IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

傷心の赤靴下帝国はビッグ・パピに祈りをささげる

2006-08-30 15:29:02 | Weblog
今日は疲れてしまい、パソコンのキーを叩くのが凄く遅いんだけど、「ビッグ・パピ」がマサチューセッツ総合病院で検査を受けるというニュースを聞き、まるで本当に自分の父親が入院したかのような不安に襲われている。「ビッグ・パピ」とはボストン・レッドソックスのデービッド・オルティス選手のニックネームで、ドミニカ生まれのオルティスはチームの主砲という枠を超えて、チームの顔とも言えるスター選手だ(携帯電話を新機種にした今年初めから、僕の電話の待ち受け画面ではビック・パピがバットを構えている)。そのオルティス選手が28日に動悸に見舞われて、急遽オークランドからボストンに戻り、病院で身体検査を受けることになったのだ。実はその数日前にも同じ症状に見舞われており、病院では細かな検査が実施される予定らしい。オルティス選手といえば、2004年の神懸り的な活躍がよく知られるように、ここぞというチャンスで必ず活躍する選手。愛嬌のあるキャラクターも手伝って、ニューイングランド以外の地域でも人気が高い。また、今シーズンはすでに47本の本塁打を記録していて、ジミー・フォックス選手が1938年に記録したチーム内のシーズン本塁打記録(50本)を抜くのも時間の問題と言われていた。

チームメイトのマーク・ロレッタ選手は「自分の周囲で怪我人が出るのは日常茶飯事だけど、今回のケースはそういった範囲を超えてしまっているから…」と、ショックを隠せないようだ。ロレッタ選手の母親は心臓病を抱えていて、つい最近もオルティス選手と2人でその話をしていたらしい。オルティス選手は8月19日にもマサチューセッツ総合病院で脱水症状の治療を受けている。ESPNによると、オルティス選手は18日から本拠地フェンウェイパークで行われた対ヤンキース5連戦が始まる少し前からストレスと不眠症に悩まされていたようで、自宅で全く眠れない状態だったのだという。フェンウェイでの5連戦は、レッドソックスが63年ぶりに5連敗を喫するという結果に終わったが、オルティス選手は3戦目終了後に病院に運ばれていた。チームの主力選手が次々と故障に見舞われて、ビッグ・パピにかかる期待とプレッシャーは相当なものだったと思う。今回の動悸も一部の報道ではストレスが原因だと言われているんだけど、とにかくゲームよりも、そしてプレーオフ進出よりも、まず体を休めてほしい。「試合は重要だけど、それよりも大切にしなければならないものがある」と、監督のテリー・フランコーナは語っている。とにかく、いい知らせを待ちましょう。どれだけの時間がかかっても。

写真:8月19日の対ヤンキース戦で3ランホームランを放ったマニー・ラミレス選手(右)を祝福するデービッド・オルティス選手 (AP通信より)

DNA鑑定はシロ そして事件は振り出しに

2006-08-29 15:03:03 | 犯罪
今週中に何らかの動きがあると思っていたけれど、ジョンベネちゃん事件に関与したとして逮捕されたジョン・マーク・カー容疑者のDNA鑑定が終了し、結果は見事にシロだったようです。これで、カー容疑者はジョンベネちゃん事件に関する全ての容疑で立件が見送られることになり、2001年にカリフォルニア州で児童ポルノビデオを所持していた罪だけが残る形となる。もともとカー容疑者の供述を疑問視するメディアが多かったのも事実なんだけど、彼が捜査当局に話したとされる「容疑者しか知りえない情報」の詳細や、一部のメディアが事件捜査の最後の切り札と報じていた筆跡鑑定(ラムジーさん宅に置かれていたとされる身代金要求のメモと、カー容疑者が1982年に高校の卒業アルバムに書いたメッセージに共通点が見られると言う報道だった)についての続報はほとんど出てきていない状態だ。これから検察関係者の進退問題に発展しそうな感じだけど、今日はこのニュースを。

1996年12月26日にコロラド州ボルダーで発生したジョンベネ・ラムジーちゃん殺害事件の容疑者として、タイのバンコクで逮捕されたジョン・マーク・カー容疑者だが、DNA鑑定の結果はシロだった。コロラド州ボルダーの郡検察は28日、容疑者から採取したDNAとジョンベネちゃんの遺体から採取した犯人のものと思われるDNAが一致しなかったとして、ジョンベンちゃん殺害容疑などでの立件を行わないと決定した。カー容疑者はタイのバンコクからカリフォルニア州ロサンゼルス近郊に移送され、それから数日後の24日にコロラド州ボルダーに再び移送されていた。ボルダーの捜査当局は先週末、カー容疑者の唾液と毛髪を採取し、ジョンベネちゃんの下着に付着していた血液から採取したDNAとの照合を行ったが、2つのDNAは一致しなかったという結論に達している。ジョンベネちゃん事件での立件を見送られたカー容疑者だが、2001年に起こした罪(児童ポルノビデオ所持)を裁くためにカリフォルニア州に移送される。

ジョンベネちゃん事件を担当するメアリー・レイシー地方検事は28日、法廷文書の中で「カー容疑者本人が何度も自らの関与を主張したものの、彼が犯罪に関与したと証明する事ができませんでした」と語り、事実上の「終戦宣言」を行っている。しかし、レイシー検事は「捜査そのものが終了したのではない」とも語っており、捜査は継続される見込みだ。結局、カー容疑者は殺人罪で起訴されることが一度も無かったわけだが、レイシー検事は「このままだと、逃亡したり、タイ国内で子供が狙われるかもしれなかった」と語り、今回の逮捕劇を正当化している。しかし、CBSニュースのアンドリュー・コーエン法律問題アナリストは、「確固たる証拠が存在しない状態で、カー容疑者がタイからボルダーに移送され、その間にメディアによる様々な推測が繰り返されました。ボルダー郡検察は面子を失った格好です」と語っている。

