待ちわびたこいのぼりが
一斉に大空に舞った週末、
長男にとって高校生活最後となる文化祭が催された。
<いつも静かに穏やかに川が流れています。>
今年に限ったことではないのであろうが、
80年以上も歴史があるこの「祭」の運営サイドは
先輩たちから受け継いできた伝統の意志を紡いでいこうとする者、
自らの高校生活のエンドビューティーを目指す者、
そしてただ単に実行委員のはっぴを着て目立ちたい者・・・、
さまざまな思いが拮抗した。
「はっぴの背中で思いを伝えたい。」
そう言い続けてきた長男。
信念をもつ彼の立ち位置が揺れ動く日もあっただろう。
動向を見守りつつも沈黙を貫いていたが、
最後の最後で伝統のはっぴを羽織ることを決めたらしい。
幕を開けた「祭」は
荒ぶる若武者のごとく尖った空気が流れているのでは…?
と心配しつつ覗きにいった私。
しかし、
そこには豪放磊落な長男らしく、
はっぴを翻しながら飄々と黙々と仕事をこなす姿があった。
「誰よりもこの学び舎を愛してる。」
拮抗した思いはいつしかひとつになっていたのであろう。
疲労困憊しながらも
味わう空気は極上のものだったにちがいない。
うれしかったのは、
「おまえがいなきゃ始まらないよ!」と
ずっと見守っていてくれた先生がいたこと。
「おれとおまえは二人三脚だから。」と
全幅の信頼をおいてくれる友がいたこと。
「伝えなきゃいけない気持ちがわかりました。」
と言ってついてきてくれた後輩がいたこと。
そんな彼らの小さな仕事のひとつひとつを
写真にして残してくれていた友がいたこと。
遠く西欧の地からエールを送ってくれた友がいたこと。
そして、
「おまえが見たくて来たぞ!」
と言って集まってくれた先輩たちがいたこと。
みんなみんなありがとう!
たった3日間の「祭」だけれど、これが高校生活最後の「祭」。
すべてから
逃げずに曲げずに貫き通した長男であったことを、
今、ほんとうに誇りに思う。
長い歴史の中、
その流れを伝え続けるのに多くの妄執を乗り越えてきただろう。
新緑の大欅は、そんな時を刻む彼らに寛容に微笑み、
気づかされる「熱気」を優しく包みこんでいた。
長男は言う。
「笑顔で終わることが大事なんだよなぁ…。」
そうだね。
みんなみんなうれしい記憶になったよ。
これからそれぞれの道を歩む彼ら。
愛する学び舎の「熱気」の中、
「お疲れ!」と
笑顔で言葉交わした17才の日々を
どうかいつまでも忘れないでほしい。
・・・そう願ってやまない母なのである。