IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

明日から

2006-07-31 14:51:27 | Weblog
明日から週末までルイジアナ州に行ってきます。ようやく準備も終わり、今から寝るところなんだけど、昨日の夜中に見た映画がやたらと怖かったので、その映画を少しだけ紹介しときます。昨日見たのは「The Hills Have Eyes」っていうホラー映画で、カリフォルニアに向かう途中の砂漠で家族が次々に襲われるというストーリー。もともとは77年に公開された映画のリメイクなんだけど、核実験によって突然変異を起こした住民に襲われるストーリーは本当に怖かったです。映画の舞台はおそらく(核実験があったということで)ネバダかニューメキシコに設定されていたはず。あとで知ったのは、映画のロケ全てがモロッコで行われていたということ。ルーマニアで撮影された「コールド・マウンテン」に続いて、またも見事にだまされました!

じゃあ、そろそろ寝ます。ルイジアナからもブログの更新を頑張ってみようと思ってるので、たまにチェックしてみてください。

アメリカ版五人組?

2006-07-30 09:38:59 | 政治
ワシントン近郊のメリーランド州フレデリックで、犯罪発生率を減らす苦肉の策として、地元警察が「Know Five」という運動を開始することになったらしい。さっき見たローカルニュースによると、警察官が町の商店や民家を一軒ずつ訪問して、地元住民らに「少なくとも5人の隣人と仲良くなって、お互いを知るようにしてください」と要請するんだとか。地元住民が隣人をよく知ることで、「周囲の目」を気にするようになり、犯罪を犯そうとは思わなくなるだろうというのが地元警察の言い分だ。地元テレビのインタビューに答えた中年男性は、「子供の頃は少しでも悪さをすれば、近所の人から両親に連絡があって、こっぴどく怒られたもんだよ」と語っていた。これで犯罪が極端に減ることは無いと思うけど、あらためて近所付きあいの無さが分かったニュースだった。さて、今日は国土安全保障省から民間業者へ委託された事業で無駄遣いが繰り返されているというニュースを。

27日付のワシントンポスト紙は同じ日に発表予定の議会報告書の内容について報じ、国土安全保障省から民間企業に発注された事業の中で、莫大な額の無駄遣いが当たり前のように行われていた実態を明らかにした。911同時多発テロ事件後の2003年に創設された国土安全保障省は、以前から政府と関係の深い業者が入札無しで契約を受注するケースが頻繁に発生したため、以前から公平さを欠くと批判されてきた。同省が民間業者に対して発注した契約総額は現在までに340億ドルに達しており、27日に発表された議会報告書は、「その中で深刻な無駄遣いが発生していた」と結論づけている。報告書によると、2003年から2005年までの間、入札無しでの受注は700パーセント以上の増加を見せており、その額は55億ドルにも及ぶ。国土安全保障省による民間業者への委託事業はさまざまな分野に及んでおり、空港での荷物・身体検査だけではなく、国境警備やハリケーン被災者たちへの住宅供給なども含まれている。

報告書では水増し請求の疑いがある契約の存在だけではなく、関連業者の高級ホテルでの滞在が政府から支払われていたり、国土安全保障省の職員が政府のクレジットカードを使用して私的な買い物を行っていた事実までもが明らかにされている。これまで国土安全保障省による支出は「対テロ戦争」の名目で大目に見られてきたが、27日発表の報告書では政府が初めて同省の経理面での問題を追及し、これまで公にされなかった問題点を指摘している。元監査官のクラーク・アービン氏はワシントンポスト紙の取材に対し、「無駄遣いされてきたお金でアメリカ国内をより安全にすることができたのです」と語り、国内の安全保障における書類上の数字と現実とのギャップが無駄遣いに起因していると主張した。国土安全保障省の広報官は今回の報告書に関して、「(途中から国土安全保障省に組み込まれた)運輸保安局の編入前のデータも批判の対象となっている」と反論したが、民間業者による無駄遣いが発生していた事実を間接的に認めてもいる。

911同時多発テロ事件後に創設された国土安全保障省は22の政府機関を統合したものでもあり、これだけ大きな省庁の再編が行われたのは実に50年ぶりの事だった。短期間で創設された国土安全保障省は約18万人の職員を抱える巨大な組織だが、対テロ戦争や国内の安全レベルを引き上げるという設立当初の目的は専門スタッフの数が限られていたため、その多くを民間企業に丸投げしている状態だった。莫大な予算と18万人以上のスタッフが存在するにもかかわらず、昨年9月にハリケーン「カトリーナ」が南部湾岸地域を直撃した際には効果的な活動を行う事ができず、市民やメディアから激しく非難されていた。議会報告書は、空港で使われる金属探知機などを製造するNCSピアーソン社からの請求に少なくとも2億9700万ドルの「問題視されるべき請求」が存在していたと指摘し、高級ホテルの代金までもが請求されていたと明かしている。また、カナダやメキシコ周辺の国境地帯に設置されている監視カメラが、雪や湿気が原因で、全く機能していなかった事実も明らかにされている。

ニューオーリンズへの取材まであと2日。ようやく取材先との連絡も終え、今は現地の新聞報道などをもう一度読み直している。昨日はニューオーリンズの北にあるスライデルという町の商工会議所や市庁舎、警察署に電話をかけて、関係者と話をした。現地では市長や警察署長からも話が聞けるようで、市庁舎でメディア対応を担当する女性が「ニューオーリンズ以外の忘れられた町にも目を向けてほしい」と語ったのが印象的だった。スライデルは人口4万人足らずの小さな町で、ハリケーンが来る前はリー・ハーベイ・オズワルドの誕生地くらいにしか知られていなかったんだけど、ニューオーリンズ以上の洪水被害に遭ったため、昨年9月には多くのジャーナリストが町を訪れている。スライデルには1日だけしか滞在できないんだけど、ニューオーリンズ以上に復興がすすまない小都市の実態を見る事ができればと思っている。商工会議所のキャサリンさんはマサチューセッツ州にある有名な女子大学を卒業していて、電話での打ち合わせの後で突然、「今年のレッドソックスはどうなんですか?」と聞かれた。僕は「もちろん、優勝しかないでしょう」と答えたんだけど、スライデルにも赤靴下ファンが住んでいるという事実にビックリ。おみやげにベースボールカードでも持っていくか。