今回の逮捕劇でポイントとなった「容疑者しか知りえない情報」の詳細だが、AP通信は法廷資料として提出されていたカー容疑者とマイケル・トレイシー教授(コロラド大学)との間で交わされたメールの内容を紹介している。この中でカー容疑者はトレイシー教授に対して、「ジョンべネちゃんの手首を縛った状態で首を締め上げ、それからオーラル・セックスを行った」と語っており、ジョンベネちゃんが死亡したと分かった時には救命措置も試みたと説明していた。トレイシー教授からの通報を受けた捜査当局はカー容疑者のメールの内容に注目していたが、こういった告白が全て嘘だったことがようやく判明した格好だ。法廷資料によると、カー容疑者は過去数年にわたってトレイシー教授とメールのやり取りを行ってきたが、最近は電話での会話も何度か行っており、今年7月には1時間半以上もジョンベネちゃん殺害に関して話し続けていたのだという。

ボストンの友人とやっているポッドキャスティングの中で少し話をしたんだけど、メジャーリーグのワールドシリーズの語源について、僕も最近まで知らないことがあった。この国に住んでいる何百万人もの外国人と同じように、僕も最近まで「ワールドシリーズ」という名前が世界大会でもなんでもないのに、傲慢なアメリカ人の地理観によって名付けられたものだと信じ込んでいた。でも、野球の歴史が書かれた文献を最近読む機会があって、その時に分かったのが、今から約100年前のアメリカでは「World Series」ではなく、「World's Series」と呼ばれていた事実。その昔、ニューヨークでは「ニューヨーク・ワールド」というタブロイド紙が発行されていて、初期のワールドシリーズのスポンサーとなっていたのが、この新聞社だったのだ。つまり、「世界シリーズ」ではなく、「ワールド紙主催のシリーズ」という名前だったわけで、意外な発見に少し嬉しくなってしまいました。

アルチ・ブラジレイラに目を丸くした夜

2006-08-28 14:35:01 | ハリケーン「カトリーナ」関連
週末にカポエラのパフォーマンスを見に行ってきた。アレキサンドリアの南にある教会の施設で行われたパフォーマンスには、ボストンやロードアイランドでカポエラを学ぶ人たちも来ていて、想像以上にダイナミックかつ素早い動きに、僕は一緒に見ていた友人と終始「すごい…」と言い続けていた(ボキャブラリー不足です、はい)。このパフォーマンスにはアメリカの某ニュース局で働いている日本人の友人と、彼女の旦那さんも参加していたんだけど、格闘技の力強さとダンスの優雅さがバランスよく融合された美しさがあった。少し前にこの友人と食事をした時、彼女の腕に打撲の痕がいくつもあったので、僕は本気で「家庭内暴力?」と心配したんだけど、あとになってカポエラの練習で受けた打撲だったと聞かされ、しかも大笑いまでされている。昨日のパフォーマンスを見て分かったんだけど、練習でアザだらけになるのも間違いない。かなりの衝撃を受けました!さて、今日はハリケーン「カトリーナ」とブッシュ政権のイメージに関する話をニューヨーク・タイムズ紙の記事から。

この数週間以内にアメリカ国内では911同時多発テロ事件から5年目を迎え、ハリケーン「カトリーナ」からも1年を迎える。自らを「慈悲深い保守主義者」と呼ぶブッシュ大統領だが、911テロ事件とカトリーナにおける対応では、全く異なるイメージを国民に対して与えており、昨年8月末に発生したハリケーンがブッシュ政権や共和党にとって大打撃になるだろうと指摘する声も少なくない。911テロ事件発生直後のブッシュ大統領のイメージといえば、倒壊した世界貿易センタービルの瓦礫の上に足をのせ、拡声器を手にしながら国民を勇気付けようとする姿だった。しかし、カトリーナ発生直後の大統領といえば、夏休みを過ごしたテキサス州クロフォードからワシントンに戻る際に、被災地上空を飛ぶ大統領専用機の窓から下を眺め下ろす写真のイメージが今も強烈に残っている。被災地の住民の多くが貧困層であり、黒人であったことから、エアフォース・ワン内で撮影されたスナップショットはブッシュ大統領の「慈悲する心」に疑問を投じている。

カトリーナ発生以降、ブッシュ大統領はイメージ改善に努めてきた。議会に対しては、数百億ドル規模の被災者支援予算を承認するよう催促し、全米有色人地位向上協会(NAACP)の会合でスピーチも行い、南部湾岸地域にも数回足を運んでいる。ブッシュ大統領は今月28日と29日も被災地を訪れる予定だ。しかし、戦時大統領として確立されてしまったブッシュ大統領のイメージは、アメリカ国内の災害に対しては無関心という別のイメージも作り上げてしまい、弱い立場にある自国民が災害で苦しむ様子を上空から眺めているだけだという「新ブッシュ像」が確立されてしまった。ブッシュ政権の災害対策に不満を示す国民は多く、ニューヨーク・タイムズ紙とCBSニュースが共同で行った最新の世論調査では、全回答者の51パーセントが「ブッシュ政権は被災者が必要とする復旧・支援活動は行っていない」と答えている。昨年9月に行われた調査では、48パーセントが同様の回答をしており、ブッシュ政権の対応に不満を示す人がハリケーン発生直後よりも増加している。

「カトリーナ発生後の対応のまずさは、ブッシュ政権の汚点として長く記憶されるでしょう」、アメリカン大学のジェームズ・サーバー議会・大統領研究センター所長はそう語った。ホワイトハウスはすでに総額で1100億ドルのカトリーナ復興支援予算を計上し、そのうちの440億ドルがすでに使われている。連邦緊急事態管理局(FEMA)は約95万人の被災者に対して仮設住宅(トレーラー)を供給するために60億ドル以上を使っており、これはFEMAによる単一の災害復興支援としては最高額となる。しかし、アメリカ国民の反応は冷ややかで、ブッシュ政権や連邦政府による復興プロジェクトに不満を持つ人は少なくない。「自国民に対して冷たい」というブッシュ政権のイメージは今秋に行われる中間選挙にも少なからず影響を与えそうで、民主党上院選挙委員会のトップでもあるチャールズ・シューマー上院議員(ニューヨーク州)は、民主党の各候補者が選挙活動の中でカトリーナについて必ずといっていいほど言及していると語った。

