顔と耳が赤くて掻いているという事で来院したのは、茶トラのマイちゃんです。
元気・食欲はあり、目の上や耳の周りがが特に赤い状態で他の身体にはこのような所見はありませんでした。(マイちゃんは完全室内飼いの猫さんです)
皮膚の検査では、特に異常が見つからず、何か心当たりはありますか?と聞いたところ、「少し前からご飯の種類を変えたくらいです」との事だったので、まずは前のご飯に戻してもらい、顔をかかないようにエリザベスカラーをつけてもらいました。
次の検診でのマイちゃんの状態はさらにひどくなっていました。
ご飯を戻してもらっている状態で、痒みも肌の赤みも増えていたのでこの時も再度皮膚の検査(ここでは掻把検査、脱毛検査、スタンプスメア検査をさします)をさせてもらいましたが、やはりどの検査も異常はみつかりませんでした。
次のステップとして外部寄生虫と感染症に対する処置を始めました。
感染症として可能性が高いものが「カビ」の感染です。
カビ(皮膚糸状菌と言います)の診断方法は、
①臨床症状
②直接鏡検(顕微鏡での検査)(今までの検査ではカビ特有の所見はありませんでした)
③ウッド灯検査(360nmの波長の紫外線をある種のカビが感染している被毛に照射すると、蛍光を発します)
④培養検査
となります。
またカビの治療法は、①シャンプー(薬用)と②内服薬、③外用薬があります。
すぐに内服薬で治療!!と言いたいところですが、カビに対するお薬は猫さんの肝臓に負担をかけやすいお薬となっているので、使用する前・後には血液検査で肝臓の状態を見ておくことをお勧めしています。
飼い主さんとの相談の結果、培養検査の結果がでるまではシャンプー療法を行い、培養でカビが生えたら内服薬の投与を行うという事になりました。
後日、培養の結果はカビ(真菌)陽性反応が出ました。
そして、シャンプーと内服薬を続けてもらってようやく落ち着いてきました。
飼い主さんによって全身の毛刈りでつるんつるんなったマイちゃんです。
痒みも落ち着き現在は休薬して、経過観察中です。
今回、マイちゃんの皮膚糸状菌症という病気はカビによって引き起こされる皮膚病です。
感染方法は感染して発症している子や、感染はしているけど糸状菌を持っている子との接触です。その他には土壌・家・飼育小屋・用具器具などからも感染するそうです。
症状としては、マイちゃんのように痒みが強い子もいればない子もいます。また、脱毛が起こったり皮膚が赤くなったり水疱ができたりする子もいます。他にも似たような症状を示す皮膚の病気があるので、見た目だけでの判断はできません。
発症は、若い子・多頭飼育に多く、基礎疾患や薬剤によって免疫抑制状態になった子などです。
マイちゃんのお家にはちょうど同じ頃に新しい子猫さんを迎え入れたという事、家の周りにマイちゃんと似たような症状の野良猫さんが網戸の近くまで来ていたという事で皮膚糸状菌の感染を強く疑いました。
この皮膚病は犬、猫はもちろん、人にも感染する病気です。
なので、感染した子を触った場合は手洗いをきちんと行い、生活空間もこまめに掃除することをおすすめしています。
自分のお家の子をこのような感染症から防ぐためにも、外にいるわんちゃん・ねこちゃんを触ったら必ず手洗いをしましょう!
獣医師 平湯