IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

元議員の賄賂メニュー、ディスカウントもあったそうです

2006-02-28 16:06:01 | 犯罪
007シリーズについてちょっと。これまでジェームズ・ボンド役だったピアース・ブロスナンが降板を発表したため、最新作の「カジノ・ロワイヤル」ではイギリス人俳優のダニエル・クレイグが6代目ボンドを襲名する(襲名って、落語じゃないんだから、やっぱり変かな?)。ブロスナンの時だって実際に映画が公開されるまでの間、「あんな奴で大丈夫なの?」っていう意見があったけど、今となっては降板を惜しむファンが少なくないのも事実。でも、ダニエル・クレイグにの起用に対するブーイングは激しいようで、彼の起用を撤回させようという運動がウェブ上で行われてるんだとか。僕自身も彼のボンド姿は想像できないけど、意外にそういう人がピッタリとハマるのかもしれない。さて、今日は昨年11月に賄賂問題で辞職した大バカ議員の審問が金曜日から始まるというニュースを。この議員、業者からもらう賄賂をきちんと格付けしていたようで、どれだけの賄賂でどれだけの便宜を図ってやるか、ちゃんとメニューを作っていたんだとか。

カリフォルニア州選出のランディ・カニンガム下院議員は昨年11月28日、サンディエゴにある連邦地裁で複数の軍需産業から賄賂を受け取っていた事実を認め、同じ日に議員を辞職している。議会歳出委員会のメンバーでもあったカニンガム元議員は、自らの立場を利用してペンタゴンとの契約について複数の業者に便宜を図っていた模様で、これまでに少なくとも240万ドルの賄賂を受け取っている。カニンガム元議員は90年代にもメディアに大きく取り上げられた事があり、「クリントン政権は犯罪の取り締まりにもっと力を入れるべきだ」と当時の大統領や政権を激しく非難してから数ヵ月後、元議員の息子が大麻180キロの密輸に関与したとして逮捕されている。今週金曜日からカニンガム議員の刑期について審問が行われるが、検察側は判事に対して法令上最高のものとなる、懲役10年の求刑を要求する見込みだ。

審問開始前に検察側によって提出された資料の中には、幾つもの数字が書かれた名刺があり、検察側が「賄賂メニュー」と呼ぶこのカードには賄賂のレベルに関する細かなルールが手書きで残されている。1600万ドル相当の契約をペンタゴンと結びたい場合、民間業者はカニンガム元議員に対し14万ドルの賄賂とヨットを送らなければならず、以降は100万ドル分の契約につき5万ドルの賄賂を支払うよう求められていた。また賄賂のディスカウント・サービスも存在し、希望契約額が2000万ドルを超えた場合には、100万ドルの分の追加につき2万5000ドルの賄賂となっていた。カニンガム議員は国会議事堂近くに自らの名前を付けたヨットを停泊させていたが、このヨットの名義はペンタゴンと契約を結んだ民間企業の会長となっていた。

カニンガム元議員は1998年から2005年までの間、下院歳出委員会のメンバーであったが、その間に複数の企業から多額の賄賂を受け取っていた事実が判明している。ワシントンにオフィスを構えるMZM社の創設者ミッチェル・ウェード被告は先週、4年にわたってカニンガム元議員に賄賂を贈り続けていたと認め、元議員が100万ドルの現金や高級車などを受け取っていたと語っている。賄賂の見返りとして、MZM社は1億5000万ドルの契約をペンタゴンから得ている。「これから自由も評判も財産も失うことになるでしょう。そして友人や家族からの信用も一切失ってしまうのです」、昨年11月28日に行った辞職会見で、カニンガム元議員は賄賂の事実を認めた後、涙声でそう語っている。検察側は最も重い10年の懲役刑を求めているが、元議員の弁護士は捜査への献身的な協力が議会の汚職問題追求のきっかけになったと強調し、減刑を求める構えだ。

マルディ・グラで盛り上がっているニューオーリンズ。僕は実際のマルディ・グラに参加したことが無く(学生時代にボストンにあるクラブが主催したマルディ・グラには何度か行った事があるけれど)、あの独特の雰囲気をいつかバーボン・ストリートで味わえればと思っている。ハリケーン「カトリーナ」によって大きな被害を受けてから初めてのマルディ・グラということで、アメリカ国内のメディアは「復興の象徴」といったような決まり文句の並べてる感じがしないでもないけど、27日に発表されたCNN/USAトゥデイ/ギャロップの3社による調査では、ニューオーリンズに住む黒人の53パーセントが「カトリーナによって全てを失った」と回答している。同様の回答をした白人住民はわずかに19パーセントだった。ハリケーンによって町が破壊される前、住民の人種構成では黒人がマジョリティとなっていたけれど、被災後に浮上した経済的な問題から、多くの黒人が町に戻れないままとなっている。このまま、町の雰囲気も一変してしまうのだろうか?


写真:24日、ワシントンの連邦地裁に出廷したミッチェル・ウェード被告 (AP通信より)

やっぱり、マイケル・ケインが好き!

2006-02-27 15:42:02 | きょういく
今週から少し暖かくなるらしいけど、今日は久しぶりに肌寒い一日だった。朝9時前に外出する予定がって、友人が8時45分に自宅まで車で迎えに来てくれたものの、時計の針が8時45分を指した時には僕はまだベッドの中で熟睡しており、玄関前にいる友人からの電話によってようやく目を覚ました。半分眠ったまま、エレベーターの中でシャツのボタンをかけセーターも着て、1階のロビーから外に出てみると、外の気温は摂氏で約マイナス6度(友人の車にあった温度計による)。イヤでも目が覚めてしまいましたよ…。聖パトリックス・デー周辺をサウス・ボストンでアイリッシュの友人共と過ごそうかなと計画しているものの、どうにも寒さが気になってしまって…(今日のボストンの最低気温はマイナス12度だったらしい)。学生時代に住んでたわけだから、寒さには問題無いはずなんだけど…。さて、今日は様々な仕事を求めて海外に飛び出すアメリカの若者について、25日のニューヨーク・タイムズから。

2002年のある日、コルゲート大学卒業を数ヵ月後に控えたローレン・ディチョッキオさんはアメリカ国内ですぐに就職する事に乗り気ではなかった。大学を卒業すると、ディチョッキオサンは航空券を購入し、今まで訪れた事の無かった国で短期間だけでも働いてみようと思い、アメリカを離れている。彼女のようなケースは最近増加傾向にあり、3万5000人程度の若いアメリカ人が海外に働き口を求めて出国しているとのデータも存在する。彼らの多くは英語教師やバーテンダー、果樹園での季節労働者など、様々な場所で働いており、通常は数年でアメリカに戻ってくる。以前ならば、このような行動はキャリアの放棄とも考えられたが、最近では異国での経験を評価する企業も増え始めており、海外での労働が就職面でプラスにもなりつつあるようだ。企業の人事担当者の間でも、海外での経験を「頭が柔らかく、物事に偏見を持ちにくい証拠」と評価する者が少なくなく、学生の就職活動における新たなトレンドとなる可能性もある。