の大好きなサミュエル・L・ジャクソンが最新作「スネークス・オン・ア・プレーン」でスクリーンに戻ってきている。個人的には映画館にまで行って見る映画なのかなぁとも思うんだけど、先週だけで2人の友人からこの映画を見に行こうと誘われた。どんな映画なのかというと、殺し屋が飛行中の旅客機の中で何匹ものヘビを放ち、乗客が犠牲になっていくというパニック映画らしい。プロットだけを聞いていると、どうにもB級映画のイメージしか持てないんだけど、ボストン・グローブ紙の映画批評ではAマイナス、サンフランシスコ・クロニクル紙もBプラスという評価を出している。映画の中でサミュエル・L・ジャクソン演じる主人公が、「I have had it with these motherf**king snakes on this motherf**king plane!」というセリフを叫ぶんだけど、これが凄く彼っぽいセリフだなと僕らの間でちょっとした評判になっているのだ。少し前のトークショーに出演したジャクソン本人ですら、「このセリフが僕のキャリアの中で一番気に入っているよ」とコメントしている。なんだか、DVD化まで待てないような気がしてきました。

写真:26日にアレキサンドリアで行われたカポエラのパフォーマンス (筆者撮影)

プルート狂想曲で泣いたひと、笑ったひと

2006-08-26 15:16:45 | きょういく
経済誌「フォーブス」が最近になって面白い調査結果を発表していて、アメリカで最も「飲んだくれの多い」町にミルウォーキーが選ばれたんだとか。この調査は全米35都市で行われ、それぞれの町にある酒に関する法律や、1ヶ月以内にアルコール類を一度でも口にした人の数などを参考に、全米一の酔っ払いタウンを決めたものだ。ダブリンやミュンヘン、プラハにモスクワと、ヨーロッパにはアメリカの町が太刀打ちできないような「飲んだくれにとってのサンクチュアリ」が幾つもあるけど、今回の調査ではミルウォーキーがニューヨークやシカゴを抑えてチャンピオンとなっている(最下位はテネシー州ナッシュビル)。ニューヨークが24位って、少し驚きでした。さて、今日は冥王星が惑星から格下げになったというニュースを。

チェコのプラハで行われていた国際天文学連合の総会は24日、最終決議案を採択し、9つあった太陽系惑星を8つに減らすことを決定した。新しいカテゴリーでもある「わい惑星」に格下げされた冥王星が、1930年にアメリカ人天文学者によって発見されていたため、こちらでは大きなニュースとして報じられている。今回の格下げには賛否両論があるようで、CBSニュースの報道によると、総会に参加していた約2500人の天文学者のうち、冥王星の格下げを決める投票に参加したのは僅かに300人だったということだ。アメリカ国内の一般的な反応だが、多くの人がショックを受けているのは事実で、25日のロサンゼルス・タイムズ紙は「冥王星が学んだ教訓:惑星は8つで十分」という記事を、ワシントン・タイムズ紙は「冥王星は死んだ」というタイトルでニュースを伝えている。

冥王星アメリカ人天文学者のクライド・トンボーさんによって発見されたのが1930年。それから76年後の2006年になって、冥王星は惑星ではないと定義されてしまったわけだが、実は今年がトンボーさんの生誕100年でもあったため、アメリカ国内ではその偶然性にも驚きの声が上がっている。しかも、今年1月にはNASAが人類初の冥王星探査機ニューホライズンズを打ち上げており、この探査機が冥王星に到着するのは2015年の予定だが、この探査機の中にはトンボーさんの遺灰の一部も入っている。トンボーさんは冥王星を発見しただけではなく、アメリカ国内のUFOブームの火付け役としても知られており、1949年8月にニューメキシコ州で複数の未確認飛行物体を目撃したと語ったことで、当時のアメリカ国内で大きな反響を呼んでいる。トンボーさんの妻パトリシアさんは現在94歳だが、24日にAP通信の取材を受け、「傷付いてはいないけれど、体が揺さぶられる思いです」と語っている。パトリシアさんによると、トンボーさんは生前、冥王星の「格下げ」には反対していた。

冥王星の発見からUFOの目撃まで、宇宙に関するさまざまな話題を提供してきたトンボーさんにはこんなエピソードもある。有名SFドラマ『スター・トレック』は1966年から放送が始まった長寿番組だが、この中に出てくる宇宙船の1つには、製作者が尊敬の念を表してトンボーさんの名前が付けられている。また、トンボーさんの発見した冥王星は英語ではプルートと呼ばれるが、冥王星発見から数ヵ月後にはディズニー映画でミッキーマウスが飼っているペット犬の名前としても使われ始め、アメリカでは誰もが知る名前となっている。学術的に惑星から格下げされた冥王星だが、今回の格下げをビジネスにしようとする動きもあるようだ。AP通信は25日、カリフォルニア州サンノゼに住む女性が「冥王星は惑星です」とプリントされたTシャツをオンライン販売し始めたと報じており、今後こういった冥王星グッズが増える可能性もある。

