熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

雑誌「モモト」にパインアップルの写真を提供しました。

2016年07月19日 | ブログ運営

 編集工房 東洋企画が発行している雑誌「モモト」のVol.27(平成28年7月16日発行)に「熱帯果樹写真館」より写真提供を行いました。
 写真提供を行った記事は、生物講師やネイチャーガイドの肩書きをもつ石神安弘氏が本雑誌で連載されている「琉球いきもの雑学事典」の「File・21:パイナップル」です。

 実は、本ブログ管理人(ねこがため)と石神氏は、学生時代に同じサークルに属していた先輩&後輩の間柄です。
 石神氏は、昆虫や植物(特に種子に関する知識には脱帽)、陸生巻貝、海洋生物、海流に乗って辿り着く漂着物等に幅広く精通している私の知恵袋的存在です。

 また、石神氏は「美味しい果物に目がない」人物でもあります。
 学生時代の彼は、私が「美味しいマンゴーが手に入ったよ」と声をかけると、その日のうちに約60kmの道のり(琉球大学付近→名護市)を駆けつける(良い意味で)貪欲な後輩でした。
 社会人になった今では、「美味しい果物を作れる生産者(農家)」を品目毎に見出し、その果物の収穫期に農場まで買付けに行くほどの熱の入れようです。



「熱帯果樹写真館」からパインアップルの写真を提供した記事のページ。



 今回の記事は4段落構成の短い文章ではありますが、石神氏の度を超えた果物愛、専門家らしい着眼点そしてユニークな人柄が垣間見える文章を紡ぎ出しています。
 特に、3段落目「ゴールドバレルは、なぜ他の品種と比べて高価なのか?」から始まる論理的説明から4段落目の筆者自身がこれまで食べた中で最も美味しかったパインアップルに関する考察に続く文章は、熱帯果樹マニアをも唸らせる名文です。

 本記事に関心を持っていただいた方は、琉球・沖縄の時代と世代をつなぐ知的好奇心マガジン「モモト」のVol.27 を是非ご購入ください。

○参考文献
 ・「琉球いきもの雑学事典 File・21 パイナップル」.石神安弘.2016.モモト;Vol. 27;pp.65.





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「マンゴーの日」のイベントに行ってきました 2016。

2016年07月16日 | イベント

7月15日は、沖縄県農水産物販売促進協議会が2000年に制定した「マンゴーの日」です。
 沖縄県内各地の農産物販売所では、「マンゴーの日」に因んだマンゴーの消費拡大イベントが開催されます。

 平成28年7月15日、「マンゴーの里宣言」を行っている沖縄本島南部の豊見城市にある農産物直売所「JAおきなわ 食菜館 菜々色畑」でもマンゴーの消費拡大セレモニーが開催されました。



JAおきなわ 食菜館 菜々色畑。



 このイベントでは、特設舞台で近隣保育園の園児がエイサーを披露したり、豊見城市のマスコット「アゴマゴちゃん」、沖縄県農林水産物のマスコット「イーサーくん」、ミス沖縄やマンゴー生産振興に関わる各機関を代表する方々等がマンゴーのPRをしていました。



左端:アゴマゴちゃん、右端:イーサーくん。



 もちろん、直売所内ではマンゴーの販売、発送手続き、試食が行われており大盛況でした。
 多くのお客様が来場することを見越し、「菜々色畑」では通常の約2倍の千箱のマンゴーを用意していましたが、気持ちがよい位に売れていました。



マンゴーの化粧箱がたくさん準備されていました。





化粧箱をレジに運ぶ途中でマスコミのインタビューを受ける男性。





カート山積みでマンゴーを購入!





ミス沖縄が店内で試食を薦めていました。



 景気の良い売れ行きに気を良くして、豊見城市の隣にある糸満市の農産物直売所「JAおきなわ ファーマーズ・マーケットいとまん うまんちゅ市場」にも足を運んでみました。
 この2つの農産物直売所は、1本の直線状道路で車で10分程で行き来できる好立地ですので、沖縄県の農産物を探すときに便利です。



JAおきなわ ファーマーズ・マーケットいとまん うまんちゅ市場。



 「うまんちゅ市場」では、「マンゴーまつり」と称した消費拡大イベントが開催されていました。
 第1弾は7月15日~18日、第2弾は7月23日~24日だそうです。



「うまんちゅ市場」でのマンゴーまつり日程。



 店内にはマンゴー販売用に商品棚が広く取られており、こちらも売れ行き好調でした。



「うまんちゅ市場」のマンゴー販売棚(パック入り)。





こちらの化粧箱売り場でもカート山積みの購入者発見!



 今年の沖縄県産マンゴーは、天候不良等が原因で例年の30%減程度の不作と言われていますが、色のりが良い高品質なマンゴーが仕上がっています。
 7月中下旬には様々な農産物販売所でマンゴーの販売に力を入れていますので、是非ご賞味ください。


○参考サイト
 ・「おきなわ島食ネット
  ・JAおきなわ食菜館 菜々色畑店舗紹介
  ・JAおきなわ うまんちゅ市場店舗紹介





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パラミツの苗づくり

2016年07月02日 | パラミツ


 2016年5月27日にパラミツの果実を入手しました。
 今回入手したパラミツの果実は、外観の一部が黒くなり、若干カビが生え、ショウジョウバエがたかっていました。
 つまり、売り物にはならない果実です。
 この様な状態が悪い果実でも入手したのは、パラミツの苗が欲しかったからです。

 近年、沖縄県には海外からの観光客や移住者が増え、また海外旅行で東南アジア等で熱帯果樹を食した日本人観光客等も増えてきたことから、以前だと需要がなかったマニアックな熱帯果樹の売れ行きが伸びている現状があります。
 世界最大の果物としても名高いパラミツも需要の芽が出始めた熱帯果樹です。

