ・オーウェンも出演している。刑事役のイギリス人俳優キウェテル・エジョフォー、最近ハリウッド映画への出演が多いけど、要チェックですよ。


写真:25日にロサンゼルス市中心部で行われた抗議集会 (ロサンゼルス・タイムズ紙より)

奇妙な2月とイヌイットの警告

2006-03-24 14:44:09 | ニュース
夕方、セントレジス・ホテルで開かれたピーター・シューメーカー米陸軍将軍の講演に参加したんだけど、その前に以前から気になっていたレストランに入ってみる事にした。デュポン・サークル近くにあるその店は、「スシとヌードルの店」という看板を掲げていたので、数週間前にその店を発見して以来、かなり気になっていた場所だったのだ。日本食レストランにはあまり興味がないけれど、ワシントンで美味いラーメンを食べれる店は皆無に等しいので、僅かばかりの期待を込めて入店。スシバーではやたらとフレンドリーな2人の板前が、スペイン語を話しながらスシを握っていた。「でも、ラーメンだから大丈夫だろう」と思ってメニューを開いてみると、そこに書かれてあったのはタイやベトナムの麺類ばかりで、日本のヌードルは「鍋焼きうどん」オンリー。そりゃ、ヌードルではあるけれど…。「スシとヌードル」と書かれた看板を日本人が見たら、ほぼ10人に10人がチャーシューメンや味噌ラーメンを思い浮かべると思うんだけどなぁ。さて、今日は地球温暖化とイヌイットの生活について、ワシントンポスト紙の記事から。

北極圏から30マイル離れた場所に住む猟師のノア・メトゥクさんは、最近になって北極周辺の地域に様々な変化が生じていると危惧する。地球温暖化の影響なのか、今年は歴史的にも珍しい暖冬となっており、厳しい寒さの中で培われてきた人々の生活や生態系は「暖かさ」による新たな変化を強いられているようだ。北極地域に生息する動物も大きな変化に見舞われている。浮氷を見つけることのできないシロクマは餌を求めて狩にも行けない状態で、本来なら陸地と海の両方を行き来するアザラシも安定した氷が少ないため、島から動けないでいる。これまで北極周辺で決して見かける事のなかったコマドリやスズメバチだが、最近になってイヌイットの住む複数の村で目撃されている。すでに多くの科学者から問題を指摘されてきた地球温暖化だが、北極周辺で生活を行うイヌイット達は「過去の暖冬と比べてみても、この冬は最悪のもの」と語り、温暖化がもたらす問題に警鐘を鳴らしている。

イヌイットはアラスカ、カナダ、グリーンランド、そしてロシア北部といった広大な地域で生活しているが、どの場所でも温暖化が原因と見られる様々な変化に直面している。カナダ北東部のラブラドール地方にあるナインという町で猟師として暮らすサイモン・コールマイスターさんは20年にわたって、スノーモービルで狩猟に出ていたが、これまで大きな事故を起こした経験は一度も無かった。しかし、コールマイスターさんは最近、氷上をスノーモービルで移動中に氷の亀裂による沈没事故に遭い、間一髪で脱出に成功している。「いつの日か、雪が全く降らなくなってしまうかもしれないですね。そうなれば、僕らももうエスキモーじゃないですよ…」、48歳のコールマイスターさんはワシントンポスト紙の取材にそう語った。また、カナダ北部のレゾリュート・ベイでは冬の日照時間が以前よりも長くなっているとの指摘がイヌイット達から出ており、地元の気象局に務めるウェイン・デービッドソン氏は、「暖かい空気が原因で、地平線の上にある太陽の光が反射されている」とその原因を説明する。