ディチョッキオさんはバックパッカーとしてオーストラリアに渡り、現地の果樹園でブドウの収穫作業をしたり、ロード・ハウスの調理場で働いたりしながら、異国での生活を満喫している。やがてアメリカに帰国した彼女は、2004年初めに就職活動を開始したが、5社から面接に呼ばれ、そのうちの2社から採用の知らせを受けている。25歳のディチョッキオさんは現在、カリフォルニア州にある芸術系機関でプログラム・アシスタントとして働いている。26歳のカロライン・ミセリさんは、大学卒業を前にして、ドイツにあるBMW本社で1年間の国際インターンシップ・プログラムに参加した。インターンとしての月給はわずか880ユーロで、持って行ったクレジットカードもすぐに使えなくなってしまったが、パンとソーセージだけを食べて(本人談)プログラムを無事に終了している。「海外で働く事によって、目的達成のために何が必要なのかを考えれるようになりました」、ニューヨーク・タイムズ紙の取材にそう語るミセリさんは、カリフォルニアに戻ってからも自動車産業に残る事を選択した。

これまで全国的な調査が実施されてこなかったため、国外で働く若者の数ははっきりと特定されていないが、ミシガン大学国際センターのウイリアム・ノルティング氏は2002年から2003年夏までの間に少なくとも3万4900人が国外で働いていただろうと推測する。ノルティング氏によると、2001年に国外で労働に従事したアメリカ人の若者は2万9000人程度だった模様で、一時的にアメリカを離れる若者が増加する傾向を指摘している。また、ノルティング氏の調査では各国で規模の小さな会社に勤めたり不法に働いていたアメリカ人は含まれておらず、実際の数は7万人程度にまで増える可能性もあるとの事だ。国際教育研究所の調べでは、2003~2004年の間にアメリカ国内の大学で学んだ学生は1400万人おり、そのうちの約19万人が国外でのプログラムも受講している。また、これまで大学卒業者(予定者も含む)にとって最も人気のあった海外での働き場所はイギリスを中心としたヨーロッパ諸国だったが、最近ではアジアやオセアニアといった地域に人気が集中してるのだという。

ニコラス・ケイジの「ウェザーマン」をDVDで見た。土曜日の深夜前に映画好きの友人から電話があり、「見たあとで少し重い気分になるけれど、個人的にはいい作品だったと思うよ」と言われたものだから、電話のあとで近所のレンタルビデオ店まで行ってDVDを借りる事にしたのだ。そんなわけで、日曜朝に起きれなかったのも「ウェザーマン」が原因だという事にしておきたいんだけど、作品の方は真夜中にジックリと見入ってしまうほどグレートだっとも書いておきましょう。共演がマイケル・ケインやホープ・デービスといった演技派で、淡々としたストーリー展開でありながらも、映画の途中から人生について考えさせられる作品だった。しかし、友人が電話で語っていたように、とにかく重い!ベッドに入ってからも、映画の影響で色々と考えさせられました。ロンドン出身の友人が「ダンディな男」を2つのタイプに分類してて、彼女の話によると「ショーン・コネリー」と「マイケル・ケイン」の2つに分けれるらしい(理由は分からないけど、アンソニー・ホプキンスは論外なんだとか)。数年前にその話を聞いて以来、僕はイギリス出身の女性に会うたびに、どっちの方がセクシーか聞くようになった。今のところ、100パーセントの確立でマイケル・ケイン。ああいうジイさんを目指して、これからも頑張ろう。


写真:映画「バットマン・ビギンズ」でのマイケル・ケイン。(ウィキペディアより)

西部開拓時代へようこそ

2006-02-25 13:46:21 | 政治
俳優の渡辺謙さんがアジア人としては初めてアメリカン・エクスプレスの世界版CMに出演すると聞いたのが昨年暮れ。僕はそのニュースをすっかり忘れていたけど、数日前に雑誌「GQ」のに掲載されたアメックス社の広告でケン・ワタナベを発見。日本では犬の散歩をするCMのようだけど、こっちの「GQ」に掲載された広告ではカウボーイ調の服装で白馬とたわむれる謙さんがいた。格好いいですなぁ。アジア人のカウボーイってあんまりイメージがわかないもんですが(と言っても、以前にシカゴかセントルイスの博物館を訪れた際、西部開拓時代にアジア系カウボーイがそこそこいた話を聞いたことがある)、ケン・ワタナベのアメックス広告は一見の価値アリですよ(次のページにもアメックス社の広告が掲載されていて、モデルはケイト・ウィンスレットだった)。なんだか、高校時代に世話になったオーストラリアの牧場に戻りたい気分ですが、さっそく今日のニュースに行きましょう。今日は「銃による自衛権」が拡大傾向にあるアメリカ社会について、クリスチャン・サイエンス・モニター紙から。

自衛を目的に銃の所持が認められてきたアメリカだが、この「銃による自衛権」を拡大しようとする動きが全米各地で見られ、有識者からは暴力事件を引き起こす原因になりかねないとの批判も出ている。フロリダ州では昨年、これまでの自衛権法に改正が加えられ、同様の法改正はジョージア州など21州ですでに審議されている。また、先週にはサウスダコタ州上院議会で自衛権法改正法案が通過している。現在、12州で自宅侵入者を銃で撃つ権利が認められており、38州では公共の場所で銃を隠して携帯することができる。しかし、フロリダ州で成立した新法では、生命の危機に瀕するような状況に遭遇した場合、一般市民が公共の場所で銃を発砲する事が認められている。さらに他人を助ける目的で行う発砲も事実上認められており、発砲の際に通行人が負傷しても、刑事・民事裁判の両方を避けることが可能だ。

一般市民による銃使用の権利が拡大する傾向にある中、各州の法案提案者はそれぞれの地域で増加する凶悪犯罪を大きな問題として挙げ、銃規制よりも犯罪規制の方がより重要なのだと主張している。また、「市民が公共の場所で犯罪を防止するのも、アメリカ人に保障された権利の1つだ」と法案提案者の多くは語る。「公共の場所というのは一般市民の物でもあります。凶悪事件が発生した際、トイレやスターバックスに駆け込んで、警察の助けを待つだけでは町は守れません」、コロラド州ゴールデン在住のデービッド・コッペル氏はクリスチャン・サイエンス・モニター紙の取材に対しそう語っている。しかし、法改正反対派からは、この「西部開拓時代のような法律」が自警団による警察活動を活発化させ、これまで以上に暴力事件を誘発させる可能性があるとも指摘されている。「目の前にいる人物を、疑わしいという理由だけで射殺できるでしょうか?(法律が改正されれば)、生まれてくるのは憎悪だけです」、「ブレイディ・キャンペーン」のピーター・ハム広報官はそう語る。

