IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

バイアグラと3000本安打

2005-07-11 11:57:39 | テロリズム
日曜日の恒例行事といえば、やはり洗濯でしょう。フロリダやアラバマにハリケーンが来ているとは思えないほどのいい天気で、本当はカフェのオープンテラスでゆっくりと新聞でも眺めたい気分だったけど、平日になかなか洗濯ができないために今日も1日が洗濯から始まったのです。洗濯機をまわしている間、衝動的に新しい映画が見たくなり、またまたケーブルテレビのオン・デマンドのお世話になることに。今日見た映画は、ケビン・ベーコン主演の「ザ・ウッズマン」というドラマで、共演はモス・デフやイブというヒップホップな面々。でも、この映画のテーマというのが小さな女の子への性的虐待で12年間を刑務所で過ごした男の社会復帰というもので、かな~り重かったのです。この問題って決して単純じゃぁないけど、映画は一見の価値アリだった。

ロンドンのテロ事件関連で今日も気になったニュースがあり、今日もそれをブログでも紹介しようと思っている。911テロ後にアメリカのメディアが揃いもそろって展開したようなイスラム教叩きをする気は毛頭ないんだが、ロンドンという町がアルカイダと関係の深い場所という指摘は興味深く、この町やイギリス政府の動きについて報じたアメリカの新聞記事を幾つか紹介したいんです。新聞なんかではよく「デモグラフィック」という言葉を使うけど、僕はテロリズムを支援する地域にもデモグラフィックがあると思っている。僕が昔住んでいたサウス・ボストンがIRAの大きな資金源となっていたのは周知の事実だし、バスク人の過激派はベネズエラのバスク系移民から、スリランカのゲリラはヨーロッパ大陸に住むタミル人社会から資金援助を受けているという話を聞いたことがある。こういったサポートに関わる人はあくまでも少数派だけど、その町の特徴を知るうえで、今日の新聞記事の幾つかは面白い指摘をしている。

先週発生したロンドンの連続爆破テロ事件では、イギリス国内に住む過激派による犯行との見方が日増しに強まっているが、各国の諜報関係者らの間ではロンドンの町そのものが世界中で発生するアルカイダの犯行と思われるテロの前線基地になっていると考える者が少なくないようだ。911テロ事件の首謀者の1人とされ、現在アメリカで裁判中のザカリアス・ムサウイ被告(4月22日に自らの罪を全て認めており、アメリカ国内で死刑判決を受ける可能性が高くなっている)はロンドン市内のサウス・バンク大学で修士号を取得しており、市内北部にあるフィンスベリー・パーク・モスクで過激思想に目覚めたと考えられている。このモスクには2001年12月にアメリカン航空(パリ発マイアミ行き)の機内で爆破テロを決行しようとしたリチャード・レイドも通っており、レイドは靴底に隠したプラスチック爆弾に添加しようとしたところを他の乗客によって取り押さえられている。

ムサウイはモロッコ系のフランス人で、イギリス人のレイドは父親がジャマイカ人だった。これら以外のテロ事件でも、アルジェリア人やパキスタン人工作員の存在が確認されている。ワシントンのランド研究所に勤務するテロリズム対策の専門家ブルース・ホフマン氏はロサンゼルス・タイムズ紙の取材に、「テロ容疑者の対象となりうる人物像は限りなく広がっており、もはや中東系の人物といったステレオタイプは通用しない」とコメントしている。10日のワシントン・ポスト紙は、この7年間の間に世界中で発生したアルカイダ関連テロの多くが、ロンドンを拠点とするイスラム系組織やロンドン在住の過激思想を持つイスラム教徒とリンクしていると報じ、1998年のケニア・タンザニア同時爆弾テロや2001年9月のムサード将軍(アフガニスタン)暗殺、2002年のダニエル・パール殺害事件などの背後にある「ロンドン・コネクション」を指摘した。

ロンドンには19世紀より多くの中東出身者が移住を開始し、イギリス国内で最もイスラム教人口の多い町となっていたが、この10年の間でモロッコやエジプト、シリアといった国から多くの過激思想の持ち主が移住している。オサマ・ビン・ラディンも90年代半ばにロンドン市内に事務所を構え、市内のイスラム教徒らを対象に政治的なメッセージを送り続けていた時期があり、昨年4月に発生したマドリッド爆弾テロの首謀者とされるムスタファ・セトマリアン・ナサールは95年から98年までをロンドンで過ごしている。また、2003年にカサブランカで45人の命を奪った爆弾テロ事件の首謀者としてモロッコ政府が身柄引き渡しを要求するモハメッド・エル・グエルボジは現在もイギリスにおり、彼の部下の1人はモロッコの捜査関係者に対し、テロ計画を進める「スリーパーセル」がイギリスやフランス、そしてカナダにまで存在していると告白している。