 沖縄県中央卸売市場の仲卸業者の方にお話を伺ったところ、

 「パラミツは、定期的に少量ずつ入荷して欲しい品目」
 「まだ大量には売れないが、少量なら確実に売れる」
 「海外からの移住者等の強い要望がある」

 等と云った面白い情報を聴くことができました。

 今回入手した果実から得た種子から苗を作ることができれば、将来の国産パラミツ安定供給体制確立の一助になると考えています。

 パラミツの果実を切る際には、ヤニ状の果汁で包丁等がベトベトになることに注意しなければなりません。
 ただし、パラミツの果汁は油で溶けるため、事前に包丁や手にサラダ油を塗っておくと円滑にパラミツを楽しむことができます。
 
 しかし、このとき私の手元には包丁もサラダ油もなかったので、ナタと機械油を使うことにしました(果実が傷んでいると考えていたので、当初は果肉を食べる気がなかったため機械油で代用しました)。



写真2.入手したパラミツの果実とナタ&機械油
果肉を食べる際は機械油ではなく食用油を使う様に!



 ナタに油を塗り、ザクッと果実を切ります。
 幾つかの種子を切ってしまいました・・・・。



写真3.パラミツの果実断面


写真4.パラミツの果実縦断面



 果実を切った後は、種子をほじくり出すのですが、その際に刃が直接当たっていない箇所の果肉を食べてみました。
 外観は傷んだ果実でしたが、果肉は丁度食べ頃でした。
 果汁もベトついておらず、甘味もあり「これまで食べた沖縄県産パラミツの中では一番美味しい」と思いました。
 とは云え、少し癖の強い果実であることは否めないので、果肉はプラスチックコップに必要量をとり、ラップをかけて冷凍してから食べました。
 パラミツは冷凍することで癖が押えられ、初心者にも食べやすくなります。



写真5.パラミツの果肉は冷凍すると食べやすくなる



 さぁ、その後はひたすら種子をほじくり出す作業です。
 全部で60個余りの種子を得ることができました。



写真6.ほじくり出したパラミツの種子



 これらを蒔くのですが、パラミツの種子にはパルプ状の種衣があり、種衣を剥いた方が発芽率が良い(発芽時期が揃う)気がします。
 しかし、時間がない中で全ての種子の種衣を剥くのは面倒臭い・・・・。
 1/3(20個)の種子でのみ種衣を剥くことにしました。



写真7.種衣が付いたままのパラミツの種子(左)、種衣を剥いた種子(右)



 今回は、2Lのロングポットに土を入れ、2個/鉢ずつ播種しました。
 パラミツの種子は浅く植えるのが良いと聴いたことがあった気がするので、土は種子が見えなくなる程度としました。

 そして、待つこと20日間(5月16日)。
 見事、発芽しました!



写真8.播種後20日目のパラミツ苗



 種衣を剥いた種子では、20個中16個が発芽しました(発芽率80%)。
 種衣を剥かなかった種子も20個中15個が発芽(発芽率75%)しているので、十分熟した種子であれば種衣を剥かなくてもよく発芽することがわかりました。
 一方、種衣を剥かなかった種子で20個中9個しか発芽しなかった(発芽率45%)グループもありました。このグループは、状態の良い種衣未除去の種子20個を選んだ残りの種子です。この中には、ナタで種子の一部を切ってしまった種子や小ぶりな種子が含まれています(表1)。



表1.播種後20日目におけるパラミツ種子の発芽率




 播種をした日から発芽率確認の前日までの気象データは図1のとおりです。



図1.播種後20日間の気象データ

沖縄気象台のデータを抜粋・加工。観測地点:那覇。


 気温は25~30℃(平均27℃)程度で推移しており、平均気温の積算温度は概ね550℃/20日でした。
 5月27日~6月15日は沖縄県では梅雨でしたので降雨量が多く300mm弱/20日間の雨が降っています。そのため、播種後の灌水は、播種直後以外はほぼ行いませんでした。

 さらに、待つこと15日(7月1日)。
 種衣を剥いた種子では、20個中19個が発芽しました(発芽率95%)。
 種衣を剥かなかった種子も20個中18個と15個が発芽しました(発芽率90%と75%)。
 このことから、十分熟したパラミツの種子は、種衣を剥かなくても(若干の発芽の遅れはあるかもしれませんが)よく発芽することが確認されました(表2)。



表2.播種後35日目におけるパラミツ種子の発芽率




 また、パラミツは播種後35日程度で数枚の本葉が展開し、苗の高さが20cm程度になることもわかりました。



写真9.播種後35日目のパラミツ苗



 これらの情報が、今後パラミツの繁殖を試みる方の参考になれば幸いです。




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良き道具にこそ匠あれ05  - 手指が痛くなりにくい採果ハサミ「Dr. Cut®」 -

2016年06月27日 | イベント

 平成28年5月18日(水)、19日(木)に宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにおいて第1回「農林水産業支援技術展」が開催されました。





 このイベントは、農業支援技術、漁業養殖支援技術、食品加工製造技術、流通支援技術、六次産業化支援技術を要した機材や商品を有する企業の商談会に加え、それらに関連したテーマの専門家によるセミナーが催されました。









 沖縄県では初めて開催されるタイプの刺激的なイベントでした。
 参加された業者さんと後日お話をしたところ「東京等のイベントと比べ規模は小さいものの、来場者の方と内容の濃いお話ができたので良かった」と云う感想を複数名から聴くことができました。

 さて、本イベントで見かけた数ある魅力的な技術の中から、有限会社ウド・エルