猫に多い病気として、尿路疾患があります。今回はその一つである膀胱炎が悪化して、緊急状態にまでなったトムちゃんを紹介します。
前日から尿の出方が悪く、今朝からはしょっちゅうトイレに行っているとのことで来院されました。
この猫さんは昨年も頻尿で少しずつしか尿が出ていないとの症状で来院されていて、その際はストルバイト尿石による膀胱炎と診断して治療をしていました。
そのため、同じ病気だと思いがちですが、症状が同じでも違う疾患の可能性もあり、診察をしたところ、尿道閉塞を起こしていました。
猫の尿道閉塞
雄の猫に多い病気で、尿道が栓子(尿石、膀胱の細胞塊、血栓など)や腫れなどにより閉塞してしまう病気です。閉塞して膀胱が尿でパンパンになるとそれより先の腎臓にも影響し、最悪、腎不全などにより助からないこともあります。
閉塞してからのどれだけ早くカテーテルを入れて閉塞を解除できるかによって、重症度が大きく変わります。
そのため、トムちゃんはすぐに麻酔をかけての尿道カテーテルを通す救急処置を行いました。
トムちゃんは当日の朝から閉塞していたと考えられるため、比較的早期に対処でき、無事、尿道閉塞は解除できたものの、やはり腎機能もやや悪化していました。
↑採取された尿です。膀胱内で出血していたため、真っ赤です。
その後、入院して数日間の点滴を行いました。
入院の様子。赤いほうが尿道カテーテル、透明な方が点滴をしています。
↑4日後には血尿も徐々に落ち着いて、怒る元気も出てきました。
次第に腎機能の数値も落ち着き、元気になったため退院となりました。
猫の尿路疾患は再発率も高く、今回のように緊急状態に陥ることも多い疾患です。一度でも膀胱炎等になったことがある子は、気を抜かずに食餌療法などを続けていきましょう。
獣医師 小芦