IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

2度目の10月27日

2006-10-28 13:56:18 | きょういく
セントルイス・カージナルスが27日に行われたワールドシリーズ第5戦で、デトロイト・タイガースを4-2で下し、1982年以来の同シリーズ優勝を決めている。そういえば、今から2年前の同じ10月27日に、カージナルスはホームのブッシュ・スタジアムでボストン・レッドソックスにワールドシリーズ優勝を決められている。80年代には僕の姉もセントルイスで博士号を取得するために学んでいた時期があったんだけど、以外にも彼女のセントルイス時代にカージナルスはワールドシリーズを制していない。24年ぶりの優勝を決めたカージナルスだけど、今回のワールドシリーズはレギュラーシーズンを通して守備力に定評のあったタイガースが度重なるエラーで自滅した印象があり、予想以上に早く決着がついたことに驚きを隠せない。来年はレッドソックスにも頑張ってほしいけれど、自分にとって馴染みのある町のチームが優勝するのも、また気持ちがいいもんだ。さて、今日は全米の有名大学が数十億ドル規模の寄付金集めを開始したというAP通信の記事を。

全米の大学では軒並み授業料の引き上げが続いているが、施設の増設などを目的として、卒業生らに多額の寄付金を求める学校も少なくない。ニューヨーク州イサカにある名門のコーネル大学は今週木曜日にマンハッタンでニューヨーク市長と共同記者会見を行い、その翌日にはイサカのキャンパスに卒業生らを招いて、豪華なディナーパーティーを主催している。パーティーに招待された卒業生の中には、シティグループ元会長のサンフォード・ウェイル氏といった面々も含まれていた。コーネル大学は今後5年間で40億ドルの寄付金を集める計画で、これは毎日160万ドルが大学側に寄付される計算となる。コーネル大学が発表した40億ドルの寄付金キャンペーンは、全米の大学における最大規模のものではなく、コロンビア大学も同じく40億ドルの寄付金を集める計画を発表しており、スタンフォード大学にいたってはその額が43億ドルとなっている。現在、アメリカ国内には10億ドル以上の寄付金を寄付金を集めようとしている大学が24校ある。

最近発表された全米の大学教育にかかるコストに関する調査では、大学教育にかかる費用は依然としてインフレ状態にあり、コーネル大学では1年で約4万3000ドルが必要だ(授業料のみではなく、生活費も含む)。コーネル大学のデービッド・スコートン学長はAP通信の取材に対し、大学側は集められた寄付金を使って、学生向けの奨学金を今よりももっと増やしたいと語っている。コーネル大学はすでに10億ドル分の寄付金を集めており、5年間で40億ドルを集めるという目標も、決して現実離れした話ではない。しかし、コーネルのように順調な寄付金集めが行えていない学校も存在し、UCLAは最近になって30億ドルの寄付金を集める期間を、当初計画していた「数年」から「10年間」に軌道修正している。わずか20年ほど前まで、寄付金集めのイベントといえば、卒業生らを大学のキャンパスに招待して、カクテルパーティーを行うくらいであった。しかし、現在はマーケティングの専門家らが各大学の「寄付金部門」に採用されており(コーネル大学は125人のスタッフを抱えている)、中には年間に20万ドル以上を稼ぐスタッフもいる。

2005年にAP通信が実施した調査では、10億ドル以上の寄付金を集めた大学が47校存在した事が判明し、これらの47校で全国にある全ての大学が集めた寄付金の約3分の2にあたる額を独占していた。しかし、これら47校で学ぶ学生は、大学生25人につき1人の割合となっており、大学間で「持つ者」と「持たざる者」の差が顕著にあらわれる結果となった。「こういった傾向を懸念しています。市民は大学側が授業料を高めに設定しているのにもかかわらず、なぜこういった寄付金集めに走り回らなければならないのかと考えてしまうでしょうね」、コーネル大学のロナルド・エレンバーグ教授(経済学)はAP通信の取材に対してそう語った。コーネル大学では集めた寄付金を、奨学金の増設に加えて、老巧化する施設の改築や、近く退職が予定されているベビーブーマー世代の教授陣に代わる新任の教授を雇い入れる資金として使う見込みだ。

今から3年以上前になる2003年3月10日、女性3人組のブルーグラス・バンド「ディクシー・チックス」が、イギリスのロンドンで行われたコンサートでブッシュ大統領を非難する発言をした。偶然にもコンサート会場は「シェパーズ・ブッシュ・エンパイア」という名前だったんだけど、そのコンサートでメンバーのナタリー・メインズが聴衆に対して「みんなも分かってると思うけど、今のアメリカ大統領がテキサスの出身だということを凄く恥ずかしく思ってます」と語りかけ、その様子は英ガーディアン紙によって大きく報じられたた。イラク戦争が始まる直前だったため、アメリカ国内では(特にカントリーやブルーグラスの人気が高い南部や中西部では)ディクシー・チックスは「国賊」として激しくバッシングされ、彼女達のCDを公の場所で叩き割るイベントなども頻繁に行われた。ラジオ局は彼女達の局を流す事を「自粛」し、その様子をテレビのニュースで見ていた僕は、いつも戦争開始前に頭のネジが外れて、物事を冷静に考えられないアメリカの国民性を象徴するものだと思った。その様子を映画いたドキュメンタリー映画「シャラップ・アンド・シング」が全米の劇場で公開される。バッシング後の彼女達に密着したドキュメンタリーでは、この国の「言論の自由」の本質も垣間見えて、なかなか興味深い仕上がりになっている。


写真:デトロイト・タイガースの最後のバッターが三振に終わり、セントルイス・カージナルスの優勝が決まった瞬間 (AP通信より)

使っちゃったんでしょうかね、マツヤニを

2006-10-24 13:28:34 | スポーツ
本当にあった話なんだけど、すでに世界的な名声を得ていたチャーリー・チャップリンがアメリカで「チャップリンのそっくりさんコンテスト」にこっそりと参加した際、チャップリン本人は優勝できずに3位に終わったそうだ。人間の記憶力や印象って、意外と当てにならないものなんだけど、コーヒーについても同じことが言える。アメリカではカフェイン抜きのコーヒーを好む人が少なくなく、レストランでもスーパーでも、カフェイン抜きのコーヒーを簡単に買ったり注文したりできるのだ。僕の友人の中にもカフェイン抜きコーヒーの愛好家が何人もいるんだけど、フロリダ大学医学部が23日に発表したところによると、スーパーなどで売られているカフェイン抜きコーヒーに少量のカフェインが入ってる場合が少なくなく、カフェインへの肉体的な依存を引き起こさせるには十分な量らしい。カフェイン抜きのコーヒーを水のようにガバガバと飲む友人を知っているけど、あれって一種の中毒症状なのかな?さてさて、今日は昨日デトロイトで行われたワールドシリーズで勝ち投手となったベテラン投手に「松ヤニ疑惑」が浮上したというニュースを。

