IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

コロラドの人質事件が残した幾つかの「謎」

2006-09-30 13:55:55 | 犯罪
雷模様となった木曜日夜、あんまり外に出たくは無かったんだけど、先週末に借りていたDVDの返却期限が木曜夜までだったため、仕方なく傘をさして自宅近くにあるレンタル店へと歩いていった。今回借りた映画は2本で、日本でもうすぐ公開の『ザ・センチネル』と、アントニオ・バンデラスが問題を抱えた高校生達に社交ダンスを教えるプロのダンサーを演じた『テイク・ザ・リード』。案の定、ギリギリまで見るのを忘れていて(それでも、『ザ・センチネル』は日曜日に頑張って見た)、2本目の作品を見たのが火曜日の夜中だったんだけど、実話をベースにしたらしい『テイク・ザ・リード』は思っていた以上にいい話で、見終わったあとに掘り出し物を見つけたような気分にさえなった。レンタル店からの帰り道、少し暗がりの道を歩いていると、路上で動く奇妙な物体を発見。なんとヘビだったんです。路上でヘビを見るのは久しぶりだったんだけど(おそらく、オーストラリアの田舎町に滞在した高校時代以来だと思う)、なぜか冷静に「こんなに寒いのに、冬眠の準備をしなくて大丈夫なのかな?」とヘビの今後を心配してしまった…。こんな時期に出てくるもんなんですねぇ。さて、今日はコロラド州で発生した人質事件に関するニュースを。

コロラド州ベイリーで27日、拳銃で武装した53歳の男が地元のプラット・キャニオン高校に侵入し、校舎の2階部分にある教室で6人の女子生徒を人質に立てこもる事件が発生した。篭城は約4時間続き、警察はSWATを教室に突入させたが、その際に男は人質の1人に向かって発砲し、間もなく自殺している。頭を撃たれた16歳のエミリー・ケイズさんは搬送先の病院で間もなく死亡した。事件が発生したベイリーから車で1時間ほど走ると、リトルトンという町に到着し、この町にあるコロンバイン高校では1999年に生徒による銃乱射事件で13人の死者を出している。地元警察によると、自殺を図った男性はデュエイン・モリソン(53歳)で、銃マニアとして知られていた。コロラドの地元紙ロッキー・マウンテン・ニュースの報道によると、モリソン容疑者は2005年5月に当時住んでいたデンバー市内のアパートから15丁の銃火器類が盗まれたと警察に被害届けを出しており、警察記録では10丁の拳銃と5丁のライフルが盗難に遭ったとの事だ。

モリソン容疑者がなぜデンバーから35マイル以上もあるベイリーに向かい、現地の高校で女子生徒を人質にとったのかは不明だが、地元警察は29日に行った記者会見でモリソン容疑者に自殺願望があった可能性を指摘している。記者会見では、モリソン容疑者が犯行前に家族に宛てて遺書らしき手紙を残していた事実が明かされ、メモ用紙14枚に走り書きされた手紙には容疑者が家族に対して「これから起こる事を申し訳なく思う」と記述も存在した。「これは遺書や日記といった類のものではありません。しかし、この中で自殺に関する記述が幾つか存在し、容疑者が死というものを強く意識していたのは確かです」。パーク郡のフレッド・ウェゲナー保安官は記者会見でそう語った。この遺書らしき手紙の消印は事件発生当日の27日になっていた。立てこもり中、モリソン容疑者は6人の人質全員に性的いたずらを加えていた模様で、少なくとも2人は性的暴行を受けていたという情報もある。また、ウェゲナー保安官は、「モリソン容疑者がソーシャル・ネットワーキングサイトで人質となった女子生徒達の情報を入手した可能性があり、警察による確認作業が行われている」と語っている。

人質の1人だったリナ・ロングさんがロッキー・マウンテン・ニュース紙に語ったところによると、6人の人質は教室内で「人間の盾」として窓に向かって並ばされ、モリソン容疑者によって性的ないたずらが加えられた。恐怖心のため振り向くことのできなかったロングさんは、容疑者によって背後から胸を触られた場面しか覚えていないと語ったが、ケイズさんが容疑者の性的暴行に悲鳴をあげていた事も明かしている。現在までにモリソン容疑者と人質となった6人(そのうちの4人はSWATの突入前に開放されている)との接点は何も発見されていないが、前出のウェゲナー保安官はモリソン容疑者が高校に侵入する際、人質となった6人の女子生徒の名前が書かれたリストを手にしていた可能性があると語っている。人質事件が発生する直前、モリソン容疑者は男子生徒の1人に対して、複数の女子生徒の名前を出し、彼女達に関する質問を繰り返したのだという。モリソン容疑者が口にした女子生徒の中に、ケイズさんらが含まれていたかは不明だ。

日本でも阪神タイガースの逆転優勝の可能性が大きなニュースになっているようだけど、同じような現象が今シーズンのメジャーリーグでも発生していて、ナ・リーグ中部地区の首位の座をかけてセントルイス・カージナルスとヒューストン・アストロズが最後の戦いを繰り広げている。9月19日の試合終了時点で、ナ・リーグ中部地区の首位はカージナルスで、2位のシンシナティ・レッズとのゲーム差が7.0という状況。3位のアストロズとの差は実に8.5もあった。9月中旬にこの数字を見れば、どんな悲観論者でもカージナルスの地区優勝を確信したはず。けれども、カージナルスは20日から29日にまでに8敗を喫し(26日までの7連敗を含む)、逆にアストロズは20日から28日まで負け無しの9連勝を記録した(29日のアトランタ・ブレーブス戦は1-4で敗れている)。首位のカージナルスと2位に浮上したアストロズとのゲーム差は、29日の試合終了時点で僅かに1.5で、勝率から考えて2位のチームがプレーオフに進出する可能性はゼロだ。カージナルスの残り試合が3なのに対して、ヒューストンは2試合。週末に新たなドラマが生まれるのだろうか?


