IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ギャングズ・イン・ブルー

2005-09-30 13:34:15 | 政治
ワシントン近郊のアレクサンドリアにある連邦拘置所に収監されていたニューヨーク・タイムズ紙記者のジュディス・ミラーが29日午後に釈放され、取材源の守秘義務を守る形で7月6日から収監されていたミラー記者は、30日にワシントンの連邦大陪審で情報源の正体に関する証言を行う予定だ。CIA工作員の正体を明かす記事を書いた彼女に対し、ブッシュ政権は情報のリークを行った人物の名前を言うよう圧力をかけてきたが、彼女がこれに従う事はなく、その代償として拘置所に収監されていた。ニューヨーク・タイムズ紙は政権側と事実上の「手打ち」を行った彼女の決断を支持すると発表してるけれど、どうも全てが中途半端な形で政治的に解決された気がして、あまり釈然としない気分だ。明日の証言や彼女の会見などを聞かないと何も分からないけれど、「なぜこの時期に?」という疑問が残る。

ハリケーン「カトリーナ」の時とは全く違う対応を取ったブッシュ大統領だが、その涙ぐましい努力が実を結んだのか、支持率が5ポイント上昇したようだ。CNN・USAトゥディ・ギャロップの3社が9月26~28日に共同で行った最新の世論調査によると、約1週間前に40パーセントだった大統領の支持率は45パーセントに上昇し、同時期にフォックス・ニュースが行った世論調査でも45パーセントの支持率を記録した。数日前にニューオーリンズ市警のエディ・コンパス本部長が突然の辞任発表を行ったが、こちらでは警察官による略奪行為を取り締まれなかった事が辞任理由の1つだと指摘する報道が出始めている。真相は依然として不明だが、略奪行為を行った警察官に対する調査はすでに開始されている。今日はそのニュースを紹介して、トム・ディレイ下院議員が起訴されたニュースを2本目で。昨日はブログの更新ができなかったので、今日は気合入れて書くぞ、たぶん。

ニューオーリンズ市警の警察官がハリケーン通過後の市内で略奪行為に参加していたという疑惑が数週間前に浮上していたが、略奪を行ったとされる4人の警察官がすでに停職処分となり、別の1人も配置転換されていた事が29日にウォーレン・ライリー市警本部長代理の話で明らかになった。警察官の略奪行為を調査しているニューオーリンズ市警は、「カトリーナ」の通過後に少なくとも12人の警察官が略奪行為に参加した可能性があるとして取調べを続けている。「警察官として恥ずべき行為に参加したものは、問答無用で相応の処分を下すつもりです」、29日に行われた記者会見でライリー本部長代理はそうコメントした。調査の対象となっている警察官の容疑は様々で、家電製品や宝石を盗み出したとされる警官もいれば、市民の略奪行為を止めなかったとされる警官もいる。

「2000人以上の職員が勤務するニューオーリンズ市警は、その評判を台無しにするような一部の警官による行為を決して見過ごさない事で一致団結しています」、ライリー本部長代理はそう語った。また、災害時に250人程度の警察官が職務放棄したとの報道が存在したが、「報道は正確性を欠いている」と語り、250人の中には正当な理由で現場に出てこれなかった警官もいたと反論している。ライリー本部長によれば、被災現場に姿を現さなかった約250人の警察官に対する個別調査は現在も実施されており、職務放棄をした警官とそうでない者の選別が近いうちに完了する模様だ。「市内で洪水が発生したあと、電話や無線が全く使えない中、自宅の屋上で5日間も助けを待った警官がいたのも事実です。250人全てが脱走警官ではないし、当時は警官が警官に救助されるような状況だったのです」、とライリー本部長代理は言う。

しかし、ニューオーリンズ市民からは警察官による略奪行為の存在が指摘されており、市内でホテルを経営するオスマン・カーンさんはCNNの取材に対し、8人の警察官がホテルの10階部分に居座って、そこを拠点に周辺の商店へ略奪に出かけていたと語った。カーンさんの話によると、市内で洪水が発生した8月29日夜に70人の警察官がホテルにやって来て一晩を過ごしたが、その殆どは翌日にホテルを離れて治安維持の任務に就いたのだという。8人の警官はホテルに残り、昼間は酒を浴びるように飲み、夜になって周辺の商店で略奪行為を行っていた模様だ。「8人は毎晩10時頃にホテルを出て、いつも翌朝4時半頃に戻ってきました。アディダスのシューズやローレックスの時計など、色々な物を持ち帰ってましたよ」、とカーンさん。警察官による略奪を指摘するのはカーンさんだけではなく、洪水発生後に市内に残った市民からも目撃情報が警察に寄せられている。洪水の被害が少なかった一部の住宅街に警察車両で乗り付け、空き家となった邸宅で略奪行為を行っていた警察官の目撃情報もあり、市警はその対応に追われている。

テキサス州トラビス郡の大陪審は28日、トム・ディレイ共和党院内総務を政治資金を違法に流用した罪で起訴した。起訴状によると、ディレイ議員は2002年に行われたテキサス州議会選挙において、2人の支持者と共謀して同議員に送られた企業献金19万ドルのマネー・ロンダリングを行い、地元の共和党候補者に還元したとされている。ワシントン政界で最も影響力と資金収集力が高い共和党指導者の1人として知られてきたディレイ議員だが、起訴された議員は要職から離れなければならないと定めた下院のルールに基づき、28日午後にデニス・ハスタート共和党下院議長に対して院内総務の辞任を申し入れた。政治資金法違反の問題が決着するまで、ナンバー3のロイ・ブラント院内幹事が院内総務の職を暫定的に務めることになり、共和党下院議員からの承認も終了している。共和党ナンバー2のディレイ議員は宗教右派の代表格としても知られ、同じくテキサス州を選挙地盤とするブッシュ大統領とは古くからの友人だ。

選挙資金違反を巡ってディレイ議員と地元検事との間で8月に会談が数回行われたが、検察側がディレイ議員に対する強硬姿勢を崩さなかった事から、ワシントンの政界では起訴は時間の問題と噂されてきた。いくつもの問題点が指摘されるブッシュ政権と共和党に新たな問題が加わった事で、来年行われる中間選挙で共和党が予想以上の苦戦を強いられるとの見方が強まっているのも事実だ。捜査の担当検事が民主党系だったことから、ディレイ議員は政治的な策略だったと主張しており、ホワイトハウスのマクレラン報道官も記者会見の中でディレイ議員を擁護してる。しかし、自らを「自由企業と規制撤廃のチャンピオン」と評するディレイ議員には以前から金銭スキャンダルにからむ疑惑が指摘されており、私的な海外旅行費用をロビー団体に負担させていた疑惑が存在したり、2003年にはテキサス州の選挙区区割り変更で地元関係者に不当な圧力かけていたとされている。

28日午後に行われた記者会見で、ディレイ議員は捜査を担当するロニー・アール検事が2002年に行われたテキサス州議会選挙の政治的復讐を行おうとしているのだと批判を展開したが、議員は記者からの質問を受けつけずに会場を去っている。テキサス州法では州議会選挙における候補者への企業献金は禁じられており、共和党が130年ぶりに過半数を占める結果となった2002年の州下院選挙からしばらくして、民主党のアール検事による捜査が開始されている。政治的な色合いも否定できない今回の起訴だが、29日付のワシントン・ポスト紙が報じたところによると、ディレイ議員に対してテキサス州内で集められた企業献金19万ドルがワシントンの共和党全国委員会(RNC)へ一度送られ、2002年10月に19万ドルがRNC名義でテキサス州下院選挙に出馬した7人の候補者に寄付されている。現時点でこれを選挙資金法違反と100パーセント立証するのは難しいが、検察側は徹底的に行く構えを見せており、有罪判決が出た場合、ディレイ議員には最高で2年の禁固刑が科せられ、議員職も失う事になる。

月刊サイゾー用原稿を仕上げて(ついに終わったぜぃ、初めて挑戦するテーマだったので、いつもより仕事した気分…)、さぁブログでもと思ったのが夜中の1時過ぎ、昨日もやっちゃいました。気がつけばソファーで朝まで寝ていたようで、ブログも更新も忘れてたし、何よりも阪神タイガースのリーグ優勝の喜びを大阪の友人と分かち合う事もできなかった。起きたのが午前10時頃で、ウェブの新聞記事を見ると、そこにはすでに甲子園で胴上げされる岡田監督の写真が掲載されていた。何人かの友人からメールをもらい、甲子園球場で昨日の試合を観戦した大学時代の悪友からは球場の様子を写した臨場感溢れる写真を送ってもらった。僕の夢は同じ年にタイガースとレッドソックスの優勝を見ることで、今年はまだ可能性があると信じているんだけど、プレーオフ出場をかけた明日からの対ヤンキース3連戦、一体どうなることやら…。

そうそう、お知らせが1つあります。色々なところで色々なお仕事をさせてもらっているのですが、10月5日から夕刊フジで毎週1回のコラムを連載する事になりました。政治だけではなく、ワシントン以外の町の人間臭い話なんかも紹介できればなと思っております。機会があれば、会社や学校の帰りに駅のキオスクでものぞいて見て下さい。ヨロシク!