22日にミシガン州デトロイトで行われたワールドシリーズの第2戦は、デトロイト・タイガースの先発ケニー・ロジャーズ投手が8回を無失点におさえ、3-1でセントルイス・カージナルスに勝利したタイガースがシリーズの戦跡を1-1のタイに戻している。41歳のロジャース投手はポストシーズン開始から23イニング無失点の記録を更新しており、これまで大舞台に弱いと酷評されてきたのがウソのような活躍を見せている。しかし、試合開始直後からロジャース投手の左手の汚れがカージナルス陣営によって指摘され、1回ウラ終了後にはカージナルスのトニー・ラルーサ監督が「ボールの動きがおかしい」と抗議した。ロジャース投手の左手を確認した審判団は手の汚れが泥によるものと判断し、2回オモテが始まる前に、ロジャース選手に手を洗うよう伝えている。ロジャース投手の「手の汚れ」は試合終了後もメディアによって大きく報じられ、試合翌日の23日になっても、変化球の切れを増すために松ヤニを使用したのではないかという疑惑が消える事は無かった。

スポーツ・イラストレーテッド誌(電子版)は23日、匿名の現役ブルペンコーチの談話を紹介する形で、ロジャース投手が松ヤニを使ったのは間違いないと報じている。「間違いなく松ヤニだろうね。ピッチャーは変化球の切れを大きくさせるために、松ヤニやシェービング・クリーム、それに日焼け止めローションなんかを使うんだ。一番効果的なのは松ヤニだけど、シェービング・クリームや日焼け止めローションだと、ばれる心配がほとんどないんだ」。ブルペンコーチはそう語っている。このブルペンコーチは、試合中に松ヤニを使うピッチャーは、通常ならグローブの中に松ヤニを隠し、少しずつ指に塗って使うものだと指摘している。22日の試合では、松ヤニらしきものがロジャース投手の左手の甲にベッタリと付着していたため、「きっと松ヤニの使い方をあまり知らなかったんだろう」とブルペンコーチはコメントしている。

デトロイト・タイガースとセントルイス・カージナルスは23日、24日に第3戦が行われるセントルイスのブッシュ・スタジアムで練習を行い、タイガースの練習中にスタジア内の記者会見室では、カージナルスのトニー・ラルーサ監督が記者団からの質問に答えていた。「(ロジャース投手の手に付着していたものが)泥やホコリだとは思えませんね。少なくとも、そうには見えなかったですよ」。記者会見でのラルーサ監督の談話は、球場内の全てのスピーカーからも流れていたため、グランドで練習中のタイガースの選手も一言一句を耳にしている。記者会見にはロジャース投手も同席し、「ゲームで使用するボールは常に汚れているもので、泥やら汗といった、いろいろな物が付着しているんだ」と無実である事を強調したが、41歳のベテラン左腕が今ポストシーズンで23イニングを無失点で切り抜けている事実に驚きを隠せない記者も多い。昨シーズン終了時点でのロジャース投手のポストシーズン通算成績は0勝3敗で、防御率は実に8.85だった。

仕事柄、午前中と夕方に必ず通信社や新聞のニュースに目を通す機会があり、毎日入ってくるニュースの中には、日本ハムのトレイ・ヒルマン監督じゃないけど、「シンジラレナイ…」とつぶやきたくなるような類のものもある。今日のAP通信が報じたニュースもそういうタイプのもので、西海岸のワシントン州で飼い犬と性的関係を持った26歳の男性が告訴されたらしい。映画なんかに出てきそうな話だけど、ワシントン州では今年6月から獣姦法というのが施行されており、動物と性的関係を持った者に対して、動物への残虐行為を理由に重罪が適用されるのだ。全米13州では動物と人間の性行為を禁止する法律が存在せず、ワシントン州でも最近までそういった法律が存在しなかったんだけど、少し前にシアトル在住の男性が馬と性行為中に死亡したため、獣姦法が作られることになったらしい…。26歳の男性に対する裁判は12月に予定されているらしいけど、いったい誰が警察に通報したのかが気になってしまう。


写真:22日に行われたワールドシリーズ第2戦で、審判から手のひらの「付着物」について質問を受けるケニー・ロジャース投手 (ロイター通信より)

オバマ旋風は起きるか?

2006-10-23 15:33:35 | 政治
先週木曜日だったと思うんだけど(こう書くと、ブログの更新をサボり気味なのがよく分かる)、ニューオーリンズ市内のフレンチ・クォーターで発生した殺人事件がワシントンでも報じられていた。ニューオーリンズ市内での殺人事件は別に珍しいものではないけれど、先週木曜日に全国ニュースで報じられた事件では(実際は今月3日に発生していた)、28歳の男が一緒に暮らしていた彼女を殺害し、その体をバラバラにして、さらに自宅アパートで料理しようとしていたらしい。警察が事件現場に踏み込んだ時には、被害者女性の手足はオーブンに入れられ、頭部は鍋で煮込まれていたらしい。この事件、僕の友人が住む家から僅かに1ブロックのところで発生していて、友人の婚約者は近所のスーパーで犯人の男性(のちに自殺)を見かけていたらしい。犯人が死亡したため、動機が何だったのか分からないまま事件の捜査は終了しそうなんだけど、本当に何だったのだろう?さてさて、今日は民主党のバラック・オバマ上院議員が2008年の大統領選挙に出馬する可能性を示唆したというニュースを。2004年に上院議員に初選出されたオバマ議員は、45歳という実年齢よりもかなり若く見えるんだけど(前からずっと思ってたんだけど、サッカーのフランス代表選手ダビド・トレゼゲに本当に似ている)、その若々しいイメージやバックグラウンド、そして政策能力などに魅力を感じる人は少なくない。

民主党のバラック・オバマ上院議員は22日、NBCテレビの報道番組に出演し、2008年の大統領選挙に出馬する可能性を示唆した。イリノイ州選出のオバマ議員は2004年の選挙で初選出された際に「6年間の任期を全うするつもりだ」と語っていたが、「当時と今では考えも異なるのです」と番組内で心境を明かしたオバマ議員は、11月7日に予定されている中間選挙後に大統領選挙出馬に関するなんらかの発表を行う可能性を示唆している。「この数ヶ月間、各方面からいろいろな意見をいただき、(出馬の)可能性について考えているのも事実です。ただ、今は11月7日の中間選挙だけに集中したいので、(大統領選挙出馬に関して)それほど深くは考えていません」。オバマ議員はそうコメントしている。現在45歳のオバマ議員は現在唯一の黒人上院議員であり、初当選した2004年の選挙では対立候補を大差で破り、全米の注目を集めた。同年の民主党大会では新人議員としては異例の基調演説まで行っている。

今月初め、民主党の次期大統領候補者として呼び名の高かったマーク・ワーナー元バージニア州知事が大統領選へは出馬しないと正式に発表したため、この数週間でオバマ議員の大統領候補者としての株は急騰している。最近発売されたタイム誌はオバマ議員の顔写真を表紙に使い、「バラック・オバマが大統領になりうる理由」という見出しまで付けるほどだった。オバマ議員への注目が集まる一方で、全国レベルでの政治活動経験に乏しい同議員が2008年の大統領選挙に出馬するのは早すぎるのではという声も少なくない。しかし、オバマ議員は22日に出演した報道番組内でこういった懸念を一蹴している。「実際に大統領に選ばれる前に、大統領としての仕事に準備ができている人などいるでしょうか?私はアメリカ国民の判断を信じています」。オバマ議員はそう語っている。