フロリダ州タンパではすでに男性を射殺したトラック運転手が「公共の場所における自衛権」を主張するケースが発生しているが、鑑識や目撃者の証言によって男性は背後から撃たれた事が判明しており、「自衛権」は一切認められなかった。銃による自衛がより安全な社会を作れるという明確な証拠は現在も存在しない。ジョン・ホプキンズ大学が行った調査によると、現在もアメリカ人家庭の約35パーセントが銃火器類を自宅に所有しており、毎年130万件の発砲事件が報告されているとの事だ。また、自衛目的での発砲も年間10万件を超えている。バージニア州フェアファックスにある全米ライフル協会(NRA)のオフィスで、同団体のウェィン・ラピエールCEOはクリスチャン・サイエンス・モニターの取材に応え、「(NRAが全国でロビー活動を行う)自衛権の改正法案は犯罪者に対して抑止効果を持つ象徴的意味合いがあるのだ」と語っている。先週、デトロイトでギャング同士による銃撃戦が発生し、「自衛のための発砲」による流れ弾で8歳の男の子が死亡している。

木曜日、デュポン・サークルにあるトラットリア「ペスチ」で夕食。店の名からも分かるように、魚料理がメインの場所で、自称「ムール貝料理批評家」の僕としては、なんとも大満足な一時を過ごせたのだ。以前から店の名前を聞いてはいたけれど、店に入って食べたのは今回が初めてで、木曜の晩だというのに店の中は満員御礼状態(あとで聞いた話によると、予約も早めにしないとダメなんだとか)。ディナーには僕を含めた何人かの野球好きがいたため、話題の中心も半ば自動的に野球となっていた。江夏のボールコントロールから始まり、ピッツバーグ・パイレーツの本拠地がどれだけ美しいかといった話まで…。野球以外の話では、イスラエルに住んでいた事のある男性が、「現地のキブツでは、毎朝コップ1杯分のオリーブオイルを飲んで肌のツルツル感を保つんですよ」と仰天トリビアを披露。テルアビブ出身の女の子を何人か知っているけど、そういえば肌のツヤがいいような(そうでもないような…)。コップ一杯分のオリーブオイルって、朝から飲んでまともに仕事できるのかな?経験のある方、ぜひ体験談を聞かせてください。


(資料):青く塗られた州では現在も「自衛法」の拡大が審議されており、黄色く塗られたフロリダ州ではすでに法案が成立している。 (クリスチャン・サイエンス・モニター紙より)

「マンハンター」を探せ!

2006-02-22 15:06:41 | テロリズム
ずいぶんと前に劇場で見た「レッド・ドラゴン」というミステリー映画。「羊たちの沈黙」と「ハンニバル」に続いて、アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士がまたまた登場しており、個人的には1作目と同じくらい気に入ってる(凝り過ぎた観のある2作目は、全体的にクラッピーな内容だった)。最近になって、実は3作目が1986年公開の「マンハンター」のリメイクだと知り、オリジナル版をビデオレンタル店や大型書店で探してるんだけど、なかなか見つからない。レクター博士をブライアン・コックスが演じ、「ヒート」や「インサイダー」でブレイクする以前のマイケル・マンが監督をつとめている。映画好きの友人によると、オリジナル版もかなり面白いそうで、なんとか見つけ出したいんだけど…。さて、今日もUAE政府系企業によるアメリカ国内の港の管理をめぐって巻き起こった論争についてのニュースを。イギリスやUAEだからとかではなく、これだけ「国土安全保障」という言葉をお経のように唱えてきたアメリカが、港の管理・運営を外国企業に委託していたという事実に僕は驚きを隠せない(イギリスの場合は、民間企業だったとはいえ…)。

アメリカ国内にある6ヶ所の港で港湾事業がアラブ首長国連邦(UAE)政府系企業に委託される可能性が高まっているが、各自治体や連邦議会では安全面での懸念を表明する関係者が少なくなく、UAE政府系企業の事業参入を承認したブッシュ政権に対して各方面から激しい非難が巻き起こっている。6ヶ所の港(ボルチモア、マイアミ、ニュージャージー、ニューオーリンズ、ニューヨーク、フィラデルフィア)ではこれまでイギリスの民間企業に運営が委託されてきたが、この会社が今月初めにUAE政府系企業「ドバイ・ポーツ・ワールド(DPW社)」に買収されたため、今後の運営引継ぎをめぐって議論が繰り返されてきた。UAEを対テロ戦争の「同盟国」と呼ぶブッシュ政権は、DPW社のアメリカにおける港湾事業参入をすでに承認しているが、911テロ事件の容疑者の多くがUAE国内の支持者らから資金援助を受けていた事実などもあり、それぞれの州政府では前出の英民間企業と結んだ契約を破棄しようとする動きも出始めている。

外国政府の傘下にある企業がアメリカ国内の港湾事業に参加するのを禁止する法案がすでに民主党のロバート・メネンデス上院議員によって提出されているが、ブッシュ大統領は21日、こういった法案に大統領として拒否権を発動する可能性を示唆している。「イギリス企業がアメリカでの港湾事業に参入できて、すでに安全面でも問題無しとされた中東の企業が参入できないのは理解に苦しみます」、ブッシュ大統領は記者団に対してそう語っている。ブッシュ発言の数時間前、ワシントンではビル・フリスト上院院内総務が「議会がDPW社の調査を行うまで、大統領には同社の参入承認を保留していただきたい」と語っている。フリスト議員は再調査委員会の設置も求めており、議会でDPW社について細かな調査を実施したい構えだ。フリスト議員の提案には同じく共和党のデニス・ハスタート下院議長や民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務も賛同する姿勢を見せており、両方の政党がブッシュ政権の決断に疑問を抱いている。

911テロ事件では、実行犯2名がUAEの出身であり、実行犯のほとんどがUAE国内の銀行口座に活動資金を蓄えていたため、UAEの政府系企業にアメリカの主要な港の運営を任せるのは不適切ではないかという声が挙がっている。DPW社は3月2日から各地の港で運営を開始する予定で、同社の参入は財務省、国土安全保障省、商務省、ペンタゴン、FBIの代表者で構成された連邦委員会によって承認されている。しかし、フリスト議員らを中心とする連邦議会からは承認までのプロセスを透明化させるべきだとの批判が出ており、議会も参加して再調査が行われるべきとの意見が根強い。アメリカ各地の港で実施される貨物検査には人員的な限界があり、全貨物のわずか5パーセントしか実際に検査されていないとの指摘もある。そういった中で、イランや北朝鮮への核開発部品輸出の中継地と批判されてきたUAEの港湾事業参入を危惧する声も少なくない。しかし、英民間企業が承認され、UAE政府系企業が承認されないのはダブルスタンダードだという意見もあり、問題の解決にはしばらく時間を要しそうだ。