写真:4-4で迎えた9回裏、デービッド・オルティスの決勝タイムリーでレッドソックスが勝利(ようやった、ビッグ・パピィ!)。首位との差を1ゲームとしたまま、明日からフェンウェイ・パークでヤンキースとの最後の3連戦が始まる。 (AP通信より)

アシュリー・スミスが今日まで言えなかったこと

2005-09-28 12:27:22 | ハリケーン「カトリーナ」関連
おそらく今のアメリカ国内で最も忌み嫌われる男がワシントンで開かれた公聴会に出席した。ハリケーン「カトリーナ」に襲われた南部湾岸地域での救助活動の最高責任者でありながら、テレビカメラの前で対応の遅れについて言い訳するだけの毎日を過ごしたマイケル・ブラウン元FEMA長官は27日、ワシントンの米議会で開かれた6時間に及ぶ公聴会に出席し、大方の予想を全く裏切らずに「言い訳のオンパレード」に終始している。「あいつに比べたら、サダム・フセインの人気ですら保障されるよなぁ」、夕方にあったアメリカ人の友人がそう言った。もちろん、僕もブラウン長官だけを責めるつもりは全く無いし、ブッシュ政権によって始められたFEMAの民営化や官僚主義も厳しく追及されるべきだと思う。でも、今日の公聴会でも午前中に「ニューオーリンズでの事態を把握できていなかった」と語ったかと思えば、午後には「ニューオーリンズ市長やルイジアナ州知事が避難活動を徹底させなかったのが一番の原因」と手のひらを返したような発言を展開。さらに、彼が辞任後も「顧問」としてFEMAから給料を支払い続けられている事実が発覚。長官職を失ったブラウンに残ったのは、虚栄心とプライドだけだった。

一方、ニューオーリンズ市内でも大きな動きがあった。ニューオーリンズ警察のエディ・コンパス本部長が辞任を発表している。辞任の理由は明らかにされておらず、コンパス本部長は警察とは全く違うキャリアに進むとの情報もある。災害発生後のニューオーリンズ市では数百名の警察官が職務を放棄し、2名の自殺が明らかになっており、コンパス本部長が管理不足の責任を取ったとの見方も存在する。そして、被災地の視察を行ったブッシュ大統領だが、アメリカ国内でタブーとされてきた米軍による国内治安活動を実現させたい考えを明らかにし始めている。今日はまずそのニュースを紹介し、2本目にアシュリー・スミスに関する最新ニュースを。今年3月に一躍有名人となったスミスだけど、今日になって意外な事実が判明し、メディアを騒がせている。

ブッシュ大統領は26日、ホワイトハウスと議会が連邦法の改正に向けて早急に話し合いを開始すべきだと語り、ハリケーン「カトリーナ」のような大規模災害で米軍に救助活動の主導権を与えるべきだと主張した。以前から国内の非常事態には米軍を投入すべきとの考えを示してきた大統領だが、26日にエネルギー省で行った記者会見の中で、法律改正に関してはっきり言及している、127年前の法律改正で、現在は米軍による国内での活動には大きな制限が設けられている。国内の自然災害への対応は国土安全保障省と傘下の連邦緊急事態管理局に一括されているが、ブッシュ大統領は任務の一部を米軍に振り当てたいと考えているようだ。「法律改正が必要なテーマのため、早まった判断は避けたいと思います」、大統領はそう語った。1878年以来、米軍による国内の治安活動への関与は大きく制限されているが、同時に様々な「法の抜け穴」が存在したのも事実だ。

法改正によって生まれる幾つかの問題点を危惧するペンタゴンでは、複数の高官がすでに法律改正案に難色を示し始めている。軍隊の任務を国内の警察活動にまで拡大してしまった場合、現実問題として、新たな訓練や装備が必要となる可能性が高いからだ。今月初めにメディアのインタビューに答えた国防総省のポール・マクヘイル次官補(国土安全対策担当)は、「国防総省が緊急事態対応省に変わるのは望ましくないと思う」と語っている。しかし、米軍の任務拡大に積極的なブッシュ大統領は今月16日にニューオーリンズで初めて軍の治安活動を言及したあと、先週末にはコロラド・スプリングスにある北方軍司令部を訪れている。北方軍は911同時多発テロ後に創設された司令部で、本土防衛を専門的に扱っている。上院軍事委員会で議長を務める共和党のジョン・ワーナー議員(バージニア州)は26日、「大統領が法改正を真剣に実施したいのなら、我々も委員会内で法律の見直しを行うつもりです」と語っている。

ブッシュ大統領のエネルギー省での発言からすぐ、ホワイトハウスのマクレラン報道官も定例記者会見の中で「災害時における連邦政府の素早い対応は必要だ」とコメントしているが、素早い対応が何を指すのかについては触れなかった。「各州の知事からの要請で法律が変わる可能性もあるし、大統領が一気に法改正を行う可能性もある」、報道官はそう語っている。1906年に発生したサンフランシスコ大地震では、米軍がワシントンの承認を受けないまま被災地に投入され、治安維持や救助活動に参加している。法改正が早い段階で実施されるのかに注目が集まりつつある中、シラキュース大学ロースクールのウイリアム・バンクス教授は1878年に作られた連邦法の効力を疑問視する1人だ。現在の法律では国内の治安活動は米軍ではなく州兵が担当する事になっており、非常時における米軍部隊の投入には各州の許可が必要となっている。しかし、バンクス教授は「米軍投入に対する規制は法的というよりも文化的な理由が強く、非常時における米軍の投入は実質的に認められた状態が続いている」と指摘する。

ジョージア州アトランタの裁判所で今年3月、被告として出廷したブライアン・ニコルズが警備員の銃を奪って発砲し、判事ら4人を射殺したあとに逃亡を図り、郊外の集合住宅付近に逃げ込んだ。日付の変わった翌日午前2時頃、近くのグロセリーストアで買物をして帰宅した当時26歳の未亡人アシュリー・スミスは集合住宅の駐車場付近でニコルズ容疑者と遭遇し、銃を突きつけられたまま自宅に7時間監禁される事となった。監禁から7時間後、スミスは無傷のまま開放され、彼女の通報を受けた地元警察がニコルズを逮捕している。監禁中、信仰心の強い彼女はニコルズ被告に対して信仰心の重要さを語り、愛読する宗教書の一節を読み聞かせたりもしている。逮捕後にニコルズ被告がスミスについて「神より送られた天使が僕の前に現れたようだった」と語った事から、スミスは一晩のうちに全米で最も注目される女性の1人となり、彼女の愛読していた宗教書も全米の書店でベストセラーとなっている。

「スミスから死別した夫(数年前、乱闘に巻き込まれて刺殺されている)の話を聞かされたり、信仰心について語り合ったり、スミスに料理を作ってもらった事などがニコルズの興奮状態を和らげた」、全米のメディアは事件解決までの7時間をそう分析していた。スミスは犯人逮捕に協力した事で、アトランタ警察署長協会から2500ドルの報奨金を授与され、別の場所でも総額7万ドルの報奨金を手にしている。スミスがニコルズに与えたのは手料理と信仰心だけではなかったようで、27日に発売された手記「アンライクリー・エンジェル」の中で、彼女はニコルズにクリスタル・メスと呼ばれる覚せい剤の一種を与えていたと告白している。事件から数ヵ月後に行われた警察の事情聴取では、スミス本人から覚せい剤の話が語られる事はなく、スミス本人からも薬物反応は出ていなかったと警察関係者はAP通信の取材に語っている。今のところ、地元警察がスミスを麻薬所持で起訴する計画は存在しないとの事だ。

手記によると、電気コードでベッドに縛り付けられていたスミスに対し、ニコルズが「マリファナはないのか?」と聞いてきたのだという。マリファナを所持していなかったスミスだが、その代わりに隠してあったクリスタル・メスをニコルズに渡している。手記の中で自身が薬物中毒だった事実を認めたスミスだが、監禁される1日前からドラッグを使用していない事も強調している。ニコルズが覚せい剤を吸引してからしばらくして、スミスは薬物に関する話を開始している。スミスの夫が数年前に刺殺された話は事件後に広く知られていたが、スミスは27日に発売された手記の中で自身の体験についても触れている。過去にスミスはひき逃げの被害にあっており、一命を取り留めたものの、腹部周辺には15センチの切り傷が今も残っている。ひき逃げ犯は麻薬中毒者だったようで、スミスは腹部の傷をニコルズに見せながら、薬物中毒の恐ろしさを語ったそうだ。

サッカーのW杯まで約9ヶ月。ハリウッド製のサッカー映画3作品が、これから半年以内に公開される予定となっている。100億円以上の予算をかけて作られた「ゴール」は、ロサンゼルスに住むメキシコ系の少年がサッカーの素質を認められ、イングランドのプレミアリーグで活躍するという話になっている。有名サッカー選手も実際に出演しているこの映画、北部の古豪ニューカッスル・ユナイテッドが舞台となるんだけど、実際のニューカッスルはイギリス版ニューヨーク・メッツとでも言うべき悲惨なシーズンを送っている。まぁ、だからこそロサンゼルス出身の少年がヒーローになるという話にリアリティが生まれるんだろうけど。他にもイライジャ・ウッドのフーリガン映画や、スパイク・リーが制作に参加したブラジル・サッカーの映画がもうすぐ公開されるようで、個人的にはかなり楽しみにしている。映画絡みで仰天情報が1つ。バージニア州に新居を購入する予定の俳優ベン・アフレックだが、地元の民主党支部が議会選挙の候補として彼を担ぎ出す計画を立てているんだとか。あくまで噂の段階に過ぎないけれど、バージニア大学の著名な政治学教授もワシントン・ポスト紙に噂の存在を認めている。やめといた方がいいと思うけどなぁ。


写真:27日にワシントンで行われた公聴会で証言するマイケル・ブラウン元FEMA長官 (AP通信より)

ソコが変だよ、ハリケーン復興事業

2005-09-27 14:46:28 | ハリケーン「カトリーナ」関連
明日の朝一番でワシントン市内にある「全米牛肉協会」というロビー団体のオフィスでインタビューがあるため、肉関連のリサーチをしていたら、もう夜中の1時過ぎ。やばいやばい、そろそろ寝なければ…。正しいバーベキューの楽しみ方…ではなく、ずっと問題になってきた米国産牛肉の日本への輸出禁止に関して質問をする予定で、時間を見つけては牛肉問題の資料に目を通してたんです(悲しい事に、トイレの中ででも…。意外と資料が多かったので)。言い訳からスタートした今日のブログですが、ハリケーン関連のニュースを1つ紹介して、おそらくベッドに飛び込む事になると思います。少々短めのバージョンになりますが、どうか今日もお付き合いくださいな。

バトン・ルージュの環境保護局(EPA)職員が購入した89ドル95セントの靴から、ミシシッピー州知事と関係の深いフロリダの業者が5億6800万ドルで受注した瓦礫撤去作業まで、ハリケーン「カトリーナ」後の復興事業には様々な業者が参加し、巨額の復興予算が関連業者に分配されていく。26日付のニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、約4週間前に発生した「カトリーナ」の復興事業で1億ドル以上の契約を結んだ業者が少なくとも15社存在する模様で、そのうちの5つは5億ドル以上の契約を受注している。大型受注に成功した業者の多くは、瓦礫撤去作業や、移動式住宅などの販売、トラックやバスといった大型車両の供給を手がけている。また、政府内文書によると、連邦緊急事態管理局(FEMA)が民間企業に発注した総額15億ドルの復興事業の80パーセントで入札が行われておらず、政府関係者や監査担当者は契約のプロセスで縁故主義が存在しなかったかと懸念している。

復興事業を巡るブッシュ政権内の縁故主義はすでに以前から議論の的となっており、災害発生直後に大型契約を勝ち取った2社(ショウ・グループとハリーバートンの子会社として知られるケロッグ・ブラウン&ルート)には大物ロビイストのジョン・アルバ氏が代理人として参加している。2000年の大統領選挙でブッシュ陣営の幹部スタッフだったアルバ氏は、2001年にFEMA長官に就任している。「このような非常事態が起きた場合、不正行為や職権乱用に対する脆弱性が強まる可能性があります。細心の注意を払って、チェックを続けていきます」、国土安全保障省を担当するリチャード・スキナー監査官はニューヨーク・タイムズ紙の取材にそう答え、現在も60人の部下が「カトリーナ」の復興事業における不正行為の有無を監視しているのだと語った。「たとえ全てではなくとも、ほとんどの業者は正当な仕事をしています。復興のスピードに注目が集まり、関係者が極度のプレッシャーの中で働いているのも事実なんです」、スキナー監査官はそう付け加えた。