ケニアからの留学生としてハワイ大学で学んでいたイスラム教徒の父と、同じ大学に通っていたカンザス州ウィチタ出身の白人の母親との間に生まれたオバマ議員は、高校卒業後にハワイからアメリカ本土に移り、ニューヨークのコロンビア大学で政治学を学んでいる。ミドルネームはフセインというイスラム教徒風の名前だが、プロテスタント信者である(両親はオバマ議員が2歳の時に離婚し、母方の祖父母によって育てられた)。ハーバード大学ロースクールを卒業後、弁護士として法律事務所に勤務していたオバマ議員は、1997年から2004年までイリノイ州議会上院議員を務めていた。オバマ上院議員と同じく民主党から大統領選挙に出馬する可能性が濃厚なヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州)は22日、来月7日の選挙で対抗馬となる共和党のジョン・スペンサー候補とディベートを行ったが、「7日の選挙に当選すれば、きちんと6年の任期を全うするのか」との問いに、はっきりとした答えを出す事はなかった。

先週金曜日にクリント・イーストウッド監督の最新作「父親達の星条旗」を見に行ってきた。硫黄島での戦いは以前に何度か記録フィルムを見たり、歴史本を読んだりはしていたので、少しは知っていたつもりだったんだけど、硫黄島からアメリカに戻った兵士らがプロパガンダに利用されていく様子を描いた今作は凄く新鮮に思えた。イーストウッド監督といえば、今からちょうど20年前になる1986年に「ハートブレイク・リッジ」という海兵隊のグレナダ侵攻を描いた好戦映画を監督しているんだけど、今回の映画は同一人物が監督したとは思えないほどで、監督の戦争に対する考えや生死感が20年間で大きく変化したのかなとも感じた(映画自体はジェイムズ・ブレイドリー氏が2000年に発表した本がベースとなっている)。今までのイーストウッド監督の作品では、「バード」、「パーフェクト・ワールド」、「ミスティック・リバー」、そして「ミリオンダラー・ベイビー」が僕のお気に入りだったんだけど、この「父親達の星条旗」は間違いなく5つ目の作品としてカウントできると思う。


写真:民主党から2008年の大統領選挙に出馬する可能性が高まってきたバラック・オバマ上院議員 (AFP通信より)

パッセンジャー57を堪能した夏

2006-10-18 15:07:44 | エンターテーメント・カルチャー
アクション俳優のウェスリー・スナイプスに逮捕状が発行されたそうで、偽の税金還付請求を送り続けて、約1200万ドルを手にしていたらしい。スナイプスといえば、僕が高校生の頃に「ニュージャック・シティ」や「ホワイト・メン・キャント・ジャンプ」、そして「パッセンジャー57」といったヒット作品に出演していて、特に「パッセンジャー57」はオーストラリアの田舎町で1週間のうちに4回も見てしまったため(地元の映画館でこれしか上映してなかったので)、なぜか今でもストーリーの詳細をはっきりと覚えている。最近では「ブレイド」というシリーズ物のアクション映画に出演していたけれど、今年に入ってからロシアやルーマニアで撮影した低予算Vシネマに何本か出演していたため、「仕事に困っていたのかな?」と老婆心ながら心配していたのだ。有罪の場合、最高で懲役16年が科せられるそうで、今後の展開が少し気になってしまうんだけど、とにかく無罪を証明してもらいたいものだ。さてさて、今日は歌手のマドンナがアフリカのマラウィで行った養子縁組と、それが引き起こした騒動にまつわるニュースを。

米英のセレブの間でアフリカへの関心が高まっている。U2のボノは1985年に行われたエチオピア飢餓救済コンサート「ライブ・エイド」に参加して以来、アフリカの貧困問題を解決するために精力的に動いており、2005年に行われたG8サミットではアフリカ諸国に総額で500億ドルにおよぶ援助を取り付けている。人気俳優のジョージ・クルーニーはスーダン西部ダルフールで現在も続く大量虐殺をストップさせようとする運動で中心的な役割を演じており、昨年4月にはワシントンDCで有力議員らとともに「ダールフールを救え」と題した集会を開いている。ボノやクルーニーに加えて、最近ではアフリカ諸国で深刻化するエイズ問題に関心を示す俳優や女優が少なくなく、アンジェリナ・ジョリーは昨年7月にエチオピアで生後6ヶ月の女児を養子として迎え入れた。この女児は両親がエイズに感染していたため、生まれてからすぐに孤児院で育てられていた。

今月12日にもアメリカ出身の人気歌手マドンナがアフリカ南部のマラウイで1歳の男児を養子にしたが、その手続きをめぐって「有名人の身勝手な行動」といった批判が国内外で噴出している。マドンナは夫で映画監督のガイ・リッチー氏とともに、エイズ孤児のためのチャリティー・イベントでマラウィに1週間ほど滞在しており、マラウィの高等裁判所は夫妻の滞在中に養子縁組を認める判決を出している。マドンナの養子となった1歳のデービッド・バンダ君は、母親が出産直後に死亡し、父親もエイズのために余命僅かという状態だった。バンダ君は関係者らとともに17日にロンドンに到着し、マドンナの邸宅で夫妻と再会を果たしている。マラウィの法律では養子縁組の希望者は同国に約1年間滞在する事が義務付けられており、その間に政府職員によって子供を育てる能力の有無が調査される仕組みだった。しかし、マドンナ夫妻の養子縁組では、高等裁判所が特例を認めてしまい、人権団体などからは「子供の権利が蔑にされている」といった批判が噴出している。

国内外での批判を受けて、マドンナは17日に声明を発表しており、「今回の養子縁組はマラウィの法律に沿って行われたものであり、一連の報道は全く正確性を欠いたものである」と主張している。声明の中でマドンナは、夫のガイ・リッチー氏と共にマラウィを訪れる数ヶ月前から養子縁組の準備を開始していたと説明し、プライベートな問題であったために公表を避けてきたのだと語った。「マラウィだけで100万人以上の孤児が生活している実態を知ってから、たとえ1人の子供でも貧困から救おうと、我が家を開放することを決めたのです。今回の決断は決して安易なものではありませんでした」。マドンナは声明でそう語っている。手続きの面で議論を呼んだ今回の養子縁組だが、養子縁組そのものが大きなニュースとして報じられたため、エイズの蔓延によって数百万人の子供が孤児となっているアフリカの現状に世界が目を向けるきっかけとなるかもしれないと期待する声もある。