2日前の話なんだけど、夕方に自宅近くのショッピングセンターによって、そこで遅めのランチを食べた。僕は1人でランチを食べる時は、必ずといっていいほど新聞か雑誌を読みながら食べてて(そう、かなり御行儀が悪いのです)、この日も特に興味があるわけではなかったんだけど、アシュトン・クッチャーのインタビュー記事を眺めていた。そんな事もあって、なかなか終わらないフードコートでの食事。気が付くと、2人の警備員が僕の周辺の客に「ここに何分くらいいましたか?」と聞きまわっていて、僕も同じ質問を受けた。「どうしたんですか?」と聞いてみると、近くの席に子供が1人で座っていて、「お父さんがどこに行ったか分からない」と言っている。それで、子供が置き去りにされたのではと思った警備員が、僕らに「何か見なかった?」と聞いていたのだ。結末を話すと、この子供のお父さんは、息子のためにアイスクリームを買いに行っていて、僕らの席からあまり離れていないアイスクリーム屋で列を作って並んでいた。お父さんは警備員に平謝りの状態。アメリカってネグレクトなんかには凄く厳しい国だけど、フードコートでの一件であらためてそう感じた。


写真:ロサンゼルスで25日、オンライン販売用のステッカーを作成するクリス・スパージェオンさん。ステッカーには「冥王星が惑星だと思う人は、クラクションを鳴らしてください」とのメッセージがある。 (AP通信より)

203センチと145センチの共演

2006-08-23 15:32:57 | ハリケーン「カトリーナ」関連
スパイク・リー監督のドキュメンタリー『防波堤が崩れるとき』の後半が今夜HBOで放送された。昨日の夜見た前半部分だけでも大きな衝撃を受けたんだけど、後半でも復興がままならないニューオーリンズの現状が被災者達のインタビューから浮き彫りになっている。この作品では州知事や市長、さらにはカニエ・ウエスト(ハリケーン後に生放送されたチャリティ番組で台本のセリフを無視して、「ジョージ・ブッシュは黒人のことを全然気にかけていないんだ」と発言したラッパー)やショーン・ペンといった面々も当時を振り返っていて、それぞれの主張が凄く興味深いものとなっている。インタビューの中である大学教授が指摘していたんだけど、ルイジアナ州の天然資源(ガスなど)を管理しているのは連邦政府で、これまでルイジアナ州に利益が還元されることは無かったそうだ。サウジアラビアやUAEとまではいかないだろうけど、もし州政府が天然資源の管理を行っていたら、防波堤の強化や教育・犯罪問題の改善など、市民が本当に必要とする事柄に資金が投入されていたかもしれない。あくまでも、仮定の話だけど…。さて、今日はハリケーンに対するアメリカ人の危機感についてのニュースを。

ハリケーン「カトリーナ」が米南部湾岸地域を直撃してから1年を迎えるが、今年はこれまでにハリケーンによる被害は全く報告されておらず、ハリケーンの当たり年だった昨年と比べてみると、極めて静かな夏となっている。カトリーナ後のアメリカ国内では「最悪の事態は過ぎ去った」という認識が市民の間に浸透しているが、気象関係者は昨年以上のハリケーン被害がアメリカ国内で発生する可能性があると警告している。南部湾岸地域で少なくとも1339人の死者を出し、800億ドル以上の経済的損害を出したカトリーナだが、国立ハリケーンセンターのマックス・メイフィールド所長は「それ以上のハリケーンが将来上陸する可能性は高い」と語り、市民に対して防災に対する心構えを忘れないようにと警告している。「多くのアメリカ人がカトリーナで最悪のハリケーン被害を経験したと考えているようですが、われわれの考えは異なります」、メイフィールド所長はフロリダ州の国立ハリケーンセンター内でロイター通信の取材に対してそう答えた。

「将来、かなり大型のハリケーンがアメリカ国内の主要都市を直撃する可能性は高く、場合によってはカトリーナの時よりも規模の大きな災害が町を襲う事になるでしょう。もちろん、多くの犠牲者が出るでしょうね」、メイフィールド所長はそう語る。メイフィールド所長は大型ハリケーンがアメリカの主要都市を直撃する時期については言及しなかったが、多くの町が海岸線の近くにあるため、ニューオーリンズのような洪水被害はいつでも起こりうるのだと強調した。カトリーナがニューオーリンズを直撃する2日前、国立ハリケーンセンターはすでにハリケーンの進路を完全に予測することに成功しており、「ニューオーリンズ上陸時にその規模が大きくなる可能性がある」との警告を発していた。しかし、ニューオーリンズ市内では、「40年前に発生した大型ハリケーンのときも大丈夫だったから」といった漠然とした理由で、避難に消極的な市民が少なくなかった。

ハリケーンといえば、どうしてもフロリダやテキサス、そしてルイジアナといった南部をイメージしてしまうが、メイフィールド所長はニューヨークにハリケーンが上陸する可能性も少なからず存在するのだと語った。「あくまでも可能性としての話ですが、ニュージャージー州の湾岸地域やロングアイランドに上陸するケースだって無いとは言えないのです。また、ハリケーンによってハドソン川が氾濫を起こすケースも想定できます」、そう語るメイフィールド所長は2000年から積極的に防災キャンペーンを展開しており、東部や南部の湾岸部に住む約5000万人は「常に備えるべきだ」と主張する。しかし、最近実施された調査によると、こういった地域に住む人の60パーセントがハリケーンに対する準備(非常食や電池などの備蓄や、脱出ルートの確保など)を全く行っていないという結果が出ており、メイフィールド所長は「2年連続でハリケーンの当たり年を経験したというのに、ハリケーン被害を深刻に考えていない人が増えているというのは理解に苦しみます」とコメントしている。

今日は最後にリトルリーグの話題を。少し前からアメリカ国内でリトルリーグのワールドシリーズが行われているんだけど、この大会にダーラン(サウジアラビア)の代表チームのメンバーとして参加している13歳の少年がちょっとした話題になっている。ダーランのチームといっても、メンバーはみんなアメリカ人で、石油業界で働くお父さんやお母さんを持つ子供達だ。このチームでファーストを守るのがアーロン・ダーレイ君。本当は野球よりもバスケットボールの方が好きだというダーレイ君の身長は6フィート8インチ(約2メートル3センチ)で、体重は256ポンド(約113キロ)となっている。ちなみにボストン・レッドソックスのデービッド・オルティスの身長が6フィート4インチで、最近はエラーばかりしてA-RODではなくE-RODと呼ばれるようになったニューヨーク・ヤンキースのアレックス・ロドリゲスで6フィート3インチ。繰り返しますが、ダーレイ君の年齢は13歳です!まだ成長は続くんだろうけど、バスケットボールの日本代表に来てくれないかな…。

写真:22日の試合でファーストの守備につくダーレイ君。彼の横にいる選手(ベネズエラのチーム)の身長は4フィート9インチ(約1メートル45センチ)だ。 (AP通信より)

最近は更新もサボり気味ですが…

2006-08-22 12:13:48 | Weblog
ブログの更新がなかなかできずに月曜日の夜を迎えてしまったんだけど、明日は頑張って更新するつもりなので、いつもチェックしてくれている皆様、今日はどうかご勘弁を!