写真:ルイジアナ州スライデルで29日、被災者向け住宅の建設に汗を流すボランティア団体のメンバー (AP通信より)

トンカツ、ビフカツ、ウサギカツ、そして…

2006-07-26 14:09:49 | 政治
今日のランチは知人とワシントン市内のイタリア料理店に行ってみたんだけど、「ウサギのカツ」なんてメニューがあるんですね。有名なイタリア料理に「コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ」というのがあるけど、このミラノ風カツレツは子牛の肉を使ったものだから(僕の記憶が正しければ)、ウサギの肉を使ったカツレツはどこの地方料理になるのだろうか?僕はウサギの肉をこれまでに数回しか食べたことが無いんだけど、ドイツ料理店でほぼ丸焼きのような形でウサギを出された時には、どうにも食欲がわかなかったのを覚えている。でも、今日の「ウサギのカツレツ」を見る限り、意外と美味しそうでもあったので、近いうちにトライしてみようかなと思っている。カツで思い出したんだけど、ワニの肉ってカツで食べると意外といけるんじゃないかな。フロリダやオーストラリアで「ワニカツ」を出してくれる店って探せばありそうなんだけど、意外と美味しそうな感じが…。さてさて、今日はレバノンに関する新しいニュースをワシントンポスト紙の記事から。

25日のワシントンポスト紙(電子版)は国連関係者の話として、レバノン南部で同日、イスラエル空軍機から投下された爆弾が国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の施設を直撃し、停戦監視要員4名が死亡したと報じた。一方、CNNは停戦監視要員2名が死亡し、残りの2名が行方不明だと報じている。イスラエル機が投下した爆弾の直撃を受けた施設はレバノン南部のヒアムにあり、イスラエルとの国境からそれほど離れていない。国連のアナン事務総長はレバノン情勢に関する会議が開かれたイタリアのローマで声明を発表し、今回の爆弾投下を「綿密に計画されたもの」と非難し、イスラエルに対して自国の軍隊を調査するように要求している。「イスラエル政府に対して、今回の事件を最後まで調査するよう求めます。国連の施設や関係者が標的になる事は絶対に許されません」、アナン事務総長はそう語った。

国連筋がワシントンポスト紙に語ったところによると、事件現場では現在も救出作業が行われており、死亡した停戦監視要員の名前や国籍などは、遺族への連絡が完了するまで明かされないとの事だ。UNIFILのミロス・ストルーガー広報官は25日、レバノン国内で記者団に対し「爆撃を受けた施設で救出作業が行われている間、イスラエル軍は施設周辺に対して何度も砲撃を繰り返した」と語り、イスラエル側の対応を非難した。イスラエルによるレバノンへの攻撃が開始されて以来、すでにUNIFILの民間人職員とその妻が死亡し、停戦監視要員6名も負傷している。イスラエル政府は、現在までに公式の声明を発表してはいない。米国務省高官がワシントンポスト紙に語ったところでは、イスラエル政府は事件発生から間もなくしてブッシュ政権に連絡を入れ、UNIFIL施設への爆弾投下が「完全な事故だった」と説明したのだという。

ワシントンではブッシュ大統領がイラクのヌーリ・マリキ首相との会談後に記者会見を行い、「アメリカはレバノンで罪の無い子供や女性の命が奪われている状況を懸念している」と語った。マリキ首相は即時停戦の必要性を繰り返しうったえ、レバノンの復興には国際社会の支援が必要だとも語った。しかし、アラブ諸国ではイスラエルのやり方に激しい非難が噴出しており、サウジアラビアのアブドラ国王は25日、イスラエルがレバノンとパレスチナを攻撃し続ければ、新たな中東戦争が勃発するだろうと警告を発している。「サウジアラビアは世界に向けて警告します。イスラエルの傲慢さが原因で平和的解決が失敗に終わった場合、残されたオプションは戦争だけになるでしょう」、アブドラ国王はそう語った。また、ライス国務長官が訪れたパレスチナのラマラでは地元住民が長官訪問に反対してゼネストを決行し、市内の中心部はゴーストタウンと化した。市内の数ヶ所ではデモも行われ、市民の中には「ライスよ、早くここから立ち去れ」と書かれたプラカードを掲げる者もいた。

名脇役として長い間知られてきた日系アメリカ人俳優のマコさんが21日に食道ガンで他界した。映画の最後に流れるキャスティング・ロールでMAKOとだけ紹介されることの多かったマコさんの本名は岩松信といい、実は神戸で生まれている。両親はマコさんを日本に残したまま1939年に渡米し、マコさんがアメリカで両親と再会したのは第2次世界大戦終了後のことだ。1956年にアメリカの市民権を取得したマコさんは、1959年からハリウッド映画に出演し始め、2001年に公開された「パール・ハーバー」では山本五十六連合艦隊司令長官を演じている。マコさんのキャリアそのものがハリウッド映画における日本人(アジア人)のステレオタイプの歴史でもあったのだろうけど、本人はアジア系俳優の地位向上を目指した活動をずっと続けてきており、死後すぐにその功績がアメリカ国内のメディアによって賞賛されていた。アジア系俳優の地位ってまだまだ改善されるべきだと個人的には思うんだけど、マコさんのような先駆者がいたからこそ、少しずつ改善されているのも事実だと思う。どうぞ安らかにご永眠ください。


写真:1997年にマコさんを撮影した1枚 (ロイター通信より)

マイアミ…

2006-07-25 15:12:39 | スポーツ
いよいよ今週末にマイケル・マン監督の最新作「マイアミ・バイス」が公開される。おそらくニューオーリンズから帰ってきてから見ることになると思うんだけど、トレイラーを見る限りでは、なかなかの出来じゃないかな(リンキン・パークとJAY-Zが少し前に発表した曲がテーマソングに使われているようで、こちらもなかなかグッドです)。僕の中でマイアミってどうも「犯罪映画の町」というイメージがあって、ある種のカッコよさをも感じる場所なのだ。「ゴッドファーザー2」、「スカーフェース」、「バッドボーイズ」、「ザ・スペシャリスト」…、最近なら「トランスポーター2」も。もちろん、マイアミを舞台にしたコメディやドラマもあるけれど、どうにもアクション映画とシンセサイザー音楽のイメージしか持てない。きっと、映画の中のワシントンが常に「陰謀の渦巻く町」として描かれているのと同じようなステレオタイプなんだろうなぁ。さて、今日は野球殿堂入りが極めて難しくなったマーク・マグワイア紙に関するニュースを23日のニューヨーク・タイムズ紙から。

サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズ外野手は通産本塁打数で歴代2位にランクインしているが、これからの野球史で彼がどのように語られていくのか想像するのは容易ではない。700本以上のホームランを記録した選手として語られる一方で、打球の飛距離を伸ばすために禁止薬物に手を染めていた可能性が高い選手として記憶されるだろう。ボンズ選手同様に厳しい立場にいるのが元セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア氏で、90年代にホームラン・バッターとして活躍した彼もドーピング疑惑の渦中にいる。現在も現役を続けるボンズ選手はステロイドの不法売買を行った容疑で連邦検察局の捜査対象となっているが、すでに現役生活にピリオドをうったマグワイア氏はボンズ選手の影に隠れるような形で、これまで比較的静かな生活を送ってきた。しかし、ボンズ選手の容疑にたいして司法当局が何らかの決定を行う前に、マグワイア氏のドーピング疑惑の是非が世間によって決定される事となる。12月1日に発表される「野球殿堂入り選手」の候補者の1人でもあるマグワイア氏に対して、575人の投票者がどのような判断を下すのかが注目されている。

今年の殿堂入り候補者は40人近くおり、マグワイア氏のほかにもカル・リプケンJr.やトニー・グインといった名選手が候補者リストに名を連ねている。これまでのところ、リプケンとグインの両氏が殿堂入りするのは間違いない模様だが、メジャー通算で583本の本塁打を記録したマグワイア氏が殿堂入りできるかは微妙だ。野球殿堂入りの投票権を持つ50人の記者を対象に最近行われた調査によると(投票権を得るには、全米野球ライター協会に少なくとも10年は在籍しなければならない)、マグワイア氏の殿堂入りに賛成票を投じると答えた記者はわずかに8人しかおらず、賛成票を入れないと答えた記者は26人におよんだ。12月1日は50人ではなく、575人の関係者が投票を行うが、殿堂入りの資格を得るためには、全体の75パーセントから賛成票を得る必要がある。この調査でマグワイアに賛成票を投じないと答えた記者のほとんどは、かねてから噂されてきたステロイド使用疑惑を一番の理由に挙げている。

マグワイア氏は2005年にワシントンの連邦議会公聴会でステロイド問題について証言を行ったが、自身の関与については無言を貫いたため、国内のメディアからは失望の声が噴出していた。「私は過去について話すために公聴会に来たのではありません」、公聴会の席でマグワイア氏は何度もそう語った。「率直に言いましょう。公聴会で身の潔白を完全に証明できない人物に対して、なぜ私が一票を投じなければならないのですか?」、ダラス・モーニング・ニュース紙のジェリー・フラーリー記者はニューヨーク・タイムズ紙の取材にそう答えた。メジャーリーグ史上最多の安打数記録を持つピート・ローズ氏は間違いなく殿堂入りすると期待されていたが、監督時代に発覚した野球賭博への関与が原因で、一度も殿堂入り候補者に選出されていない。マグワイア氏が候補者リストに名を連ねていることにすら異議を唱える関係者もいるが、彼の現役時代にはステロイド使用が禁止されていなかったという事実もあり、同情を示す者も少なくない。

昨日は午後7時からワシントン市内のモール(ショッピングセンターじゃないですよ、念のため)で友人とサッカーの練習。5月頃までは日曜午後2時ごろに公園に集まっていたんだけど、さすがに炎天下でボールを蹴る勇気は誰にも無く、僕も仕事を1つ終えてからイタリア人の友人の運転する車でモールへ向かった。ミニゲームを何本かやって、8時過ぎに練習は終了。みんな疲れ果ててグランドに倒れ込み、その状態でダラダラと世間話を始めた。そのときに出た話題が映画「ネバー・エンディング・ストーリー」で、誰が言い出したのか覚えていないけど、とにかくその話題になった。一緒にサッカーをやっている友人はほとんどが僕と同世代で、国籍がバラバラなのに、なぜかみんな「ネバー・エンディング・ストーリー」を子供の頃に見ていたのだ。ギリシャ人の友人がアクセントの強い英語でテーマ曲を口ずさみ、さすがにビックリして聞いてみると、少し前にガールフレンドともう一度テレビで見たんだとか。帰宅してからも映画の話が気になって、インターネット上の映画データベースなどで映画の情報をチェックしてみた。映画の公開から22年目にして分かった事が少し。テーマ曲を歌っていた謎のパンク青年(失礼!)はイギリス人だったらしい。リマールという名前だったので、僕は20年以上にわたってアラブの人かなと信じ込んでいた。そして主役のセバスティアンを演じた子役は、今はタトゥーだらけのバイク野郎らしい。子供時代の思い出が少し壊れた気がした。


写真:24日にMTVの番組出演した「マイアミ・バイス」のコリン・ファーレルとジェイミー・フォックスの2人 (AP通信より)

10時以降は外に出ちゃダメ

2006-07-22 17:18:57 | 犯罪
本当に暑い日が続いているんだけど、中西部では熱波が原因で、少なくとも29人が亡くなったらしい。さらに、ミズーリー州セントルイスでは嵐のために電気の供給がストップしてしまい、AP通信の記事によると48万人が電気を使えない状態となっていたようだ。セントルイスには僕の家族と20年以上前から付き合いのある老夫婦が住んでいて、僕にとっては「アメリカの祖父母」みたいな人たちなんだけど、さすがに心配になって、朝から何度か電話をかけた。予想通り、電話はつながらず、午後7時過ぎになってようやく話をすることができた。ボストンでの学生時代、真冬の週末に(おそらく雪が原因だったと思う)数時間ほど市内全域で停電が発生したことがあった。僕は何人かの友人とクラブにいたんだけど、周囲が学生ばかりだったのと、数時間だけの停電ということもあってか、みんなで外に出て大騒ぎした覚えがある。でも、こんな真夏に何日も停電が続くと本当にキツイと思う(ニューヨークの一部では原因不明の停電が5日目に突入している)…。さて、今日は犯罪の増加するワシントンで、未成年者を対象とした新たな夜間外出禁止令が可決されたというニュースを。