ロシア最北部のチュコトゥカでは、雪がほとんど無くなってしまったため、イヌイットたちが飲み水の確保を求めて井戸を建設した。アイスランドのレイキャビクでは2月の気温が41年ぶりに最高記録に達している。カナダ北部のヌナブト準州にある町では、2月に何度かの雷雨を記録しており、最高気温が華氏48度(摂氏で約8.8度)にまで達した。通常、この地域の2月の気温は摂氏でマイナス28度前後となっている。イヌイットの間では以前から温暖化が気候の変化と関係しているとする指摘が存在したが、最近までその指摘や警告を科学者達が真剣に考える事はなかった。しかし、カナダの連邦気象庁も3月の気温が1948年の測定開始以来で最高のものであると発表しており、地球温暖化に関する議論が活発化しそうだ。「昔は雲の流れや、風の向きなどで天気を予測できたものですが、先人から伝えられた知恵はもう役にたちません。全てが変わってしまったのですから」、イヌイットの村で暮らす87歳のエノシク・ナシャリクさんはそう語った。

俳優チャーリー・シーンといえば、父親のマーチンが政治活動にも力を注いでいる事で知られているけど、23日のラジオ番組の中で911テロ事件と「陰謀論」を結びつける発言を行い、ちょっとした話題になっている。GGNネットワークのアレックス・ジョーンズショーに出演したシーンは、「911テロ事件に関する政府の説明に納得できず、政府は911の事実を隠蔽している」とコメントした。シーンは「2年前だと、この話題について触れるのは難しかった」と前置きしながらも、おそらく僕も含めて多くの人が今でも持つ素朴な疑問について語っている。「カッターナイフしか持たない19人のアマチュアが4機の旅客機をハイジャックして、目標となった建物の75パーセントが破壊されている。陰謀論のような気もするし、解決されていない謎だって多いよ」、シーンはそう語っている。911と陰謀論については、僕も色々と関連する本に目を通したけれど、真実は分からない。シーンにはもう少し喋ってほしかった。


写真:先月、華氏40度以上の最高気温を記録したカナダ北部の村。通常、この季節の気温はマイナス20度以下となる。 (ワシントンポスト紙より)

元外相は大物スパイ?

2006-03-22 13:36:48 | イラク関連
のサイズの手直しが終わったと電話をもらい、今日の夕方、Kストリート近くにあるトーマス・ピンクに立ち寄った。店員の女性が突然、「昨日あんまり寝てないでしょう?」と一言。自分では気付かなかったんだけど、目がやたらと充血していたらしい。確かに彼女の指摘は正しく、WBC決勝戦を見て、それからラジオのレポートをやって、DVRで録画したWBC決勝のハイライトを再び見て…、ベッドにもぐったのは朝の6時前だった。それから朝の10時前に起き、昼前には外出したんだけど、昨日の興奮からまだ冷めていない状態で、全然眠くないのだ。明日の朝はアレキサンドリアに行かなきゃならないので、今日はラジオの仕事が終わればすぐに寝るつもりだけど、それにしても凄い試合でしたね。今週中にもう一度、録画した決勝戦を見ようかと思ってます。さて、今日は20日にNBCテレビが報じた大物イラク人スパイに関する話を。

イラク戦争開始から3周年を迎えた20日、NBCは開戦時にフセイン政権で外相を務めていたナジ・サブリ氏がスパイとしてCIAに大量破壊兵器に関する情報を流し、見返りとして10万ドル以上の現金を受け取っていたと報じた。アメリカが開戦に踏み切った理由でもあるイラクの大量破壊兵器保有に関しては、これまで亡命イラク人らを中心としたグループが様々な情報をアメリカ側に流していた事が広く知られていたが、フセイン政権幹部による情報がCIAに提供されていたという話はこれまで明らかにされていなかった。2002年9月、サブリ氏はニューヨークで開かれた国連総会に出席し、「アメリカ政府はイスラエルの利益を代表して行動している」と書かれたフセイン大統領の書簡を読み上げている。表向きは国連総会で激しいアメリカ批判を展開したサブリ氏だが、ニューヨーク滞在中にフランス諜報部の仲介で代理人をCIA職員と面会させており、これをきっかっけにアメリカ側への情報提供が開始された。

