IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

真夏日の夜、外野席でホットドッグ…、やめられまへん

2005-07-13 12:14:55 | スポーツ
ロンドン自爆テロの捜査に進展が見られたようで、西ヨークシャーのリーズ近郊の家が家宅捜索をうけた模様。リーズ周辺に住むイスラム教徒の話がアメリカのメディアでも報じられていて、テレビに映る住宅街のタウンハウスを見ながら、僕はサッカーについて色々と考え始めた。実は僕がイングランドで唯一愛するフットボールクラブが、リーズからそれほど離れていないヨークシャーのシェフィールドにあって、今年1部リーグ(最近はチャンピオンシップとかと言うそうで…)に昇格したシェフィールド・ウェンズデーがそのクラブ。1867年9月4日の水曜日に設立されたので、こんな名前が付いたわけだけど、ヒルズボロ(ウェンズデーのホームスタジアム)近くに住む親友の悪影響を受けてファンになったのが10年以上も前の事。アメリカに来てからも、クラブに関するニュースはインターネットで定期的にチェックしている。

そのシェフィールドの近くにあるという単純な理由で、僕はイングランドの友人らからリーズ・ユナイテッドの話を腐るほど聞かされてきた。短くまとめると、聞かされた話の99パーセントはネガティブなものばかりで、リーズがいかにレイシストな町かといった感じのもの。確かにリーズ・ユナイテッドの本拠地エランド・ロードは20年ほど前まで白人以外のファンが観戦できる環境ではなかったし、2000年には現在レアル・マドリッドに所属するジョナサン・ウッドゲートらが地元のナイトクラブでアジア系男性を激しく殴打して大怪我を負わせている。でも、最近のクラブの活動を見ていると、いち早くオーストラリアのフットボール・アカデミーと提携したり(ハリー・キューウェルはこれでイングランドに来ている)、イギリス生まれのアジア系選手に積極的に門戸を開いていたりしたわけで、今回のテロ事件がリーズ・ユナイテッドのビジョンに影響しない事を祈るばかりだ。

スポーツに関してもう1つ付け加えたいんだけど、メジャーリーグのオールスター戦がミシガン州デトロイトで行われた(今も、ゲームは行われている)。野球がオリンピックの競技から削除される事が決まり、メジャーリーグ機構側は新たな国際大会を開催する事で、野球の世界的な普及を狙っているようだ。サッカーやラグビーと同じくらい、僕は野球というスポーツにも精一杯の愛情を注いでいるけれど、それでも今日のオールスターゲームのオープニングを見ていると、ある種の違和感に直面する。試合前、俳優のビリー・ボブ・ソートンが2つのアメリカ文化(自動車産業の生誕地デトロイトと国民的娯楽のベースボール)について語っていたけど、斜陽していくデトロイトの町とベースボールの2つが痛々しくも目立っていた。これって、凄く残念な事なんだけどね。

野球が2021年オリンピック大会の競技から削除されてから1週間も経たないうちに、メジャーリーグ機構は火曜日にデトロイトで開かれるオールスター戦を利用して、アメリカ主導による新たな国際大会の構想をブチ上げた。メジャーリーグ機構は11日、来年3月に「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」と呼ばれる16カ国対抗の国際トーナメントを開催すると発表し、この大会にはアメリカを含む各国のプロ選手が出場する見込みになるとの事。メジャーリーグ機構側はこの20年間にわたって野球の世界的な普及に努めてきたが、先週国際オリンピック委員会が2008年大会を最後に野球を種目から削除すると正式に発表している。国際オリンピック委員会の決定に、メジャー機構側からは多くの不満の声があがっていたが、コミッショナーのバド・セリグは新たな大会を設ける事で野球の国際的な普及を進めようとしている模様だ。

月曜日に行われた記者会見には、メジャーリーグで活躍する各国のスター選手が登場し、来年3月に予定される大会を盛り上げようと早くもアピールに務めていた。ジェイソン・ベイ(カナダ)やカルロス・ベルトラン(プエルトリコ)、ミゲル・テハダ(ドミニカ共和国)らが出席した記者会見では、選手達から「自国のためにプレーする事に大きな興奮をおぼえる」などのコメントが相次いだが、実際にはWBCの開催をめぐっては多くの解決されない問題が残ったままだ。WBCは3月の3週間を使って行われる予定で、メジャーリーグ機構としてはオリンピックのように4年に1度の大会として定着させたい意向がある。また、大会自体はNCAAの男子バスケットボールがクライマックスを迎える前に終了するため、テレビ放映でも多くの視聴者を獲得できると見られている。