ワシントン市議会は20日、18歳以下の若者を対象にした午後10時以降の外出禁止令を盛り込んだ法案を可決した。ワシントン市内では例年よりも犯罪が急増し、とりわけ未成年者の関与が問題視されているため、市側は90日間の夜間外出禁止令で犯罪防止に努める構えだ。今回可決された法案によって、警察がワシントン市内に住む未成年者の個人情報に自由にアクセスすることが可能となり、市内の犯罪多発地域には初めて監視カメラが設置される。外出禁止令は他州からやってきた若者にも適用されるが、親と同伴だったり、仕事から帰宅途中といった場合には、特例も認められるとの事だ。ワシントンでは1999年から未成年者の午前零時以降の外出禁止令を発動してきたが、20日に可決された外出禁止令はこれまでよりも2時間早い設定となっており、未成年者の犯罪を事前に防ぎたい市側の思惑がうかがえる。

ワシントン市内では今月だけでもすでに15人が殺害されており、アンソニー・ウイリアムズ市長も20日に可決された法案が犯罪防止に必ず役立つと自信を見せている。警察資料によると、市内での路上強盗の発生は昨年よりも13パーセント増えており(1~6月までの期間で調査)、強盗罪で逮捕された未成年者はじつに82パーセントの増加となっている。ワシントン市警のチャールズ・ラムジー署長は先週、多発する凶悪犯罪について語り、「非常事態」を宣言したが、犯罪の増加はアメリカ全土でトレンドとなりつつある。「ワシントンが直面している犯罪増加問題は、全米で市当局が頭を抱えている問題なのです」、ロサンゼルス市警のウイリアム・バートン署長はワシントンポスト紙の取材にそう語った。実際にフィラデルフィアでは市内に監視カメラを設置すべきかどうかで、今年5月に住民投票が行われている。また、過去10年で最も多くの殺人事件が発生しているボストンでは、トーマス・メニーノ市長が市内を走る車をランダムに停車させ、車内を検査すべきだと提案している。

ウイリアムズ市長の犯罪対策を評価する声もある一方で、今回の夜間外出禁止令が犯罪防止の根本的な解決策にはならないという指摘も存在する。エイドリアン・ファンティ市会議員は19日、ワシントン市内で米自由人権協会のメンバーらと共に抗議集会を行い、「こういったやり方で犯罪を防ぐのは無理です。犯罪撲滅のためにすべき事が実際には行われていない。それが大きな問題なのです」と語っている。これまでワシントン市内で実施されてきた未成年対象の外出禁止令は午前零時以降のものだったが、今年だけで約2000人が警察に補導されている。補導された若者は市内に2ヶ所ある施設で保護者の迎えを待つことになるが、午前6時までに保護者が迎えに現れなかった場合、市の家庭サービス局に身柄を移され、同時に保護者をネグレクトの疑いで捜査するかどうかが決定される。

全米各地のインディペンデント系映画館で上映されている「ウォー・テープス」というドキュメンタリー、ワシントン周辺では少なくとも2ヶ所で上映されているんだけど、来週にでも映画館で見たいなと思っている。これはニューイングランド地方に住む5人の若者のイラクでの1年間を記録した作品で、州兵登録していた5人はイラクの戦場に送られ、毎日の生活を持ってきた小型のビデオカメラで記録し続けていた。5人の中の1人にステファン・ピンクさんという24歳の若者がいて、マサチューセッツ州キングストンで生まれたピンクさんは、ボストン・カレッジの付属高校で学んだあと、プリマス州立大学に進学している。大学時代に学費を払えなくなったピンクさんは州兵に登録する道を選び、無事に大学を卒業したんだけど、それからすぐにイラクに送られている。僕の周りにもいそうな「普通のアメリカ人」がイラクに送られ、そこで実際に見たものを、ピンクさんらが撮影した映像を通して僕らも見ることができるわけで、ニュース映像とは異なるイラクの様子を知る事ができるかもしれない。ニューオーリンズに行く前に、なんとか見ることができるといいんだけど。

写真:「ウォー・テープス」のポスター (www.thewartapes.com より)

トウモロコシ成金は誕生するか?

2006-07-19 14:33:52 | ビジネス
今日は最初にメジャーリーグの話を。と言っても、いつものようにレッドソックスの話ではなく、ミネソタ・ツインズの話を。アメリカン・リーグの中部地区はコンスタントに強さを発揮するシカゴ・ホワイトソックスと、今年になって突然変異でも始まったのかと思わせるデトロイト・タイガースが首位争いを演じているんだけど、3位のツインズも勝率5割6分5厘で健闘を見せている。正直、ツインズが地区優勝する可能性は低いと思うし、プレーオフに出れるかも微妙なところだけど、先発投手のフランシスコ・リリアーノとキャッチャーのジョー・モウアーのブレイクは要チェック。開幕から11勝2敗の成績を残すリリアーノは現在、両リーグ通じて防御率トップを維持しているし(1.94)、モウアーも打率部門で首位に立っている(3割7分6厘)。同じチームから防御率と打率でトップの選手が出るだけでも凄いんだけど、驚いたのは、今年でまだ23歳という2人の若さ(リリアーノは10月に23回目の誕生日を迎える)。2人が大スターになるのか、一発屋で終わるのかは分からないけど、将来が凄く楽しみだ。さて、今日はクリスチャン・サイエンス・モニターの記事から、エタノールに関する話題を。