NBCニュースは複数の諜報関係者の話として、サブリ氏からのCIAへの情報提供は全て「カットアウト(スパイ用語で第3者や連絡係を意味する)」を経由して行われ、その役を務めたのは前出の代理人だったという事だ。フセイン政権が保有する大量破壊兵器の正確な規模をアメリカに伝えたサブリ氏には、CIAから謝礼として10万ドル以上が支払われている。サブリ氏の情報はイラク政府が公表していたものよりもはるかに正確で、CIAが2002年10月に作成した予測報告書の内容と極めて近い数字だった。さらに、開戦前のCIAがフセイン政権による生物兵器開発は進行中であるとの分析を出したのに対し、サブリ氏はイラクで生物兵器開発は行われていないとアメリカ側に伝えている。イラク戦争後、ブッシュ政権の主張した生物兵器がイラク国内で見つかる事はなかった。また同じく開戦前、CIAはイラクが「数ヶ月から1年で核兵器を開発できる可能性が高い」と主張したが、サブリ氏は「フセイン大統領が核兵器を欲しがっているのは事実だが、実現には相当な時間を要するだろう」と代理人を通じて語っていた。

開戦前のサブリ情報は、そのほとんどが正確な内容だったが、化学兵器に関しては「91年の湾岸戦争で使用されなかった化学兵器が、今も使える状態で残されている」とCIAに伝えていた。この点に関しては、サブリ氏の情報も間違いであったようだ。CIAはサブリ氏をアメリカに亡命させ、フセイン政権に対するプロパガンダ活動の中心として彼を使おうと目論んでいたが、サブリ氏はこの提案を拒否し、これが原因となってサブリ氏とCIAの間で交わされた「スパイ契約」もご破算となった。イラク戦争開戦前にアメリカがフセイン政権幹部から情報を得ていた可能性は以前から指摘されており、2004年2月にジョージタウン大学で演説を行ったジョージ・テネット元CIA長官は、「フセイン政権中枢にいる人物が情報源となっていた」と語っている。イラク戦争後、サブリ氏は他のフセイン政権幹部のように逮捕される事もなく、現在は中東の某国で暮らしているのだという。

昨日カリフォルニアで行われたWBC決勝の日本対キューバ戦。僕は夕方頃からワシントン周辺にある3軒のスポーツバーに連絡を入れ、大型スクリーンでゲームが見れるかどうか聞いてみたんだけど、どの店も「大学バスケットボールがあるからねぇ」という理由でWBCには全く関心がない様子だった。仕方なく午後8時前には帰宅し、9時からESPNで放送予定の決勝戦を心待ちにする。8時55分。テレビでは大学バスケットボール選手権のミシガン対ノートルダム戦が続いていて、試合終了まで残すところ数秒。「はよ終われ(バスケファンの方、本当に申し訳ない)」と独り言をつぶやいた瞬間、試合は同点のままオーバータイムに突入。もちろん野球の中継には入らず、そのままバスケットボールの試合が流された。そして、またも同点のまま2回目のオーバータイムに入り、僕はイチロー選手が2次リーグ韓国戦の終盤に叫んだのと同じ言葉を連呼し、ESPNを呪いたい気分だった。こちらで中継が始まったのが9時半過ぎ(東部時間)。小笠原選手が打席に入る場面からだった。

次の番組がWBCだろうと何だろうと、ESPNが延長戦に入った試合を放送中断するとは思えないし、実際にWBCの決勝戦だって午前2時前まできっちりと放送されていた。それでもアメリカ国内でのWBCへの関心の低さは紛れも無い事実だと思うし、それを象徴するのがアメリカでは数少ない全国紙として知られる「USAトゥデイ」のスポーツ欄だったような気がする。普段はUSAトゥデイを読むことはないけど、「全国紙」がWBCをどのように伝えているのか知りたくて、20日付の同紙を購入してみた。16ページで構成されるスポーツ欄では、最初の10ページが大学バスケットボールのニュースで占められ、WBCのニュースは14面に半ページの記事のみだった。通常なら大学バスケの話題がスポーツニュースを独占するこの時期にWBCを開催したのも原因なのかもしれないけど、それでも日本人の僕からすればこの話題の低さには面食らってしまう。今回、パワーのアメリカに対し、日本や韓国はスモールベースボールで対抗し、中南米勢もそれぞれが独特のスタイルを披露した。サッカーでのブラジルやイタリアのように、それぞれの国の特色が垣間見えた大会でもあった。今大会で得た財産を無駄にしないためにも、3年後に向けての問題改善を強く望みたい。