日本ほどじゃないけれど、アメリカでも以外と毎日の通勤に多くの時間を費やす人が少なくない。17日のロイター通信によると、最近になって政府系の交通調査委員会が実施した調査で、毎日の通勤に1時間以上を費やす人の割合が、1990年から2000年までの10年で50パーセントも増加していたことが分かった。また、以前にも増して、多くのアメリカ人が午前5時から6時半までの間に自宅から会社へと出発している実体も明らかになっている。やはり、より多くのアメリカ人が都市部ではなく郊外に移り住むようになった最近のトレンドが、この通勤時間増加の原因となっているらしい。この記事を読んで思いだしたのが、今年春にワシントン・ポスト・ラジオのニュース・エディターと話をした時のこと。アメリカ人の大部分が自動車で通勤しているため、通勤時間が長引くほど、早朝や夕方のラジオ番組を聞いてくれる人の数が増え、ラジオ局としてはありがたい事らしい。たしかに、僕の周囲でも夜6時代のニュースをテレビではなくラジオで聞く人が少なくない。自分がラジオの仕事に携わっているため、日本でもそんな車社会が本格的に到来しないものかと、淡い期待を抱いたのでした。


写真;今年3月にニューヨークで撮影されたウェスリー・スナイプスの写真 (ロイター通信より)

ラリー・キングの苛立ち

2006-10-17 15:08:03 | ビジネス
CNNの名物番組に「ラリー・キング・ライブ」というインタビュー番組があって、ほぼ毎日放送されているこの番組は、ホストのラリー・キングがスタジオに「旬の人」を招いて、1時間にわたって様々な質問をするという内容だ。アメリカのテレビにはこういったゲストへのインタビューやトークを売り物にする番組が多いけれど、この「ラリー・キング・ライブ」は旬なゲストをいつでも呼べるという点で、「オプラ・ウィンフリー・ショー」と並んで横綱的な位置に君臨している。ちなみに、大関級となると、ジョン・スチュワート、ジェイ・レノ、そしてデービッド・レターマンの3人がしのぎを削る状態だ。話が長くなったけど、16日の番組内でラリー・キングにスタジオで1時間ほどインタビューを受けたのが、ジョンベネちゃん殺害事件で一躍時の人となったジョン・マーク・カー元容疑者だった。「なぜこの時期に?」という疑問と、「よくブッキングできたなぁ」と半ば感動したような気持ちが交錯しながら、とりあえず番組を見ることにした。結論を言うと、カー容疑者は弁護士という単語を何度か使って、肝心な事を最後まで一切話さず、スリに有り金を全部取られたような気分になってしまった。やっぱり弁護士が絡むと、質問らしい質問もできない。それが今日の番組で得た教訓でした…。さてさて、今日は以前のブログでも少し紹介した、テキサス州の公立学校で生徒を対象にした護身術レクチャーが始まったというニュースを。

テキサス州フォートワース郊外のバールソンという町では、地元の学区にある全ての公立学校で生徒を対象にした護身術の訓練がスタートしている。13日付のAP通信によると、訓練ではコロンバイン高校銃撃事件などを想定して、生徒達に手足だけではなくペンやベルトなどを使って侵入者と闘う方法もレクチャーされ、インストラクターにはイギリス軍の予備役少佐も名を連ねている。「机の下に隠れて、プロの助けを祈っているだけではダメなのです」。バールソンの公立学校で護身術のレクチャーを行うレスポンス・オプションズ社のロビン・ブラウン氏はそう語る。ブラウン氏はイギリス陸軍の予備役少佐でもある。学校で生徒を対象にした、外部侵入者に対する護身術のレクチャーは全米の高校でも前例が無く、こういったレクチャーによって生徒間の暴力が増え、怪我人や死者が出る可能性を懸念する声も少なくない。

こういった批判に対して、バールソンの教育関係者らはコロンバイン高校で発生した事件で護身術の必要性を感じ、最近ペンシルバニア州のアーミッシュ学校で発生した銃撃事件が護身術レクチャーを導入するきっかけになったと語っている。バールソンには10校の公立学校があり、そこで学ぶ8500人の生徒がレクチャーを受ける予定だ。レクチャーでは護身術に加えて、トルネードや火災といった災害時における行動も含まれており、学生はベルトや靴ひもを止血帯として使用する方法などを学ぶ予定だ。そして、銃を持った侵入者に対する護身術訓練では、生徒と教師が教室内で銃をかまえる侵入者役の手足を押さえつける方法がレクチャーされ、前出のブラウン氏は「鉛筆や紙袋といった教室内にある日常的な物が、緊急時には有効な武器にもなるのです」と生徒らに対して指導している。

武器を持った侵入者らに対する護身術は、2001年9月に発生した同時多発テロ事件後に注目され始めた。ハイジャックされたユナイテッド航空93便の機内で乗客や乗務員らがハイジャック犯達に対して攻撃を仕掛ける様子がニュースや映画で紹介され、「おとなしくしていれば、怪我をすることは無い」という発想から、「自分の身は自分で守らなければならない」という考えへとシフトチェンジし始めたのだ。1998年にはオレゴン州にある高校のカフェテリアで、十代の少年が突然銃を乱射し始め、22人が死傷する事件が発生している。この事件では、同じ高校のレスリング部に所属していた17歳の男子生徒が犯人にタックルを行い、胸に銃弾を受けながら犯人を取り押さえた事が大きなニュースとして報じられた。護身術が犯罪被害を最小限に抑える効果を持つとする主張がある一方、非営利団体「全米学校安全センター」のヒルダ・ケイロス氏は「将来的にトラブルが発生するのは必至」と警鐘を鳴らしている。「もしも犯人と格闘中に生徒が死亡した場合、その責任問題はより複雑なものとなるでしょう」。ケイロス氏はAP通信の取材に対し、そうコメントしている。

月曜日午後に入ってきた野球関係のニュースに少しビックリしてしまった。ア・リーグ優勝決定戦でデトロイト・タイガースに敗れたオークランド・アスレチックスが、2003年から指揮を執っていたケン・モッカ監督を解任した。モッカ監督といえば、僕らの世代には懐かしい名前でもあり、1982年から4シーズンにわたって中日ドラゴンズでプレーしていた。1997年にはレッドソックス傘下の3Aポータケット・レッドソックスでも指揮を執っていたモッカ監督、今回アスレチックスから解任された理由というのが選手とのコミュニケーション不足だったようで、サンフランシスコ・クロニクル紙などは何人もの選手が監督と口を聞かない状態であったと報じている。僕はモッカ監督が若い選手の多いチームをうまくまとめ上げて、ポストシーズンの常連になるまで鍛え上げたというイメージを持っていたんだけど、たしかに問題はあったようだ。メディアの取材に対し、怪我でプレーできない選手達を「存在しない人間」と呼んだりし、選手間で不満が募っていたのだという。また、どこかのチームで彼が指揮を執る姿を見てみたいんだけどなぁ。


写真:16日にCNNで放送された「ラリー・キング・ライブ」に出演したジョン・マーク・カー元容疑者 (AP通信より)