石油に代わる新たな燃料として期待されるエタノールだが、すでに多くの経営者にとって非常に魅力的な存在となっており、ウォール街の投資家から西海岸の企業家まで(ビル・ゲイツ氏も含む)エタノール製造工場に莫大な投資を行っている。また、ビッグ3のCEOは2010年までにガソリンとエタノールのどちらでも走行可能な車の生産を現在の2倍にまで増やすと公言しており、この新たな燃料にはこれからも熱い視線が注がれる模様だ。エタノールの原料となるトウモロコシは、そのほとんどが中西部で生産されており、現地の農業関係者はこれから訪れるかもしれない「ゴールド・ラッシュ」に興奮を隠せない様子だ。エタノールはアメリカの外国産石油からの脱却だけではなく、長きに渡って停滞を続けてきた中西部の農業を活性化させる意味も持つ。「まさしくゴールド・ラッシュですね。エタノール産業は誰もが予期しなかったほどの速さで発展しています」、シカゴに本部を置く農業専門調査団体「アグリソース」のダン・バッセ代表はクリスチャン・サイエンス・モニター氏の取材にそう答えている。

これからのブームが期待されるエタノールだが、農務省のアレン・ベーカー農業専門アナリストは、「石油会社がエタノールを全国的に展開させるためには、それなりの時間が必要だと思う」と語る。ベーカー氏は需要が供給に追いつかない理由として、エタノールが通常のパイプラインを通せないことや、エタノールを運ぶための鉄道網がアメリカ国内ではそれほど発達していないといった理由を挙げている。不十分な供給システムはすでにエタノールの販売価格高騰を引き起こしており、現在では1ガロンあたり4ドル以上と、石油よりも高くなっているのが現状だ。エタノールが石油に代わる新燃料として一般に広く受け入れられるには、やはり時間が必要となるが、中西部の農業関係者の間ではこの新燃料をなんとしても全国に広め、小さな町で問題となっている収入と人口の減少を食い止めたい構えだ。

将来的なエタノール・ブームを懸念する声も存在している。アメリカ国内で生産されたトウモロコシの多くがエタノールに使用される可能性が高いため、トウモロコシを使った食品の価格が高騰するのは必至との指摘もある。「この数年内に、エタノールの需要がアメリカ国内のトウモロコシ生産量を超えるかもしれないという懸念が存在しています」、前出のバッセ氏はそう語った。バッセ氏によると、全ての需要を満たすにはあと1000万エーカー分の土地でトウモロコシの生産が必要とのことで(現在、アメリカ国内でトウモロコシ生産に使用されている土地は約8000万エーカーある)、そうなった場合には大豆や小麦の生産用に使われていた土地が削られる可能性が高いのだという。現段階ではエタノールの生産に大量の石油が使われており、石油消費の減少にはなっていないとの指摘もあるが、エタノール生産に携わる関係者の間では、こういった問題も時間が解決してくれるという楽観論が存在している。

レバノンには依然として約2万5000人のアメリカ人がいるようで、出国を希望する人も多いんだけど、1956年に作られた法律をめぐって、アメリカ国内ではレバノンに家族のいる人や政治家から怒りの声があがっている。50年前に作られた法律では、国外における紛争などでアメリカ政府に救出された民間人に対して、国務省が飛行機代などを請求できるというもの。レバノン在住アメリカ人の国外退去がなかなか進まない中で、こういった話が明るみになり、ブッシュ政権も支払い免除にむけて動き出したというニュースも入ってきている。2万5000人いる現地在住者の中で、国務省の助けによって国外に脱出できたのはわずかに350人(18日現在)。民主党のナンシー・ペロシ下院議員が「イラク戦争に3000億ドル出せるのなら、レバノンからアメリカ市民を脱出させる事だってできるはず」って言ってたけど、本当にそう思う。もし、このブログを読んでいる人の中にアメリカ国籍の人がいれば、紛争地では必ずクレジットカードと小切手を体に貼り付けておくように…。


写真:18日に行われた対デビルレイズ戦で11勝目をマークしたツインズのフランシスコ・リリアーノ投手 (AP通信より)

ビッグ・ディグの落盤事故、6年前に予測できた?

2006-07-18 16:13:41 | ビジネス
レバノン在住アメリカ人の希望者を対象とした国外脱出がいよいよ始まる見込みで、アメリカ国内では今日も朝から晩までレバノン関連のニュースがずっと報じられていた。イスラエルはヒズボラが壊滅するまで攻撃を続けると宣言しているけど、イスラエルのエフード・オルメルト首相がイタリアのロマーノ・プロディ首相に対して「イスラエル兵の人質が解放されれば、攻撃をやめる用意がある」と語ったと一部では報じられていて、今回のレバノン攻撃が大きく動く可能性もある。イスラエル北部で17日に撮影された写真がすごく気になったんだけど、小学生くらいの女の子がイスラエル軍がこれから使用する砲弾にメッセージを書いている様子が写されている。問題の深さをひしひしと感じてしまうような1枚だった。さて、今日はボストンのビッグ・ディグと呼ばれる巨大トンネルで発生した事故で(正確にはトンネルとハイウェイを合体させたものなんだけど)、マサチューセッツ州知事が記者会見を開いたというニュースを。このトンネル、以前からいくつもの問題が指摘されていたんだけど、死亡事故が発生するまで何の対策も取られていなかった。

マサチューセッツ州のミット・ロムニー知事は17日、州議会議事堂で記者会見を行い、ビッグ・ディグのトンネル内に埋め込まれた1100本以上の補強用ボルトを交換する必要性を示唆した。全長が5.6キロにも及ぶビッグ・ディグでは10日夜に天井の落盤事故が発生し、38歳の女性が死亡している。この女性が夫の運転する車でローガン空港に向かっていた時、突然トンネルの天井が崩れ落ち、車が下敷きになった。奇跡的にも彼女の夫は一命を取り留めている。2003年暮れに最後の工事が終了したビッグ・ディグは総工費が146億ドルまで膨れ上がったり(工事開始当初の見積もりでは25億ドル程度だった)、オープンから間もなくしてトンネル内で水漏れが何度も報告されていたため、以前から問題だらけのトンネルと指摘されていた。

「問題のボルト部分ですが、調査の結果、一定の重力によって外れる可能性が高いと判明しました。設計当初の予測よりもはるかに低い圧力で、これらのボルトが外れてしまう危険性があるのです」、ロムニー知事は記者会見でそう説明した。「つまり、エポキシ樹脂でボルトを固定したシステムが、実際には機能していなかったことになります」、知事はさらにそう付け加えた。10日に12トンに及ぶトンネルの天井部分が突然落下した事故では、コンクリートで作られたこの天井部分が走行中の車を直撃し、車内にいた女性1名が死亡している。事故発生後、トンネル内部では徹底的な調査が実施され、少なくとも242ヶ所でボルトが外れかかっている状態だったことが判明している。ビッグ・ディグ内の2つのトンネルは事故後すぐに閉鎖されており、現在も再開の見通しは立っていない。