写真:WBC決勝のキューバ戦に勝利した後、選手たちから胴上げされる日本代表の王監督。 (AFP通信より)

崖っぷち、上昇、そして優勝

2006-03-21 17:08:15 | Weblog
長かった6時間。気がつけば、もう午前3時じゃないですかぁ!WBCに関して書きたい事は幾つかあったんだけど、続きは明日のブログで。それにしても、大学バスケットボール選手権の人気は凄いね。ESPNが30分遅れで中継を開始した時には、本当に卒倒しそうになった(アメリカなのに…)。OBCのIディレクター、打ち合わせの電話を使って1回オモテの攻撃をずっと聞いてゴメンナサイ。小笠原選手の打席からこちらでも見ることができました。

ボスはボスでも

2006-03-20 15:29:37 | イラク関連
いきなりですが、ヒューゴ・ボスの話をちょっと。この前、ノードストロームというデパートで働く友人と話をしていた時のこと。どういう経緯かは忘れたんだけど、ヒューゴ・ボスの話題になって、僕はその時に初めて「ボス・グリーン」というブランドがあることを知った(ヒューゴ・ボスにブラックやオレンジといったブランドがあったのは知ってたけど、グリーンまであるなんて)。この「ボス3色」はそれぞれスタイルが異なるんだけど、そんな話を聞いてたら日本の缶コーヒーを思い浮かべてしまって、それにまつわるエピソードを友人に話すことにした。僕がまだ大学生だった頃、ニューヨーク州から交換留学で神戸に来たアメリカ人学生が、日本での生活が始まったその日に路上の自販機で売られている「BOSS」の缶コーヒーを見てえらく感激したらしい。日本に来る前、彼はほとんどの日本人が高級ブランド品に身を包んでいると信じきっていて、神戸の街角で見つけた缶コーヒーがドイツの有名ブランドによるものだと勘違いしたらしい。写真まで撮って、全てに気付くまで何日か要したんだとか…。海外での日本人像って、やっぱりそんな感じなのかな?少し長くなったけど、今日はイラク戦争から3年を迎えるという話を。

米軍のイラク侵攻から20日で3年を迎えるが、ブッシュ政権高官らはイラクが内戦に突入しようとしているという指摘を真っ向から否定し、米軍の駐留とイラクにおける政治状況の発展を強調して称えている。しかし、先月22日にサーマッラでイスラム教シーア派の聖地でもあるアスカリ聖廟が爆破されると、イラク全土では宗派間の対立が激化し、連日のように各地で大量殺戮が繰り返されている。この状態を内戦だと位置付ける有識者は少なくなく、18日には英BBCのインタビューに答えた元イラク内相のアーヤッド・アラウィ氏が、「1日平均で50~60人が殺害されています。これが内戦でないのなら、内戦の定義は神のみぞ知るということでしょうね」と語っている。しかし、CBSの報道番組のインタビューに答えたチェイニー副大統領は、ザラカウィ容疑者が率いるテロ組織がイラクに混乱を引き起こそうとしていると語ったものの、イラクが内戦の危機に直面しているといった指摘を真っ向から否定している。

