IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ひさしぶりに見たよ、ホタルの大群

2005-07-10 13:43:28 | テロリズム
金曜日もテレビのニュースでは、ロンドンで発生したテロ事件の最新情報が一日中流されていて、911テロ事件の事を思い出さずにはいられないような状況だった。夕方6時ごろになって、自宅に友人が車で迎えに来てくれた。そう、金曜日の夕方といえば、仕事が終わってからみんなでサッカーの練習をする日で、車にはすでに4人が乗っていた。グラウンドまで向かう途中、車内では当然のようにロンドンの話が出てきたんだけど(一緒にサッカーをする仲間にもロンドン出身者が何人かいる)、暗い話題を切り替えようと運転中の友人がCDをかけてくれた。流れてきた曲はサード・ワールドの「レゲエ・アンバサダー」で、懐かしい曲に癒やされた僕らは、そのままレゲエの話で盛り上がって練習場へと車を走らせた。

1時間ほど練習して、さらにもう1時間ほどミニゲームをやって、この日も汗まみれで練習は終わった。いつもなら練習後にみんなでバーに行って一杯やって帰るのが通常で、この日も駐車場付近で着替えてから(シャワーがあればもっといいんだけど…)、ワシントン郊外にある妙に小奇麗なアイリッシュ・パブに向かおうとした。その時、まだグラウンドでペナルティ・キックの練習をしていた何人かの友人がいきなり叫び声をあげ、僕らも気になっていってみると、ゴールポスト裏の草むらに大量の蛍を発見。結局30代周辺のいい年をしたオッサン共が、グラウンドに座って30分ほど蛍の動きを鑑賞していたのでした…。オーストラリアの田舎町にいた頃、自分の所属していたサッカーチームの早朝練習でグラウンドにカンガルーが来て大騒ぎになった事があったけど、今回は静かに夏の夕べを楽しめてヨカッタ。

パブから自宅に戻ってきたら、時間はまだ午後11時を少しまわったばかりだった。シャワーを浴びてから何人かでクラブに行こうとしたけれど、疲れがピークに来ていたので、この日は家でゆっくりとする事にした。30分ほどバスタブにつかって、それからソファーに横になってテレビのトークショーを見る。しばらくして、そろそろ寝ようかなと思っていたら、サッカーの練習中に友人の一人から聞いた話を思い出した。「ソウ」というホラー映画が予想以上に面白かったらしく、これが自分の加入しているケーブル会社のオン・デマンド・システムで見ることができるらしい。すでにソファーにうつ伏せになっていたが、軽い気持ちでこの映画をオーダーする事にした。どうせ半分寝たままの状態なんだから、夜中1時から見るホラー映画も怖くない-そんな軽い気持ちで…。

映画が始まって10分足らず、気が付けば僕はソファーにきちんと座り直して映画を見ていた。コワい、本当に。この映画、幽霊とかゾンビとかがテーマではなく、連続殺人犯に命を狙われる医者やカメラマンの話だ。ホラーというよりは、スリラーとサスペンスの中間にあるような作品で、どことなく「レザボア・ドッグス」と似たようなシチュエーションで話が進行していくのにも新鮮味を感じた。映画の最後に思いもよらない結末が待っていて、製作スタッフのアイデアにただただ脱帽!この映画、120万ドルほどの低予算で、しかも2週間ちょっとで撮影されたものらしいけど、オーストラリア人監督のジェームズ・ワンの名前は覚えておこうと思う。さてさて、今日もロンドン関連の話を少しだけ。ワシントンからのブログだけど、どうも気になってしまうので…。