ビッグ・ディグはアメリカ史上最も予算のかかったハイウェイ工事として知られており、ボストン周辺のハイウェイをトンネルに変えることで、交通渋滞の大幅な緩和が期待されていた。トム・ライリー州司法長官も17日の記者会見で、1999年から2000年の間に、設計者と現場の技術者との間でトンネルのデザインをめぐって口論が続いていた事実を明らかにしている。技術者からはビッグ・ディグのデザインではトンネルの天井部分に使われる1枚3トンのコンクリート板を支えるのは困難だという指摘が出されていた。トンネルの工事は大手建設会社のべクテル社によって行われている。ライリー長官はすでに関係者に対して過失致死罪の適用も考慮していると報じられている。ロムニー知事はトンネル内のボルト補強工事をこれから実施すると語っており、工事が終了するまでの間、問題ヶ所が多数発見された2つのトンネルは閉鎖されたままになる見通しだ。

2010年にワールドカップの開催地として選ばれた南アフリカだけど、現地在住や滞在経験のある友人の話によると、本当に治安が悪いらしい。数年前に国連が実施した調査では、世界で2番目に殺人事件の発生率が高い国としてランクインしており、1万人につき約4.9人が殺人事件の犠牲となっている計算だ。南アフリカよりも殺人事件の発生率が高いのはコロンビアのみで、人口1万人につき約6人が殺されている。アメリカの例を言うと、殺人事件の発生率が最も高いのがここワシントンDCなんだけど、それでも南アフリカよりはマシで、1万人あたりで3.6人という数字になっている(最下位はメーン州の0.13人)。イギリス人の友人が仕事でロンドンからヨハネスブルグに移り住むと聞いたとき、僕を含めた周囲の人間は本当に心配したんだけど(今も心配している)、数字が全てを物語っている気がする。しかも、最近になってケープタウン在住の男性が「クライム・エクスポ」というウェブサイトを立ち上げて、世界中の観光客にワールドカップの現地観戦を考えなおすよう訴えている。南アの治安が4年間で改善されるとは思えないし、どうなるんだろうか?

写真:イスラエル北部で17日、イスラエル軍の砲弾にメッセージを書く少女たち (AP通信より)

デーブ・チャペルのブロックパーティー

2006-07-17 13:39:37 | 外交
今月はじめからポッドキャスティングを始めて、すでに3回目の収録が終わった。これはボストンに住む友人と趣味で始めたものなんだけど、メジャーリーグのニュースやトリビアなんかを日本語で紹介するもので、リスナーは日本人野球ファンだけだと思っていたんだけど、リスナーから来たメールに面白いものがあった。メールの送り主は、エリザベスさんというシカゴ在住のアメリカ人女性で、日本語を勉強しているときに僕らのポッドキャスティングを偶然発見したらしい。もともとはヤンキースとマリナーズの情報だけが大本営発表的に流される日本のスポーツメディアへのアンチテーゼとして、もっとメジャーリーグそのものを知ってもらおうと考えた企画だったんだけど、アメリカ人リスナーにも聞いてもらって、しかも連絡までもらえるなんて嬉しい驚きだ。ポッドキャスティングはまだ趣味の段階でやっているんだけど、いろいろと可能性がありそうなので、これからも新しいものをドンドンと取り入れていこうと思う。さて、今日はイスラエル軍のレバノン攻撃に関するニュースを。

16日付のワシントンポスト紙はイスラエルとアメリカの両政府高官の話として、イスラエルによるレバノン爆撃が今後数週間継続される可能性が高いと報じている。イスラエル側の最終目標は国家安全上の脅威であるヒズボラを完全に排除させることで、指導者のハッサン・ナスララ氏の殺害も視野に入れている模様だ。ワシントンポスト紙の取材に答えたイスラエル政府高官は、ナスララ氏の殺害によってシーア派によるゲリラ活動が停滞していくだろうとの認識を示している。一方で、アメリカ政府高官は戦略上の理由からヒズボラ、ハマス、シリア、イランの連携を破壊するのが最終的な目的だと語っている。イスラエルによる軍事行動で、アラブ諸国における反米感情がこれまで以上に吹き荒れることが懸念されるが、ワシントンでは「最終的にはアラブ諸国からの支持を取り付けられる」との楽観論が存在している。

「おそらく最後まで行くと思います。人質事件を二度と起こさせないためにも、今回はヒズボラの壊滅を目指します」、ダニエル・アヤロン駐米イスラエル大使はそう語っている。ホワイトハウス高官が15日に明らかにしたところによると、ブッシュ大統領はイスラエル政府に対し、民間人の犠牲者を最小限に抑えることと、レバノンの現政権を転覆させないようにと要請した。しかし、レバノンに対する軍事行動を中止するように迫ることは無かったそうだ。「ブッシュ大統領はイスラエル国民が自衛権を行使しているのだと認識しています」、ホワイトハウスのトニー・スノー報道官はサンクトペテルブルグでそうコメントした。レバノン国内では民兵組織のヒズボラが1万2000発以上のロケット弾とミサイルを保有しており、あるイスラエル政府高官はワシントンポスト紙に対し、「レバノン政府がヒズボラの武装解除を実施した跡で、停戦にむけての話し合いが行われるだろう」と語っている。

レバノンに対する攻撃が激しさを増す中、現地在住のアメリカ人を国外へ脱出させる計画も進められている。16日には地中海方面から来た2機の米軍ヘリがベイルート北部のアメリカ大使館の敷地内に着陸しており、AP通信は救出チームと現地の大使館員との間で脱出プランに関する協議が行われていると報じている。現在、レバノン在住のアメリカ人は約2万5000人とされているが、現時点では希望者のみを対象に脱出計画が実施される見込みで、脱出希望者をヘリなどでキプロスに送る案が出ている。フランスは16日に1300人の移送が可能なフェリーをキプロスからレバノンに向けて送ったが、アメリカがどのような救出方法を用いるのかは、現在のところ明らかにはされていない。CNNによると、アメリカ人希望者のレバノン出国は数日後から開始される予定だ。