実は明日朝一番にラジオの中継があるため、もう少ししてから寝ようかと思っているんだけど、このブログをタイプしながらHBOでスパイク・リー監督の新作ドキュメンタリーを見ている。今日は前半部分だけがオンエアされ(それでも2時間15分!)、後半は明日の夜に放送される。作品全体では4時間になるけれど、少なくとも前半部分だけについて言えば、これは確実にスパイク・リー監督の代表作として今後記憶され続けると確信している。一部のメディアはリー監督がハリケーン「カトリーナ」を描いた今回のドキュメンタリーで人種問題に関するバイアスが存在したって批判しているけれど、僕はそうは感じなかった。

HBOだけに、日本だとWOWOWで放送される可能性があるのかな?もし日本でも『防波堤が崩れるとき』がオンエアされる機会があれば、ぜひチェックしてみてください。

ジョン・マーク・カーは10年前どこにいたのか?

2006-08-19 15:03:22 | 犯罪
今日からフェンウェイパークで始まったボストン・レッドソックス対ニューヨーク・ヤンキースの5連戦。初日の今日はダブルヘッダーだったんだけど、いかんですよ…、赤靴下軍団。1試合目を4-12、そして次の試合も11-14で敗れたレッドソックス。夏場に入ってからのニューヨークの快進撃は凄まじく、逆にレッドソックスはブルペン陣を中心に不調に悩まされている。主力選手が怪我で離脱した事情もあるとはいえ、戦力的には問題ないはず。なんとか調子を取り戻してもらって、今日のダブルヘッダーのような悲劇は繰り返さないでほしい(ワシントンに住むレッドソックス・ファンの友人は「ジョージ・ブッシュの大統領就任と同じくらい、ショッキングで悲しいものだった」と愚痴をこぼしていた)。さて、今日は1996年12月に発生したジョンベネちゃん殺害事件の容疑者としてタイで逮捕されたアメリカ人男性に関する情報を。

ジョンベネちゃん殺害事件で16日にタイのバンコクで逮捕されたアメリカ人教師ジョン・マーク・カー容疑者だが、事件への関与をめぐる供述にはっきりしない点も多く、アメリカ国内ではカー容疑者が世間の注目を集めるためにウソの自供を行ったのではないかという報道まで出始めている。CNNは18日、ジョンベネちゃん事件でラムジー家の邸宅内に置かれていたメモについて報じており、11万8000ドルの身代金を要求したメモに残された「S.B.T.C」という言葉が今後の捜査において大きなカギになるかもしれないと指摘している。一般の英語辞書には「S.B.T.C.」という言葉は存在せず、この略語がどのような意味を持つのかが捜査関係者の間では10年来のミステリーとなっていた。しかし、カー容疑者が高校卒業時に、クラスメートの卒業アルバムに寄せ書きをしていた事実が判明し、メッセージは「将来は征服者になり、いくつもの平和の中で暮らすのだ」というものだった。

この「征服者になる(I shall be the conqueror)」という部分だが、S.B.T.C.という略語に置き換えることもでき、この略語の意味が現在も判明しない状態の中、捜査当局は82年の卒業アルバムと96年のメモとの間に何らかのリンクがあったのかを調査している。しかし、カー容疑者犯人説を裏付けるための確固たる証拠が現在も公表されておらず、17日に記者会見を開いたコロラド州ボルダーのメアリー・レイシー地方検察官も「推定無罪」という言葉を多用し、マスコミに対してすぐに結論に飛びつかないようにと求めている。カー容疑者はタイ警察が行った取調べの中でジョンベネちゃん殺害を認めたが、捜査官に対し「ジョンベネちゃんに薬物を投与し、彼女をレイプした」と語っていた。性的暴行を加えたあともジョンベネちゃんは生きていたが、それからすぐに「誤って」彼女を殺害したと語ったカー容疑者だが、司法解剖ではジョンベネちゃんの体内から薬物やアルコールを発見されることはなかった。また、カー容疑者の元妻は国内メディアの取材に対し、ジョンベネちゃん事件の発生した1996年12月26日は、彼女はカー容疑者とアラバマ州にいたと語っている。

2001年にはカリフォルニア州で児童ポルノビデオ所持にからむ5件の罪で起訴されたカー容疑者だが、それ以前にも「少女」をめぐってトラブルを起こしていた。NBCニュースによると、1984年にカー容疑者は19歳で結婚するが、相手は当時13歳の少女だった(一部メディアはカー容疑者が18歳で、相手の少女が12歳だったと報じている)。地元の裁判所は翌年になって、婚姻無効を宣告している。しばらくして2度目の結婚を行ったカー容疑者だが、妻の年齢は16歳だった。2001年にカー容疑者が児童ポルノ所持で起訴された数日後、2人は離婚している。18日付のロッキーマウンテン・ニュースはカー容疑者がコロラド大学のマイケル・トレイシー教授に送ったメールの一部内容を報じたが、メールではカー容疑者が「僕の愛する人であり、僕の人生でもあった」と、ジョンベネちゃんへの愛情を繰り返し語っている。また、メールの中ではカー容疑者が映画『ファインディング・ネバーランド』について語ったり、マイケル・ジャクソンの性癖を擁護する箇所なども存在する。