農務省で監査をやっている友人らと、いつものスポーツバーで夕食をとりながら欧州チャンピオンズリーグのリバプール対ベンフィカ・リスボンの試合をテレビ観戦。ハーフタイムになって、この友人とブラジルの話をすることになった。数年前の夏、彼は仕事で日本に1週間ほど滞在し、ちょうど同じ時期に帰国していた僕は六本木と三宮の両方で彼と飲みに出かけた。六本木と三宮ではそれぞれブラジル人の女の子達と話す機会があり、ブラジル好きの2人は精一杯のブロークンなポルトガル語で彼女達を飲みに誘った。それから数年が経ったわけだけど、友人は今でもブラジルへの思いが強く、数週間後にリオを訪れる予定だ。三日坊主である僕のポルトガル語は相変わらず情けないレベルだけど、彼はすでにポルトガル語での基本会話が困らないまでに上達している。「犯罪にだけは気をつけろよ」、横にいたジェームズが友人に向かって一言。ジェームズは昨年春に旅行でメキシコを訪れた際、地元警察官にカツアゲされていて(実話)、その時のトラウマが今でも残っている。リオはメキシコシティよりも危険なイメージがあるけど、今は友人の土産話を楽しみに待っていようと思う。


写真:21日にマイアミ港でパトロールを行う地元警察 (ロイター通信より)

発音の間違いかなにかであってほしいけど…

2006-02-21 15:41:07 | テロリズム
朝からずっとパソコンの前にいた1日。いくつかの仕事を同時に終わらさないといけなかったので、試験前の学生さんのように、夕方までパソコンのキーを叩いておりました。明日からはサッカーの欧州チャンピオンズリーグも再開され、わがバイエルンはいよいよACミランとノックアウトラウンドで激突する。ずっと前にブログで書いたかもしれないけど、僕はドイツ時代にバイエルンの試合に通っていた事があって、チャンピオンズリーグの試合も今では懐かしいオリンピア・シュタディオンで2試合見ている(98年と2000年だったと思う)。それぞれの試合、バイエルンは引き分けと勝利を記録したものの、アウェーで敗れ、そしてゴール差で脱落してきた。今シーズンのチームは意外にまとまってて、2001年のチームよりも安定感を感じる。本当はスタジアムで見たいんだけど、明日はテレビでババリアン・フットボールを堪能します。さて、今日はアメリカ国内の港湾事業に参入するUAE政府系企業をめぐる論争についてです。

アメリカ国内にある6ヶ所の港がアラブ系企業によって運営される可能性が浮上し、ニューヨークとメリーランドの州知事は20日に安全面での懸念を表明している。これら6ヶ所の港では、これまでその商業部門のほとんどがイギリスの民間会社によって運営されてきたが、この会社がアラブ首長国連邦(UAE)の国営企業に買収された事から、アメリカ国内における事業もUAE系企業が引き継ぐ見通しとなった。ブッシュ政権はすで引継ぎを認めているが、ニューヨーク州とメリーランド州では州政府が港の運営事業契約を白紙に戻そうと動き始めている。アメリカ国内で港湾事業に携わってきた英P&O社は、今月初めにUAE政府企業の「ドバイ・ポーツ・ワールド(DPW社)」に買収された。この結果、これまでP&O社が運営を行ってきた全米6ヶ所での港湾事業(ボルチモア、マイアミ、ニュージャージー、ニューオーリンズ、ニューヨーク、フィラデルフィア)がUAE系企業に引き継がれる可能性が高まったが、ブッシュ政権は「UAEは対テロ戦争における重要なパートナー」として引継ぎを問題視しなかった。

「港の安全を守る事が最も重要なわけで、今回の買収を懸念しています」、ニューヨーク州のジョージ・パタキ知事は20日に発表した声明でそう語っている。メリーランド州のロバート・アーリック知事はUAE政府企業による運営引継ぎに関して、ブッシュ政権がその承認についてメリーランド州政府側に前もって何も連絡していなかったと明かし、「非常に困惑しています」と20日に語っている。「ブッシュ政権内で全てを決定する前に、我々にも安全面について話し合う猶予を与えてほしかったです」、アーリック知事はメリーランド州アナポリスで記者団にそう語っている。ブッシュ政権によるUAE政府企業承認はワシントンでも問題となり始めており、下院国土安全保障委員会のピーター・キング議長(ニューヨーク州)は、「UAE政府企業に関する細かな調査が全て完了しない限り、ブッシュ政権は港湾事業の引継ぎを凍結すべきだ」と語っている。

ブッシュ政権が親密な関係を強調するUAEだが、司法省と911委員会の報告書によると、2001年9月に発生した同時多発テロ事件の実行犯2名がUAE出身者で、ほとんどの実行犯の活動資金がUAE国内から送金されていた事も判明している。国土安全保障省のマイケル・チャートフ長官は19日、出演したテレビ番組の中で「必要ならば、DPW社の港湾事業参入に新たな条件を求めるだろう」、と語ったが、参入許可自体に問題はなかったと主張している。チャートフ長官の発言に対し、民主党のロバート・メネンデス上院議員(民主党)は「信じてくれという言葉は何の意味もありません。カトリーナの際にも湾岸地域の住民は取り残されてしまったんですから」と語り、すでにカトリーナ問題で激しく非難されているチャートフ長官に噛み付いた。メネンデス議員はすでに外国の政府系企業がアメリカ国内の港湾事業に参入する事を禁じる法案を提出しており、アメリカに到着する積荷の95パーセントが検査を受けていない実態を問題視している。

マイナーかつローカルな話で申し訳ないのですが、DCユナイテッドのピーター・ノバク監督の人種差別発言疑惑が問題となっている。2月17日にリアル・ソルトレークと練習試合を行った際、ポーランド出身のノバク監督が相手チームのアッティバ・ハリス選手(カリブ出身の黒人選手)に対して「アフリカに戻れ!」と叫んだらしく、MLS機構はすでに調査を開始している。MLS自体が大学出身選手やミドルクラスのファン層を中心に発展してきたため(断っておくけれど、1920年代や50年代のサッカーブームでは、ファン層の多くがブルーカラーの移民だった)、こういった人種問題を耳にする事はほとんど無かったんだけど、事実だとしたら(しかも、数名の黒人選手がプレーする監督の発言なら)なんとも悲しくなる。ノバク監督の出身地ポーランドや、その外の東欧諸国では黒人選手に対するファンからの差別的なチャントが激しく、僕が以前に見たドキュメンタリーではコーナーキックに向かう黒人選手に何百ものバナナの皮が投げつけられていた。ノバク監督の英語はまだまだブロークンで、DCユナイテッド側は聞き間違えられた可能性を強調しているが、僕もデタラメな発音が誤解を招いたのだと信じたい。