しかし、複数の業界関係者や政府高官によると、瓦礫撤去だけで1社に支払われた5億6800万ドルは「通常ではありえない高いレート」だという事で、この大型契約を間接的に認めた陸軍工兵部隊を批判する声も少なくない。問題の契約を受注したフロリダ州のアッシュブリット社だが、ミシシッピー州のハーレイ・バーバー知事が関係するロビイスト事務所の顧客だった。多くの契約は入札無しで各業者に発注されているが、同じレベルの商品やサービスでも、業者間で非常に大きな価格差が存在するようだ。移動式住宅の場合、一軒の価格が1万5000~2万3000ドルとなっており、被災住宅の点検作業では1軒につき15~81ドル、被災者を6ヶ月間収容するフェリーでは1300万~7000万ドルという大きな差が出ている。「コネという範疇を超えて、共和党協力者が利益を得るシステムが出来上がっています」、民主党のベニー・トンプソン下院議員(ミシシッピー州)はそう語った。

ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジター選手に脅迫状が届いたようで、「白人女性とのデートを止めなければ、狙撃か放火をする」とのメッセージが書かれてあったことから、FBIが捜査を開始したらしい。ニューヨークのデイリー・ニュース紙によると、同様の脅迫状がクラレンス・トーマス最高裁判事やNFLマイアミ・ドルフィンズのジェイソン・テーラー選手にも送られていたようで、脅迫状は全てオハイオ州クリーブランド周辺で投函されていた。ヤンキースの花形選手であり、グラウンドの内外で常に華麗な話題を振りまくジターにブーイングを飛ばすレッドソックス・ファンは多いけれど(正直に告白すると、僕もボストン時代は「ジターのクソッタレ」とプリントされたTシャツを着て野球観戦に行ってた)、堂々としたオーラを振りまくジターを敵ながら尊敬するファンがボストンには多かった。僕もジターには愛憎が交錯する感情を抱く1人だが、ディマジオやマントルがそうだったように、彼にもセレブでいてほしい。野球選手って、まだまだ子供が憧れる夢の仕事なんだから。

黒人の父親と白人の母親の間に生まれたジター本人が26日にCBSの「60ミニッツ」という報道番組の中で語っているんだけど、ミシガン州で過ごした幼少時代には周囲から人種差別的な言葉を投げ掛けられた経験もあったようだ。「この11年間、本拠地のヤンキー・スタジアムで差別的な言葉を聞いた事は無いよ」、ジターはそうコメントしている。付き合うのが白人でも黒人でも、アジア系でもヒスパニックでも、イイ女はやはりイイ女。僕はいつもそう思ってる。ゴツゴツ顔揃いのヤンキースの中で奇跡的な色気を醸し出すジターには、これからも眠らない町の主役でいてほしいし、正統派のスターであり続けてほしい。社会に適応できないレッドネックの戯言は無視して(FBIが本気を出せば、こんな手紙の作成者はすぐに分かります、はい)、自由奔放なジターでいてくれい。

(写真) ハリケーン「リータ」による被害で大部分の電力供給がストップしたテキサス州ジャスパーでは、26日から数ヶ所のコンビニが開店し、日用品を求める市民で長蛇の列ができた。 (ロイター通信より)

テキサス・ルイジアナ・ワシントン-それぞれの週末

2005-09-26 08:04:57 | イラク関連
レバノンから嫌なニュースが入ってきた。隣国シリアによる政治的な影響力を公然と批判し続けてきた女性キャスターのマイ・シディアクさんが、車に仕掛けられた爆弾の犠牲となり、病院で手足を切断する大手術を受けた模様だ。レバノンの民放テレビ局LBCで政治番組の司会者として知られていたシディアクさんは、最近ベイルート周辺で多発する反シリア政治家やジャーナリストを狙ったテロの新たな犠牲者となってしまった。フランスのパリに本部を置く「国境なき記者団(RSF)」の調査によると、2005年1月1日から現在までの間に、世界中で少なくとも50人のジャーナリストが殺害され(イラクでは、そのうちの21人が殺害されている)、112人が投獄されている。僕の知り合いにもベネズエラやウクライナといった国で、同僚を「政治的な理由」で殺害された記者が何人かいるけど、ジャーナリストに対する暴力は未だ消える気配は無い。

ハリケーン「リータ」は24日夜に熱帯性低気圧へと変わり、前もって避難活動が大々的に行われていた事もあって、「カトリーナ」が南部湾岸地域を通過した時のようなパニックは発生しなかったようだ。しかし、国立ハリケーン・センターのマックス・メイフィールド所長はCBSニュースのインタビューの中で、「今年のハリケーン・シーズンはまだピーク時にある模様で、1ヶ月以内に新しいハリケーンが発生する事も十分に考えられます」と語っている。今日はまずハリケーン「リータ」が通過したあとの南部湾岸地域の様子を紹介し、それから昨日ワシントンで行われた大規模な反戦デモの話に行きたいと思います。ハリケーンによる災害や、見通しが全く分からないイラクの現状、そして突如表れたシンディ・シーハンという女性登場によって、イラク戦争開戦後に下火になりつつあった国内の反戦運動が再び盛り上がり始めている。では、ハリケーンの話から。

ハリケーン「リータ」が南部湾岸地域を通過した翌日の25日、救助チームはルイジアナ州南西部の広範囲に展開し、周辺住民の救助作業を開始した。周辺では「リータ」が上陸する前から住民に対して強制避難命令が下されていたが、避難しなかった住民も相当数いる模様で、大雨の影響で再び発生した洪水による被害が懸念されている。洪水が発生したバーミリオン郡では、大雨と暴風の影響で救出作業に向かったボートが転覆する事故まで発生しており、25日まで本格的な作業が開始できなかった。現地で救出活動の指揮を執る湾岸警備隊のサッド・アレン参謀長はCNNに対し、25日午後までにルイジアナ州内で「リータ」による死者は報告されていないと語っている。しかし、ミシシッピー州ベルゾーニではハリケーンの影響で発生したトルネードによって1人が死亡している。

テキサスとの州境に近いルイジアナ州レイク・チャールズではハリケーンによって多くの建物が破壊され、町の大部分が洪水に襲われた。「湖の水位がここまで上昇するのを見たのは、生まれて初めてのことです」、7万5000人が住むレイク・チャールズのランディ・ローチ市長はそう語った。ニューオーリンズ市内では「カトリーナ」によって決壊が発生した防波堤の修復作業が急ピッチで進められていたが、「リータ」による大雨の影響によって再び市内の一部地域で洪水が発生しており、陸軍工兵部隊が防波堤の修復作業に追われている。テキサス州では数日前にヒューストンの高速道路上で避難中のバスから出火して24人が死亡する事故が発生しているが、それ以外の死者は現在までに確認されていない。テキサス州のリック・ペリー知事はハリケーンによる州全体の被害総額が80億ドル以上になると見積もっており、25日にはヘリコプターで被災地域の視察を行っている。

「リータ」の上陸前にテキサス州湾岸地域から避難した住民の一部が25日に帰還を開始したが、地元当局は「帰還は時期尚早」として、もうしばらく避難場所に滞在するよう訴えている。ヒューストン周辺の高速道路数ヶ所ではすでに交通渋滞が発生している模様だが、ハリケーン前に行われた住民の避難によって発生した大渋滞には至っていないとの事だ。23日にコロラド州に移動したブッシュ大統領は、コロラド・スプリングスにある北方軍司令部内でハリケーン関連のブリーフィングを受け、翌日にテキサス州に移動している。25日朝には州内のランドルフ空軍基地で再び「リータ」に関するブリーフィングを受け、各被災地での救助活動が効率的に行われているかどうか、何度も関係者に質問していたのだという。

首都ワシントンで24日に開かれた反戦集会は、イラク戦争後に行われたデモとしては最大規模の物となり、数十万人が参加した模様だ。デモ開催前、ワシントン市警察は参加者が10万人程度に達するだろうと予測していたが、主催者側は約30万人の参加者が集まったと主張している。ワシントン市警のチャールズ・ラムジー署長はワシントン・ポスト紙の取材に対し、15万人以上の参加者が集まっていただろうと語っている。ハリケーン被災地の視察を行うため、ブッシュ大統領はワシントンを離れていたが、10年ぶりにホワイトハウス前での反戦集会が許可された事もって、24日のワシントンは反戦ムード一色に染まった。すでに60代の後半に達したシニア層や、大学生、ベビーカーに子供を乗せて参加した母親達、そして迷彩服に身を包んだ退役軍人ら一同に集まり、世代を超えてイラクからの撤退を声高に求めた。

デモ参加者の多くはホワイトハウス南側にある広場に集結し、そこからホワイトハウス周辺を更新し、夕方からはワシントン記念碑の周辺でコンサートを行っている。この数年で最も大きな規模となったワシントンでのデモだが、過去に発生したような暴力事件や破壊行為などは見られず、警備を担当した警察官とデモ隊との間にも緊張はほとんど存在しなかったようだ。建設現場のフェンスが倒され、路上にあった新聞の自動販売機が破壊されたものの、市警には怪我人の報告が一度も入らなかった。しかし、窃盗未遂などで3人が逮捕されている。24日のイラク戦争反対集会はワシントンのほかにロサンゼルスやサンフランシスコ、さらにローマやロンドンといったアメリカ内外の大都市で実施されており、ワシントンでの集会は「ANSWER」などの反戦団体が主催して行われている。「イラク戦争を中止して、早期撤退を開始せよ」と各地のデモ参加者が叫び続けた9月24日現在、イラク戦争での米兵戦死者は1911人、負傷者が1万4641人に達しており、イラク人死亡者が3万人を超えているとの報告もある。