仕事の中でこのジョンベネちゃん殺害事件について何度か取り上げたんだけど、大学院時代に「メディアの倫理」の授業でこの事件を取り上げていたのを思い出した。事件発生当時、アメリカ国内のメディアはジョンベネちゃんの父親ジョンさんや母親のパッツィさんが犯人ではという報道を繰り返し、FOXニュースのビル・オライリーなんかは最近まで自分の番組内でジョンさんらを「殺人犯」と繰り返し呼んでいた。自尊心のあるアメリカ人はビル・オライリーをジャーナリストとは考えないし、FOXニュースを報道機関とは考えることはないけれど、それでも彼のようなビッグネームによる発言は凄く影響力があったのも事実だと思う。ソフトウェア事業で成功していたジョンさんは追われるようにミシガン州に移っている。ハリソン・フォードが出演した映画のタイトルにもなった「推定無罪」という理念が、約10年前のボルダーで受け入れられることはなかった。どこか松本サリン事件にも似た話だと思うけど、カー容疑者に関する報道で、アメリカのメディアはどう動いていくのだろうか?

写真:カー容疑者が住んでいたバンコク市内のアパート (AP通信より)

自称レムラードソース研究家のクリオール料理店めぐり

2006-08-16 15:20:44 | エンターテーメント・カルチャー
昨日のブログで紹介したスパイク・リー監督のドキュメンタリーだけど、被災者へのインタビューを多く含んだ4時間の作品という以外、あまり情報は無い。ただ、16日のプレミアを前に作品の試写会に参加したニューズウイーク誌の記者は「リー監督の20年のキャリアの中で、最も重要な位置づけとなる作品かもしれない」という批評を残している。僕はニューオーリンズで16日に行われるプレミアには参加できないので、21日夜のテレビ放送を待つしかないんだけど、15日のロイター通信は何人もの被災者がカメラを見つめながら当時の様子を語るシーンが多く、ナレーションはほとんど挿入されていないと伝えている。リー監督はロイター通信の取材に、「製作で最も難しかった部分は、被災者にカメラの前で当時の様子を話してもらうことだった」とコメントしている。僕もニューオーリンズ滞在中、インタビュー中に何人かが涙を見せる場面に遭遇した。29日にはハリケーンから1年を迎えるけど、被災者が心の傷を癒すには、まだまだ時間がかかるんだと思う…。さて、今日は映画『ワールド・トレード・センター』にまつわる話をAP通信の記事から。

オリバー・ストーン監督の最新作『ワールド・トレード・センター』は今月9日から全米で公開され、11日までに約2600万ドルの興行収入を記録し、好調な滑り出しを見せている。この作品は2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件で倒壊したワールド・トレード・センターが舞台となっており、ハイジャックされた旅客機がビルに突入して間もなく救出活動に向かった2人の警察官の話だ。実話をベースに作られた『ワールド・トレード・センター』は、救出活動に向かったジョン・マクローリンとウィル・ジメーノの2人の警察官がビルの倒壊に巻き込まれ、地下に閉じ込められた2人がやがて救出されるまでを描いており、人気俳優のニコラス・ケイジがマクローリン役を演じている。マクローリンとジメーノの両氏はやがて1人の海兵隊員によって救出されるのだが、この海兵隊員は2人を助け出した後ですぐに現場から立ち去っており、映画の製作スタッフの間でもミステリアスな存在として語られていた。

映画のプロデューサー達でさえ、この海兵隊員については何も知らず、この兵士が2人の警察官に「トーマス伍長です」と語ったことだけが唯一の情報であった。しかし、「トーマス伍長をめぐるミステリー」は最近になって意外な展開を見せる。数週間前にオハイオ州コロンバスの自宅でソファーに寝転がってテレビを見ていたジェイソン・トーマスさんは、番組の合間に流された『ワールド・トレード・センター』のコマーシャルを見て仰天した。コマーシャルには2人の海兵隊員が懐中電灯を使って倒壊したビル内部で救出活動を行うシーンがあり、トーマスさんは「これは僕らじゃないか」とすぐに確信した。現在はオハイオ州最高裁判所に勤務するトーマスさんだが、テロ事件が発生した当時はロング・アイランドに住んでいた。そして、トーマスさんは先週、「自分が映画の中で出てくる海兵隊員だった」と自ら名乗り出たのだった。

『ワールド・トレード・センター』でプロデューサーをつとめたマイケル・シャンバーグ氏はAP通信の取材に対し、「トーマスさんとジメーノ氏がすでに電話で話をしており、会話の内容は2人だけが知りうるほど細かなものだった」と語り、トーマスさんが間違いなく救出活動にやってきた海兵隊員だったと語った。トーマスさんはテロ事件が発生する1年前に海兵隊を除隊していたが、母親から「旅客機がワールド・トレード・センターに突入した」という一報を電話で受け、すぐに自家用車でマンハッタンに向かっている。トーマスさんは同じく元海兵隊員のデービッド・カーネスさんと共に除隊後に保管していた軍服を着用し、倒壊現場で救出活動を開始した。「海兵隊時代に救出活動の訓練は受けていましたし、ビルに飛行機が突っ込んだという一報を聞いたときには、僕らが何かの役に立てると感じたんです」、トーマスさんはそう語った。トーマスさんはビル倒壊現場で約2週間ほど救出活動のボランティアを続けたのだという。