写真:27日にコロラド州ベイリーで発生した人質事件で、事件現場から避難してきた生徒とその家族 (ロイター通信より)

3年で5500万ドル稼ぐラジオスター

2006-09-26 14:03:05 | テロリズム
一部の熱狂的なファンから2008年の大統領選挙への出馬を要請されているトークショー・ホストのオプラ・ウィンフリー。僕がアメリカに来た当時からすでにビッグネームだったけど、彼女の人気は現在も全く衰えを見せていない。そのウィンフリーが25日から衛星ラジオ局「XMラジオ」でトーク・チャンネルをスタートさせた。有料のXMラジオはチャンネル数が約250あり、ウィンフリーのチャンネルでは彼女や彼女の友人らが出演する番組が24時間流されている。今年3月にワシントン市内にあるXMの本社に遊びに行った事があるんだけど、ラジオのブースだけで150近くあって、僕が今まで見たラジオ局の中で最大のものだった。ちなみに、ウィンフリーのギャラだけど、3年契約で5500万ドル!ラジオですよ、ラジオ!今週から数週間以内に登場するゲストがジョン・ボンジョビやドナルド・トランプ、アネット・ベニングといった大物ばかり。どんな放送内容なんだろうか?さてさて、今日はパキスタンのムシャラフ大統領による回想録が発売されたニュースを。

パキスタンのムシャラフ大統領による回顧録が25日に全米で発売され、その中で大統領は「911事件後、アメリカに協力するか、もしくは米軍による攻撃を受けるかのどちらかで、選択肢がない状態だった」と当時を振り返っている。「銃弾が飛び交う中で」と題された回顧録の中で、ムシャラフ大統領はブッシュ政権の外交政策にも賛成しかねる姿勢を見せており、アメリカ主導のイラク戦争によって「世界がより危険になってしまった」と語っている。訪米中のムシャラフ大統領は27日にブッシュ大統領とアフガニスタンのカルザイ大統領を交えた三者会談を行う予定で、アフガニスタンとパキスタンの国境地域におけるイスラム教民兵への攻撃に関してそれぞれの意見が交わされる見込みだ。ムシャラフ大統領は24日に放送されたCBSの報道番組で、911テロ事件直後に当時の国務副長官だったリチャード・アーミテージ氏から半ば脅迫に近い形で協力を要請されたと発言していた。

現職の大統領による回顧録は非常に珍しいが、本の中ではブッシュ政権が「同盟国」と呼ぶ国のトップがアメリカの外交政策を辛らつに批判しており、非常にユニークな内容となっている。ムシャラフ大統領はブッシュ政権以前のアメリカ外交も批判しており、ソ連軍のアフガニスタン侵攻時に、反共ゲリラ活動を支援したパキスタン、アメリカ、そしてサウジアラビアが結果的に「モンスター」を作り上げてしまったと結論付けている。「我々はソ連軍のアフガニスタン撤退直後からタリバンによる権力の掌握を支援してきましたが、それから間もなくしてアメリカ政府は冷淡にも彼らとの関係を断ち切ったのです」。ムシャラフ大統領は回顧録の中でそう語っている。ムシャラフ大統領によると、パキスタンはタリバンをアフガニスタン国内の混乱を収拾させる事のできる勢力と考え、同時にパキスタンのライバル国インドとの関係が深い北部同盟(タリバンと対立していた)への牽制にもなると考えていた。

しかし、911テロ事件が発生して間もなく、パキスタン政府はタリバンとのつながりがアメリカとの間に衝突を生み出す事になるだろうと確信する。「アメリカが暴力的に対応してくるのは分かっていました。まるで傷を負わされた熊のように。テロの実行犯がタリバンと関係している事が判明すれば、その傷を負った熊は間違いなく我々の方へやって来たんでしょうね」。ムシャラフ大統領はそう語る。テロ事件の翌日、ムシャラフ大統領は当時のパウエル米国務長官から電話を受け、「我々の味方なのか、敵なのかをハッキリさせたまえ」と事実上の最後通告を受けている。回顧録ではアメリカ側からの圧力がさらに続いた事も記されており、翌日にはアーミテージ国務副長官がワシントンを訪れていたパキスタン諜報部のトップに「脅迫めいた言葉」を使っていた模様だ。「私の知る限り、もっとも外交儀礼を欠いた声明だった。アーミテージ氏は我が国の情報局長官に『アメリカかテロリストかのどちらかを選べ』と言い放っただけではなく、もし我々がテロリストの側につくなら『爆撃を受けて、石器時代に戻される覚悟をしておけ』と語ったのだ」。ムシャラフ大統領は回顧録の中で、アーミテージ氏の発言をそう非難した。

今日は夕食にラム肉を食べる機会があったんだけど、これが骨付きのやつで、何も考えずに本能のままに口を動かし続けていると、口内から「バキッ」という音が。音を聞いた瞬間、僕は小さな骨を噛み砕いてしまったのかなと思い、舌の先でよく噛みほぐされた肉の表面をなでるようにして確かめてみた(食事中の方、申し訳ありません…。ただ、周囲に人がいたため、ペーパータオルの上に吐き出すわけにもいかなかったので…)。すると肉に石のような物質が付着しているのを確認。バスルームに行き、鏡で口の中をチェックすると、一番奥にある歯の一部が少し欠けていた。骨を噛み砕いたのではなく、歯が骨に砕かれてしまったという情けない現実。欠けた部分はそんなに大きくなく、とりあえず年末に日本で治療しようと思うんだけど、何かを噛んで歯が欠けたなんて初めての経験だったため、少しショックな気分。奥歯よ、30年間ありがとう。


写真:25日にCNNの「ラリー・キング・ライブ」に出演したオプラ・ウィンフリー (AP通信より)

ほうれんそうパニック

2006-09-23 15:28:03 | ビジネス
昨日のブログでパキスタン政府がブッシュ政権に「脅されていた」というムシャラフ大統領の発言について触れたけど、「脅迫」を行った張本人とされるリチャード・アーミテージ氏は「石器時代に戻すといったような発言はしていない」と強く否定している。ムシャラフ大統領は22日にワシントンでブッシュ大統領と会談を行い、それから共同記者会見を開いているんだけど、当然のごとく記者団からはムシャラフ大統領がCBSの「60ミニッツ」内で行った発言の内容に関する質問が。横にブッシュ大統領がいる状態でどんなコメントが出てくるのかと思いきや、「25日に本を出す予定で、それまでは何もコメントするなと出版元から言われているんです」と一言。もちろん、ブッシュ大統領が横にいて口にできない事は多いんだろうけど、正直「なんだかなぁ~」という気分。政治生命をかけてでも、「お前なぁ、前からムカツいとったんや」くらいは言ってほしかったんですけどね…。さてさて、今日はホウレンソウから発見されたO-157に関するニュースを。

20州を越える地域で病原性大腸菌O-157による食中毒患者が大量に発生し、感染源がカリフォルニア州の食品会社から全米に出荷された袋詰めのホウレンソウだったと米食品医薬品局(FDA)が断定した問題で、22日付のロサンゼルス・タイムズ紙はホウレンソウに対する衛生管理基準が肉類よりも低かったと報じている。同紙によると、連邦政府が定めたホウレンソウに対する衛生面での管理基準は牛肉や鶏肉と比較した場合にはるかに低く、ホウレンソウ出荷時の安全ガイドラインの遵守も各業者の自主判断に任されていた。また、政府資料や消費者団体とのインタビューの中で、連邦政府の検査官による安全基準チェックがほとんど行われていなかった事実も明らかに成っている。8月25日に最初の感染例が報告された今回のO-157感染は、やがて被害が全米各地に拡大し、FDAは今月14日になって初めて全米に警告を出している。