ホワイトハウス近くで行われた集会には、女優のジェシカ・ラングや黒人指導者ジェシージャクソン師、そして昨年イラクで24歳の息子を亡くしたシンディ・シーハンさんらも参加し、そこで行われた演説の中で改めて米軍のイラク撤退を強く要求している。カリフォルニア出身のシーハンさんは8月、ブッシュ大統領が夏休みを過ごすテキサス州クロフォードを訪れ、26日間におよぶ反戦集会を現地で続けながらブッシュ大統領との面会を求め続けていた。その姿はメディアによって連日のように報じられ、反戦運動の象徴的存在となったシーハンさんは、全米を回りながら各地での反戦集会に参加してきた。「みんなで新しい歴史を作っていきましょう」、壇上でそう語ったシーハンさんに、会場に集まった聴衆からは大きな拍手が沸き起こった。ロード・アイランド出身の陸軍兵士フランク・クッキナムさんは、特殊部隊のバッジをつけた軍服を着てデモに参加した。湾岸戦争にも参加し、最近までイラクに派兵されたいたクッキナムさんはワシントン・ポスト紙の取材に対し、「こんなデモに参加するとは夢にも思っていなかったけれど、この戦争のナンセンスさをブッシュ大統領に理解してほしいから」とコメントしている。

ありがとう、レッドソックス!金曜日にボルチモアでスタートしたオリオールズとの3連戦、なんとか3連勝して、首位に再び浮上(ヤンキースと同率で)している。主砲のデービッド・「ビッグ・パピー」・オルティスがスランプ気味で、最近4試合の成績が15打数1安打と散々な結果に終わっているけど、地元ボストンで行われるリーグ戦最後の6試合で復活してくれると信じている。3番のオルティスと4番のマニー・ラミレス(今日も男前なホームランを一発。オリオールズの皆様、毎度ありがとうございます)の2人で稼ぎ出した打点の合計、今日の時点で275となっており、300を超える可能性は非常に高い。先発投手全員の防御率が4点以上を記録する中で、中継ぎ陣の頑張りと打線の破壊力で踏ん張ってきた今季のレッドソックス、プレーオフまでに投手陣の改善は図れるのだろうか?唯一の朗報は、カート・シリングの調子が少しずつ上向いてきた事。今年もプレーオフの主役となるのは、意外にシリングなのかもしれない。

写真:ルイジアナ州レイク・チャールズに住むドルー・マーティン君は、25日朝から妹と共に自宅周辺の瓦礫撤去を開始した。 (AFP通信より)

「リータ」、いよいよ数時間後に上陸か

2005-09-24 12:52:53 | ハリケーン「リータ」
今日もハリケーン「リータ」に関連した最新情報を紹介しようと思っているんだけど、「カトリーナ」関連で集団訴訟の話が浮上してきたので、最初に軽く触れておきます。AFP通信が23日に報じたところによると、ルイジアナ州で石油精製事業などを行う複数の石油会社が、「高潮などから町を守る役割を果たしていた湿地帯を広範囲にわたって破壊した」として告訴された。これ複数の弁護士によって計画された集団訴訟となっていて、被告にはエクソン・モービルやシェル・オイル、BPといった大手石油会社の名前が連なっている。訴えによると、これらの会社がルイジアナ南東部で展開する石油事業が引金となって、周辺の湿地帯約40万エーカーが破壊されたのだという。今日はまずハリケーン「リータ」の最新情報を紹介します。昨日のタイトルに反して(いい意味でね)、カテゴリー3へと規模を縮めた「リータ」だけど、依然として深刻な災害を引き起こす可能性が心配されている。

大型のハリケーン「リータ」は23日現在、その規模をカテゴリー3に落としながらも、依然として強い勢力のまま北上を続けており、24日の明け方にはテキサス州ポート・アーサー周辺に上陸する模様だ。住民による大規模な避難が行われていたヒューストンでは、交通渋滞の続く郊外の高速道路上で老人ホームからの避難者を乗せたバスが炎上し、24人が死亡している。また、「リータ」の影響で大雨に見舞われたニューオーリンズ市内では、防波堤の2ヶ所が決壊し、数日前に排水作業がほぼ完了した地域で再び洪水が発生している。AP通信の報道によると、ニューオーリンズ大学周辺ではすでに洪水の水位が30センチ近くにまで達している模様だ。23日午後8時(東部時間)の段階で、ニューオーリンズに展開する陸軍工兵部隊は大雨による大規模な洪水が発生する可能性を示してはいない。

「ハリケーンはテキサスとルイジアナの州境に間違いなく上陸するでしょうが、そこからのルートについては、現時点ではっきりとした事は言えません」、マイアミのテレビ局WFORで気象予報士を務めるブライアン・ノークロスはそう語った。ヒューストンやグラベストンがハリケーンの直撃を受ける可能性は少なくなってきたが、ヒューストンの東75マイルにあるビューモントやポート・アーサー周辺をハリケーンが通過するかもしれず、この辺りには多くの石油化学関連施設が存在する。CBSニュースのジョン・ロバーツ特派員は、「リータ」が通過すると予想される地域にある石油施設が国内で消費されるガソリンの約3分の1を扱っている事実を紹介しながらも、ハリケーンの軌道と勢力の変化次第では最悪の事態は免れるだろうとも語っている。しかし、テキサス州緊急事態管理局のジャック・コリー氏は、テキサス州だけで「リータ」関連の被害は82億ドルに達するだろうと見積もっている。

エクソン・モービル社はテキサス州ベイタウン(全米最大の石油精製施設として知られる)とビューモントにある2ヶ所の施設を閉鎖すると発表しており、すでにビューモント市内のダウンタウンで人の姿は全く見られない状態となっている。一方、マイノリティが多く住み(エビ漁を営むベトナム移民が多い)、経済的にあまり豊かではないポート・アーサーでも、市内の街灯が消され、人の気配がほとんど無いとの事だ。ブッシュ大統領は23日にテキサス州を視察する計画だったが、予定をキャンセルしてコロラド州コロラド・スプリングスのピーターソン空軍基地へ向かった。ピーターソン空軍基地は国内テロ対策目的で新設された北方軍(NORTHCOM)の司令部があり、ブッシュ大統領はそこでハリケーンに関する最新のブリーフィングを受ける模様だ。ホワイトハウスはブッシュ大統領が24日に改めてテキサス州の2ヶ所を視察する予定だと発表している。

こちらで学生生活をしてみて強烈に感じたのが、学生の多くが「教育」に投資しているという意識が強かった事。大学院で学んでいたため、僕も当然のように「投資して自分を磨く」みたいなメンタリティーだったんだけど、大学生の多くが同じような考えを持っていたのには驚いた。日本の大学時代、サッカーとアイリッシュ・パブ通い(しかも、飲めないくせして…)ばっかりせずにアメリカ人学生の爪の垢でも煎じて飲んでおけば…、そんな後悔の念を抱く事もしばしば。その気持ちをすぐに忘れてしまうのも、ご愛嬌ということで。ボストンでコーヒー仲間だったアメリカ人大学生が前に言ってたけど、1年間に5万ドル近い金が授業料やらアパート代で消えていく現実を知れば、イヤでも早いとこ卒業したくなるんだとか。全くもって同感!大学授業料は年々上昇し、学生は限られた選択肢(ローンだとか奨学金)の中で学生生活を送らなければならない。各大学は運営を授業料収入に大きく依存しているけれど、その学費(運営資金)が学長の個人的趣味に使われたとして、アメリカン大学は大騒ぎになっているようだ。2本目はこのニュースで。

ワシントンDCにあるアメリカン大学のベン・ラドナー学長は、1994年に学長に就任して以来、大学内の様々な改革に着手し、大学の財政・学力的なレベルアップを成功させている。一時は大学経営のモデル的存在とまで称えられたラドナー学長だったが、数年前から大学の運営資金を私的な旅行や食事に使っているとの指摘が相次ぎ、今年8月にはワシントン・ポスト紙がアメリカン大学内部で学長に対する調査を開始したと報じている。大学の評議会はラドナー学長に休職処分を下したが、8月25日になって「調査終了までの停職処分」へと変更している。ワシントン・ポスト紙は今月22日にもラドナー関連の調査報道記事を一面トップで扱い、ラドナー学長が過去3年間の間に50万ドル以上を私的な旅行や食事に使っていたと報じている。これには家族の婚約パーティーや学長夫妻が個人で雇ったシェフのヨーロッパ旅行代、夫人が参加したランチ・パーティーの参加費5000ドルなども含まれている。

ワシントン・ポスト紙が入手した大学評議会による調査報告書のコピーによると、ラドナー学長は民間の仕事も掛け持ちで行っていたが、大学の財務担当者が監査官に語ったところでは、大学側は1997年頃まで学長の副業に関する話を全く聞いていなかったのだという。2004年中に大学側はラドナー学長に80万ドル以上を支払っているが、これはサラリーに加えて学長による「立て替え分」の支払いも含まれている。しかし、前出の報告書は学長が個人で使用するアンティーク家具やカシミア製品の購入に関しても大学側に支払いを要求していた事が明らかになっており、大学側は現在も学長の出費に関して細かな調査を行っている。大学の運営費が学長の個人的趣味に使われたのか、それとも「必要経費」だったのか-出費の一部に関しては調査関係者の間でも意見が大きく分かれている模様だが、運営資金の約9割が学生の授業料から成り立っているアメリカン大学は厳しい批判にさらされている。

アメリカン大学の学生組織も学長の私的な出費を問題視し、リーダーの何名かは大学側に対して授業料の細かな使い道に関する質問を行い、現在はその回答を待つ状態なのだという。アメリカン大学での平均的な授業料の額(大学院は除く)は、年間約2万8000ドルとなっており、保護者の間からも懸念の声が挙がり始めている。また、今回のスキャンダルが大学の評判に大きく影響する事を心配する学生も少なくなく、2年生のザック・ウーリッチさんはワシントン・ポスト紙の取材に対し、「大学のこれまでの功績が傷つけられそうな気がして心配です」とコメントしている。1999年卒業のアリソン・バーマンさんは、「どんな結果になっても、きっと大丈夫だと思います。大学にはポジティブな点がいくらでもあるんですから」と語る。ラドナー学長に関する問題は教授の間でも大きな話題となっているが、関係者が匿名でワシントン・ポスト紙に語ったところでは、自分のポジションへの影響を恐れて積極的に語りたがらない教授が多いそうだ。

メジャーリーグの試合も残り僅かになってきた。今日からボルチモアでオリオールズとレッドソックスの3連戦があり、レッドソックスはマニー・ラミレスの今季40本目となるホームランなどもあって、1戦目を6-3で制している。先発のブロンソン・アローヨ、序盤はどうなるかとハラハラして見てたけど、変化球のキレも次第に増し始め、まずまずの結果。オリオールズの先発で出てきた24歳のダニエル・カブレラ、大化けしそうな選手です。テレビのスピードガンが何度も100マイル(約160キロ)を表示し、最速101マイルの速球にレッドソックス打撃陣も手を焼いていた。コントロールに難のある選手だけど、経験をつめば面白い存在になるかも。1週間後に行われるシーズン最後の3連戦、聖地フェンウェイ・パークでヤンキースを迎える。そりゃ3連勝してくれれば嬉しいに越した事は無いけど、現実的に考えたら、来週金曜日までに首位の奪還だけはしておきたい。プレーオフに備えて、そろそろ薬局に胃薬を買いに行ってきます。

写真:ホームでの試合前、「カトリーナ」で被災した家族と共にニューオーリンズからやって来た7歳のジェレミー・メイラー君と話をするデトロイト・タイガースのイバン・ロドリゲス捕手。ロドリゲスはデトロイト周辺で生活を始めた被災者を支援するため、4万8000ドルを寄付している。 (AP通信より)

5から4へ、そして再び4から5へ?