今日は友人とニューオーリンズ料理の店に行ってきたんだけど、僕がワシントンで行ったレストランの中で間違いなくベスト3には入るほどの美味しさで、特にガンボ(魚介類やソーセージなんかが入ったスープ)は毎日飲みに通いたいくらい素晴らしかったのだ。先週から友人とニューオーリンズ料理店に行こうと計画し、少し前にニューオーリンズに5日ほど滞在したことを口実に、「この店がいいんじゃないかと思う」と思いっきり知ったかぶりの知識で見つけてきたのが今日行ったスターフィッシュ・カフェなんだけど、結果として凄くいい店を知ることができました。料理もよかったけど、今日一緒に行った3人が僕を含めて全て同世代だったので、いろんな話で盛り上がり、久しぶりに腹筋が痛くなるディナーを堪能した。グリルした魚にレムラードソースをかけた料理を食べたんだけど、今月に入ってからの僕のレムラードソース消費量はハンパじゃないと思う。数週間前にニューオーリンズの空港で購入した2本のレムラードソースはもうほとんど無い状態で、オンライン通販で取り寄せようと真剣に考えている。ニューオーリンズではホットドッグにもレムラードソースがかかっていたけど、これが結構イケるんです。レムラードソースの研究、マイブームとしてまだまだ続きそう。


写真:5年前の9月に撮影されたジェイソン・トーマスさんの写真 (AP通信より)

スパイク・リー最新作、21日から2夜連続で放送

2006-08-15 14:40:24 | ニュース
今日は最初と最後にカトリーナについて少し書いておきたいんだけど、スパイク・リー監督のドキュメンタリー『防波堤が崩れたとき』のプレミアが16日にニューオーリンズで開かれ、昨年8月に発生したハリケーンをテーマにしたこの作品は今月21・22の両日にHBOで放送される。このドキュメンタリー、全体で4時間近くあるらしく、それで2晩に分けて放送するらしいんだけど、アメリカ在住でHBOをお持ちの方は要チェックです。スパイク・リー監督は4年前にもNFLの伝説的選手ジム・ブラウンをテーマにしたドキュメンタリーをHBOで制作している。HBOって映画やドラマのイメージが強い局だけど、ここのドキュメンタリーはなかなか秀作が揃っているので、いつかこのブログでも紹介したいです。さて、今日はワシントンポスト紙の記事から、ワシントン周辺の移民人口が100万人を突破したというニュースを。

15日に発表される最新の人口調査で、ワシントンDC周辺の移民人口が100万人を突破したことが明らかになった。2005年に実施された今回の調査では、ワシントン周辺の住民の5人に1人が移民となっており、6年前の調査ではこの比率が6人に1人となっていた。また、ワシントン周辺に住む移民が、他のアメリカの都市に住む移民と比較した際に、最も学歴が高いというデータも出ている。ブルッキングス研究所のウイリアム・フレイ氏によると、移民人口が100万人を突破した町はワシントンの他に7つあり、ニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミ、シカゴ、サンフランシスコ、ヒューストン、そしてダラスとなっている。同じくブルッキングス研究所のオードリー・シンガー氏はワシントンポスト紙の取材に対し、「これだけの増加は、移民にとってワシントンが魅力的な町であることを意味しているのです」と語っている。

1990年と比較して、ワシントン周辺の人口は約25パーセント増加したが、移民人口は2倍の増加を見せている。移民推進派は、実際の増加率はもっと高いだろうと主張している。通常、移民の多い街では中心的存在となるエスニック・グループが存在するが、ワシントン周辺に限ってはその定説が通じない。ワシントン周辺の移民のほとんどは3つの郡で暮らしており、フェアファックス郡にはアジア出身者、モントゴメリー郡にはラテンアメリカ出身者、そしてプリンス・ジョージ郡には多くのアフリカ・カリブ諸国出身者が暮らしている。また、全体的に高学歴の移民が多いのも特徴で、全体の約40パーセントが少なくとも大学を卒業している(全国平均で見た場合、大学を卒業した移民は30パーセント以下となっている)。ダレス国際空港があるロウドン郡はハイテク産業のオフィスが多いことでも知られているが、そこに住む移民の51パーセントが大学もしくは大学院を卒業しており、その多くはインドからやってきた移民たちだ。

まさに移民ブームともいえる状況だが、決して問題が無いわけではない。ワシントン周辺で英語があまり話せない移民は、全国平均よりも少ないが、それでも約40パーセントが英語でのコミュニケーションを困難と感じているようだ。ワシントン周辺では約510万人が生活しているが、そのうちの約1割が英語をうまく話せない移民となっている。ヒスパニック系移民が急増したプリンス・ウイリアム郡では、「英語をうまく話せない」と答えた移民が全体の54パーセントに達しており、2000年の調査結果から12ポイントも上昇している。プリンス・ウイリアム郡の公立学校では以前から英語をうまく話せない児童に対して特別プログラムを提供してきたが、このプログラムに参加した児童の数は、過去5年間で274パーセントも増加している。

テキサス州ヒューストンは全米でもっとも多くのカトリーナ被災者を受け入れている町で、今も約15万人が暮らしているんだけど、この1年の間に殺人事件の発生件数が約20パーセントも増加していたらしい。AP通信によると、約12ヶ月間にヒューストン市内では232件の殺人事件が発生していて、そのうちの約21パーセントでカトリーナ被災者が関与していたんだとか(容疑者と被害者の両方のケースで)。ニューオーリンズ滞在時に似たような話を聞いた事があったんだけど、ニューオーリンズのギャングがヒューストンで地元のギャングと抗争状態になっているらしく、ギャング絡みの犯罪も少なくないらしい。ニューオーリンズ近郊のスライデルという町はリー・ハーベイ・オズワルドの誕生地でもあるけど、人口3万人ほどの小さな町で、殺人事件が起きない年の方が多い典型的なアメリカの田舎町だ。でも、今年に入って市内では4人が殺されていて、全ての事件にニューオーリンズからやってきた被災者が関わっていたらしい。多くの被災者は犯罪とは無縁な人達だけに、こういった事件が続くことで、悪い評判だけがクローズアップされるのだけは避けてほしいんだけどなぁ…。


写真:11日にロサンゼルスで新作ドキュメンタリーのプロモーションに登場したスパイク・リー監督 (ロイター通信より)

レバノン攻撃、数ヶ月以上前から計画か?