タバコを吸ってくれてアリガトウ

2006-10-14 12:12:13 | スポーツ
少し前のブログでも紹介したように、アメリカ国内の学校で1週間のうちに3件もの銃撃事件が発生して、ワシントンでもブッシュ政権関係者による緊急会議なんかが開かれたりもしていた。僕は日本の夕刊紙に連載しているコラムの中で、ウィンスコンシン州の州議会で教師が武装する権利を認める法案が提出されるかもしれないと最近書いたんだけど、テキサスではもっと凄い事になっていたよう。フォートワース郊外のバールソンという町では、地元の学区にある全ての公立学校で生徒を対象にした護身術の訓練がスタートしている。AP通信などの記事によると、訓練ではコロンバイン高校銃撃事件などを想定して、生徒達に手足だけではなくペンやベルトなどを使って侵入者と闘う方法もレクチャーされ、インストラクターにはイギリス軍の予備役少佐も名を連ねている。こういったレクチャーが逆に校内暴力を増加させてしまうという懸念もあるようだけど、今後こういったレクチャーが各地で実施されていくかもしれない…。さて、今日は11日にマンハッタンで発生した小型機衝突事故に関するニュースを。

11日にニューヨークのマンハッタン東部で発生した小型飛行機の衝突事故では、事故機に搭乗していたニューヨーク・ヤンキースのコリー・ライドル投手の死亡が確認されたが、12日にはもう1人の犠牲者の名前も明らかになっている。ニューヨーク市警察によると、亡くなったのはセスナ機などの操縦インストラクターとして働いていたタイラー・スタンガーさんで、カリフォルニアの地元紙「サン・ガブリエル・バレー・トリビューン」によると、スタンガーさんは17歳の時に操縦免許を取得し、南イリノイ大学で航空経営学の学位を取得していたのだという。9月8日付のニューヨーク・タイムズ紙は小型機の操縦を趣味としていたライドル投手へのインタビュー記事を掲載しており、記事の中ではカリフォルニア南部に自宅のあるライドル投手とスタンガーさんが約1年前に出会った様子などが紹介されている。ライドル投手は約8ヶ月前に小型機の操縦免許を取得していた。

ヤンキースタジアム内にあるライドル投手のロッカーの向かい側には、今も全く使用されていないロッカーがあり、そのロッカーを最後に使っていたのは70年代に活躍したチームキャプテンのサーマン・マンソン捕手だった。マンソン選手は1979年オーナーのジョージ・スタインブレナー氏によって永久欠番にされている。12日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、ヤンキースがプレーオフでタイガースに敗れたため、ライドル選手は8日にヤンキースタジアムを訪れ、ロッカーを整理しながら何人かの記者と会話を楽しんでいたのだという。会話の内容は小型機の操縦についてだった。ライドル選手は記者らに対し、国家安全運輸委員会(NTSB)のウェブサイトでマンソン選手の事故に関する報告書を読んだ事を明かし、同じようにセスナ機の操縦中に事故死したジョン・F・ケネディJr.に関する報告書も読んでいたと語った。9月8日のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたインタビュー記事の中で、ライドル選手はこれまでに95時間程度の単独飛行を行ったと語り、セスナ機の操縦がストレス解消にもなると説明していた。

マンハッタンでの事故をうけて、連邦航空局(FAA)は13日、ニューヨーク・マンハッタンのイースト・リバー周辺での固定翼機の飛行を禁止すると発表している。これまではイースト・リバー沿いの飛行が認められていたが、これからはヘリコプター以外がこの周辺を飛ぶ事は原則的に禁止となる。ライドル選手とスタンガーさんが死亡した今回の事故では、現在も解明されていない謎が幾つか存在し、事故機を操縦していたのがどちらだったのかさえ、まだ判明していない。ライドル選手の遺族はMLB機構側から150万ドル程度の保険金をもらえる予定だが、ライドルさん本人が事故機を操縦していたと証明された場合、今回のケースは保険金支払いの適用外となる。事故発生前、ライドル選手らはマンハッタン上空を旋回飛行していた模様で、自由の女神や国連ビルなどの周辺上空を飛行していたと当局は発表している。

この1週間で3本の映画を見た。3本とも友人から薦められていた作品で、タイトルを紹介すると、「ラッキー・ナンバー・スレヴィン」、「サンキュー・フォー・スモーキング」、そして「ダウン・イン・ザ・バレー」というラインナップ。どの作品も凄く面白く、「スナッチ」のアメリカ版程度にしか考えず見た「ラッキー・ナンバー・スレヴィン」のストーリーが意外な方向に展開していく様子にはいい意味で驚かされたんだけど、ブログを読んでくれている方にぜひ見てもらいたいのが、「サンキュー・フォー・スモーキング」だ。今年もすでに200本近い映画を見てきたけど、この作品は間違いなく今年見た作品ではトップ3に入ると思う。ストーリーなんだけど、タバコ産業の大物ロビイストを中心に描かれる人間模様で、渋めのキャスティングにも好感の持てるコメディ。ここで内容を書くよりも、ぜひ実際に見てほしい作品で、主人公がカリフォルニアで映画業界のフィクサーと出会うシーンなんかはジャック・エイブラモフを思い出してしまうほど。一番最後のラインが気に入ってて、主人公が「マイケル・ジョーダンはバスケをやって、チャールズ・マンソンは人を殺して、そして僕は喋るのだ。人には、皆なんらかの才能がある」とナレーションで語る部分は凄く印象的だった。

写真:11日にマンハッタンで発生した小型機衝突事故で、事故機の残骸によってフロントガラスにダメージを受けたタクシー (AP通信より)

キリマンジャロとER

2006-10-11 11:02:25 | 政治
今日からMLBのリーグ優勝決定戦が始まるけれど、ワールドシリーズ出場をかけて戦う4チームの動向以上に、ニューヨーク・ヤンキースの来年度人事がどうなるのかといった話題が国内メディアによって大きく報じられている。ヤンキースの件はこの前のブログで少し紹介したけれど、ニューヨーク・メッツに敗れたロサンゼルス・ドジャーズにも興味深いエピソードがあったようだ。今期からチームに加わったジョー・バイムル選手は左腕の中継ぎとして62試合に出場し、プレーオフでも活躍が期待されていたんだけど、メッツとの第1戦が始まる前日の早朝に利き腕の手の部分を切ってしまった。当初、バイムル選手は監督やチームメイトに「ホテルの部屋で怪我をした」と言ってたんだけど、第3戦目の開始直前に行われたミーティングで「実は明け方までニューヨーク市内のバーで飲んでいて、その時にグラスで手を切ってしまった」と明かし、謝罪している。でも、グラスで手を切るって、ベロンベロンになるまで飲んでたのでは?さてさて、今日は北朝鮮の核実験に関するニュースを。