911テロ事件発生後、FDAはバイオテロリズムに備える目的で検査官の数を増やしていたが、予算上の都合でその数は減少傾向にあるようだ。ロサンゼルス・タイムズ紙が入手した政府予算に関する書類によれば、2003年に2217人いた検査官は、現在1962人にまで減らされている。また1970年代にはFDAによる食品安全検査が年間で約3万5000回実施されていたが、最近の年間検査実施数は約5000にまで激減している。全米には10万以上の食品加工工場があり、FDA側も検査対象のプライオリティをより危険度の高いものに置いているため、もう何年もFDAによる検査が行われていないという食品加工工場も少なくない。牛肉、魚、そして鶏肉に関しては、加工段階で政府の定めた安全ガイドラインに従う事が義務付けられている。しかし、ホウレンソウの場合、政府は「自主的ガイドライン」を定めているのみで、O-157感染が判明したあとに行われたホウレンソウの回収も強制的なものではなかった。

22日に疾病対策予防センター(CDC)が行った発表では、カリフォルニア州から出荷されたホウレンソウによるO-157感染者は25州で166人にまで達しており、ウインスコンシン州では死亡例も報告されている。22日現在、袋詰めのホウレンソウから新たなO-157感染は報告されていないが、FDA職員はニューヨークタイムズ紙の取材に対し、「ホウレンソウのO-157大量発生は現在も継続中」と答えている。民間団体「食品安全センター」のデービッド・アチェソン主任医療技官は、問題のホウレンソウの出荷場所と断定されたカリフォルニア州の3つの郡以外で栽培されたホウレンソウは「食べても問題ない」と語ったが、全米のスーパーマーケットでホウレンソウが再び販売される時期については明言しなかった。「問題の地域以外で栽培されたホウレンソウは問題が無いわけで、消費者がそういったホウレンソウを食べるのは大丈夫なのです」。アチェソン氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材にそうコメントしている。

ワシントン・ナショナルズのアルフォンソ・ソリアーノ選手。最近行われた試合でシーズン中に40本塁打と40盗塁を記録して、これまで僅かに3人しか成功していなかった「40・40」の4人目の達成者となったんだけど、22日にニューヨークで行われた対メッツ戦で新たな記録を作っている。22日の試合で今期40本目となる二塁打を放ったソリアーノ選手、メジャー史上初となる「40・40・40」を達成している。今シーズンは本当に新記録が次々に出ているような気がして、サンディエゴ・パドレスの抑え投手トレバー・ホフマンがメジャー通産セーブ数で1位に輝くのも時間の問題といわれている。来年にはバリー・ボンズが通産ホームラン数でトップに立つ可能性が高いし、ロジャー・クレメンスの記録が更新されるのも楽しみだ(現役を続けていればの話だけど)。一部メディアの報道では、ソリアーノ選手がワシントンに残る可能性もあるとかで、大幅アップが確実な年棒が気になるけれど(今期の年棒は1000万ドル)、どうなんでしょうかね?


写真:カリフォルニア州サン・ラファエルのスーパーの野菜売り場では、ホウレンソウの販売が停止された。 (AFP通信より)

ドミニカ生まれの「おとん」が伝説になった日

2006-09-22 14:35:44 | テロリズム
国連総会に出席するため訪米中のベネズエラのウーゴ・チェべス大統領が21日にニューヨークのハーレムを訪れて演説を行ったんだけど、地元の聴衆を前にして「ブッシュはビョーキだ」と語り、相変わらずのチャべス節を炸裂させている。20日の国連総会で行った一般演説では、その前日にスピーチを行ったブッシュ大統領についても触れ、「昨日、ここに悪魔がやってきた。まだここではイヤな臭いがプンプンとする」と語っている。さらに国連本部を離れる際には、記者団に対して「ブッシュは(大統領選挙で)投票を盗んだわけだから、つまりは独裁者であるはず」と独自の見解を示している。こういったコメントにアメリカの国会議員やメディアは怒りを隠せない様子なんだけど、少なくとも1つだけ、チャべス大統領を素直に評価してもいい部分があるとも思う。昨年、ベネズエラ政府は所有する石油会社(シトコ社)に対してアメリカ国内の貧困層を対象に4000万ガロンの石油をタダ同然の価格で販売し、国内の約18万世帯が冬を越すことができた。今年はその量を1億ガロンにまで増やす予定だそうだ。国内の石油価格が上昇し、貧しい人たちへの救済策もほとんど無い状態で(石油会社の重役達が手にするサラリーの額は上がり続けているんだけど)、今の政権が敵視するチャべス大統領が救いの手を差し伸べている現実に、アメリカ人はもっと感謝すべきだと思う(たとえ、それが政治的な目的であったとしても)。長くなったけど、今日はパキスタンのムシャラフ大統領がブッシュ政権から「脅されていた」というニュースを。

パキスタンのムシャラフ大統領は24日に放送されるCBSの報道番組「60ミニッツ」の中でインタビューに答え、911同時多発テロ事件直後にアメリカ政府がパキスタン政府に対し、「タリバンとの戦いに協力しなければ、パキスタン国内を爆撃する」と伝えていた事を明らかにした。インタビューの中でムシャラフ大統領は、テロ事件直後に当時の国務副長官だったリチャード・アーミテージ氏がパキスタン諜報機関のトップに対し、「爆撃を受ける準備をしておけ。石器時代に戻る準備もしておけ」と伝えたとコメントしている。「非常に無礼な言葉だと思いましたよ」。ムシャラフ大統領はそう語っている。現在のところ、アーミテージ氏から問題の発言に関するコメントは出されていない。ブッシュ政権高官の1人はロイター通信の取材に対し、「アーミテージ氏とパキスタン政府高官との間で行われたとされる会話に関しては、何も言う事が無い」とだけコメントした。

ムシャラフ大統領は22日にホワイトハウスでブッシュ大統領と会談を行う予定だ。「60ミニッツ」の中でムシャラフ大統領は、「国益を考えて行動する必要がありました。それこそが、私が行った事なのです」と語っている。911テロ発生前、パキスタンはタリバンと外交関係を結ぶ数少ない国のひとつだった。しかし、テロ発生から数日もたたないうちに、パキスタン政府はタリバンとの外交関係を断絶し、アメリカと協力してパキスタン国内に潜伏していたタリバンやアルカイダの関係者に対する追跡を開始している。911委員会の報告書によると、ブッシュ政権は911テロ事件から間もなくパキスタン政府への協力要請を決定しており、事件から2日後の9月13日にはワシントンでアーミテージ氏と駐米パキスタン大使、そしてパキスタン諜報部の責任者が会談を行っている。911報告書ではアーミテージ氏による「脅迫めいた言葉」は言及されていないものの、ワシントンで会談が行われた同じ日に、ムシャラフ大統領はアメリカ政府からの7つの要請を全て受け入れている。