2006-08-14 15:58:37 | 外交
日本からの頼まれ事で、近所の本屋に幼児向けの絵本を探しに行ってきた。どれがいいのかよく分からなかったので、店員の女性に「4歳くらいの子供が読みそうな絵本を探しているんでけど」と聞いてみることにした。「お子様用ですか?」、といきなり聞いてきた店員。たしかに4歳くらいの子供がいてもおかしくはないんだろうけど、気になったので「僕は何歳に見えますか?」と聞き返した。アメリカだと実年齢より若く見られる事が多いのに、かえってきた答は「32,3歳ですかね」というショッキングなもの。自分でも気がつかないうちに、そんなにオッサン臭くなったんだろうか…。とにかく絵本も無事に見つかったんだけど、その時に感じたのが大人が読んでも面白そうな絵本も少なくなかったという事。レッドソックスの2004年ワールドシリーズ優勝を描いた絵本もあったし(これって、本当に幼稚園児や小学生が読むんだろうか?)、なぜか「対象年齢6歳」のセクションにテッド・ケネディをテーマにした絵本まで置かれていた。6歳の子供がテッド・ケネディの絵本を読んでいる姿は、やっぱり不気味だと思う(飲酒運転の危なっかしさでも説いているんだろうか?)。さて、今日はレバノン関連ニュースの続報を。

イスラエルとレバノン両政府が合意した停戦が米東部時間14日午前1時から発効し、34日目を迎えたイスラエルとヒズボラの戦闘が当面停止する見込みだ。CNNの報道によると、停戦発効の数分前まで両者による戦闘は続き、その数時間前にはイスラエル軍機がベイルート上空からプロパガンダの書かれたチラシを大量に投下した。チラシには「ヒズボラはレバノンの破壊者であり、シリアとイランの操り人形である」とのメッセージが記されていた。AP通信は停戦発効後のベイルート市内の様子を報じ、当初は家の外に出る市民がほとんどいなかったが、しばらくして交通渋滞なども発生したとの事だ。今回の停戦決議は11日に国連安全保障理事会で採択され、その後レバノンとイスラエルも承認している。ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師も停戦決議を認める意向を示したとされている。

一方、著名な調査報道記者のセイモア・ハーシュ氏は、ニューヨーカー誌の最新号でイスラエルとアメリカの政府高官が5月の段階ですでにレバノン攻撃について話し合いを行っていたと報じている。7月に開始されたイスラエル軍による攻撃は、レバノンの民兵組織ヒズボラによって2名のイスラエル兵が拉致されたのが原因とされているが、ハーシュ氏の最新のレポートは、拉致が行われる数ヶ月前にイスラエル政府高官がワシントンを訪れていたと指摘している。5月に行われた話し合いでは、ヒズボラの壊滅が大きなテーマとなっていた模様で、ブッシュ政権内のあるスタッフはハーシュ氏に対し、「イスラエル政府の高官は数回にわたってワシントンを訪れ、ブッシュ政権からレバノン爆撃に対する事実上の許可をもらったのだ」と語っている。また、複数の政府高官がハーシュ氏に語ったところによると、ヒズボラを壊滅状態に追い込むことで、アメリカがイランに対して先制攻撃を行った場合に、イスラエルに対する報復攻撃の脅威がなくなるだろうという考えが政権内部には存在したようだ。

ハーシュ氏は13日、CNNの番組に出演し、「7月の拉致事件はあくまでも口実だったのです。レバノン攻撃はずっと以前から計画されていたのです」とコメントしている。あるペンタゴン高官は匿名を条件にハーシュ氏の取材に答え、「ヒズボラの壊滅はわれわれの目標でもありましたが、それを別の国がやってくれているんです」と語っている。国務省とペンタゴンはハーシュ氏の記事内容について否定し、国家安全保障会議の広報官も「イスラエル政府高官がレバノン攻撃について話し合うために、5月にワシントンを訪れたという事実はありません」とコメントしている。ハーシュ氏はこれまでにも数多くのスクープを発表しており、イラクのアブ・グレイブ刑務所で収容者に対する虐待が行われていたと最初に報じたのも彼だった。ベトナム戦争時に米軍によるミライ村虐殺事件のスクープも行ったハーシュ氏は、イラクやイランにおける米軍の活動に関する記事を最近になっていくつも発表しており、イラン国内で米軍特殊部隊がすでに活動中といった内容のスクープ記事も少なくない。

最後にリトルリーグの話題を少し。6月後半にユタ州で行われたポニーリーグ(9歳と10歳の子供たちが参加するリーグ)の大会で、偶然にもレッドソックスという名のチームとヤンキースという名のチームが対戦したんだけど、ヤンキース側の采配に非難が集中し、数日前からは全国ニュースでも紹介されるほどの話題となっている。9回裏2アウトで、ヤンキースが1点リードしながらも3塁にランナーを置く状況。レッドソックスの最後のバッターはジョーダン・ブリーク君で、彼はチーム内のベストヒッターでもあった。ヤンキースの監督(トーレさんではないですよ、念のため)はここでピッチャーに敬遠を指示し、次のバッターで勝負しようと決断。次のバッターはチーム最低打率のロムニー・オークス君で、ロムニー君は三振に打ち取られゲームは終了した。実はロムニー君は5年前に脳腫瘍の手術を受けており、現在も薬を飲みながらリトルリーグに参加している。ヤンキースのコーチはバスケットボール教室でロムニー君を教えたことがあり、脳腫瘍のことは以前から知っていたんだけど、試合では「チームの勝利が最優先」として彼を打ち取るようピッチャーに指示している。これには観戦に来ていた保護者らからも大ブーイングが起こったそうで、MSNBCやスポーツ・イラストレーテッドといった全国メディアが「リトルリーグでは勝利よりも倫理を優先させるべき」と非難を展開している。すごく難しいテーマだけど、みなさんどう思います?


写真:レバノン南部で13日、イスラエル軍の攻撃で破壊された町を歩く親子 (ロイター通信より)