北朝鮮の国営朝鮮中央通信が9日に「地下核実験を安全に成功させた」と発表したため、アメリカ政府内では依然として情報収集が続けられているが、10日付のニューヨーク・タイムズ紙は今回の核実験を「アメリカとその同盟国が約20年にわたって展開してきた対北朝鮮外交の失敗を意味するもの」と分析記事の中で結論付けている。中間選挙まで残り4週間となった9日、民主党は早速「ブッシュ政権はサダム・フセインを政権の座から引き摺り下ろすほどの情熱を、核の拡散防止には注いでこなかった」と、ブッシュ大統領や共和党に対して激しい批判を展開している。ブッシュ大統領と側近達は一触即発の状態であったイラクこそが最も切迫した脅威であったと主張する。しかし、ブッシュ大統領は過去に北朝鮮の金正日総書記を「世界最悪の独裁者」と呼び、北朝鮮に核を持たせたりはしないと豪語していた。ブッシュ大統領がアメリカ国民に向けて行った「約束」は、9日の核実験成功の発表によって、あっさりと裏切られた格好となった。

「今回の地下核実験で言えるのは、我々は悪の枢軸と呼ばれる国への対応の順序を間違えたということです」。民主党のサム・ナン元上院議員はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに対してそう語った。議員引退後に核の拡散を防止する運動などを精力的に行っているナン議員は、「我々は悪の枢軸と呼ばれる国々の中で、最も危険度が低かったイラクに目を向けてしまいました。今になって、その代償を支払わなければならないのです」と語っている。ブッシュ政権内で国家安全保障問題を担当する側近達は9日、「過去5年間で異なった戦略を打ち出していたら、今とは違った結果になっていたか?」というタイムズ紙の質問へのコメントを拒否している。しかし、ステファン・ハドリー国家安全保障担当補佐官だけは、「これまでアメリカが単独主義に走っていると批判されてきた過去を思い出してください。そういった背景があったため、我々は同盟国などと協力して外交を重視してきたのです」とコメントしている。

CNNは10日、米政府高官の話として「北朝鮮は核爆発実験を試みたが、うまくいかなかったようだ」と伝えている。この高官は核実験実施直前に北朝鮮が中国に対し、4キロトン規模の核爆発実験を行うと伝えていた事実を認めたが、実験が行われたという証拠示す手がかりがほとんど見つかっていない状態の中、爆発自体が500トン以下の極めて小さなものだったのではないかと指摘している。別の政権高官はCNNの取材に対し、北朝鮮が2度目の核実験を実施する可能性は存在すると認めたものの、核実験を行うための準備作業などは現時点で何も確認されていないと強調した。パキスタンが1998年に核実験を実施した際、爆発の規模は約15キロトンあった。ロシア国防省は10日、北朝鮮の核爆発実験の規模を5~15キロトンと推定する発表を行ったが、米情報当局内では500トン程度だったのではという認識が強まっている。しかし、ある政権高官はCNNに対し、「地下に作られたトンネルの強度によっては、地震波を弱める事も可能だったのかもしれない」と語っている。

日曜夜に2人の友人から電話があり、それぞれ「まさか行くとは思わなかった場所」についていろいろと話してくれた。ハンブルグで新聞記者をやっているドイツ人の友人は少し前に取材でキリマンジャロ登山を経験したらしく、かなり興奮した口調で「もう一度、プライベートでも行ってみたい」と何度も言っていた。電話で話してから数時間後には現地で撮影した写真をメールで送ってくれたんだけど、スワヒリ語で「輝く山」を意味するアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロは、やっぱり美しかった。ドイツからの電話を終えてしばらくすると、ワシントン市内で働くアメリカ人の友人(兼サッカー仲間)から電話が。受話器から聞こえてくる痛々しい声。なんでも先週金曜日に自分のオフィスで整理作業をしていた際、重めの箱を無理な姿勢で動かそうとして腰を痛めてしまい、その日の夜にオフィスの近くにある病院の救急救命室(ERってやつです)に運ばれたらしい。幸いなことに、大事には至らなかったそうだけど、これから数週間はイスに長時間座らないようにとも言われたそうだ。本人はサッカーボールを蹴りたくてウズウズしている様子だったけど、今回ばかりは本当におとなしくしておいた方がいいと思う。


写真:7日に行われたドジャーズ対メッツの第3戦。ゲーム終盤に頭をかくドジャーズのリトル監督 (AP通信より)

ブロンクスの「熱すぎる」冬

2006-10-09 13:24:56 | スポーツ
ボストンから友人のフランクが取材でワシントンに来ていたので、久しぶりに一緒にサッカー・イタリア代表の試合をスポーツバーで観戦した。ボストン・グローブのスポーツ担当記者でもある彼は、このブログでも何度か紹介した事があるんだけど、1990年のイタリア大会からワールドカップの取材を続けていて、今年行われたドイツ大会にも行っている。ドイツの話をしばらくしたあとで、イタリア・ウクライナ戦のキックオフ前に流れたコマーシャルに出てきた何人かのブラジル選手を見ながら、僕らはチアゴ・マルティンスというブラジル人選手の話を始めた。今もアメリカ国内のプロサッカーリーグ(MLS)でストライカーとしてプレーするマルティンスは、ブラジル時代にプロサッカー選手としての経験が全く無かったんだけど、1999年にアメリカにやってきた理由というのがバックパッカーとしてカリフォルニアでサーフィンを楽しむというものだった。やがて所持金も底をついて、公園のベンチで寝る生活を続けていたマルティンスは、近くで行われていた草サッカーの試合に混ぜてもらい、偶然その場所でプレーしていた人物からカリフォルニアにある大学のサッカー部を紹介してもらったというエピソードがある。アメリカの大学時代に初めてサッカーを真剣にプレーしたマルティンス。笑ってしまいそうなエピソードだけど、「ブラジル人はやっぱりサッカーがうまい」という結論で2人は納得したのでした…。

デトロイト・タイガースに敗れてリーグ優勝決定戦への進出を逃したニューヨーク・ヤンキースのオフシーズン。オーナーのジョージ・スタインブレナーによる「粛清」が行われるのかどうかに注目が集まる中で、予定よりも早く始まってしまったオフシーズンの1日目は、まさしく嵐の前の静けさという表現がピッタリと当てはまるような状態だった。8日、クラブハウスでは数人の選手が荷作りを行っていたが、ニューヨークの地元メディアから「戦犯」に名指しされたジョー・トーレ監督やアレックス・ロドリゲス選手らの姿は無かった。現在も球団から来期に関する公式なコメントは発表されていないが、8日付のデイリー・ニュース紙はスタインブレナー氏がトーレ監督を解任し、後任としてシアトル・マリナーズなどで指揮を執ったルー・ピネラ氏を招聘する考えだと報じている。MLB関係者の1人が匿名を条件にAP通信に語ったところでは、スタインブレナー氏は今プレーオフにおけるヤンキースのパフォーマンスを「絶対に受け入れられない」と不満げに語っていた模様で、トーレ監督の将来は決して明るいものではないようだ。