写真:20日にニュージャージー州で記者会見を開いた民主党のロバート・メネンデス上院議員 (AP通信より)

米軍御用達ビデオゲーム、ドンパチはありません

2006-02-20 14:53:26 | イラク関連
シカゴ・トリビューンの高橋邦典さんがベネズエラ取材から帰国していたので、日曜日夕方に電話をかけてみた。「おう!元気?」、マイナス15度のシカゴから話しているとは思えないほどハキハキとした口調。冬が苦手と言う高橋さんだけど、電話の声を聞く限り、あんまり関係はなさそうだ。なぜか男2人でオプラ・ウィンフリーの話になり(彼女がシカゴをベースとしているので)、そこから衛星ラジオへと話題は変わり、しばらくして高橋さんが「学生の頃はラジオをよく聞いてたよなぁ」と昔話を始めた。「やっぱりオールナイト・ニッポンで、司会は笑福亭鶴光さん。懐かしいな…」、そう感慨深そうに話すクニさんだけど、僕はジェネレーション・ギャップを感じずにはいられなかった。たかが10年、されど10年…。さてさて、今日はイラクやアフガニスタンに駐留する米兵向けに、コミュニケーション能力の向上を目的にゲームソフトが作られたという話を。どうせなら、ヨーロッパを旅するアメリカ人観光客向けにもソフトを作ってほしいもんですが…。

イラク駐留米軍の間で現地のイラク人とのコミュニケーション不足が問題化しており、米兵にサインランゲージなどのコミュニケーションを学ばせるため、ペンタゴンはゲームソフトの開発に資金援助している。AP通信が2月18日に報じたところによると、南カリフォルニア大学で研究を行うハネス・ビルハヤルムソン博士のグループが国防総省の資金援助を受けて開発したソフトは「タクティカル・イラキ」と呼ばれ、イラク国内で市民と接する際に起こりうる様々なシチュエーションをゲーム感覚で学ぶ事が可能だ。軍人や学生をターゲットに作られたこのソフトでは、米兵としてイラクの町をパトロールする際に現地の市民に会話や質問を行うステージが幾つも設けられており、プレーヤーは状況に応じて最適なボディランゲージを選択しなければならない。また、音声認識システムも組み込まれており、ゲームの中でイラク市民と簡単なアラビア語で会話を行うことも可能だ。

ゲームでは一般のイラク人と同じジェスチャーの選択が求められ、手の動かし方などを細かく学ぶ事ができる。また、「市民に近付く際にはミラー型のサングラスは絶対に外すべき」といった情報も、ゲームの中で幾つも紹介されている。「イラクでのコミュニケーションは、体を使ったジェスチャーが重要視されるのです。西側の国であまり深く考えられないジェスチャーも、アラブ世界ではあなたがどれだけオープンかを示す判断材料になるのですから」、17日にセントルイスで行われた会議で、ビルハヤルムソン博士はそう語っている。博士によると、イラクでは控えめなボディ・ランゲージが隠し事の象徴と考えられ、米兵と市民の間の緊張関係を悪化させる原因にもなっているのだという。また、西側諸国以上にイラクでは他人に指を向ける行為が侮辱的とされており、こういった文化的な違いを米兵がしっかり認識すれば、現在のような緊張関係は改善されるのではないかと製作スタッフは期待する。

「タクティカル・イラキ」はビルハヤルムソン博士らによって開発されたタクティカル・シリーズの2作目になり、1作目の「タクティカル・ランゲージ・アンド・カルチャー」では、レバント方言のアラビア語(パレスチナ、シリア、レバノンで使われている)でコミュニケーションをとる方法が学べる。また、すでに3作目の開発も進んでおり、次回作はアフガニスタンに駐留する米軍兵士のために、パシュトゥン語会話と現地で使われるジェスチャーが盛り込まれる予定だ。タクティカル・シリーズは2003年に陸軍士官学校で試験採用され、やがて海兵隊の幹部教育でも採用されている。アフガニスタン版では、人里離れた村での病院建設が最終目標となっており、地元住民の協力を得るために適切なコミュニケーションが要求される。

土曜日、朝からシリアルを食べながらホラー映画を見た。朝に見た理由は特になく、昼過ぎから友人らと外出するため、朝9時頃にDVDのスイッチを入れたのだ。今回の作品は「エミリー・ローズのエクソシズム」という作品で、悪霊に取り付かれた女子学生の悪魔払いを行ったカトリック教会の司祭が、殺人罪で裁かれる様子を描いたドラマだった。エクソシズムを扱った映画はこれまでに何本も作れらているし、法廷ドラマはアメリカ映画の中でも人気の高いジャンルなんだけど、この2つがミックスされた映画を見たことは今までなかった。プロットの新鮮さが気になってDVDを借りたんだけど、この映画はかなり怖いですよ。特殊効果やらギャーギャー騒ぐだけのキャストがいないためか、妙なリアリティを感じてしまった。この映画、実話をベースに作られているそうだ。てっきり、アメリカ国内で発生した話がベースになってるのかと思いきや、70年代中頃にドイツで発生した事件をもとに作られたとのこと。そういえば、「エクソシスト」の映画版ではワシントンにあるジョージタウン大学が舞台になっていたはずだけど、これも1949年にセントルイスで実際に発生した事件がベースとなっている。小学生の頃、姉の車でセントルイス市内にある事件現場に行った事がある。当時はエクソシズムの意味なんて分からなかったけど、怖くてトイレに行けなかった事だけはハッキリと覚えている。

写真:「タクティカル・イラキ」のゲーム画面 (Tactical Language Training LLC )

ケンタッキーの知られざる横顔

2006-02-18 11:25:50 | きょういく
16日のワシントン周辺、先週末に雪が降ったとは到底思えない暖かさで、何も考えずにセーターを着て外出した自分に昼過ぎ頃から後悔する始末。僕のような人が少なくなかったようで、ジャケットを脱いで歩く姿も町にはちらほら。あまりにも気になったので、帰宅してからローカルニュースの天気予報をチェックしてみると、その日の最高気温はなんと華氏69度!摂氏に変換して約19度だから、5月中旬くらいの暖かさだったわけだ…。ニューヨークのように60センチ以上の積雪を記録したわけではないものの、先週末にあちこちで停電が発生するほどの雪が降ってたんだから、この暑さは一体なんだったんでしょうか?今日もそこそこ暖かくて、ジャケット少し邪魔にさえ思えたのに、明日は再び雪だそうです(最低気温はマイナス9度)。どないなっとるねん?さて、今日は高騰する私立高校の授業料について、ロサンゼルス・タイムズ紙の記事から。正直、こんなに高いとは思いませんでした…。

