もちつきうさぎ

ぺったんぺったん、もっちもち!
ハートのおもちつきでスマイル満開なエッセイブログ。

おばあちゃんの鳩サブレー

2007-10-25 | 私の家族
私は幼いころ
鎌倉の近くにある母方の祖母の家に遊びに行くのが楽しみだった。
そのころ東京の家から祖母の家までは約3時間ほどかかり、
ちょっとした旅行気分だったのである。

海に程近く高台にある祖母の家は
なんとなく潮の香りが漂い、
裏の山では夕方になると野犬の遠吠えが聞こえてきたりする。

見わたす限りの広い広い空に映える夕焼けは
東京でみるそれとはちがい格段に美しいものであった。

夕日に映し出される自分の影を踏みながら
祖母と手をつなぎ歩いた山道は私の脳裏に刻まれた鎌倉の原風景である。

                      

そんな祖母が大好きだったのが「豊島屋 鳩サブレー」。

ほのかなバターと卵の香りのする鎌倉のお菓子である。
口当たりはサクッと軽く、
ビスケットでもお煎餅でもない明治生まれの焼き菓子だ。

祖母は私が訪れるたびにこの「鳩サブレー」を
おみやげに持たせてくれた。
それは、大きくなっても、結婚しても、子どもが出来ても・・・
祖母の足腰が弱くなりなかなか会うのが叶わないときでも
同居している伯母に持たせて私まで届けてくれた。

一度、伯母にきいたことがある。
「どうしておばあちゃんはこんなに鳩サブレーが好きなんだろう?」

伯母はこう言った。
「おばあちゃんが言うにはね、鳩サブレーはハイカラな味なんだって。
 おばあちゃんにとっては、きっと文明開化の味なんだよ。」

明治生まれの祖母は一口食べたそのときから
きっと「鳩サブレー」の虜になってしまったのだろう。

            

私ひとり、包みを開けて
サクッと鳩サブレーを食べてみる。

食べながら、私はやっぱり、

「こわいな~。」と思った犬の遠吠えや
あのどこまでも広くて真っ赤な夕焼け空、
にぎったおばあちゃんのしわくちゃだった手を思い出す。

いくつになっても、どこにいても、どんなときでも
祖母が私に届けてくれた鳩サブレーは
いつまでも「おばあちゃんの鳩サブレー」なのだ。


祖母が逝ってから
もうすぐ1年めの秋が過ぎようとしている。



  日記@BlogRanking
元気でおてんばなおばあちゃんだったんですよ~♪
 いつも応援ありがとうございます。



Comments (14)
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