「60ミニッツ」のインタビューの中で、ムシャラフ大統領はアフガニスタン国境にあるパキスタン軍施設を米軍に引き渡せという要請に「正直うんざりした」と、当時の心境を語っている。テロ事件から5年が経過したが、アフガニスタン国内では現在もタリバンとNATO加盟国によって構成された国際平和部隊との間で戦闘が続いており、アフガニスタン政府はパキスタン政府に対して国境周辺に潜伏する民兵の取締りを強化してほしいと要請している。また、20日にはブッシュ大統領が「ビン・ラディンがパキスタン国内に潜伏しているという確かな情報があれば、米軍をパキスタン国内に展開させる事も考えている」と発言し、これにはムシャラフ大統領も不満を隠せずにはいられなかった。「そんな事をさせる考えはありません。もしビン・ラディンがいるのなら、我々の手でなんとかします」。ムシャラフ大統領はブッシュ発言後に開かれた記者会見でそう答えている。

主力選手のケガや満足の行く結果を出せなかったトレードなど、今シーズンのボストン・レッドソックスはお世辞にも素晴らしいシーズンを送っているとは言い難いんだけど、今日は久しぶりに体内のアドレナリンが過剰分泌されたんじゃないかと心配するほど興奮するニュースが入ってきた。ボストンの友人から携帯電話に連絡があり、電話の向こうでは「ビッグ・パピが歴史を作った!」とアイリッシュ・アクセントで叫ぶ友人が。ゴルウェイから来たアイルランド人と野球について話すたびに(サッカーの代表チームでも、クリケットでもなく、野球ですよ…)不思議な気分になるんだけど、ボストン生活の長い友人は子供の頃から応援するリバプールFC(アイルランド系選手が伝統的に多い)とチームカラーが同じという理由で、ボストン・レッドソックスを応援し始め、それから野球のルールを覚えている。ブリテン島周辺特有の、舌の先が鼻骨に激突したのではと思わせるようなアクセントで、友人はレッドソックスの主砲デービッド・オルティスが2本のホームランを放ったと教えてくれた。これで今シーズンの本塁打が52本となり、ジミー・フォックスによる1シーズン50本塁打という球団記録(1938年)を一気に更新。2006年9月21日、オルティスは今後何十年も語り継がれる球団の「レジェンド」となった。電話口から聞こえてくる「オーレー・オレ・オレ・オレー、パーピー、パーピー」という大合唱。サウスボストンのパブでは数十人のアイリッシュが新記録を祝い、同じような歓声がニューイングランド中で聞こえたんだろうなぁ。


写真:21日の試合で第52号ホームランを放ったあと、ファンの歓声にこたえるデービッド・オルティス選手 (AP通信より)

今日は4にまつわる話でも

2006-09-20 14:02:15 | エンターテーメント・カルチャー
パソコンやプリンターで有名なヒューレット・パッカード社の「社内調査」に関するニュースが、新聞やテレビで何度も報じられている。複数のメディアによると、HP社は2005年2月、当時の会長兼最高経営責任者だったカーリー・フィオリーナ氏を解任したんだけど、その前後に行われた取締役会に関する情報がメディアに流出したため、2005年春頃から社内調査で情報漏えい者を探し始めていたらしい。HP社は探偵会社に調査を依頼し、この探偵社はHP者の取締役や報道関係者の名を騙って、電話会社から個人の通話記録を不正に入手していたそうだ。しかも、CNETの記者に対してはドキュメント付きのメールを送信するという(それを開くと、第三者が他人のメールを自由に閲覧できるソフトウェアがインストールされる仕組みだったらしい)、諜報機関もビックリの「社内調査」。この事件、すでに司法当局も動き出しているんだけど、28日は下院の小委員会でも公聴会が行われるそうです…。さてさて、今日はペンタゴンが開発したビデオゲームをプレーした若者達が、それに影響されて米軍に入隊していく様子を報じたクリスチャン・サイエンス・モニター紙の記事を。

この夏、アラバマ州チェルシー出身のマット・スタンブロとダグ・スタンブロの2人の兄弟は陸軍に入隊した。スタンブロ兄弟は多くのテーィンエージャー同様に、ビデオゲームに影響されて入隊を決めている。スタンブロ兄弟が陸軍での基礎訓練を終了した先週、ペンタゴンは戦闘型ビデオゲーム「アメリカズ・アーミー」の最新版を発表している。「このゲームをプレーするまで、軍隊について考えた事も無かったんです」。クリスチャン・サイエンス・モニター紙の電話取材に対し、ダグ・スタンブロさんはそう語った。911テロ事件後、イラクとアフガニスタンではすでに3000人以上の米兵が命を落としており、米軍はビデオゲームを無料配布したり、入隊時にiPodを支給するなどして、入隊志願者の減少を食い止めようと必死だ。ビデオゲームや携帯型音楽プレーヤーで若者の関心を集めようとする手法には批判も少なくないが、ペンタゴンにとって「アメリカズ・アーミー」は勧誘のパンフレットやビデオ以上に若者の好奇心をくすぐる秘密兵器でもあるのだ。

「アメリカズ・アーミーは入隊の適性検査をバーチャル化したものでもあるのです」。そう語るのは、ゲームの製作者でもあるケーシー・ワーディンスキー大佐。「このゲームの中で我々が若者にアピールしたいのは、リーダーシップやチームワーク、価値観といった軍で必要な道徳的規範なのです」。ワーディンスキー大佐はそう説明する。最近になって陸軍内のビデオゲーム開発チームがジョージア州フォートベニングにある陸軍基地で実施した調査によると、新兵の約60パーセントが「アメリカズ・アーミーを1週間に5回以上プレーした」と答えており、4パーセントにいたっては「ゲームが入隊の動機になった」とまで答えている。「アメリカズ・アーミー」では、プレーヤーがオンライン登録したあと、ゲームをダウンロードして遊ぶ事ができる仕組みとなっている。ゲームの登録者数はすでに750万にまで達しており、アメリカ国内の人気オンラインゲームでは常にトップ5に入っている。

イラク戦争などの影響もあって、アメリカ国内では軍隊の志願者数が年々減少し、米軍は志願者のタトゥーに対する規制を和らげたり、入隊時に最高4万ドルまでのボーナスを支払うなど、若者の軍離れを食い止めるのに頭を悩ませていた。しかし、インターネット環境が整い、若者の間でも1人に1台ずつパソコンが普及する現在、米軍製作のビデオゲームは予想以上の効果を挙げているようだ。「アメリカズ・アーミー」が最初に作られたのは1992年。それから何度かモデル・チェンジを繰り返し、現在ではパソコンで無料ダウンロードが可能なのに加えて、プレイステーションやXboxといったテレビゲーム用のソフトも約20ドルで発売されている。最新版のゲームはリアルに作られており、実際の戦場のように、戦闘シーンが始まると思うようにライフルを使いこなせない事もある。米軍はこのゲームで戦場の「リアルさ」やチームワークなどの重要性を若者に学んでほしいと主張するが、こういったゲームが小学生でも簡単にダウンロードできるため、「やりすぎではないか?」という声も少なくない。

最近行われたメジャーリーグの試合で「4」にまつわる記録が相次いだものだから、今日は最後にその話題について触れておこうと思う。まずは、ワシントン・ナショナルズのアルフォンソ・ソリアーノ選手。16日に地元のRFKスタジアムで行われたブルワーズとの試合で、メジャー史上4人目となる1シーズン40本塁打・40盗塁を達成。過去に「40-40」を達成したのはホセ・カンセコとバリー・ボンズ、アレックス・ロドリゲスの3人のみで、今シーズン終了後にはFA権を取得するソリアーノに触手を伸ばす球団がいくつも出てくると思う(レッドソックスよ、今が買い時でっせ!)。それから2日後の18日にはロサンゼルス・ドジャーズがやってくれました。これもまたメジャー史上4度目となる、4者連続ホームラン。この記録は60年代に3度あったんだけど、1964年5月2日にミネソタ・ツインズが記録して以来、実に42年ぶりの記録となる。こういった記録達成の瞬間を球場で見てみたいんだけど、なかなかタイミングがねぇ…。


写真:記録達成の翌日、フランク・ロビンソン監督と談笑するワシントン・ナショナルズのアルフォンソ・ソリアーノ選手(左) (AP通信より)

セントルイスに行ってました

2006-09-18 12:51:27 | Weblog

14日から3日間、所用でミズーリー州セントルイスに行ってきたんだけど、6年ぶりにセントルイスを訪れてみて、町が綺麗になったなぁというのが正直な感想。この町を初めて訪れたのが小学生の時で、かれこれ20年前になる。ボストンで過ごした学生時代にも、セントルイスには何度か行っているものの、最後に行ったのが2000年だったと記憶している。滞在中は何年も前にリタイアした元大学教授夫妻らと食事をしたり、僕が小学生の頃から御世話になっているアメリカ人夫妻の家に遊びに行ったり、ダウンタウンのスポーツバーで夜中までセントルイス・カージナルスのファン達と野球談義をしたりと、楽しい3日間だったわけです。

元大学教授の夫妻とブランチを食べながら、ローマ教皇ベネディクト16世の発言が大きなニュースになっているという話をしたんだけど、前任のヨハネ・パウロ2世が長年かかって築き上げてきた「ダイバーシティ」という遺産を、カリスマのかけらも無いドイツ生まれの新教皇が潰している現状を夫妻は危惧していた。BBCニュースの掲示板に「イスラム教の問題点を指摘する前に、ベネディクト16世はカトリック教会による暴力の歴史について話すべきだったのでは?」という書き込みがあったんだけど、権力欲の塊みたいな今の教皇には無理なんだろうね、きっと。以前にある人から聞いて笑ってしまったんだけど、もともと学生時代にリベラル派だったベネディクト16世(ライツィンガー氏)は、バチカン内部で権力あるポジションに就き始めると、一転してコチコチの保守派に変わってしまったらしい。なんか、ネオコンの方々と似たようなメンタリティ…。

滞在中、今年から新しくオープンしたセントルイス・カージナルスの本拠地でサンフランシスコ・ジャイアンツとの試合を見ることもできた。今年からオープンした球場は以前と同じ名前で「ブッシュ・スタジアム(バドワイザーが有名なアンハイザー・ブッシュ社から名付けられた)。以前のスタジアムはワシントンのRFKスタジアムみたいなデザインだったんだけど、僕は新しい球場のほうが気に入った。新球場は外野席が1階部分にしかなく、2階や3階部分が取り払われているため、野球を見ながら町の景色も楽しめる贅沢さ。行った事は無いけど、ピッツバーグの球場と似ているような気も。

新球場で撮影した写真を何枚かアップしておきます。

   

    

    こんな感じで、球場から見る景色は最高!

  

チームの看板選手、アルバート・プホルス

 

バリー・ボンズへのブーイングはすさまじかった。

  


アップル社、ついに映画配信事業を開始

2006-09-13 13:11:58 | ビジネス
少し前のブログで『ある大統領の死』というイギリスのテレビ映画について紹介したけれど、数ヶ月以内にアメリカ国内の劇場でも公開される見通しだ。12日のCNNによると、ニューマーケット・フィルムズ社が100万ドルでアメリカ国内での劇場配給権を獲得し、数ヶ月先の劇場公開に向けて動き出したんだとか(イギリスでは10月にデジタルテレビ局で放送される予定)。この作品は10日夜にカナダのトロント映画祭で初めて上映されたんだけど、観客は作品のストーリーだけではなく、デジタル技術を駆使して作られたブッシュ大統領らの映像にも驚かされたらしい。ブッシュ大統領が狙撃されるシーンでは、倒れこむ俳優の動きとブッシュ大統領の顔が合成されているとCNNは報じている。また、チェイニー副大統領による追悼演説シーンでも同様の技術が用いられたそうだ。この作品に関する情報は今もほとんど無い状態なんだけど、数ヵ月後に映画館に行ってみようと思う。さて、今日はアップル社が映画のダウンロード事業を開始するというニュースを。

アップル・コンピューター社は12日、来年初めにも映画の配信サービスを開始すると発表した。アップル社は来年初めまでに新たな携帯型プレイヤーを発売する予定で、iTVと名付けられた新機種は映画のダウンロードだけではなく、接続する事によって普通のテレビでも購入した映画が見られるという機能が盛り込まれている。アップル社のiTunesミュジーックストアでは、今後ディズニー社が製作した映画が配信される予定だ。アップル社のスティーブ・ジョブズCEOがディズニー社の役員も兼任していたため実現可能となったディズニー映画の配信サービスだが、先週同じような配信サービスを発表したオンライン書店最大手のアマゾン社は、すでに7つの映画スタジオと配信サービスに関する契約を結んでいる。CBSニュースの報道によれば、iTVの販売価格は299ドルに設定される模様で、発売時期は来年初め頃になるのだという。

12日にサンフランシスコで行われたイベントに出席したアップル社のジョブズCEOは、配信サービスを開始する時点で約75作品がiTuneにてダウンロード可能になるとの見通しを示し、これらの作品はディズニー社だけではなく、傘下のピクサーやミラマックスによって製作された作品も含まれていると語った。1つの作品をダウンロードするのにかかる料金だが、新作は14ドル99セントという料金設定になっており、作品の発売前に予約すれば12ドル99セントでダウンロードできる。過去の作品は1本につき9ドル99セントでダウンロードが可能だ。ディズニー社のロバート・アイガーCEOは75作品のダウンロード開始がiTVの発売前に実施される可能性を示唆し、すでにテレビ番組のオンライン配信サービスが成功を収めている事から、映画のダウンロードも大きなビジネス・チャンスになるだろうと自身を見せた。

12日のイベントの招待状は各メディアにも送られていたが、招待状は「ショータイムの始まりです」とだけシンプルに書かれていたため、国内のメディアはアップル社による映画配信サービスの開始について様々な推測を展開させていた。現時点ではディズニー社とその傘下にあるスタジオで製作された映画のみの配信が発表されているが、複数の情報筋はCBSの取材に対し、他の映画スタジオとアップル社の間で配信サービスの価格設定やコピー機能防止システムなどに関する話し合いが現在も続いているのだと語っている。映画のオンライン配信サービスはすでに数社で実施されており、先週はアマゾン社もこの事業への参入を発表したが、アップル社が近く発売するiTVはダウンロードした映画をテレビでも見ることが可能なため、近いうちに映画のオンライン配信サービスをめぐる勢力図が大きく変化する可能性もある。

コネチカット州で1989年、チップの少なさにキレたウェイターが、レストランの中で客に襲い掛かって怪我を負わせた事件があったらしい。レストランでウェイターやウェイトレスとして働く人達にとってチップは生活に関わる大きな問題で、1ヶ月のチップの量によってはアパートの家賃を払うのさえ困難になる場合がある(その反対に、僕はワシントン市内のレストランで働くウェイターの中で、チップを貯めてドイツ車を買った人を2人知っている)。最近、36歳の元ウェイターがジョージア州アトランタでNPOを設立した。AP通信の記事によると、このNPO団体は全米のレストラン・オーナーに対して、客の食事代金の20パーセントを自動的に上乗せして、その上乗せ分をウェイターやウェイトレスに与えるように求めているらしい。すでに2500人以上のウェイターらがこの団体に登録をしており、将来ちょっとしたロビー団体になる可能性もあるのだとか。ウェイターの大変さも理解できるけど、最低のサービスに自分の食事代の20パーセント分のチップを出すなんて馬鹿げてると思うんだけどな。あくまで僕の意見だけど、行き届いたサービスを提供できるウェイター達は自然とチップも多くもらっているような気がする。レストラン側が最低賃金の引き上げをする方が筋だと思うんだけどあぁ。


写真:12日にサンフランシスコで行われたアップル社主催のイベントで、iTVについて説明するスティーブ・ジョブズCEO (ロイター通信より)

5年がすぎて

2006-09-12 14:19:29 | テロリズム
2001年9月11日の衝撃から5年。アフガニスタンやイラクでは今でも戦闘が続き、ワシントンポスト紙はアフガニスタンの現状を「武装勢力による暴力とアヘンの取引が原因で、社会的・経済的に完全に破壊された状態」と評している。そして、フセイン大統領とテロリストとの関係については、メディアに加えて連邦議会までもが「関連なし」と結論付けている。テロ事件から5年。国民の間でも「この5年間について熟考する動きがあるようだ。今日は、9月11日を迎えたアメリカ国内の様子と、ブッシュ政権の掲げる「対テロ戦争」に対する有識者や国外メディアの声について紹介します。

2001年9月11日に発生した同時多発テロから5年目を迎えたニューヨークでは、マンハッタンの世界貿易センター跡地で午前8時46分と9時3分の2回にわたって黙祷が捧げられ、つづいて警察官や消防士らによって「ゴッド・ブレス・アメリカ」などの曲が演奏された。そして、建物が倒壊した9時59分と10時29分にも再び黙祷が行われている。「5年前に発生した辛い出来事を思い出すため、われわれは再びこの場所に戻ってきました。この場所で多くの方がなくなられたという事実は、これからも我々の記憶から消え去る事は無いでしょう」。マイケル・ブルームバーグ市長は追悼式典でそう語った。10日にワールド・トレードセンター跡地で献花を行ったブッシュ大統領は、11日にペンシルバニア州シャンクスビルとペンタゴンで行われた2つの追悼式典にも参加している。またワシントン市内ではユダヤ系アメリカ人の会議に出席したクリントン元大統領が、「911テロはアメリカや世界が1つになるきっかけになった」とコメントした。

アメリカ国外のメディアもテロから5年目を迎えたアメリカ国内の様子や、ブッシュ政権の掲げる「対テロ戦争」の展望について大きく報じているが、ブッシュ政権の外交政策を疑問視する内容のものも少なくない。フランスのル・モンド紙は社説の中で、「911テロ事件後、アメリカ国内がテロ攻撃の標的となる事は無かったが、間違いなく世界は悪い方向へと変わってしまった」と、ブッシュ政権の対テロ政策がアメリカ国外に与えた影響を指摘した。ニュージーランドのヘレン・クラーク首相も最近、「911テロ事件以後、世界がより安全になったかといえば、答えはノーです」とコメントしている。クラーク首相は以前から欧米諸国がイスラム世界の穏健派政権と関係を密にし、過激主義に走るイスラム教徒の若者が存在する背景を西側も理解すべきだと主張してきている。アメリカ国外では、支持率低迷に悩むブッシュ政権がテロ5周年をイメージ回復に利用しているだけという声が存在し、イスラエルのハーレツ紙も「テロ発生から5年目を迎えたアメリカで、911はブッシュ政権の政治的な道具となっている」と報じている。

ブッシュ大統領は11日午後9時(東部時間)に国民向けテレビ演説を行い、「テロとの戦いには国民の団結が必要」と訴えたが、国内の有識者の間での評価は日毎に厳しさを増してるようだ。外交専門誌「フォーリン・ポリシー」の7・8月号は(隔月)、「テロリズム指標」と題した記事を掲載し、その中では120人以上の外交・安全保障専門家らによってブッシュ政権の外交政策に格付けが行われている。格付けに参加したメンバーの中には元国務長官や元安全保障担当補佐官らの名前もあり、「テロリズム指標」の編集に携わったマイク・ボイヤー氏はCBSの取材に対し、「政党に関係なく、過去50年にわたってアメリカの安全保障問題に関わってきた人達が集まったのです」と語っている。記事の中では専門家の84パーセントが「アメリカは対テロ戦争に負けつつある」と答えており、ブッシュ政権の外交政策そのものが対テロ戦争を難しくしているのだと結論付けている。全体の87パーセントが「イラク戦争は対テロ戦争にマイナス効果だった」と答え、81パーセントの回答者が「グアンタナモ収容所の存在は、対テロ戦争にダメージを与える結果となっている」と回答した。

最後にニューヨークから宝くじに関する話を。ロング・アイランドのデリで働く56歳のバレリー・ウイルソンさんは先月、スクラッチ式の宝くじで見事に100万ドルを当てた。これだけでも凄く羨ましい話なんだけど、実はバレリーさんが宝くじで100万ドルを当てたのは今回が初めてではなく、4年前の州営宝くじでも100万ドルを手にしていたのだ。AP通信によると、先月の宝くじで当てた100万ドルは20年かけてバレリーさんに支払われる予定で(年に5万ドルずつ)、3人の子供達の住宅購入費用に使うそうだ。先月の宝くじで100万ドルを当てる確立が約70万分の1で、4年前の宝くじで100万ドルが当たる確立が約520万分の1。これに両方当たる確立は、わずかに3兆6000億分の1となる!でも、ニューヨーク州では過去に宝くじで100万ドル以上の賞金を2度獲得した人が2人もいたらしい。今度コンビニに行ったらためしに1枚買ってみようかなと、少しばかりの希望を抱いてしまいそうな話でした。


写真:ペンシルバニア州ピッツバーグで11日に行われたパイレーツ対ブリューワーズの試合前、同州シャンクスビルに墜落したユナイテッド航空93便の乗客やクルーを追悼するイベントが行われた。グランドの中央には犠牲者の家族や友人が集まった。 (AP通信より)

カラマリ・パスタとカノッリ、そしてアクセル・ローズ

2006-09-10 17:08:02 | 政治
久しぶりにRFKスタジアムで観戦したDCユナイテッドの試合。今日は天気もよく、真夏ほどの暑さも無かったため、スタジアムには結構な数のファンがいた(2万人は軽く超えていると思ったんだけど、スタジアムの公式発表は1万9812人だったそう)。今シーズンのDCユナイテッドはファンである僕ですら気味が悪いほど絶好調で、リーグ最高の守備陣は25試合で僅かに26失点しか喫していない。しかも25試合で43点をたたき出した攻撃陣もリーグトップで(12チーム中)、今日の相手が「勝てないフットボール」と「つまらないフットボール」を見事に融合させているソルトレーク・シティだけに、大量得点を期待したんだけど、得点はフレディ・アドゥのフリーキックによる1点だけ。試合も1-1の引き分けで終わったんだけど、内容は明らかにソルトレーク・シティの方がベターだった。ゲームメーカーが欲しいです、本当に。ホワイトハウスやワシントン記念塔を質に入れて、その金でロナウジーニョでも獲得するくらいの粋さを見せてほしいんですけどねぇ。さてさて、今日はカリフォルニア州知事の発言がまたまた問題になったというニュースを。

カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー知事が今年春に知事室内で側近と交わした会話の内容が8日付のロサンゼルス・タイムズ紙によって報じられ、キューバ人やプエルトリコ人を「生まれつき、頭に血が上りやすい性分」と呼んだ知事に批判が集まっている。タイムズ紙はシュワルツェネッガー州知事と側近との会話が録音されたテープ(約6分間の長さ)をウェブ上で公開したが、テープの入手経緯については明らかにしなかった。側近との私的な会話がなぜ録音されていたのかについて、タイムズ紙は「シュワルツェネッガー知事のスピーチライターが、知事の日頃の考えや話し方のリズムを記録するため、テープレコーダーを頻繁に使用していた」と報じている。知事室のドアを閉めた状態で行われた側近との会話では、知事や側近が非常にリラックスし、公の場では決して口にできないようなテーマなども話されている。

ロサンゼルス・タイムズ紙によって公開されたテープでは、側近の1人がカリフォルニアでは唯一のラテン系共和党議員のボニー・ガルシア州議員を褒め称え、シュワルツェネッガー知事と共に彼女の「人種的バックグラウンド」について議論している。この中で州知事はガルシア議員がキューバ系かプエルトリコ系かは大きな問題ではないと前置きして、「つまりキューバ系もプエルトリコ系も頭に血が上りやすい人達なんだよ。だって、ラテン系の血と黒人の血が混ざり合っているんだからね。それがああいったキャラクターを作っているんだ」と語っている。シュワルツェネッガー州知事はキューバ生まれで元重量挙げの世界的選手だったセルジオ・オリベイラ氏を引き合いに出し、「あいつもそんなタイプだったからね」と続けている。ガルシア州議員はロサンゼルス・タイムズ紙の取材に対し、州知事のコメントで嫌な思いをしたという感覚は全くないと答えている。「知事は物事をはっきりいうタイプなので、好感が持てます。私自身が知事との会話の中で、自分の熱くなる性格をジョークにするくらいなんですから、全く問題ありあせん」。ガルシア議員はそう語っている。

シュワルツェネッガー知事は8日にカリフォルニア州で記者会見を開き、ロサンゼルス・タイムズ紙が報じたテープの内容を事実と認めた上で、発言について謝罪している。「テープの内容に嫌な思いをされた方々には、本当に申し訳ない気持ちです。自宅で自分の子供達が同じような会話をしているのを聞けば、間違いなく怒ると思います」。シュワルツェネッガー知事はそう語った。しかし、再選を目指す知事にとって、今回の一件によるイメージダウンは必至との声も存在する。シュワルツェネッガー知事のコメントが問題となったケースは今回が初めてではなく、過去にはカリフォルニア州議員達を「女々しいやつら」と呼んだり、「看護婦のケツを蹴飛ばしてやった」というコメントが大きく報じられたことがある。2003年の知事就任前には俳優時代に映画のロケ地などで行った複数のセクハラ行為に注目が集まり、のちに「時に度を越えた行為がありました」と謝罪している。

