熱帯果樹写真館ブログ

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輸入マンゴーの産地と品種(2010)

2012年02月22日 | マンゴー
 今回は日本が輸入している外国産マンゴーの話です。
 「2010年度(平成22年)輸入青果物統計資料」によると、日本は11カ国から23品種のマンゴーを輸入しています(表1)。



表1.日本に輸入されているマンゴー(2010)

参考資料:2010年度(平成22年)輸入青果物統計資料.(社)日本青果物輸入安全推進協議会.
(表は上記資料を参考に「熱帯果樹写真館」で作成。国名は50音順。)



 ここで、まず面白いのは同じ品種なのに別名で表記されているものがあることです。
 「ケイト」と「カイト」は、共に「キーツ(Keitt)」のことです。
 以前に台湾の果樹研究者とマンゴー品種の話をしたとき、やはり「キーツ」のことを「カイト」と発音していました。

 次に、各国の品種構成が面白いです。
 
 表1で挙げた国は、マンゴーの生産と流通に力を入れている国です。
 何故なら、日本の市場でマンゴーを流通させようと思えば、植物防疫法で輸入規制されているミバエ類の駆除を輸出前にしっかりできることを証明し、世界でも屈指の厳しさを誇る農薬残留量基準値(こちらは食品衛生法で規制)をクリアする必要があるからです。

 しかし、その中でも産地力の差が品種構成から見える気がします。
 日本へ輸出している品種に注目すると、自国で育成、選抜された品種を輸出している国と他国から導入した品種を用いている国に分かれます。

 アメリカ合衆国、インド、オーストラリア、タイ、フィリピンは自国で育成、選抜した品種だけを輸出している様です。
 それに対して、コロンビア、台湾、ブラジル、ペルーは、アメリカ合衆国のフロリダ系品種を輸出しています。
 また、パキスタンの「チョウサ」はインドの品種で、マレーシアの「ハルマニス」はインドネシアの品種でしょうか(ご存知の方がいれば教えてください)。
 よくわからないのがパキスタンの「シンドリ」ですが、これはパキスタン独自の品種なのか調べきれませんでした(ご存知の方がいれば教えてください)。

 この中で、自国で育成された品種を複数輸出している国は、品種育成も含めて特に有力な産地と考えて良いでしょう。
 輸出量などの物質的な量ではなく輸出している品種構成から産地力が垣間見えるのは、面白いと思いました。

 マンゴーの品種は、長い栽培の歴史の中で様々な品種や系統が自然に交配され、適応性と嗜好の末に選抜されたもの(つまり、偶然の産物)が多く含まれています。
 しかし、近年ではより良い特性をもつ品種を得るために、計画的な育種プログラムに取り組んだ末に選抜された品種も出てきています。

 今後、表1で示した国やそれ以外の国から新しいマンゴー品種が育成され、日本に居ながらにして味わえる日が来ることでしょう。
 今から楽しみです。


○参考資料
 ・2010年度(平成22年)輸入青果物統計資料.(社)日本青果物輸入安全推進協議会.

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