モロッコ側はグエルボジに対して欠席裁判の中で長懲役20年を求刑しているが、イギリスとモロッコの間に容疑者身柄引き渡し条約が存在しないこともあって、イギリス側は引渡しを拒否している。グエルボジは今もロンドン北部のアパートで家族と暮らしており、イギリス政府高官はニューヨーク・タイムズ紙に対して、彼を逮捕するだけの十分な証拠が存在しないことを強調した。昨年の暮れにイギリスの最高裁判所は「安全保障の脅威となる外国人」を裁判無しで拘置し続ける事はできないとの決定を下し、各地の刑務所からは過激派として知られるイスラム教指導者らが続々と釈放されている。テロ組織と関係のある外国人の本国送還に消極的な姿勢を見せるイギリス政府に、各国の政府関係者らは苛立ちを隠せないが、それ以上に過激派組織のインフラ整備に厳しい態度で挑まなかったイギリス政府に落胆の声があがっている。

大型のハリケーン「デニス」は10日午後、フロリダ州とアラバマ州の海岸地帯に上陸し、1時間に120マイルの風速で北上を続けている。町中を瓦礫が飛び交う状態のフロリダ州海岸部は、10ヶ月前にも大型ハリケーン「アイバン」によって大きな被害を受けている。デニスは東部時間の午後3時25分頃にフロリダ州とアラバマ州の州境近くに上陸し、アイバンと非常に似たルートで北上している。フロリダ州ペンサコーラでレストラン業を営むニック・ザンガリはAP通信の取材に対し、経営するレストラン近くで建物の一部や信号機が風で吹き飛ばされたのを目撃したと語り、強風のために別の建物の空調システムが爆発を起こした様子などを伝えている。ペンサコーラ・ビーチ周辺の住民はほぼ全員が別の場所に避難しており、海岸では波が一時35フィートという記録的な高さにまで達していた。

アメリカ本土に上陸してすぐ、デニスはその勢力を次第に弱め、上陸前までカテゴリー4に分類されていたハリケーンの規模も、現在はカテゴリー2にまで縮小されている。ハリケーンの影響で、フロリダ州の1万4000世帯とアラバマ州の8万世帯が現在も停電の影響を受けている模様だ。フロリダ州の電力会社は、ハリケーンによる停電被害はこれからさらに増加するものと予測しており、40万人以上が3週間以上にわたって電気無しの生活を強いられる可能性があるとの事。この1年以内に5つのハリケーンが直撃したフロリダ州では、ジェブ・ブッシュ知事が兄のブッシュ大統領にフロリダ州を大災害地域に指定するよう要請し、10日夜になってフロリダ州の一部が大災害地域の宣言を受けている。

今回のハリケーンでは、キューバやハイチですでに20人以上が死亡しており、アメリカ上陸前にメキシコ湾で風速145マイルの巨大ハリケーンへと成長していた。このサイズはカテゴリー4に分類され、フロリダ州のパンハンドル地域とアラバマ州に向かうハリケーンとしては過去最大規模のものだった。しかし、海岸地帯に上陸したデニスは昨年パンハンドルだけで29人の犠牲者を出したアイバンと同規模のカテゴリー3(風速120マイル)にまで規模を縮め、午後5時過ぎにカテゴリー2(風速105マイル)に変化した。カテゴリーこそ小さくなったものの、気象関係者らの話では、デニスの最大瞬間風速が時速150マイルにまで達する可能性もあり、現地ではトルネードの誘発も懸念されている。フロリダ州は昨年夏のアイバンによって大きな被害を受けており、現在も3000世帯が政府が用意したトレーラーによる生活を余儀なくされている。

嬉しいニュースが1つ。それも久しぶりに野球の話で。ボルティモア・オリオールズのラファエル・パルメイロが10日の試合でソロホームランを放ち、ボストン・レッドソックスに4-1で勝利する原動力となったようだ。僕にとって宗教的な存在のレッドソックスが敗れたことは、そりゃ悔しいけど、それよりもパルメイロのホームランに拍手を送りたい。今日の試合でパルメイロの通産打数は2998となり、いよいよ3000本安打の到達まで残りわずかとなった。キューバ生まれで今年41歳になるパルメイロ、アメリカではバイアグラのCMに出演している事も話題となったけど、バッターボックスに入る時には2PACの「カリフォルニア・ラブ」を流す若い一面も。(効果のほどは分かりませんが…)ベンチ裏でバイアグラを服用してでも、見事に3000本安打を達成してもらいたいものです。