友人の奥さんが40回目の誕生日を迎えたので、金曜日の夜にアレキサンドリアにある「トラットリア・フランコ」というイタリア料理店でお祝いをした。参加メンバーは僕を入れて20人ほど。友人がイタリア系で、誕生日を迎えた奥さんもローマで働いていた事があったので、イタリアンで彼女の誕生日を祝うことにしたのだ。イタリアン・レストランでパーティーを開く機会って意外と多いんだけど、昨日は机の配置に少し感動。机を横一列に並べた形で、それこそ「最後の晩餐」のような形で食事をしたんだけど、イタリア映画でしか見たことの無かった食事のスタイルが凄く新鮮だった。このレストランはナポリ出身のオヤジさんが家族でやっていて、店に飾られた写真にはルチアーノ・パバロッティやロナルド・レーガン、ジョージ・ブッシュ元大統領などの姿もあった。店の奥に飾られた額の中には前ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世直筆のポストカードもあったんだけど(このレストランで食事をしたわけではないらしい)、「たまには教会にも行くように」というメッセージに苦笑してしまった。食事がおわると、近くのバーに行って朝の4時過ぎまでカラオケ(ボックスではないです)を堪能。20人以上による「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」の合唱で、夜は明けていったのでした。


写真:9日の対ソルトレーク・シティ戦でゴールを決めたフレディ・アドゥ選手 (AP通信より)

プラシーボ効果:実践編

2006-09-08 14:57:12 | エンターテーメント・カルチャー
フィラデルフィア・フィリーズのライアン・ハワード選手。この前のブログでも少し紹介したメジャー2年目のスラッガーは、今期の年棒が35万5000ドル(ESPN調べ)で、1ドルを116円で計算しても「僅かに」4118万円ほどだ。そのハワード選手が8日夜に行われた対マーリンズ戦で第54号ホームランを放っている。これで打点を135にまでのばしたハワード選手、本塁打と打点の2部門でダントツの首位だ。今シーズン、フィリーズに残された試合数はあと22。フィリーズがプレーオフに進出する可能性もまだまだ残っているし、ハワード選手の本塁打数と打点にも注目したい。8月に14本塁打と41打点を記録したハワード選手は今月も絶好調で、すでに5本のホームランを放っている。60本を目標とせず、行ける所まで行ってほしいものです。さて、今日は10日にABCで放送されるドラマの内容をめぐって、クリントン政権のメンバー達が激怒しているというニュースを。

米ABCテレビは9月10日から2夜連続で911テロ事件をテーマにしたミニシリーズを放送するが、ドラマで描かれているるテロ事件以前のアメリカ外交に対して、クリントン政権時の閣僚達からは「事実と大きく異なっている」と批判が噴出している。『911までの道のり』と題された今回のドラマは制作費4000万ドルを投じ、主演をつとめるのがベテラン俳優のハーベイ・カイテルという話題作でもあるが、クリントン政権時の対テロ政策のずさんさが描かれてもおり、その内容がかなり脚色されたものだという指摘が少なくない。クリントン政権で国務長官をつとめたマデリン・オルブライト氏や国家安全保障担当補佐官だったサンディ・バーガー氏らは先週、ABCのロバート・アイガーCEOに対して書簡を送り、その中でドラマの内容に懸念を示していることを伝えるとともに、「問題の部分を編集するか、放送そのものを中止してほしい」と求めている。ABCは7日午後に声明を発表し、「編集作業は現在も続いており、ここで批判を行うのは無責任であり時期尚早だ」と反論している。

クリントン元大統領の広報官をつとめるジェイ・カーソン氏はMSNBCの取材に対し、「ABCとディズニーは今回のドラマが完全なフィクションだと認識しており、その内容は911委員会の調査報告書などの内容と大きく異なるものなのです」という声明を発表している。「伝統や実績のあるテレビ局が利益を追求する目的で、911事件をドラマ化するのはいかがなものでしょうか」。カーソン氏は声明の中でABCをそう批判した。10日から2夜連続で放送される『911までの道のり』だが、ABCは911委員会の報告書や関係者からのインタビューをもとにして作られたドラマだと説明している。先週、ABCのロバート・アイガーCEOに対して連名で書かれた書簡は、ドラマの中に事実とは異なる内容のエピソードが含まれていると指摘している。ドラマの中ではアフガニスタン空爆の直前にパキスタン政府に対して警告を発するオルブライト元国務長官の姿も描かれている模様で、このシーンについてオルブライト氏自身は書簡の中で、「でたらめであり、私自身の名誉を損なうものだ」と語っている。

前出のバーガー氏もドラマでは描かれており、CIA高官から出されたオサマ・ビンラディン氏攻撃のリクエストをバーガー氏が許可しなかったシーンが存在する。このシーンに対してバーガー氏は、「いくらドラマとはいえ、このような脚色が正当化される理由は存在しません」と書簡の中で語っている。オルブライト氏らとともに書簡を作成したクリントン財団のブルース・リンゼー代表は、『911までの道のり』の中でクリントン政権がテロの脅威にそれほど関心を示していなかったように描かれていると指摘し、「ドラマの製作者らによる歴史の書き直しが、何百万ものアメリカ市民に間違った情報を与える事になる」と書簡で語っている。2夜連続で放送される『911までの道のり』は合計で5時間にも及ぶ長編となっており、ABCは今回の作品をコマーシャルをはさまずに放送する予定だ。主演のハーベイ・カイテルのほかに、パトリシア・ヒートンやドニー・ウォルバーグらも出演する。

アメリカで生活したり、旅行で訪れた経験のある人なら分かると思うけど、この国ではカフェイン抜きコーヒーを飲む人が本当に多くて、「コーヒーはカフェイン抜きに限る」と世界中の珈琲愛好家が聞いたら卒倒してしまいそうな事を平気で言う人が本当にいたりするのだ。昨日の夜、僕は仕事のあとで友人とあるレストランで食事をした。そのレストランはウェイターやウェイトレスの動きが全国平均をはるかに下回るスローさで知られているんだけど(嘘だと思うなら、ここで食事をしたあとで、マンハッタンのレストランに行ってみてください。ビデオを3倍速で見ているような錯覚に陥るので!)、昨日の食事のあとでカフェイン嫌いの友人がカフェイン抜きのコーヒーを頼んだ。ところが、30分たってもコーヒーが出てこず、イライラし始める友人。それから間もなく、コーヒーは出てきたんだけど、どう見ても普通のコーヒーを水で薄めたような色だった。カップの中のコーヒーの色を見た瞬間に、僕は「絶対にカフェイン抜きのコーヒーを面倒くさがって作らなかったんだ」と確信したんだけど、友人は美味しそうにそのコーヒーを飲んでいた。「プラシーボ効果」なんて言葉があるけど、あのコーヒーは絶対にカフェイン抜きじゃなかったと僕は思っている。


写真:7日の試合で54号ホームランを放ったフィラデルフィア・フィリーズのライアン・ハワード選手 (AP通信より)