ロサンゼルス市内にあるハンコック・パークは富裕層が多く住む地域として知られており、今も住民の大半はアッパークラスの白人で占められている。同じエリアにある私立校「マールボロー・スクール」は年間授業料が2万ドル以上かかるが、来学期(9月)から授業料を現在の6パーセント増しにすると決定しており、その額は実に2万5250ドルとなる。上昇し続ける私立高校の授業料は全国的なトレンドでもあるが、ロサンゼルス郡にある有名私立校の年間授業料の平均もついに2万5000ドルに到達する勢いだ。2万5000ドルはあくまでも授業料のみで、保護者らは寄付金などでさらなる出費を強いられる事となる。授業料の値上がりに頭を抱える保護者は少なくないが、同時に有名私立校へ子供を通わせる事が有名大学への進学や将来的なキャリアアップにつながると考える者も多く、私立校人気は現在も健在だ。

「授業料の支払いは大変ですよ。親が犠牲にしなければならないものは多いし、これからも増えるでしょうけど、私達にとっては子供の教育が最も重要なのです」、マールボロー校父母会のジョディ・フェイさんはロサンゼルス・タイムズ紙の取材にそう語った。13歳の娘をマールボロー校に通わすアン・カーリンさんにはイエズス会系の私立校に通う16歳の息子もいるが、夫(弁護士)の収入だけでは家計が苦しく、近いうちにフルタイムの仕事を始める予定だ。「私達はまだ恵まれている方だと思います。それでも、カントリークラブを退会して、車の買い替えもやめ、家政婦との契約も打ち切りました」、カーリンさんはそう話す。2万5000ドルに達する有名私立校の授業料だが、これは名門大学の授業料と大差のない額でもある。南カリフォルニア大学の平均年間授業料は3万703ドルで、ハーバード大学は2万8752ドルとなっている。

20年前、ロサンゼルスにある私立校の授業料は4000ドルに過ぎなかったが、現在は6倍以上となっている。私立学校授業料(高校3年生)の全米平均は1万6970ドルだが、生活費の高い地域では授業料も大幅に値上げされている。ワシントンDCの平均は2万4167ドルで、サンフランシスコが2万4940ドルとなっており、ニューヨークではすでに2万7200ドルに達している。10年前に行われた全国調査では、私立校に通う高校生の方が公立校出身者よりも名門大学に入学する割合が高いという事実が判明している。しかし、大学受験に必要なSAT(大学進学適正試験)の平均スコアでは私立校と公立校の生徒の間にほとんど差がなく、有名大学の卒業が就職に有利となるセオリーも教育関係者の間では疑問視されている。

日付が17日に変わった頃、ようやく雑誌関係の仕事を終えて、ソファーに転がる。スパイク・リー監督の「25時」を久しぶりにテレビで見た。エドワード・「海遊館」・ノートン演じる主人公よりも、彼の父親を演じたスコットランド人俳優ブライアン・コックスが気になって仕方なかった。父親役で見ることの多い俳優だけど、それぞれの作品で演じるキャラクターが微妙に異なっていて面白い。「25時」は以前に見た作品だったので、映画を半分見ながら(聞きながら?)、前日に買ったエスクワイア誌の最新号を読み始めた。今月号には笑える企画が1つあって、全米で最もスタイリッシュな州を編集部の独断と偏見で選ぶというものだったのだ。それぞれの州で誕生したポップ・カルチャーやブランド、ポップイコンを選び出し、その数の多さで勝者が決まるルール。そういったものが1つだけしかない州もあり(エスクワイアの判断なので、ご理解を…)、メーン州はL.L.ビーン、アイダホ州はアルペン・スキーのみといった具合だ。結局、1位に選ばれたのはニューヨークでもカリフォルニアでも西海岸のワシントン州でもなく(カート・コバーンやジミ・ヘンドリックスが生まれ、スターバックスやマイクロソフトもあるのに…)、なんとケンタッキー州。ジョージ・クルーニーやジョニー・デップといった俳優の生まれ故郷で、スポーツ界にもモハメッド・アリを輩出し、ケンタッキー・ダービーと白髪の爺さんのフライドチキンは世界中で知られている。でもなぁ、ケンタッキーかよ…。

バットマンの次なる敵はアルカイダ?

2006-02-15 13:45:24 | エンターテーメント・カルチャー
狩猟中の誤射とその対応の遅さを国中のメディアから非難されているチェイニー副大統領。14日には共和党の議員連中からも情報公開の遅さを指摘され、ワシントン・ポストによるとホワイトハウス関係者からは何らかの形で記者会見をすべきと迫られているらしい。軍の最高司令官(ここではアメリカ合衆国大統領も意味する)という意味の英語に「Commander-in-Chief」というのがあるけれど、一部の議員はチェイニー副大統領に「Shooter-in-Chief」と新しい肩書きを与えている。14日の昼前には誤射で負傷したハリー・ホイッティントン氏が軽い心臓発作を起したと報じられていて、これは体内に残る散弾の破片が原因ではないかといわれている。はたして、副大統領は記者会見を開くのだろうか?さて、今日はアメリカン・コミックで取り上げられるテーマに変化が出始めたというABCニュースのレポートを。

アメリカン・コミックのヒーローとして、これまで様々な敵と戦ってきたバットマンだが、次なる相手はオサマ・ビン・ラディンとアルカイダになりそうだ。先週末にサンフランシスコで開かれた「2006年コミックブック会議」の中で、有名コミック作家のフランク・ミラーは、2007年に発表が予定されているバットマン・シリーズの新作本でバットマンがビン・ラディン氏を追跡する事になるだろうと語っている。14日のABCニュースが報じたところによると、DCコミックスから発売予定の新作「ホーリー・テラー、バットマン!」ではテロリストに攻撃されるゴッサムシティが描かれる模様で、ストーリーはやがてバットマンによるビン・ラディン一味の追跡に発展していく模様だ。1939年に登場したバットマンは、1986年にミラーによって再びシリーズ化されてきたが(1989年から始まったバットマン・シリーズの映画化も、ミラー作品の人気が大きく影響したためだと言われている)、ミラー本人は911テロ事件に対する怒りから新作のアイデアを生み出したのだと語っている。