3月といえば、通常ならばシーズン開幕前のトレーニングがピークに達している頃で、その後の公式戦に影響を及ぼすのではと懸念するメジャー選手も少なからずいる。また、強豪国として知られるキューバが参加しない場合、大会のバリューは著しく低下する。日本の野球関係者らは大会の管理が無条件にアメリカ側に渡ることを懸念しており、大会への選手派遣をまだ正式に決定していない。サッカーの場合、国際サッカー連盟(FIFA)という統治機構が存在し、様々な国際大会の運営を行っているが、野球にはこういった組織が存在しない。12日付のロサンゼルスタイムズ紙がメジャー機構関係者の話として報じたところでは、来年3月に開かれる大会の収益金の47パーセントが出場国への賞金として使われ、残りはメジャーリーグ機構やメジャーリーグの選手会などで分配される予定なのだという。

タイム誌の記者マシュー・クーパーにCIA工作員の情報を流した疑惑が持たれるカール・ローブ大統領次席補佐官だが、ホワイトハウスでは火曜日も記者団からローブ氏の進退問題に関する厳しい質問が相次いで飛び出し、マクレラン報道官はその対応に追われた。ブッシュ大統領が情報漏えいに関わった者全てをホワイトハウスから追放するとコメントしてから1年以上が経過し、大統領の最も信頼するローブ氏が情報漏えいの渦中にいるという思いもよらない展開に発展した現在も、ブッシュ大統領はローブ氏の関与がなかったと信じているとホワイトハウス側は発表している。次第に政治化しつつあるこの問題、民主党議員達からはローブ氏の早急な解任を求める声が一段と強まっている。

火曜日に行われた定例記者会見で、ローブ氏の進退問題について集中的に質問を受けたホワイトハウスのマクレラン報道官は、「ホワイトハウスで働くスタッフは全て大統領の信頼を受けた者ばかりで、そういった信頼がなければ、ここで働いている事はなかったでしょう」とコメントしている。クーパー記者がローブ氏とCIA工作員バレリー・プレームに関する話をしていた頃、プレームの夫で外交官だったジョー・ウイルソンはブッシュ政権がイラク戦争を正当化するために情報操作を行っていると激しく非難している。クーパーが保管していたメールなどの記録はすでに連邦検察局に提出されており、検察側はブッシュ政権内部で情報漏えいを行った人物の特定に急いでいる。

昨年の大統領選挙でブッシュ大統領と最後まで争った民主党のケリー上院議員は、ワシントンの国会議事堂内で記者の質問に答え、「ローブ氏は即刻解雇されるべき」と強い調子で語った。ケリー議員の横には2008年の大統領選挙で民主党から出馬する事が予想されるヒラリー・クリントン上院議員がおり、彼女もケリー議員の考えに賛成している。月曜日にホワイトハウスでは2回の記者会見が開かれているが、この間に記者団から出たローブ関連の質問は61回にも及び、過去の記者会見でローブ氏の関与を真っ向から否定したマクレラン報道官は集中砲火を浴びる格好となった。ある記者からは「ローブ氏は罪を犯したことになるのではないか?」と厳しい質問も飛び出したが、マクレラン報道官は「その件については現在調査中です」とのコメントを繰り返すしかなかった。

自分の好きな野球が全くグローバル化していないスポーツだと認めるのは少し辛い事でもあるし、来年3月の国際大会が中途半端な運営で終わることだけは避けてもらいたいけれど、野球そのものは凄く面白いスポーツだと今でも思う。僕の人生の中で、アメリカ人と日本人以外で野球の話を10分以上できたのは2人のベネズエラ人だけで、ここワシントンでも僕の周囲で野球に興味を示さない人って意外と少なくない。けれど、球場で見るプレーの面白さや地方球場によくある「まったり感」(さすがにボストンやニューヨークでは見られないけど)はなかなか心地よく、ケニア人でもドイツ人でも、僕が強引に球場に連れて行った友人の多くは今でもヒマを見つけて球場に通っている。「食わず嫌い」のファンを新たに開拓するためにも、メジャー側は今こそ他の国々と協力する姿勢を見せるべきだと思うんだけどなぁ。