サンデー・タイムズ紙が10日に報じたところによると、アルカイダはイギリス国内の大学で比較的裕福なミドルクラスのイスラム系学生を対象に勧誘活動を展開している模様で、同紙が入手した政府内文書の内容から明らかになった。組織から派遣された勧誘担当者らがイギリス国内の大学をまわり、そこで理系のイスラム系学生を中心にリクルート活動を展開している模様だ。とりわけ、IT技術やエンジニアリングを学ぶ学生が勧誘のターゲットとなっている。先週ロンドンで発生した連続爆破テロでは、地下鉄内の爆発全てが50秒以内に発生しており、警察は事件の背後に爆破技術を熟知して過去に犯罪暦のないイギリス人が関係している可能性を示唆した。内務省と外務省が昨年共同で作成した文書には、英国内にアルカイダのシンパが数千名の規模で存在するとの指摘がある。文書のコピー(1)文書のコピー(2)文書のコピー(3)文書のコピー(4)

元ロンドン警視庁長官のスティーブンス卿はサンデー・タイムズの取材に対し、イギリス生まれかイギリス在住の3000人あまりが過去にビン・ランディンの訓練キャンプに参加した事があると語った。昨年マドリッドで発生した爆弾テロ事件後にブレア首相によって作成が命じられた政府文書では、「過激派グループが好奇心が旺盛で影響を受けやすい年頃の学生をターゲットに、全国の高校や大学で勧誘活動を行っている」との報告がされている。報告書ではイギリス国内のイスラム教徒でテロ活動を支援しているのは全体の僅か1パーセント未満と極めて少ない事が強調されており、約1万人が過去に過激派による集会に参加した事があるとの報告も付け加えられていた。治安関係者はイギリス国内で実際にテロ活動を準備する過激派が数百人ほど存在するものと見ており、アルカイダによる学校を標的にした勧誘活動にも注目している。

アルカイダに勧誘される学生の特徴として、友人が少なかったり、学内の民族・宗教系クラブに在籍している者が多いとも報告書は指摘している。数世代前にイギリスに移住した北アフリカやカシミール地方出身者の子息らが勧誘の対象になる場合もあり、こういった学生の家は比較的裕福で、リベラル思想の学生も少なくないようだ。また、成人後にイスラム教に改宗した学生らも勧誘の対象となっているようで、白人学生やカリブ出身者らも含まれているとの事。報告書では、イラク戦争に参加したイギリス政府の外交姿勢を「ダブル・スタンダード」と感じた若いイスラム教徒の間で国に対する深い失望感が存在した事が挙げられ、過激派組織がそれを利用しようとしていると警告している。

同じくイギリスのインディペンデント紙は10日、ロンドン連続爆破テロの背景に、アルカイダが傭兵を使った可能性があると報じている。捜査当局はアルカイダとは無縁の犯罪組織が「純粋な契約」のもとで、ロンドン市内でのテロを決行した可能性もあるとして、現在も捜査が行われている模様だ。首都の公共交通網をズタズタにした今回のテロがバルカン半島出身者の可能性もあるようで、捜査関係者の中には事件発生前に全く情報が入ってこなかったのは、実はそういったアルカイダと過去にリンクの無かった組織が関与しているからではないかと指摘する者もいた。イギリス国内では新たなテロが実行に移されるのではという懸念があり、9日には国内第2の都市バーミンガムでテロの可能性が当局によって察知され、市内の繁華街から約3万人が避難する騒ぎとなっている。

パラマウント・ピクチャーズの発表では、オリバー・ストーン監督とニコラス・ケイジによる911テロ事件をテーマにしたドラマが制作されるとかで、公開は来年になるらしい。ケイジはこの映画の中でジョン・マクローリンという実在の港湾警察官を演じる予定で、今のところ共演者の名前は出てきていない。ストーン監督といえば数年前にパレスチナの故アラファト議長やキューバのカストロ議長をインタビューしたテレビ用ドキュメンタリー作品を撮っていたけど、カストロ議長をテーマにした作品ではキューバ系アメリカ人から抗議が殺到したと聞いたことがある。「JFK」、「ニクソン」、それに最近の「アレクサンダー」でも歴史を歪曲したと批判されたストーン監督だけど、今回は911という非常にシビアなテーマをどう料理するのか気になる。