2003年3月にイラク戦争が始まって以来、数万人のイラク人(軍人を含む)が死亡しており、フセイン政権崩壊後に始まった武装勢力のゲリラ活動もアメリカでは毎日のニュースとして報じられている。路上に仕掛けられた爆弾で米兵が命を落としたというニュースは、長い間アメリカ国内メディアの日常的な話題を独占してきたが、最近は宗教的対立を背景にした殺害事件が大量に連続して発生しており、アメリカ国内でもイラク内戦を危惧する声は少なくない。そのためか、最近のブッシュ大統領に対する国民の支持率は過去最低のラインに停滞している。また、先週末にはアメリカを含む世界各地でイラク戦争3周年にあわせて米軍のイラク撤退を求めるデモも実施されており、開戦前よりもはるかに規模の小さなデモだったとはいえ、アメリカ国内外で米軍のイラク占領に反対する声が依然として多い現実を示す結果となった。

3月19日現在、イラクで戦死した米兵の数は2314人に達しており、少なくとも3万人のイラク人も死亡している。これまでの戦費だが、すでに最大で2500億ドル(約29兆円)が使われた模様だ。19日にキャンプデービッドからホワイトハウスに戻ったブッシュ大統領は記者団に対し、「我々の戦略はやがて勝利を導くでしょう。そして、イラク国内での勝利によってアメリカがより安全な場所となるのですよ」と語っている。この日、ラムズフェルド国防長官もワシントンポスト紙にコラムを寄稿し、「テロリストはイラク国内で敗北に追い込まれつつある」と主張している。ラムズフェルド長官はコラムの中で、「今米軍をイラクから撤退させるのは、第2次世界大戦後のドイツをナチスに明け渡すのに等しい」との持論を展開したが、これはキッシンジャーやブレジンスキーといった歴代の大物閣僚から失笑を買う結果に終わっている。

いよいよWBCも決勝の日を迎える。不可解なトーナメント方式や、恥ずかしげもなく誤審を連発するアメリカ人審判など、次の大会に向けて改善点は少なくないと思うけど、日本代表がこうやって最後の試合に駒を進めたことには感激している。日曜日の今日も友人と昨日の試合(韓国戦)について少し話をした。このアメリカ人の友人はメジャーで活躍するアジア系選手には詳しかったものの、今回の大会を通じてアジアの野球のレベルに衝撃を受けたそうだ。そして昨日の試合、代打福留の場面で右投手のキム・ビョンヒョンがマウンド上に残ったわけだけど、試合翌日の報道を見ていると、本来ならばこの場面で登板すべき左投手のグ・デソンが疲労のため投げれなかったようだ。そのため、韓国サイドはキム・ビョンヒョンに全てを託した形となり、間もなくして福留が目のさめる2ランをホームランの出にくいぺトコパークで放っている。総力戦となった昨日の試合、ここしかないというチャンスで「蜂の襲来」のごとく凄まじい攻撃を見せた日本代表。大袈裟だと言う人もいるだろうけど、僕は「WBC版キンシャサの奇跡」とでも呼びたいくらい、見る者のアドレナリン分泌を止められない試合だったと思っている。僕らはWBCで最高のライバルを見つけれた。


写真:オレゴン州ポートランドでは19日、米軍のイラク駐留に反対するデモが開かれた。 (AP通信より)

7回オモテ、日本の攻撃

2006-03-19 16:09:23 | Weblog
やりましたよ!WBC日本代表、サンディエゴで韓国代表を6-0で破り、こちらの時間で月曜日に行われるキューバ代表との決勝戦に駒を進めました。日本が勝つだろうと信じてESPNの中継を見ていたものの、これまでの2試合から、おそらく1点が大きく響くゲームになるだろうと思いながらハラハラと試合を観戦していた。そう思っているうちに7回表の攻撃が始まり、日本にヒットが出始めた中で、代打福留の見事な2ランホームラン。その少し前に韓国ベンチがリリーフにサブマリン投手のキム・ビョンヒョンを投入したんだけど、僕は彼がマウンドに姿を現した瞬間、「もしかしたら行けるかも」と思ったのだ(本当に)。レッドソックスにも在籍していたキムはファンの間でもメンタル面の弱さが有名な話となっていて、2001年のワールドシリーズでは2試合連続で最終打席に入った打者からホームランを浴びている。福留選手が打席に入る前、僕はダイヤモンドバックス時代のキム・ビョンヒョンを思い出したんだけど、まさか本当にホームランになるとは思わなかった。両チームにとって、全てのリズムが大きく変わった瞬間だったと思う。