2005-09-23 13:42:16 | ハリケーン「リータ」
新たなハリケーンが南部湾岸地域に近づく中、テキサスとルイジアナでは180万人に避難命令が下され、ヒューストン周辺の高速道路は避難を開始したドライバーで埋め尽くされている。AP通信によると、ヒューストン周辺数百マイルの地域にあるホテルやモーテルは全て満室となっているそうで、避難を開始したヒューストン市民の多くがダラス近郊まで移動しなければならない事態となっている。ワシントンでは共和党の下院議員らが中心となって、「カトリーナ」による災害が発生した際の連邦政府の対応の遅れに関する調査が始まったが、独立機関が調査を行うべきと主張する民主党議員の多くは調査会への出席を取り止めている。今日はハリケーン関連のニュースを2つ紹介します。1つ目が「リータ」関連で、次が「カトリーナ」の復興に関するもの。あらためて思うけど、約4週間で2つの歴史的なハリケーンが同じ地域を通過するかもしれないわけで、気が滅入ってきます。

南部湾岸地域に近付きつつある大型ハリケーン「リータ」は22日、予測されていたルートを少し外れ、ルイジアナ南西部とテキサス南東部に向かって移動を続けている。また、同じく22日にカテゴリー4にレベルを下げた「リータ」だが、フロリダ州マイアミにある国立ハリケーン・センターのマックス・メイフィールド所長は、夜間のうちに再びカテゴリー5に変わる可能性が大きいと警告している。メイフィールド所長はさらに、ハリケーンセンターの最新の予測として、「リータ」が24日早朝にテキサスとルイジアナの州境に上陸する見込みだとも語っている。テキサス州の高速道路では避難のために北上しようとする車で大渋滞となっており、数千台の車が炎天下の高速道路上で動けない状態となっていた。「9時間かけて何とか20マイル(約32キロ)進む事ができました」、ヒューストンを22日朝に離れたニック・ニコルズさんはCNNの取材に対しそう語っている。

22日午後にはヒューストンのビル・ホワイト市長が記者会見を開き、湾岸地域や河川の近くに家を構える住民以外は自宅にとどまるよう求めている。ヒューストン周辺では住民の大量脱出による交通渋滞の発生に加えて、予想しなかったガソリン不足という問題までが発生しており、市側はここに来て脱出を控えるよう市民に伝え始めている。交通渋滞のひどさからヒューストン市内の自宅に戻る住民も若干いるものの、ガソリンの消費を抑えるために車を押しながら渋滞の続く高速道路を移動するドライバーも少なくない。市当局は脱出を図ったドライバーの多くがダラス周辺に向かうのだろうと語っている。現在、時速17キロのスピードで移動する「リータ」だが、CNNの気象予報士ジャッキ・ジェラスはハリケーンの影響によってルイジアナとテキサスでトルネードが発生する可能性を指摘している。

一方、陸軍工兵部隊による排水作業が続けられているニューオーリンズだが、大雨による防波堤の決壊と洪水の発生が懸念されている。国立ハリケーン・センターのエド・ラパポート副所長は22日午後、24時間以内にニューオーリンズ市内で3~5インチの降雨量を記録するだろうと発表している。現地の工兵部隊には防波堤修復作業の一時中断命令が下される見込みで、最悪の場合、ニューオーリンズ市内で1.3メートル程度の洪水が発生するかもしれないとの事だ。「リータ」の直撃が心配されるテキサス州グラベストンのリーダ・トーマス市長はCNNの取材に対し、約6万人の市民のうち75パーセントがすでに避難した事を明らかにし、22日中に全ての市民を避難させたいと語っている。また、1日に約300万バレルを扱うテキサス州湾岸部の石油精製施設へのダメージも懸念されており、石油価格が再び上昇するかもしれない。

ハリケーン「カトリーナ」による深刻なダメージを受けた南部湾岸地域にあるカジノが、ブッシュ政権による被災地域の産業復興支援策の一環として数百万ドルに及ぶ減税措置を認められる動きとなった。被災地域の産業復興を一刻も早く開始させたいブッシュ政権だが、複数の政権高官がワシントン・ポスト紙に語ったところでは、カジノ産業も他のビジネス同様に税金控除の対象として考えられているようだ。ミシシッピー州のハーレイ・バーバー知事(共和党)も21日、ブッシュ政権による税金控除プランのカジノへの適用を支援する意思を表しており、「他のビジネスと同じように扱っていくつもりだ。少なくとも、ミシシッピーではそうするつもりだ」と語っている。しかし、ミシシッピー州の経済開発関係者の中にはカジノ産業への税金控除に疑問を抱く者も少なくない。ミシシッピー州ゲーム業協会調査部の元代表ブライアン・リチャード氏によると、州内のカジノ業界がこれまで税金などで優遇された事は一度もなく、つい最近まで各カジノ会社が州所有の建物で従業員教育を行う事まで禁じられていたのだという。

ミシシッピー州湾岸部で2つの大型カジノを失ったハーラズ・エンターテーメント社のアルベルト・ロペス戦略コミュニケーション部長はワシントン・ポスト紙の取材に対し、国内のカジノ産業が地方政府から恩恵を受けた例はほとんど無く、実際は雇用促進や税収の増加をそれぞれの地方政府にアピールし続けている状態なのだという。「首を傾げてしまうような話ですね。税額減免の恩恵を受けた事実なんて、どう思い起こしても存在しないんですから」、ロペス氏はそう語った。民主党のマックス・バウカス上院議員は21日、ワシントンで開かれた上院財政委員会の中で被災地域の経済的ダメージを産業別に調査すべきだと語り、上院財政委員会が税額減免の必要な産業に関する調査と公聴会を実施する可能性を示唆している。カジノに限らず、ゴルフ場やカントリー・クラブ、日焼けサロンや酒店なども税金控除の対象から外されている場合が多いが、とりわけカジノは政治的な支持を得る事が容易ではないようだ。

「カトリーナによって数時間で破壊された場所の復興には数年かかるのですから、国民は税金が無駄の無いように復興事業に使われているのか注目しています」、21日の上院財政委員会でそう語ったバウカス議員は、ハリケーン被害での税額減免を産業別に分別すべきだと強く主張した。しかし、ホワイトハウスのトレント・ダフィー報道官は連邦政府が産業分野に関係なく税額減免を実施する計画だと改めて語り、被災者が元の職場に戻って働き始める事が復興のスピードアップにつながると強調している。ブッシュ政権はハリケーン被害を受けた地元産業の建物や備品の修復の約50パーセントを税額控除で肩代わりする計画を立てており、ミシシッピー州ビロキシに8億ドルのカジノホテルを持つMGMミラージュ社が1億ドルの修復費を払う場合、実際の支払額は5000万ドル程度となる。しかし、カジノ産業の多くは全国チェーンで、莫大な資本を持たない地元産業と同じ比率の税額減免の適用に批判が存在するのも事実だ。

24日に複数の反戦団体が主催するデモがワシントンで行われ、100万ドル以上の広告費を費やした(選挙もデモも関係なく…、この国で一番オイシイ思いをしてるのは広告業界だろうな)主催者側は10万人程度の参加を見込んでいる。2003年の初め頃、同じようにワシントンで行われたイラク戦争に反対する大規模なデモを取材した事があった。当時も今と同じように複数の団体が参加して、リベラル派として知られるハリウッド・ピープルもやってきて、僕もホワイトハウス近くにあるホテルで「LAコンフィデンシャル」や「グリーンマイル」に出演した名優ジェームズ・クロムウェルにインタビューした思い出がある。全く意味の無い戦争を起こそうとしていたブッシュ政権に怒りを隠せないクロムウェルだったが、落ち着いて話す姿は大学教授のような雰囲気すらあった(あとで知ったんだけど、若い頃はブラック・パンサーの構成員だったらしい)。ハリウッド人脈も積極的に参加したイラク戦争前のデモだったけど、戦争は予定通りに始まっている。

イラク戦争が始まってから2年半、日数にして900日ぐらいだろうか、まぁ色々とありました。最新の世論調査では「米軍がイラク戦争に勝利する」と答えたアメリカ人は全体の半分以下にまで下がっていて、2年前に「戦場に行く勇気は無いけれど戦争は大好き」な大統領が航空母艦で派手にやらかした戦争勝利のパフォーマンスを忘れてしまった国民も少なくない。そんな状況で24日に行われる反戦デモ、数年前のデモには存在しなかったカリスマ的人物が参加することもあって、こちらのメディアも少し注目し始めている。この夏にテキサス州クロフォードにあるブッシュ牧場の近くで、ブッシュ大統領との面会を求め続けたシンディ・シーハンさん、昨日からワシントンに滞在しており、24日のデモにも参加するようだ。彼女を政治的に利用しようとする動きがあるのは気になるけれど、息子をイラクの戦場で失った母親の叫びほど説得力のあるものはない。デモの「顔」となるシーハンさんがワシントンに入り、24日はどのような1日になるんだろうか。


写真:22日昼頃に撮影されたヒューストン市内の高速道路の様子。 (ヒューストン・クロニクルより)

「リータ」、土曜日にテキサス上陸か

2005-09-22 11:57:50 | ハリケーン「リータ」
ハリケーン「カトリーナ」での死者が1000人を突破した21日、メキシコ湾上を移動する新たな大型ハリケーン「リータ(こちらの読み方では微妙に伸ばしているため、リタではなくリータで行きたいと思います)」がカテゴリー5まで拡大して、テキサス州に上陸しようとしている。「カトリーナ」の発生時に対応の遅さを各方面から厳しく避難された国土安全保障省は、「リータ」による被害を地方政府だけで食い止められない状態に発展した場合は連邦政府に災害対策の指揮権が移る事を示唆し、すでにテキサス州に1200人の連邦緊急事態管理局(FEMA)職員と医療スタッフを派遣している。また、FEMAはペンタゴンに対して2500台の病院用ベッドをテキサスとルイジアナに送るよう要請しており、テキサス州住民の避難活動をスピードアップさせるために数百台の大型バスも調達する計画だ。