ミラーは執筆中の新作について、「バットマンがアルカイダを徹底的にやっつけるというプロパガンダの一種ですね」と語っている。子供の読み物として考えられることが多かったコミック本では、これまで政治やテロといったテーマが取り上げられる事は少なかったが、ミラーはバットマンの新作で愛国心溢れるヒーロー像を描こうとしている。「ある時代にはスーパーマンやキャプテン・アメリカがヒトラーを殴りつけています。現実世界でアメリカがアルカイダから狙われているのに、バットマンがリドラー(バットマンの有名な悪役キャラクター)と戦うのもおかしいでしょう」、ミラーはそう語っている。ミラーが指摘したように、スーパーマン(1930年代後半)とキャプテン・アメリカ(1941年)が発表された時代には、ナチスという大きな脅威がアメリカの前にあったのも事実だ。キャプテン・アメリカの最初の2巻では、それぞれ主人公がヒトラーの顔面にパンチを食らわす絵が表紙に使われている。

愛国心がコミックの中で語られなくなって半世紀以上になるが、こういったテーマが再び取り上げられる背景には、読者層の変化が存在するようだ。コミック業界の関係者がABCニュースに語ったところでは、最近の読者層の大半が20~40代に集中しているため、子供には受け入れられないようなテーマも頻繁に描かれているとの事。アイアンマンはアルコール中毒に悩まされており、スパイダーマンは親友が麻薬中毒者だった事実を受け入れ、ハルクの主人公ブルース・バナーは少年時代に受けた虐待の記憶と戦い続けている。テロリズムや愛国心だけではなく、これまで語られることの無かったテーマ(幼児虐待、ドラッグ、人種差別、エイズ、ギャング抗争、同性愛...)が続々と紹介されており、アメリカン・コミックが新たな時代に突入しそうな気配だ。ミラー氏の最新作だが、全200ページのうち、すでに120ページ分が完成したのだという。

昨日の夜中、ラジオのレポートを終えてすぐ、また懲りずに新しいホラー映画を1人で見てしまった。僕のホラー映画嫌いは年季が入ってて、(厳密に言えば、ホラー映画ではないけど)小学校1年の頃に阪神パークか宝塚ファミリーランドで行われた仮面ライダーのショーの最中、目の前に現れた怪人(バイトの方、ゴメンナサイ)を本気で蹴った思い出がある。もう二十数年前のことだけど。それだけホラーが苦手なのに、時々思い出したように1人でホラー映画を見てしまう学習能力のなさ…。ただ、昨日見た映画は半年ほど前にこのブログでも紹介した「ソウ」の続編で、1作目で感動すら覚えた斬新なアイデアを続編でも期待してしまったのだ。映画の続編ってガッカリするものが少なくないだろうし(3作目以降のロッキー・シリーズしかり)、基本的には期待せずに見るほうがいいんだろうけど、「ソウ2」は中々でしたぞ。オチは1作目と変わらないものの、作品の売りでもあるネチネチ度は健在。機会があれば、ぜひどうぞ。


写真:2002年11月、サウスダコタ州で狩りを楽しむチェイニー副大統領 (ロイター通信より)

Duck! It's Dick

2006-02-14 14:00:28 | 犯罪
今日はタイトルを「Duck! It's Dick」にしてみたけれど、これはニューヨークのタブロイド紙が13日に1面に掲載したヘッドラインで、今日はそれを使わせてもらうことに。訳すと、「身をかがめて!ディック(チェイニー)がいるから!」みたいな意味になる。DuckとDickをかけたのもあるけど、ハンティング中に発生した誤射がニュースとなっているので、Duckは本当にピッタリの言葉だなぁと思ったのだ。似たようなタイトルは14日のシドニー・モーニング・ヘラルド紙でも使われていたようで、「Cheney Hunts Quail and Everyone Else Ducks (チェイニーがウズラ狩りを始めれば、他のみんなは地に伏せる)」というシャレのきいたものだった。でもシャレですまされるのは新聞記事のタイトルだけで、誤射事件が発生してからのお粗末な対応をめぐって、アメリカ国内のメディアからは批判が噴出している。今日は昨日に続いて、チェイニー副大統領の誤射事件に関する続報を。

チェイニー副大統領による誤射事件が12日夕方になって全国ニュースとして報じられたが、13日にホワイトハウスで記者会見を行ったスコット・マクレラン報道官は、事件の発生から発表まで24時間もかかった理由について記者団から激しく追求されている。チェイニー副大統領は11日、テキサス州南部の農場で行われた狩猟に参加したが、その際に誤って一緒に狩りを楽しんでいた78歳の男性弁護士に向かって散弾銃を発射し、散弾の一部が顔や胸を直撃した男性は同州コパス・クリスティ市の病院に運ばれた。病院関係者の話によると、負傷したハリー・ホイッティントン氏の容体は安定しており、同氏は今週中にも退院する見通しだ。マクレラン報道官は13日の記者会見で、誤射事件がホワイトハウス関係者からではなく民間人(狩猟場所として使われた農場の所有者でもあるキャサリーン・アームストロング女史)によってメディアに明かされた事実を認め、さらに現場にいたチェイニー副大統領や関係者が「負傷したホイッティントン氏の容体安定に気をとられていた」とも語り、情報公開の遅れが故意のものではなかったと強調している。

マクレラン報道官によると、ブッシュ大統領は11日の午後7時30分にアンドリュー・カード大統領首席補佐官からの電話で誤射に関する説明を受けており、発生からわずかに1時間後の事だった。カード補佐官からの電話ではチェイニー副大統領本人による誤射とは説明されておらず、それから約30分後にかかってきたカール・ローブ大統領副首席補佐官からの電話で、ようやくチェイニー副大統領がホイッティントン氏を負傷させた事実を知らされている。マクレラン報道官自身も12日午前6時まで誤射の詳細を聞かされていなかったと語っているが、政権関係者が誤射を正式に認めるまで、さらに12時間を要している。前出のアームストロング女史はホイッティントン氏が負傷した直後は誰もメディアへの発表について考える者はいなかったと語っているが、翌朝になって地元紙に連絡を入れようとチェイニー副大統領に相談した際、副大統領は「好きにしてくれて構わない」と語ったとの事だ。誤射事件はコープ・クリスティの地元紙によって12日朝に報じられ、同じ日の午後3時過ぎから全国メディアも一斉に報じ始めている。

13日にホワイトハウスで行われた記者会見では、38分間の会見のほとんどがチェイニー副大統領の誤射事件に関する質問となり、記者団からは叫び声にも似た質問が次々に報道官に浴びせられた。会見が始まってすぐ、マクレラン報道官は経済に関するコメントを発表しているが、記者団から経済についての質問は全くでなかった。「アメリカ合衆国の副大統領が誰かを撃った際に、それを国民に伝えるのが一般市民というは果たして適切なのでしょうか?」、NBCの記者は報道官にそう質問した。「そういった情報公開のやり方もあるでしょうね」、マクレラン報道官はそう答えるのみだった。ブッシュ大統領は13日にホワイトハウスでアナン国連事務総長と会談を行ったが、会談後に記者団から相次いだ誤射に関する質問には全く答えなかった。アナン事務総長との会談にはチェイニー副大統領も出席していたが、会談後の記者会見が始まる前にホワイトハウスの執務室を離れている。