ポストシーズンを中継するFOXテレビの仕事でサンフランシスコに滞在中のピネラ氏は、同局の取材に対して、「ヤンキースとはこれまで監督人事について話し合ったことも無く、一連の報道に驚いている」とだけコメントしている。また、ピネラ氏の代理人を務めるアラン・ニーロ氏もAP通信の取材に対し、「ヤンキース側からのコンタクトは一切ありません。ピネラ氏は監督のポストが空いた4球団(ワシントンやサンフランシスコ)での指揮に興味を示しているのです」とコメントしている。全選手の年棒総額が2億ドルを超えるヤンキースがリーグ優勝決定戦に進めなかったことで、トーレ監督に非難が集中する中、これまでもポストシーズンでは全く成績を残せなったアレックス・ロドリゲス選手の去就にも注目が集まっている。過去に2度MVPに選出されたロドリゲス選手だが、ポストシーズンでの成績は常にファンを失望させるもので、今プレーオフでタイガースを相手に戦った4試合では、14打数1安打という散々な成績だった。

1996年にヤンキースの監督に就任したトーレ監督は、過去11シーズン中、全ての年でチームをプレーオフに進出させており、そのうちの9回はア・リーグ東地区で首位チームとして出場したプレーオフだった。1996年から2000年までの5年間で、トーレ監督率いるヤンキースはワールドシリーズで4度も優勝する強さを見せつけたが、2001年からはワールドシリーズ優勝を経験しておらず、過去5年でリーグ優勝決定戦進出を逃したのは今回で3度目となる。ロン・ギドリー投手コーチとトニー・ペーニャ1塁コーチは「トーレ監督は怪我人が続出したチームを見事にア・リーグ東地区優勝へと導いたのです」と弁護し、ギャリー・シェフィールドや松井秀喜といったオールスター級の選手3人が長期欠場したチームの舵取りをうまく行ったと強調したが、契約をあと1年残すトーレ監督の去就は未定だ。63歳のピネラ氏は現役時代にヤンキースのスター選手として活躍し、1986年からは約3年にわたってヤンキースの監督も務めている。

ニューヨーク・メッツのカルロス・デルガド選手はメジャーリーグ屈指のスラッガーなんだけど、意外なことにキャリアを通じてプレーオフ出場は今年が初めてで、メジャーデビューしてからプレーオフに出場するまで、実に1703試合を要している。念願のプレーオフ出場を果たした事がモチベーションになったのか、主力投手数名を怪我で欠くメッツはデルガド選手ら打撃陣の活躍で無難にリーグ優勝決定戦に駒を進めている。そして、同じニューヨークの町で、プレーオフシーズンになると必ず注目される選手にヤンキースのアレックス・ロドリゲスがいる。高校卒業時から全米の注目の的だったA-ROD(ロドリゲス選手の愛称)は、シアトル・マリナーズでプレーしたのち、テキサス・レンジャーズと10年総額で2億5200万ドルの契約を結ぶ(もちろん、スポーツ史上最高額となる契約です)。2004年にヤンキースにトレードされたA-RODだけど(給料の一部は現在もテキサス側が支払っている)、その年に行われたリーグ優勝決定戦の第3試合で5打数4安打と大活躍して以来、まるで呪われたかのようにポストシーズンで打てなくなってしまった。その年の第4戦以降から現在までのポストシーズン成績が45打数1安打で、打率にすると実に1割8厘!2500万ドル以上の年棒を稼ぐ選手としては、やはり失望する数字だ。2年連続で優勝決定戦進出を逃したヤンキース。戦犯の1人であるロドリゲスの運命はいかに?


写真:来期の去就はいかに?ニューヨーク・ヤンキースのジョー・トーレ監督 (AFP通信より)

アーミッシュ学校での銃撃事件、性的いたずらが目的か?

2006-10-04 12:36:49 | 犯罪
ついにメジャリーグのプレーオフが始まり、今回はレッドソックスが出場を逃したため一抹の寂しさもあるものの、スポーツバーに通う毎日がしばらく続きそうです。シーズン終盤で劇的に失速したセントルイス・カージナルスだけど、今日の試合ではサンディエゴ・パドレスを5-1で下している。このスコアを見た時、僕は何日か前に買った「スポーティング・ニュース」誌のプレーオフ特集の記事を思いださずにはいられなかった。記事によると、1995年以来、ワールドシリーズに出場した6チームはレギュラーシーズン最後の2週間の勝率が最も低かったチームだったそうだ。また、これも偶然になってしまうんだけど、レギュラーシーズン最後の2週間で最も勝率の高かったチームも、ワールドシリーズに6度出場している。このジンクスはセントルイスにも当てはまるのかな?さて、今日はペンシルバニア州で昨日発生した銃撃事件に関する続報を。

2日にペンシルバニア州ランカスター郡のアーミッシュ系小学校で発生した無差別殺人事件では、犯行現場で自殺した容疑者男性が犯行直前に家族に対して遺書らしきものを残していた事実などが報じられたが、謎だけが残された犯行の動機について新たな展開があったようだ。事件の捜査を担当する州警察は3日、チャールズ・ロバーツ容疑者が犯行直前に妻にかけた電話の内容を発表し、容疑者が妻に対して20年前に親戚関係にある複数の女児に性的いたずらを加えていたと告白し、同様のいたずらを再度行えないかと考えていたと伝えていた事を明らかにした。2日の事件での死者は5人となり、病院に搬送された6人が依然として重体となっている。捜査当局はロバーツ容疑者が残した遺書らしきメモの分析を開始し、すでに彼の親戚からも事情を聞いている。わずか1週間で3件の学校を舞台にした銃撃事件が発生したため、ブッシュ政権は3日、来週中に学校安全に関する会議を緊急で開催すると発表している。

ペンシルバニア州警察のジェフリー・ミラー警察本部長は3日の記者会見で事件現場からロバーツ容疑者の所持品がいくつも発見されたと発表し、容疑者が性的いたずらを目的として、小学校の女子児童だけを標的にしていた可能性があると語った。2日の段階でロバーツ容疑者がショットガンや拳銃といった複数の銃火器類を事件現場となった西ニッケルマインズ・アーミッシュ学校に持ち込んでいた事実は明らかにされていたが、3日に行われた記者会見でミラー警察本部長はロバーツ容疑者の所持品に市販のゼリー状潤滑油が含まれていたと語り、この潤滑油は性行為の際に使われる場合もある。「あくまで可能性としてですが、容疑者が教室内で女児達に発砲する前、別の方法で彼女達を傷つけようとしていたとも考えられます」。ミラー警察本部長はそう語っている。3日の記者会見では犠牲者の名前や年齢も公表されたが、死亡した5人は7歳から13歳までの女性児童だった。

3日の記者会見で明らかになった情報の多くは、ロバーツ容疑者の妻が捜査当局に行った話の内容がベースとなっており、犯行当日に携帯電話で話をした妻のマリーさんは「夫は『もう家には戻らない』と話していました」と捜査関係者に語ったのだという。また、遺書らしきメモの中でロバーツ容疑者は神に対する激しい怒りを露にしている。ロバーツ容疑者は9年前に娘を生後20分で失っており、それが怒りの理由となっていた。捜査当局はロバーツ容疑者が性的いたずらを行ったと語った親戚からの事情聴取をまだ開始していないが、両親や妻、さらに他の親戚家族への事情聴取はすでに行っている。前出のミラー警察本部長によると、ロバーツ容疑者の家族や親戚は、誰一人として性的いたずらについて知らなかったのだという。