「カトリーナ」による洪水が発生したニューオーリンズ市内で略奪行為に参加したとして逮捕され、16日間にわたって拘留されていた73歳の黒人女性が19日に放送されたNBCのニュース番組に出演し、当時の様子を語っている。略奪行為に参加したとして逮捕されたマーリン・マテンさんだが、彼女の弁護士は窃盗罪による逮捕を事実無根と激しく非難している。マテンさん本人の話によると、洪水が発生した8月30日に80歳の夫と市内のモーテルに自家用車で移動したマテンさんは、その日の晩になって車のトランクにいれてあった食料を取りにモーテルの駐車場に出たのだという。そして、車のトランクを開けた時に近くにいた警察官に逮捕され、そのまま拘留されたのだという。マテンさんは5万ドルの保釈金で釈放されたが、彼女の弁護士によると、裁判官が避難してしまったため、食料を略奪した住民や宝石強盗も一律で5万ドルの保釈金が設定されいたのだという。

今日は新たな大型ハリケーン「リータ」に関するニュースと、ここに来てまた騒がしくなりつつあるメジャーリーグの薬物問題に関するニュースを紹介します。メジャーリーグの薬物問題に関しては、誰がクロでシロなのか、僕にははっきりした事が分からないし、ここでいい加減な事を書くつもりは毛頭無いけれど、やっぱり「クサイ」選手っているわけで。ワシントンに遠征中のサンフランシスコ・ジャイアンツの有名スラッガーが、昨日と今日の2日連続でホームランを放ち、これで通算707本へとホームラン記録を伸ばしている。彼が筋肉増強剤を愛用していたという具体的な証拠は無いけれど、限りなくその疑惑がクロに近いのも事実で、僕の周りの野球ファンはみんな「これでホームランの新記録が生まれても、ベーブ・ルースやハンク・アーロンに失礼だ」と言い切っている。ドーピング検査が厳しくなった今シーズン、メジャーリーグのホームラン数が減少したのは単なる偶然、それとも…?じゃあ、まずは「リータ」の話から行きましょう。

21日にすでにカテゴリー4にまで変化していた大型ハリケーン「リータ」だが、国立ハリケーン・センターは同日午後4時(東部時間)にハリケーンがカテゴリー5にまで拡大したと発表し、週末にテキサス州を通過する確立がさらに高まった事も明らかにしている。ハリケーンの強さを示す5段階のカテゴリーで最大の5に到達した「リータ」は、すでに最大風速が秒速95メートル以上を記録しており、全米第4位の人口を抱えるテキサス州最大の都市ヒューストンでは、避難を開始した住民の車列で周辺の高速道路で渋滞が発生している。ヒューストンのビル・ホワイト市長は21日、市周辺に住む住民、とりわけ移動式住宅で生活する住民に対し、一刻も早く避難を開始するように勧告している。また、市長は車などの移動手段を持たない市民に対し、車を持つ市民に避難の手助けを行ってほしいとも要請している。

ヒューストンから50マイルの距離にあるガルベストン島では非常事態宣言が出され、リーダ・トーマス市長は老人ホームや障害者施設の入居者らに対し、21日朝から強制避難命令を発している。突然の強制避難命令に対し、老人ホームの入居者の中には家族無しで島を離れる事に難色を示す者も少なくなかったようだ。ある老人ホームを運営する男性はAP通信の取材に対し、「海岸からそれほど離れていない場所にホームがあるため、入居者には例外なく出て行ってもらうことにしました」と語っている。ガルベストンの約6万人の住民のうち、1500人がチャーターされたバスで避難を開始しており、市側は体の不自由な人を優先的にバスに乗せていく計画だ。1900年の大型ハリケーンで最大1万2000人が死亡したとされるガルベストンは、今回の「リータ」が通過すると予測されるルートの中に入っており、市当局者らは時間と戦いながら住民の避難作業に追われている。

国立ハリケーン・センターが出した最新の予報では、24日に「リータ」がテキサス州に上陸する可能性が一番高いと考えられているものの、ルイジアナ州南西部やメキシコ北東部に上陸するケースも想定されており、現時点で明確なルートは予測できていない。テキサス州南部のベイ・シティにある原子力発電所の関係者はAP通信の取材に対し、施設の閉鎖準備を開始したと語っている。発電所には2つの原子炉があるが、関係者の話ではカテゴリー5程度のハリケーンやジェット旅客機による直接的な衝突にも耐えれるよう設計されているとの事だ。テキサス州安全保障局は湾岸地帯周辺の住民25万人を州内にある避難施設に受け入れる方針を明らかにしており、避難施設は最大で50万人程度が利用できる見込みだ。ヒューストンでは今も1万人を越える「カトリーナ」被災者が生活しているが、市側は「リータ」による洪水やトルネードを懸念して、被災者をアーカンソー州やテキサス州の別の地域に移動させる計画を立てている。

5ヶ月前、大リーグ機構のバド・セリグ・コミッショナーは禁止薬物使用に対する罰則の強化について選手会に書簡を送ったが、現在も正式な回答は得ていない状態だ。大リーグ選手会のドナルド・フェール代表は当初、現行の罰則は修正されるべきではないと語っていたが、大リーグの通常シーズンが終了する10月2日までに選手側の回答書を機構に送る模様だ。大リーグでの禁止薬物使用問題を巡っては、セリグ・コミッショナーもフェール選手会代表も議会からの激しい圧力に直面しており、さらに下院の委員会もボルチモア・オリオールズのラファエル・パルメイロ選手を偽証罪で調査する構えを見せている事から、大リーグでの薬物規定がさらに厳しいものに変わるのは必至だ。大リーグ機構のロブ・マンフレッド副会長はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「近い時期に選手会側から回答が提出されるだろう」と語ったが、回答の内容がどのようなものになるのかに関しては言及を避けている。

大リーグ機構側は禁止薬物使用に対する罰則の強化案として、ドーピング検査で陽性反応が出た選手に対し、1回目は50試合、2回目は100試合、3回目は無期限の出場停止処分を下す計画を立てている。現在の罰則では、1回目の陽性反応が10日間、2回目が30日間となっており、5回目の陽性反応まで永久失格処分を受けることはない。また、現在の罰則を強化させることに難色を示す選手がいるのも事実だ。「現在のルールに効果がないと指摘するのは間違っていると思う。現実に禁止薬物を使用する選手のパーセンテージは下がっているんだから」、そう語るのはニューヨーク・メッツのトム・グラビン投手だ。グラビン投手は2002年に大リーグ機構と選手会が初めてドーピング検査の実施に合意した時、ナショナル・リーグの代表者を務めていた。グラビン投手は、2003年にドーピング検査で陽性反応を示したメジャーリーガーが前年の7パーセントから5パーセントに減少した数字を持ち出し、2004年には1.7パーセントにまで減り、今季はパルメイロを含めた9人しか陽性反応を出していないと語った。

選手会側がセリグ・コミッショナーの規制強化案に難色を示した場合、議会が規則の変更に介入する可能性も浮上している。すでにスポーツ選手の禁止薬物使用に対する厳しい罰則を定めた2つの法案が提出されており、通過までにしばらくの時間が必要であるものの、共和党のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)が提出した法案では、1回目の陽性反応で2年間の出場停止、2回目の陽性反応で永久失格処分を求める厳しい内容となっている。大リーグ選手会は書簡を送りつけただけでなく、その内容をメディアを通じて公表したセリグ・コミッショナーに不信感を抱いているとされるが、議会が介入すれば選手会側はセリグ案に首を縦に振らざるを得ない状況に直面する。90年代のニューヨーク・ヤンキースで選手会代表を務め、現在はワシントン・ナショナルズでプレーするマイク・スタントン投手はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、議会の介入が現実的なものになりつつあるとしながらも、機構と選手会で交渉できる限りは続けた方が賢明だと語っている。

ロドニー・キング裁判の判決後、ロサンゼルスのサウスセントラル地区では黒人住民による暴動が発生し、しばらくしてラップ・グループのパブリック・エナミーが「ヘイズィー・シェイド・オブ・クリミナル」という曲のビデオクリップで、当時のアメリカが抱える人種問題を厳しく描いている。商業化が進む今のヒップ・ホップでは考えられないことだけど、この頃のアーティストの多くが「反政府思想の持ち主」として政府や警察からマークされていたのも事実で、当時高校生だった僕はサンフランシスコ出身で大阪在住の黒人男性に前出の曲を訳してもらった記憶がある。去年の大統領選挙期間中、多くのヒップ・ホップ・アーティストが政治的な曲を発表し、テレビではなくインターネットを中心にビデオクリップが流れ続けた。ハリケーン「カトリーナ」が発生してから3週間、レジェンダリーK.O.というグループによる「ジョージ・ブッシュは黒人が嫌い」と言う曲のリミックス版ビデオクリップがウェブに登場した。今日はこのビデオクリップと、2004年にパブリック・エナミーが発表した「サノバ・ブッシュ」のビデオを紹介しておきます。時間があれば、リンクをクリックしてみてくださいな。ニュースでは見れないアメリカがそこにはあると思う。


写真:ハリケーン「リータ」の影響でヒューストン市内で生活する「カトリーナ」被災者に対し、避難所からの強制避難命令が下された。 (ニューヨーク・タイムズ紙より)

そして「リータ」もハリケーンへと変わった

2005-09-21 15:41:12 | ハリケーン「リータ」
がつけばもう夜中の2時で、今日は1つだけニュースを書いておきます。明日は普通に僕の戯言も書くつもりなのでヨロシク。「カトリーナ」から「リータ」へ、少し嫌な展開になってきた。

新型のハリケーン「リータ」が南部湾岸地域を通過する可能性が高くなった19日午後、ニューオーリンズ市のレイ・ネーギン市長は市内の住民に対し、「弱体化した防波堤がさらに決壊して再び洪水を引き起こすかもしれない」として自主的な避難を勧告したが、住民の間の反応は様々だ。避難勧告を受けた住民の中には、ニューオーリンズ市内で電力や飲料水の深刻な不足が指摘されているにもかかわらず、町を再び離れる事に消極的な姿勢を示す者も少なくない。「リータがここを直撃するとは思わないので、残ろうと思っています」、NBCニュースの取材に答えた37歳のスコット・ピーターソンさんは、前回の洪水が発生した最初の数日間をカヌーに乗って過ごしている。フレンチ・クォーター地区に不動産を所有する47歳のアン・ルイスさんは、「町を離れるくらいなら、銃で自分の頭を撃ち抜きます」と語り、別の場所への移動を断固として拒否した。