久しぶりにDVDを購入。僕の好きなデーブ・チャペルによる秀作ドキュメンタリー映画「ブロックパーティー」は、本当は劇場まで見に行きたかったほど気になっていた作品で、昨日の夜からすでに2回も繰り返し見てしまった。この作品はチャペルがブルックリンにあるベッド・ストゥーイという地域でブロックパーティーを行うまでの3日間を記録したものなんだけど、参加アーティストや一般人へのインタビューも多く、物凄く生活臭の強いドキュメンタリー映画なのだ。ベッド・ストーゥイという地域はスパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」の舞台にもなった所だけど、ノートリアスB.I.G.やモス・デフ、ビッグ・ダディ・ケインといったアーティストたちの生まれ故郷でもある。友人のハリー・スティーブンソンが「Increase The Peace」という言葉を好んで使っていたけど、ブロックパーティーの盛り上がりを見ながら、彼の言葉を知らないうちに思い出していた。この映画、日本で公開(またはDVDの発売)されるかどうかは分からないんだけど、チャンスがあればぜひ見てください。参加アーティストはモス・デフ、カニエ・ウエスト、コモン、エリカ・バドゥ(いつ見ても綺麗だ、この人は)ほか多数。そしてブロックパーティーの最後にはフージーズによる7年ぶりのパフォーマンス(この日を境に3人は再び活動を共にし始めている)。心が癒される一本でした。


写真:自宅のベランダでヒズボラ指導者のテレビ演説と市街地から上がる黒煙を見つめるベイルート市民 (AP通信より)

ボストン名物の欠陥トンネル、今度は天井部分が崩れ落ちる

2006-07-12 16:05:14 | イラク関連
ボストンにはビッグ・ディグっていう大型トンネルがあって、空港と市周辺を結ぶこのトンネルの全長は5.6キロにもなる(ハイウェイ部分も含む)。1985年に出された見積もりでは総工費が25億ドル程度だったらしいけど、2003年暮れに最後の工事が完了した時、総工費はなぜか146億ドルにまで膨れ上がっていた。僕がボストンにいた頃から、ビッグ・ディグを「金の無駄遣い」と批判する声が少なくなかったけれど、オープン後はトンネル内で水漏れがいくつも発見されて、安全面での不安も懸念されていた。そんな中、10日夜にビッグ・ディグの中で事故が発生し、38歳の女性が死亡している。この女性が夫の運転する車でローガン空港に向かっていた時、突然トンネルの天井が崩れ落ち、車が下敷きになったそうだ。奇跡的にも彼女の夫は一命を取り留めている。水漏れといい、今回の事故といい、1兆6千億円近くかかったこのトンネルで手抜き工事が行われていたような気がするのは、僕だけじゃないと思う。さて、今日はイラクで発生した殺人事件で、新たに5人の米兵が逮捕されたというニュースを。

イラク駐留米軍は9日、今年3月にバグダッド南方にあるマハムディヤで発生したイラク人家族殺害事件で、新たに米兵5人を逮捕したと発表した。5人のうち4人は14歳のイラク人少女を強姦し、彼女とその家族を殺害した容疑がかけられており、有罪の場合には死刑が宣告される可能性も高い。5人目の逮捕者は事件の詳細を知りながらも通報を怠っていたとして、職務怠慢容疑で逮捕されている。今年3月の事件では、14歳の少女が両親と妹の前で5人の米兵にレイプされ、その後少女と家族は殺害されている。米軍は今月3日に第101空挺師団に所属していた21歳のスティーブン・グリーン容疑者を逮捕したが、これまで共犯者とされる人物の情報は公開されてこなかった。法廷資料によると、イラクから戻ったグリーン容疑者はケンタッキー州のフォート・キャンベル基地に勤務していたが、最近になって「人格障害」を理由に軍を名誉除隊していた。

今回、性的暴行および殺人の容疑で新たに逮捕されたのはポール・コルテス、ジェームズ・バーカー、ジェッシ・スピールマン、ブライアン・ハワードの4人で、上層部に虚偽の報告を行ったとされるアンソニー・ユリベ伍長も職務怠慢容疑で逮捕されている。バグダッドの米軍広報官によると、ユリベ容疑者は事件に直接関与はしていなかったとの事だ。グリーン容疑者と仲間の3人はイラク人一家4人が暮らす民家に侵入後、室内にあったライフル銃を使って4人を射殺している。犯行に使用されたカラシニコフ銃は近くの用水路に捨てられ、返り血を浴びたグリーン容疑者らの衣類は焼却されたのだという。犠牲者には5歳の少女も含まれていた。グリーン容疑者は3日、ノースカロライナ州シャーロットにある連邦裁判所に出廷したが、裁判がケンタッキー州で行われることが決まったため、身柄を移されている。

司法省高官が3日にCNNに語ったところによると、すでに除隊しているグリーン容疑者は民間人として裁かれる予定で、連邦法では元軍人が海外で犯した罪を民間人として裁くことが可能なのだという。有罪の場合、グリーン容疑者にも死刑が求刑される可能性が高い。米兵によるイラク人殺害事件は以前から地元住民らによって指摘されており、米軍は数ヶ月前から内部調査を開始している。マハムディヤ事件以外にも、4人のイラク人を殺害した疑いで、11人の米兵が起訴されている。また、イラク西部アンバル県にある町ハディサでは昨年11月、米海兵隊員によって地元住民24人が殺害された疑惑が浮上しており、アメリカ国内メディアは1968年にベトナムのミライ村で発生した米軍兵士による虐殺事件の再来として大々的に報じている。