試合とは直接関係ないんだけど、今日のESPNの解説はなかなか面白かった。降雨のため8回表に試合が一時中断されると、アナウンサーや解説者が王監督の現役時代のエピソードを何度も紹介し(荒川コーチと合気道や真剣を用いた特訓を行ったエピソードなど)、簡単に他人を褒めたりはしないフランク・ロビンソン監督が王監督を以前から絶賛している話なんかも出てきた。(意味を分かって使ってるのかは不明だけど)、試合の解説では必ず「王サン」と呼ばれていた。それよりも笑ったのが、小笠原選手を紹介する際、アナウンサーが「オガサワラ」と上手く発音できず、しばらくしてから「彼は日本でガッツというニックネームで呼ばれてるそうです。今日は僕らもガッツと呼ぶことにしましょう」と言って、本当に「ガッツ」と呼び続けた事。小笠原選手が「ガッツ」と呼ばれている話、失礼ながらアメリカ人が知っているとは思わなかったので、これには凄く驚いた。

いよいよ月曜日はキューバ戦。本当はプホルスやオルティス(オルちゃんの勇姿、随分と前から携帯電話の待ち受け画面に使わせていただいております)らがプレーするドミニカ共和国と日本代表との試合を見たかったんだけど、キューバ戦も今から体がゾクゾクと震えそうな好カードだ。間接的とはいえ、土壇場で日本代表を救ってくれたメキシコ代表に、そして長く語り継がれるであろう3度の好ゲームを戦った韓国代表の両方に感謝。結果論になってしまうけれど、WBCがここまで自分を興奮させてくれるとは思いもしなかった。残るキューバ戦、最後のイニングが終わるまで、思う存分楽しみましょう!

リトル・グリーン・ベーグル

2006-03-18 14:40:48 | イラク関連
ピュー・リサーチセンターが発表した最新の世論調査結果。なかなか面白い内容になってます。これはアメリカ人を対象にして、ブッシュ大統領のキャラクターについて色々と質問したものなんだけど、回答者の56パーセントがブッシュ大統領を「現実を全く把握していない人物」と評している。そして、調査では「ブッシュ大統領を一言で表現するとしたら、どの言葉が最も適切ですか?」という質問もあって、ここで見事に1位に輝いたのが「incompetent(無能者)」という言葉だった。ちなみに2位以下を紹介しておくと、「good」、「idiot(バカ)」、そして「liar(嘘つき)」という順に続いている。昨年2月に同じ内容の調査が行われた際、ブッシュ大統領を表す言葉として1位に輝いたのは「honest(正直な)」だった。今のところブッシュ陣営から調査に関するコメントは出ていないけど、口の悪い僕の友人は「ブッシュ大統領が何も言わないのは、お目付け役のチェイニーやライスからincompetentの意味を教えてもらっていないからだろう」と切り捨てている…。さて、今日はペンタゴン内部で進むビックリ計画について、英BBCのレポートから。

簡易爆発物IED)によって900名以上の米兵がすでにイラク国内で死亡しているが、ブッシュ大統領は13日、今年度中に30億ドルの予算を組んでIED対策に取り組むと発表している。この30億ドルにも及ぶ予算には、路上などに仕掛けられたIEDを事前に見つけ出すシステムの開発費も含まれており、16日の英BBCはペンタゴンがマイクロチップを埋め込んだ昆虫を使ってIEDの発見を計画中と報じている。これは蝶などの昆虫を使って偵察活動を行おうというもので、サナギの中にマイクロチップを埋め込み、成虫となった蝶などをリモコン捜査で操ろうというものだ。ペンタゴン内部の防衛高等研究企画庁(DARPA)は先週、民間業者らに対して「サイボーグ昆虫計画」への入札を正式に募り始めており、SF映画さながらの研究が実行に移される事となる。理論的にはサナギ時に埋め込まれたマイクロチップが蝶の肉体の一部となる模様で、体の一部を人間がコントロールできるようになるとの事だ。