19日朝から始まったニューオーリンズ市民の一部地域への帰還許可は、その日の昼過ぎには中止が発表されており、ネーギン市長は記者会見の中で「状況が変わり、新しいハリケーンがこちらに接近しています」と語り、新たな洪水が発生する可能性を警告した。市内を流れるミシシッピー川の西岸部に位置するアルジェ地区には月曜日に多くの住民が戻ってきていたが、市長は新たに水曜日までに避難を実施するよう住民に求めている。アルジェ地区に住む弁護士のカレン・トーレさんは20日早朝に自宅に戻ってきたばかりだが、掃除などを済ませたあと、その日のうちに町を再び離れるそうだ。「行政側の支持が何度変わっても、私達はそれに従うだけです。ただ、済ませておきたかった家の用事があったもので、トーレさんはそう言った。「カトリーナ」が通過した後もフレンチ・クォーターの自宅に残った55歳のジル・サンダースさんもNBCの取材に対し、「変わり続ける市側の情報についていくのは大変」と語り、今回は町を離れる決心をした事を明かしている。

熱帯性低気圧だった「リータ」は20日午後にカテゴリー2のハリケーンへと変わり、早い段階でカテゴリー3にまでレベルを上げると見られており、現在の予想では今週末にメキシコ湾からテキサス州に上陸する可能性が一番高い。しかし、複数の気象予報士はハリケーンの影響による大雨がルイジアナ州も襲い、結果としてニューオーリンズ周辺の防波堤が再び決壊するかもしれないと警告する。また、24日にテキサス州に上陸すると予想される「リータ」が進路を変えた場合、早くて22日にはハリケーンがルイジアナ州を直撃する事になる。20日朝のニュース番組に出演したネーギン市長は、一部住民に与えた帰還許可を激しく非難する湾岸警備隊のサッド・アレン参謀長を「職務範囲を超えた発言だ」と批判し、現在も住民の強制避難に関しては決断を下していないと語った。

ニューオーリンズ住民の帰還許可、新たなハリケーンの可能性により中止に

2005-09-20 13:35:09 | ハリケーン「カトリーナ」関連
カトリーナ、そして数日前のオフィーリアに引き続いて、リータという名前の熱帯性低気圧がフロリダ半島に近付いている。キーウエストではすでに住民の避難が始まったが、この熱帯性低気圧がハリケーンに変化して、復興作業が始まった南部湾岸地帯の被災地を通過する可能性も出てきた。そんな中、ブッシュ大統領は復興事業費捻出のために各省庁での予算カットを示唆していて、復興費の捻出が財政赤字に与える影響は一時的なものと強調したけれど、これには共和党議員からも「現実的になりましょうよ」とクレームがつく始末。また、ABCニュースのインタビューに答えたクリントン元大統領までが、これまでの沈黙を破って、ブッシュ大統領の政策に苦言を呈している。今日は「リータ」という新しい脅威に直面しつつあるニューオーリンズの話と、全米の高校で広がりを見せるキャンパス・ビジネスの話題を。

ニューオーリンズのネーギン市長は19日午後、同日朝から許可していた住民の帰還を再び中止すると発表し、その理由としてフロリダ州に接近している熱帯性低気圧「リータ」がカテゴリー3程度のハリケーンに変化し(カトリーナはカテゴリー4だった)、今週末にもルイジアナ州を通過する可能性があるためと語った。「リータ」の進路に関しては複数の予測が立てられており、ルイジアナではなくテキサス州ガルベストン周辺を通過するのではとの見方も存在する。1900年にガルベストンを通過したハリケーンでは、周辺住民の6000~1万2000人が死亡したとされている。国立ハリケーン・センターは今週末の「リータ」の進路に関し、テキサスからルイジアナまでの広範囲が通過ルートになる可能性があるとして、現時点で細かい絞込み作業は困難であることを示唆している。

被災地で復興作業に従事する陸軍工兵隊の関係者はCNNのインタビューに対し、ニューオーリンズ周辺に作られた全長350マイルの防波堤が「ちょっとした水位の上昇」にしか対応できないと語っている。ネーギン市長は市内に設置されたポンプでは次のハリケーンから町を守るのは困難とも判断し、19日午後になって帰還許可の中止を決定している。ネーギン市長は市内を流れるミシシッピー川東岸部の住民に対し強制避難を命じ、洪水被害がほとんど無かった西岸部の住民にも避難を勧告している。「カトリーナによる凄まじい被害を目撃した市民の皆さんが、カトリーナ後にやってくるかもしれないカテゴリー3のハリケーンの危険度を理解してくれていると願ってます」、19日午後に行われた記者会見で市長はそう語った。すでに新たな避難のために150台のバスが用意されており、ルイジアナ州政府はハリケーンの上陸する72時間前にニューオーリンズから住民を全て避難させたい考えだ。

ネーギン市長の強い意向もあって、19日朝から始まったニューオーリンズ市民の一部地域への帰還だが、ブッシュ大統領や連邦・州政府高官は早すぎる帰還許可に消極的な姿勢を示していた。「ニューオーリンズに市民を戻したいという市長の考えは尊重しますが、現実的として考えなければならない問題がいくつもあります」、ブッシュ大統領はそう語っている。辞任したFEMAのマイケル・ブラウン長官に代わって被災地で復興作業の指揮を執る湾岸警備隊のサッド・アレン参謀長にいたっては、ネーギン市長による住民帰還計画を「問題だらけ」と批判し、飲料水や医療サービスの復旧が完了していない状態での帰還許可に大きな懸念を示している。アレン発言を受けたネーギン市長は、記者会見で激しく反論し、「アレン参謀長の仕事ぶりには尊敬の念を抱きますが、ニューオーリンズ市民の話をするのは御門違いでしょう。ニューオーリンズに市長は1人しかおらず、それは私なんですから」とコメントしている。

オハイオ州シンシナティ郊外にあるメーソン高校に通う16歳のアレックス・ザモジスキ君は、ランチを買うお金を家に置いてきてしまったが、何の問題もなく昼食を購入している。校内に設けられた銀行に預金口座を作っていたため、ザモジスキ君は必要額だけを引き出し、そのままランチを買いに行ったのだ。「小額のランチ代なんかが必要な時に、こういったサービスは本当に便利だと思うよ。それに自分のお金を直接扱うのだから、以前よりも自立心が出てきた気もするし」、ザモジスキ君はAP通信の取材に対してそう語っている。全米の高校では生徒が直接運営に関わるビジネスを奨励している所が少なくなく、以前はカフェテリアの一角で鉛筆やルーズリーフ用紙を販売するだけだった学生参加型ビジネスだが、現在は大きく様変わりしている。メーソン高校のように校内で銀行を運営する学校もあれば、旅行代理店やデザイナー・ジーンズを扱う衣料品店まで誕生している。

こういった学生参加型ビジネスが全米の高校内で増え始めた理由だが、学校側はビジネスの実務的な部分を生徒にキャンパス内で経験してもらう事で、教科書だけでは学べない様々な事柄に触れてほしいと考えているようだ。また、各授業の合間やランチタイムに参加できることもあり、生徒が自主的に参加しやすい環境なのも魅力となっている。コンピューターが大きな役割を果たしているのも事実で、キャンパス・ビジネスに参加した生徒はレジやバーコードを使って商品の在庫状況や発注の仕方を学び、航空券の手配も学校のコンピューターで覚える事ができる。この教育スタイルは生徒や親、そして学校関係者からの支持も強く、より多くの学校で同様のキャンパス・ビジネスが導入されるかもしれない。「(キャンパス銀行は)経済やマーケティングを学ぶ学生にとって実務経験をするには最高の場所ですし、直接業務に関わっていない生徒にとっても、お金の管理を学べる場所になるでしょうね」、メーソン高校の経済学教師で学生銀行顧問でもあるシンディ・ドネリーさんはそう語った。

このようなキャンパス・ビジネスの多くはDECA社との共同事業として行われており、同社常務取締役のエドワード・デービス氏がAP通信に語ったところでは、少なくとも約3000校が生徒が運営するキャンパス・ビジネスをDECA社の協力で展開している模様だ。利益追求ではなく、生徒に実務経験をつませる事がキャンパス・ビジネスの大きな目的となっているが、売上金は基本的に各学校でプールされ、場所によっては学校行事や奨学金に用いるケースもある。事業開始に必要な資金は数千から数万ドルと幅が広く、事業内容によって大きく異なるが、学校組織に加えて民間企業などからの寄付金が使われる場合もあるそうだ。メーソン高校での銀行設立には、近くの町にある銀行から2000ドルと机、受付窓などが提供されている。

何日か前にボストン・レッドソックスをテーマにした「フィーバー・ピッチ」という映画をDVDで見たんだけど、久し振りに「見なけりゃヨカッタ」と3ドル50セントのレンタル代を払った自分を恨む事に。僕のような犠牲者をこれ以上出さないために言っておくと、オリジナル版(1997年に作られたイギリス映画)で見る事のできた「地元チームへの愛情」が全く感じられず、何度も巻き戻しして見たくなる良質のクライマックスをリメイク版で期待しただけ馬鹿を見た格好だ。レッドソックスとオリジナル版の「フィーバ・ピッチ」の両方が好きな映画ファンが僕の他にもいるとしたら(いるんだろう、きっと)、その数だけ溜息と失望感が存在するんだと思う。映画の中で唯一共感を持てたのが、レッドソックス関連グッズで埋め尽くされた主人公の寝室。主人公が神棚のような位置に飾られたトニー・Cの写真にキスをして十字を切るんだけど、似たような光景を現実の世界で何度も見た事があるし、僕もボストン時代はベッドの側にテッド・ウイリアムズのポスターをはって崇拝してから。

明日の朝、取材でワシントン市内のシンクタンク「AEI」を訪ねる予定。アポイントも無事に取れ、さっきまで何を質問しようかなぁと色々考えていたんだけど、意外にも今回が初めてとなるAEIでの取材に少しワクワクしているんです。AEIといえば、いわゆる「ネオコン」と呼ばれる人達の牙城でもあり、リン・チェイニー(あの利権好きなオヤジの奥様)やニュート・ギングリッジ、リチャード・パールなんかが在籍してる場所として知られている。取材云々よりも、ネオコンと呼ばれる学者さんが集まる場所がどんな雰囲気なのか、本当はそっちに興味があったりして、時間があれば廊下で人間観察でもしたいんだけど…。戦場に行った事も無いくせに戦争を煽り続ける「チキンホーク」と呼ばれる種族がどんなものなのか、この目で見たいんだけどなぁ(ちなみに、明日の取材を引き受けてくれた方は戦争やイラク問題とは無縁のテーマを扱っている人です、念のため)。ローリング・ストーンズの新曲「スイート・ネオコン」のサビの部分を口笛で吹きながら建物に入りたいような、小学生並みの悪戯心に興奮しながら、今日は寝ることに。


写真:帰還許可の下りた19日、ニューオーリンズ市内にある民家を撮影したもの。ベニヤ板は「能無しブッシュ。FEMAはどこにいる」とのメッセージが。(ニューオーリンズ・タイムズ・ピカユーン紙より)

偶然に感謝し、月末までバルセロナ・ファンになりきります

2005-09-19 11:04:53 | ハリケーン「カトリーナ」関連
夕方、近所のスーパーマーケットからの帰り道、住宅街の一角に警察官の集団を発見。ある家の周りが警察の黄色いテープで囲まれ、その側には5台のパトカーと10人近い警察官が。デジカメを携帯していなかった事を後悔しながらも、ちょっと面白そうな雰囲気だったので、パトカーの中にいた女性警官に「何があったの?」と聞いてみた。「今から捜索を始めるのよ」、そう言うと彼女は再びスターバックスのアイスコーヒーをストローでジュルジュルさせた。家宅捜索前の静けさ…、と言うより全く緊張感の無い現場。通りを挟んだ向かいの家のポーチでは、生まれて初めて家宅捜索を見るのだろうか、近所のおばあちゃん達が紅茶とお菓子を持ち寄って「決定的瞬間」を心待ちにしている。「紅茶でも飲んでいく?」、心優しい誘いに「イエス」と言いたかったけれど、スーパーで買ったアイスクリームが溶けるのが怖くて、結局そのまま自宅に戻る事にした。田舎警官とおばあちゃん達のコラボレーションによる、心地よい「まったり感」がそこにはあったけど、大丈夫なのかな?