チェイニーの誤射事件もそうだし、少し前にこのブログで紹介したCIA職員による下着泥棒事件もそうなんだけど、最近はこういった政府職員が絡んだ不祥事が目立っているのでは?今日もヒューストン在住の航空保安官2人が麻薬密輸に関与していたというニュースが報じられていて、2人はヒューストンからラスベガスに搭乗する旅客機を利用してコカインを運んでいた疑いがあり、ヒューストンの連邦検事局が本格的な捜査に乗り出している。13日のCNNによると、911同時多発テロ事件前には僅かに33人しかいなかった航空保安官も、現在は数千人にまで増やされたようで、これまでに20万人近い応募者がいたそうだ。でも、採用する前に行われるバックグラウンド・チェックがいい加減だとの指摘も以前からある。こういった不祥事は昔からあったんだろうけど、チェイニーの話を聞いてから、妙に気になってしまった。

写真:2004年4月にピッツバーグで開かれた全米ライフル協会(NRA)の総会で、ライフル銃を受け取るチェイニー副大統領 (AP通信より)

チェイニー副大統領、狩猟中の「誤射」で知人を病院送りに

2006-02-13 14:23:21 | 政治
ワシントンでは11日の夕方から雪が降り始めて、12日朝に自宅の窓から外を眺めると、周囲は雪で真っ白に変わっていた。雪が原因なのかどうかは分からないけど、昼前には停電も2度発生している。今回の大雪はバージニア州からメーン州まで、東海岸一帯をおおっていて、ニューヨークのセントラルパークでは1869年の調査開始以来で最高となる26.9インチの積雪を記録したらしい。我が家の周辺はそれほどの積雪でもなかったけれど、いざ外出してコンビニに向かうと、これが結構しんどいもので、普段5分程のコースが15分もかかった。明日から晴れるらしいけど、雪の残る坂道に革靴って本当に怖いんですよ。かと言って、スーツにマルボロマンみたいなブーツを履くわけにもいかないし…。さて、今日は「ネタの宝庫」でもあるブッシュ政権から出た新しいニュースを。歴代の政権関係者でR-1グランプリをやれば、間違いなく今の政権関係者がブッチぎりで優勝すると思う。

AP通信は12日、11日にテキサス州で狩猟に参加したチェイニー副大統領が散弾銃を誤射し、78歳の男性を負傷させたと報じている。狩猟が趣味として知られる副大統領は、11日午後に知人の私有地内でハンティングを楽しんでいたが、誤って発射した散弾の一部が男性の顔と胸を直撃した模様だ。負傷したのは78歳のハリー・ホイッティントン氏で、テキサス州オースティンで有名な弁護士としても知られる同氏は、以前から共和党支持者としてチェイニー副大統領やブッシュ大統領に献金を行っていた。事故が発生して間もなく、ホイッティントン氏はテキサス州南部のコーパス・クリスティ市内にある病院に救急車で運ばれており、病院の広報官の話によると、現在は容体も安定しているのだという。チェイニー副大統領の広報官は現在も事故の詳細について多くを明らかにしていないが、副大統領は12日に入院中のホイッティントン氏のもとを訪れたとのことだ。

副大統領による誤射は11日午後に発生したが、12日にコーパス・クリスティの地元紙が初めて報じ、発生から24時間が経過した12日午後になってチェイニー陣営もようやく誤射を認めている。狩猟が行われた土地の所有者でもあるキャサリーン・アームストロング女史はAP通信の取材に対し、チェイニー副大統領が背後から近付いてきたホイッティントン氏に気付かなかったのが原因だと語っている。狩猟愛好家として知られるチェイニー副大統領は、毎年サウスダコタ州でキジ狩りをするのが恒例となっており、アーカンソー州でもカモ狩りを楽しむ姿が何度も目撃されている。前出のアームストロング女史はAP通信に対し、チェイニー副大統領もホイッティントン氏も安全管理には厳しい人物だったと強調したが、2人がこれまで一緒に狩りを行った経験は無かったと思うともコメントしている。

チェイニー副大統領は昨年11月にテキサス州での狩猟ライセンスを取得したばかりだった。副大統領はすでにテキサス州を離れており、12日夜にワシントンに戻っている。アームストロング家はテキサス州南部に5万エーカーの牧場を所有しており、キャサリン女史の父親で昨年10月に他界したトビン・アームストロング氏はテキサス牧畜業協会の会長を務め、ブッシュ大統領の選挙キャンペーンでは10万ドルの選挙資金を集めている。12日付のワシントン・ポスト紙(電子版)によると、トビン氏の妻はニクソン政権時代から共和党と密接な関係にあり、76年には駐英大使も務めている。チェイニー副大統領がハリーバートン入りした際、そこで役員の職にあったのが彼女だった。チェイニー副大統領の狩猟に関するトラブルは今回が初めてではなく、エネルギー計画書類の提出をめぐって訴訟を起された2年前には、訴訟を担当するアントニン・スカリア最高裁判事と狩猟旅行に出ていた事実が発覚している。

10日にサンフランシスコで行われたサッカーの親善試合。日本代表対アメリカ代表というよりも、Jリーグ選抜対MLS選抜に近いものがあったけれど、たとえサッカー専用競技場で行われていたとしても、日本は完敗していたと思う(悔しいけどね)。よくアメリカを「サッカー後進国」と呼ぶ人がいるけれど、それは単に4大スポーツよりも人気が劣るというだけで、サッカー人気も競技人口もずっと増え続けている。この国のサッカー協会はずっと前から「2010年計画」なるものを発表していて、2010年までにワールドカップ優勝を狙いたいと本気で考えている。現実的に考えて、実現する可能性はすごく低いんだけど、少なくとも強豪国としての地位を不動のものにする可能性は高いと思う。日本のメディアがよく使う言葉に「欧州組」っていうのがあるけど、2部リーグでプレーする選手もカウントすれば、実に50人以上のアメリカ人選手がヨーロッパでプレーしていて、10日の試合でも活躍したドノバンやトゥエルマンも10代の終わりをブンデスリーガで過ごしている。日本の若い選手には、言葉や文化の違いに直面しても、もっともっと欧州リーグにチャレンジしてほしいなぁ。


写真:11日からの大雪で、12日のタイムズスクエア周辺は文字通り真っ白に。 (AFP通信より)