この前のブログにも書いた「米軍内部で白人至上主義者が増えている」という民間団体の報告が気になって、時間を見つけては関連資料に目を通している。95年のオクラホマ連邦政府ビル爆破事件の主犯が軍隊にいた時に極右思想に目覚めたって言う話はこのブログにも書いたけれど、94年にはジョージア州フォート・ベニング基地に勤務していた5人の兵士が爆薬やマシンガンをアラバマ州の極右組織「アーリア人国家戦線」に横流しようとして逮捕されている。そういえば、アメリカ国内で大きな勢力をほこる「アメリカナチス党」も元海軍少佐のジョージ・ロックウェルによって作られたものだった(この組織は80年代まで僕が今住んでいるアパートから歩いて5分の場所に事務所を構えていた)。もう少し資料がそろえば、取材もしてみたいと思っているんだけど、こういった白人至上主義者が再び米軍の中で増え始めているかもしれないという報告はすごく気になる。イラクや、アフガニスタン、それから日本にも駐留している奴がいるかもしれないって事だから。


写真:10日夜にビッグ・ディグで発生した事故で、突然崩れ落ちた天井のコンクリート部分 (ロイター通信より)

ボストン、ブエノスアイレス、ローマ、アウグスブルグ…

2006-07-10 13:58:22 | 犯罪
ついに終了の日を迎えたワールドカップ・ドイツ大会。フランスは98年以来の優勝を飾れず、最近のワールドカップでは常にPK戦で悲劇を繰り返したイタリアが(90年、94年、そしてフランスに準々決勝で敗れた98年)ようやく「呪い」から開放されている。それにしても、ドラマの多い決勝戦だった。大会前から大きく報じられてきた国内リーグのスキャンダルや(明日にも最終的な発表が下されると聞いてるんだけど)、代表メンバーの中にも友人が多い元ユベントスのジャンルカ・ペッソット氏が大会中にトリノで起こした自殺未遂に直面しながらも、イタリア代表は24年ぶりにトロフィーを手にした。そして、フランス代表のジネディーヌ・ジダンはどうしちゃったんだろう。延長前半開始早々に、相手ディフェンダーの胸に頭突きを食らわせて退場に。8年前の決勝戦では同じような体制からゴールを決めているけれど、今回はボールではなく人間の体。本当に何があったんだろうか?さて、今日は米軍内部にネオナチ活動家が増加しているというニュースを。

アラバマ州モントゴメリーにある民間団体は7日、長引くイラク戦争の影響で新兵獲得に悩む米軍が採用基準を大幅に緩め、結果として米軍内部にネオナチ活動家やスキンヘッドが増加していると発表した。発表を行った「南部貧困問題・法律センター(SPLC)」は最近の傾向がネオナチ活動家を採用しないと決めた軍規に反していると主張し、ラムズフェルド国防長官に対して断固たる対応を要求している。しかし、ペンタゴンは以前から米軍内の極右活動家を排除するよう努めてきたと主張し、ポール・ボイス陸軍広報官もAP通信の取材に対し、「深刻な問題ではあるが、最近になって増加傾向が見られたというものではない」とコメントしている。SPLCがウェブサイト上で行った発表では、過去数年にわたって新兵のリクルート活動で満足の行かない結果に直面している米軍が、苦肉の策として白人至上主義社の入隊を認め始めたと結論付けられている。

SPLCのマーク・ポトック氏は実際に何人のネオナチ活動からが米軍内にいるのかは把握できていない事を認めながらも、これまでの調査から、その規模は数千人に達する可能性もあると語っている。すでに複数のネオナチ系ウェブサイトでは、米軍内で周囲に悟られないように極右主義者としての活動を行う方法が紹介されたりしている。また、ポトック氏は米軍のリクルーター達から直接聞いた話として、上層部から新兵獲得に関する厳しいノルマを課せられたリクルーターたちが、ノルマ達成のために現場レベルで採用基準を緩めているのだと指摘した。SPLCのリチャード・コーエン代表はラムズフェルド国防長官に送った手紙の中で、「米軍内部における極右勢力の台頭は、第2のティモシー・マクベイを生み出しかねない」と警告している。オクラホマ・シティの連邦政府ビル爆破事件の主犯として知られるマクベイ(2001年6月に死刑が執行されている)は陸軍時代に極右思想に目覚めたと言われており、1996年には当時のウイリアム・ペリー国防長官が軍内部におけるネオナチ活動家の排除を実施している。

前出のコーエン代表はペリー元国防長官の行動に一定の評価を示しながらも、ネオナチ活動が明らかになった兵士が現在も米軍内に留まっているケースが少なくないと警告し、ラムズフェルド国防長官への手紙のなかでも同様の指摘を行っている。「米軍では以前からこういったネオナチ活動家を追放する事に消極的でした。理由として、新兵の獲得が年々難しくなっているからです」、ポトック氏もCBSニュースの取材にそう答えている。ペンタゴンのエレン・クレンケ広報官は、国防総省内の規定で軍人は白人至上主義グループのような人種や性別、宗教の違いで他者を差別する組織への関与を禁じていると語った。これまで軍隊への入隊を希望する者に対しては、必ず犯罪歴などのチェックが実施されてきたが、最近では入隊志願者の体に彫られたタトゥーがネオナチなどの組織と関係していないかどうかを調べる地域も増えてきている。

おそらく、ミラノからシチリア島のカターニャまで、そしてボストンからブエノスアイレスまで、数え切れないイタリア人とイタリア代表ファンが今日の勝利を祝っているのだろう。ワシントン周辺のスポーツバーは地元消防局からの要請もあって、今日も入店制限を行い、ワールドカップ決勝戦が行われる2時間前からすでに中に入れない店がいくつもあったらしい。ボストンでは市庁舎前の広場にイタリア代表とフランス代表のユニフォームを着た大勢のファンが集まり、広場は文字通り人で埋め尽くされた状態となっていた(この様子は決勝戦を放送したABCでもハーフタイムなどに取り上げられていた。そういえば、4年前の決勝戦でも同じくボストンにあるブラジル人コミュニティの様子が放送されていた)。公式な資料によると、この広場の収容人数は5万人だそうで、今日は何人がそこにいたのだろうか?個人的にはフランスに勝ってほしかった今日の試合だけど、ドイツのアウグスブルグでレストランを経営するシチリア人の友人に祝福の電話をかけてみた。家にも携帯にもつながらず、しばらくして「イタリアが優勝したら、近所の人全てにご馳走する」という彼の言葉を思い出した。破産しなければいいけど…。


写真:ボストンのノース・エンド地区でイタリア代表の勝利を祝うファン (AP通信より)