ハリケーン「カトリーナ」による深刻な被害を受けたニューオーリンズだけど、今日から郊外の幾つかの地域で本格的な住民の帰還が始まっている。数千人が町に戻る予定だそうで、すでに一部のガソリンスタンドやドラッグストアは営業を再開している。でも、電力供給がストップしたままだったり、下水処理が行えない場所も帰還許可地域には少なくないそうで、郊外の町でも復興にはまだまだ時間がかかりそうだ。一方、ハリケーンが上陸した8月29日以降に失業したミシシッピー州民が、少なくとも3万5000人存在することが18日に明らかになった。これは州当局に失業の申請を行った人の数で、全米各地に移動した被災者の情報は含まれていない。ハリケーン前、ミシシッピー州の失業率は5.5パーセントだったけれど、州側は失業者が30万人に達する可能性も捨てていない。失業者には毎週210ドルが最大6ヶ月間支払われるそうだ。

また、ニューオーリンズ市内でも月曜日から被害の少なかった地域の住民を対象に帰還が認められる見通しとなっている。ニューオーリンズのネーギン市長は近いうちに最大18万人程度の帰還が可能になると語っているが、連邦緊急事態管理局(FEMA)やルイジアナ州政府の関係者らは安全面での懸念から、市長による帰還許可を奨励する事はできないようだ。電力や水道のシステム復旧にも時間が必要で、市内の信号の多くは機能しておらず、使える病院が4つしか残っていないなどの問題が存在している。衛生上の問題も心配されているが、複数のメディアの報道によると、現場の医師が最も恐れているのはインフラが整備されていない場所に大量の住民が押し寄せ、医療設備の乏しい中で事故や怪我が発生する事なのだという。2004年にフロリダで発生したハリケーン「チャーリー」による死者のうち、約8割が怪我によって亡くなっている…。今日はハリケーン復興作業で大きな問題となりつつある「ゴミ」の話と、(個人的に興味のあった)オンライン・グロセリーの話を紹介します。

ミシシッピー州ディバービル郊外にある建設現場では、十数台のトラックが列を作って並んでおり、それぞれの荷台にはハリケーンの影響で折れた木や枝などが積まれている。ディバービルの建設現場にはハリケーンで散らばった木材などが集められ、昼夜を問わず焼却作業が続けられており、今後数ヶ月間はストップする事が無いのだという。近くにある別の町では、無人の美容室の中で陸軍工兵部隊の兵士らが地図を広げ、ゴミ捨て場として使える場所が町の周辺にないかをチェックしている。ハリケーン「カトリーナ」の復興事業はアメリカ史上最大の廃棄物処理事業をも意味し、複数の関係者がAP通信に語ったところでは、911同時多発テロ事件での瓦礫処理が子供騙しに見えるほどの規模という事。この数日、政府関係者や民間企業のエンジニアは、被災地で大量に発生した瓦礫やゴミの処理に頭を抱えており、大量の廃棄物をどこに運ぶのかという新たな問題に直面している。

ミシシッピー州南東部にある2つの群の清掃作業で責任者を務める陸軍工兵部隊のゾガス・コスタス技術兵によると、被災地周辺を撮影した航空写真の分析結果から、ミシシッピー州だけで約5000万立方ヤード分の瓦礫などが存在する模様で、これはジョージア州アトランタにある室内競技場「ジョージア・ドーム」13個分の容積に相当する。洪水による激しい被害を受けたニューオーリンズ市内の一部の住宅地が整地計画の対象となっている事から、ルイジアナ州でも同規模の瓦礫やゴミが発生すると考えられている。「テロ事件のあった世界貿易センタービル周辺の瓦礫撤去作業は4ヶ月で終了しましたが、今回は確実にそれ以上の時間を要するでしょう」、コスタス技術兵はAP通信の取材にそう語った。ミシシッピー州の被災地ではブルドーザーを使って瓦礫などの集積作業が行われているが、瓦礫類の仕分け作業(各家庭で使われていたマットレスや鉄製品などは別の場所に分けて集められる予定)も同時に行われ、木材のほとんどは焼却される予定だ。

冷蔵庫やエアコンは1台ずつ分解され、有害物質となる冷却材などが取り外される。廃棄物の処理作業に関わる関係者達は、木材の一部をリサイクルして道路工事などで使えないかと考えているが、プラスチックや鉄製品の多くは埋め立てに回される模様だ。ミシシッピー州環境局のマーク・ウイリアムズ氏によると、全ての廃棄物を処理するためには新たに数十ヶ所のゴミ捨て場を作らなければならず、少なくとも数百エーカーの土地が必要になるとの事だ。閉鎖されていたゴミ捨て場の再開や、埋立地の拡大などが対策案として出ているが、州側は住民からの土地提供も計画しているのだという。場所を見つける困難さに加え、瓦礫の仕分け作業が復興スピードの足かせになっているとの指摘もある。すでにオクラホマ州の上院議員は今回の復興作業で米環境保護局(EPA)が定めるルールの緩和を求める法案を準備しているが、EPA側は規制を変更する必要はないとの見解を示している。

ワシントン周辺で売り上げ2位のシェアを誇るスーパーマーケット・チェーン「セーフウェイ」は2週間前にインターネット上で買物・宅配ができるサービスを立ち上げ、19日に開かれる記者会見でサービスの開始を正式に発表するが、消費者の間でなかなか根付かない「オンライン・グロセリー」をどのように成功させるのかは全くの未知数だ。カリフォルニア州プレザントンに本社のあるセーフウェイは西海岸の6都市とフィラデルフィアで同様のサービスを展開しており、ワシントンはオンラインで食料品の買える7つ目の町となる。ワシントン周辺では大手スパーマーケット「ジャイアント」が系列会社のピーポッドと提携してオンライン販売を展開しており、過去5年間にわたって他社が参入をためらうほどの1人勝ちを見せてきた。「ワシントン市場には約2年前から注目していました。本当はもっと早くワシントンでのオンライン事業を開始したかったんですが、ライバルとの差別化を図るため、色々と考えなければならなかったのです」、セーフウェイ・ドット・コムのミッチェル・ローズ社長はワシントン・ポスト紙の取材にそう語った。

オンライン・グロセリーはアメリカ国内で1990年代後半にブームとなったが、莫大な投資を回収できない企業が相次ぎ、いつの間にかブームは下火となっていた。しかし、セーフウェイはオンライン事業を都市部のみで展開しており、人口密集地に住み、時間に終われる毎日を過ごしながらもインターネットに触れる機会が多い消費者をターゲットに定めている。紆余曲折のあったスーパーマーケットのオンライン事業だが、戦略次第では十分な利益を生み出すようだ。ピーポッドの過去2年間の売り上げは25パーセントずつ上昇しており、来年には黒字転換が見込まれている。セーフウェイのオンライン・グロセリーも2年間で収益が倍増しており、スーパーマーケットの1回の買物で平均28ドルが使われるのと比べて、オンライン上では1回平均で130ドルが使われているというデータも存在する。セーフウェイとジャイアントの両社は、最低50ドルの買物からオンライン・グロセリーを行えるシステムを採用しており、これとは別に10ドル前後の宅配費が課金される。

ワシントン周辺で激しさを増すスーパーマーケット戦争だが、全売り上げの46パーセントをジャイアント(27パーセント)とセーフウェイ(18.8パーセント)の2社で占めている。しかし、新たに参入を開始したホール・フーズ・マーケットやウェグマンズは高級食材で裕福な消費者を魅了し始めており、ウォルマートやコストコは低価格を売りにして市場の拡大を狙っている。セーフウェイのオンライン・グロセリーでは、食材から医薬品まで、スーパーで購入できる品物のほとんどを買うことができ、購入者の自宅玄関口に商品と請求書が置かれる仕組みとなっている。ビジネス・モデルは様々だが、3年前にニューヨークで誕生したフレッシュ・ダイレクト(高級食材専門のオンライン・サービス)は実在の店舗が一軒も存在しない。逆にピーポッド社はメリーランド州ガイザーズバーグにオンライン・グロセリー専用の巨大倉庫を所有しており、消費者が指定した時間通りの配達を可能にしている。

小泉のオッサンが頑張っている郵政民営化とクリントン時代から作られ始めた「年次改革要望書」に関する雑誌用取材に頭を抱えながら、それでもバルセロナとアトレチコ・マドリーの試合は見逃せず、今日も午後から自宅近くのスポーツバーでサッカー観戦。隣の席に座っていたバルセロナ・ファン同士が(ここ、どこやと思っとるねん?)経済やら関税の話をし始めたので、ハーフ・タイムに声をかけてみると、悪名高き通商代表部(USTR)に勤務している事がわかり(これ、ホントに実話なんです)、「くたばれ、バルセロナ」と心の中で思いつつも営業スマイルで名刺交換。USTR関係者からコメントが取れず、どうしようかと路頭に迷いかけていた時に、願っても無い偶然に遭遇。面白そうなコメントを取るため、頭の中はすでにアイデアで埋まってきた。原稿の締切日まではバルセロナ・ファンという事にしておいて下さい(諸事情から、スペインで一番好きなクラブはレアル・サラゴサなんですが)。

写真:ミシシッピー州ビロクシのゴミ収集場に集められたハリケーン被災地の瓦礫やゴミ。 (AP通信)