複数の科学者はBBCの取材に対し、「サイボーグ昆虫計画」で挙げられたアイデアの多くは現実的ではないと語ったが、いくつかのアイデアに関しては現実的でもあるとコメントしている。DARPAは現代科学が昆虫の進化について非常に多くの知識を有すると主張し、人間が昆虫をコントロールするのは可能だと結論付けている。「それぞれの変態時期において、昆虫の体は再生過程に入る。そのため、傷の再生や内臓の周囲に存在する異物の位置を変更させる事も可能である」、DARPA作成の研究企画書にはそう書かれている。DARPAが企画書で触れた異物こそがマイクロチップであり、これを成虫に変わる前の蝶などに埋め込む事で、その昆虫の遠隔操作や爆薬を含む化学薬品の探知が可能になるという理論だ。DARPAが募集を開始したサイボーグ昆虫の開発だが、最低条件として、100メートル離れた場所から昆虫を目標物の5メートル以内にまで遠隔操作で移動させなければならない。また、目標物周辺で収集したデータを遠隔操作するチームに送信する事も条件には含まれている。

DARPAによるサイボーグ昆虫計画はまだ始まったばかりだが、すでに計画そのものを疑問視する声も上がっている。オックスフォード大学自然史博物館のジョージ・マクギャビン博士はBBCの取材に対し、「計画が成功するとはとても思えない」と語っている。「成虫となった昆虫は生殖活動を行いますが、その際にサイボーグとなった昆虫の脳波を再び変更する必要があるでしょうね」、マクギャビン博士はそう語る。DARPAは過去にも蜂を用いて爆発物探査システムを作り上げようとしたが、失敗に終わっており、その際も「蜂のもつ生殖本能によって、期待していたパフォーマンスを得ることは出来なかった」とコメントを残している。冷戦時代の1958年に設立されたDARPAは240人のスタッフを抱え、年間20億ドル程度の予算がが割り当てられているが、これまでにも非現実的な計画が少なくないと批判されてきた。

3月17日といえば聖パトリックスデー。ボストンから来た僕としては、この町の盛り上がりの無さには毎年ガッカリするんだけど、それでも今日は緑色の服を着た人が少なくなかったです。僕はアイルランド人ではないので、別に髪の毛を緑色にしたり、額に「キスミー、アイム・アイリッシュ」なんてペイントはしないけど、それでも今日は朝からボストン・セルティックスのスタジャンを着て外出した。夜、友人とパブでビールを飲んだものの、なぜか周りがみんなギネスばっかりだったので、あえてサミュエル・アダムスを飲むことにした。来年こそはボストンで3月17日を過ごしたいし、サウス・ボストンのパレードは僕がアイルランドで見たものと同じくらい素晴らしいので、久しぶりに学生時代の前半を過ごした「ボストンでは数少ないブルーカラーの町」に戻ってみたい。今日はまだボストン市内のパブは盛り上がっているのだろうか?大学院時代、学校のキャンパスから近かった事もあり、仲間と一緒にオコナーズというパブで原稿を書き上げたりした記憶がある。授業やらで疲れた時には、そのままパブの奥にあるスタッフの休憩室で翌朝まで寝ていたこともしばしば。オコナーズのアイリッシュ料理、ボストン在住の方はぜひトライしてくださいね。すごく美味しいです。


(写真) 聖パトリックスデーの17日、東海岸の有名ベーグルチェーン店では緑色のベーグルも販売された。 (ビジネス・ワイアーより)