共和党のマーク・フォーリー元下院議員(フロリダ州選出)が議員事務所で見習い中の高校生と、インターネット上で「わいせつなチャット」を行っていた事が発覚し、フォーリー議員は辞職している。ABCニュースによると、フォーリー議員は議員事務所での「見習いプログラム」に参加していた男子高校と何度もわいせつなメールのやり取りを繰り返していたそうで、フォーリー元議員の弁護士は「そういったメールのやり取りが行われていた時、元議員は酔っ払った状態にあった」と苦しい弁明を行っている。フォーリー元議員がゲイだという噂はワシントンでは以前からあったんだけど、彼の弁護士は3日に行った記者会見で元議員が同性愛者であり、カトリック教徒でもある元議員が13歳の頃に教会関係者から性的ないたずらを加えられていたという事実を明かしている。ただ、僕にはこういった弁明が言い訳にしか聞こえない。性的いたずらの件はかわいそうだと思うし(事実ならね)、彼の性癖について得にコメントも無いけど、未成年者の保護に関する法案を提出した人物が、こういった行動をしていたのはいただけないと思う。中間選挙まで残りわずかで、政治的な臭いもするけれど、彼の議員辞職は当然ではないでしょうか?


写真:3日に行われた対パドレス戦で、2ランホームランを放ったカージナルスのプホルス選手 (AP通信より)

学校での銃撃事件、この1週間で3件目

2006-10-03 16:06:06 | 犯罪
ボストンの大学院時代のクラスメートから約半年ぶりにメールが来た。彼女は大学院の卒業後にボストンを離れ、ニューオーリンズで仕事をしていたんだけど、ハリケーン「カトリーナ」が原因で仕事を失っていた。半年前にもらったメールでは求職中だと聞いていたので、僕はてっきり実家があるフロリダにでも戻ったのかなと思っていたんだけど、バーテンダーとして働きながらニューオーリンズに残っていたそうだ。今もバーテンの仕事で生計を立てながら仕事を探しているらしく、いくつかオファーも来ているそうなので、正直ホッとした気分になった。メールには「生活は苦しいけど、この町が好きだから離れたくない」と書かれていて、僕がニューオーリンズで出会った多くの人が口にした言葉と同じものだった。でも、その気持ちも分かるような気がする。さてさて、今日はペンシルバニア州の小学校に銃を持った男が侵入し、児童らを無差別に殺害した事件に関するニュースを。

ペンシルバニア州ランカスター郡で2日、散弾銃などで武装した男が地元小学校に侵入し、女子児童らを人質にとる事件が発生した。事件発生から1時間後、容疑者の男は教室内で発砲を開始し、女子児童4人が頭を撃たれて死亡した(1人は搬送先の病院で死亡)。男は発砲後に自殺している。男によって入り口を木材でふさがれた教室内では、女子児童や女性職員らが黒板の前に立たされ、それぞれの足を縛られた状態で頭部や胸部に銃弾を受けていた。銃撃を受けたほかの7人は病院に運ばれたが、いずれも重体なのだという。アメリカ国内の学校で発生した銃撃事件はこの1週間で3件に達しており、27日にはコロラド州ベイリーで53歳の男が地元高校に侵入し、人質となった女子生徒が頭部を撃たれて死亡している。29日にはウィンスコンシン州の高校で、15歳の男子生徒が校長を射殺する事件も発生している。

今回の事件現場となった小学校はアーミッシュの村にあり、これまで凶悪犯罪とは無縁の場所だった。捜査当局の発表によると、教室内で銃撃を受けた女子児童らはお互いの足をワイヤーなどで縛られた状態で、至近距離から1人ずつ頭部を撃たれたのだという。2日の事件発生前に、コロラドとウィンスコンシンの2州で学校内での銃撃事件が発生していたため、捜査当局は自殺した男が模倣犯だった可能性も示唆している。自殺した男は近郊の町に住むトラック運転手のチャールズ・ロバーツ(31歳)で、彼自身はアーミッシュには属していなかった。ロバーツ容疑者はライフルと散弾銃、拳銃をそれぞれ一丁ずつ小学校に持ち込んでおり、約600発の弾丸やスタンガン、2本のナイフも所持品として発見されている。ロバーツ容疑者には妻と3人の子供がいたが、事件前に自宅には遺書らしきメモも残されていた。事件直前に妻に最後の電話をしたロバーツ容疑者は、「20年間の恨みを今はらす」と語っているが、その「恨み」が具体的に何を意味するのかは明らかにされていない。捜査責任者は事件現場となった小学校が、単に地理的な理由で選ばれた可能性もあるとも語っている。

1999年にコロラド州リトルトンで発生したコロンバイン高校銃撃事件では容疑者2人を含む15人が死亡し、これを機にアメリカ国内の学校関係者の間ではいかにして校内での暴力事件を防止するかが議論され、各学校では地元警察などの協力で避難訓練などが実施されるようになった。しかし、専門家の間では学校内における凶悪犯罪を100パーセント未然に防止するのは不可能に近いとの声も出ている。オハイオ州クリーブランドで学校向け安全教育プログラムを展開するコンサルタント会社の代表はAP通信の取材に対し、「学校とは無関係の外部者による侵入が発生した場合、全てを守りきる事はできないのです」と語っている。そのような中、警察と学校が協力して行ってきた避難訓練は、少しずつ効果を見せ始めているようだ。アメリカ国内の多くの学校で、侵入者を想定して各教室のドアをロックし、生徒を集団で安全な場所に移す訓練が行われているが、先月27日にベイリーで発生した事件では学校側の迅速な対応で犠牲者を最小限に抑える事ができたとも言われている。

の好きな俳優の1人にフォレスト・ウィテカーという個性派アクターがいて、彼を初めて映画で見たのは二ール・ジョーダン監督の名作「クライング・ゲーム」だったと思うんだけど、彼が脇役として印象深い演技を披露した「スモーク」なんかも大好きな作品の1つだ。数年前に公開された「フォーン・ブース」という映画では、コリン・ファーレル演じる主人公を説得する刑事を演じていたけれど、それ以来彼が出演する作品を見る機会は無かった。でも最近になって、ウィテカーの最新作が劇場公開されるというニュースを新聞のエンターテーメント欄で知り、時間を見つけて映画館に行こうかなと思っている。最新作のタイトルは「ザ・ラスト・キング・オブ・スコットランド」で、1970年代にアフリカのウガンダで独裁者として君臨したイディ・アミン大統領の話で、ウィテカはアミンを演じている。自国民30万人以上の虐殺に関わったとされるアミン大統領については、僕は勉強不足であまりよく知らないんだけど、映画館に行くまでには少しその歴史を調べてみようと思う。

写真:2日にペンシルバニア州ランカスター郡で発生した人質事件で、事件現場となったアーミッシュの小学校周辺に集まった地元住民達 (AFP通信より)