熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

パラミツの苗づくり

2016年07月02日 | パラミツ


 2016年5月27日にパラミツの果実を入手しました。
 今回入手したパラミツの果実は、外観の一部が黒くなり、若干カビが生え、ショウジョウバエがたかっていました。
 つまり、売り物にはならない果実です。
 この様な状態が悪い果実でも入手したのは、パラミツの苗が欲しかったからです。

 近年、沖縄県には海外からの観光客や移住者が増え、また海外旅行で東南アジア等で熱帯果樹を食した日本人観光客等も増えてきたことから、以前だと需要がなかったマニアックな熱帯果樹の売れ行きが伸びている現状があります。
 世界最大の果物としても名高いパラミツも需要の芽が出始めた熱帯果樹です。

 沖縄県中央卸売市場の仲卸業者の方にお話を伺ったところ、

 「パラミツは、定期的に少量ずつ入荷して欲しい品目」
 「まだ大量には売れないが、少量なら確実に売れる」
 「海外からの移住者等の強い要望がある」

 等と云った面白い情報を聴くことができました。

 今回入手した果実から得た種子から苗を作ることができれば、将来の国産パラミツ安定供給体制確立の一助になると考えています。

 パラミツの果実を切る際には、ヤニ状の果汁で包丁等がベトベトになることに注意しなければなりません。
 ただし、パラミツの果汁は油で溶けるため、事前に包丁や手にサラダ油を塗っておくと円滑にパラミツを楽しむことができます。
 
 しかし、このとき私の手元には包丁もサラダ油もなかったので、ナタと機械油を使うことにしました(果実が傷んでいると考えていたので、当初は果肉を食べる気がなかったため機械油で代用しました)。



写真2.入手したパラミツの果実とナタ&機械油
果肉を食べる際は機械油ではなく食用油を使う様に!



 ナタに油を塗り、ザクッと果実を切ります。
 幾つかの種子を切ってしまいました・・・・。



写真3.パラミツの果実断面


写真4.パラミツの果実縦断面



 果実を切った後は、種子をほじくり出すのですが、その際に刃が直接当たっていない箇所の果肉を食べてみました。
 外観は傷んだ果実でしたが、果肉は丁度食べ頃でした。
 果汁もベトついておらず、甘味もあり「これまで食べた沖縄県産パラミツの中では一番美味しい」と思いました。
 とは云え、少し癖の強い果実であることは否めないので、果肉はプラスチックコップに必要量をとり、ラップをかけて冷凍してから食べました。
 パラミツは冷凍することで癖が押えられ、初心者にも食べやすくなります。



写真5.パラミツの果肉は冷凍すると食べやすくなる



 さぁ、その後はひたすら種子をほじくり出す作業です。
 全部で60個余りの種子を得ることができました。



写真6.ほじくり出したパラミツの種子



 これらを蒔くのですが、パラミツの種子にはパルプ状の種衣があり、種衣を剥いた方が発芽率が良い(発芽時期が揃う)気がします。
 しかし、時間がない中で全ての種子の種衣を剥くのは面倒臭い・・・・。
 1/3(20個)の種子でのみ種衣を剥くことにしました。



写真7.種衣が付いたままのパラミツの種子(左)、種衣を剥いた種子(右)



 今回は、2Lのロングポットに土を入れ、2個/鉢ずつ播種しました。
 パラミツの種子は浅く植えるのが良いと聴いたことがあった気がするので、土は種子が見えなくなる程度としました。

 そして、待つこと20日間(5月16日)。
 見事、発芽しました!



写真8.播種後20日目のパラミツ苗



 種衣を剥いた種子では、20個中16個が発芽しました(発芽率80%)。
 種衣を剥かなかった種子も20個中15個が発芽(発芽率75%)しているので、十分熟した種子であれば種衣を剥かなくてもよく発芽することがわかりました。
 一方、種衣を剥かなかった種子で20個中9個しか発芽しなかった(発芽率45%)グループもありました。このグループは、状態の良い種衣未除去の種子20個を選んだ残りの種子です。この中には、ナタで種子の一部を切ってしまった種子や小ぶりな種子が含まれています(表1)。



表1.播種後20日目におけるパラミツ種子の発芽率




 播種をした日から発芽率確認の前日までの気象データは図1のとおりです。



図1.播種後20日間の気象データ

沖縄気象台のデータを抜粋・加工。観測地点:那覇。


 気温は25~30℃(平均27℃)程度で推移しており、平均気温の積算温度は概ね550℃/20日でした。
 5月27日~6月15日は沖縄県では梅雨でしたので降雨量が多く300mm弱/20日間の雨が降っています。そのため、播種後の灌水は、播種直後以外はほぼ行いませんでした。

 さらに、待つこと15日(7月1日)。
 種衣を剥いた種子では、20個中19個が発芽しました(発芽率95%)。
 種衣を剥かなかった種子も20個中18個と15個が発芽しました(発芽率90%と75%)。
 このことから、十分熟したパラミツの種子は、種衣を剥かなくても(若干の発芽の遅れはあるかもしれませんが)よく発芽することが確認されました(表2)。



表2.播種後35日目におけるパラミツ種子の発芽率




 また、パラミツは播種後35日程度で数枚の本葉が展開し、苗の高さが20cm程度になることもわかりました。



写真9.播種後35日目のパラミツ苗



 これらの情報が、今後パラミツの繁殖を試みる方の参考になれば幸いです。




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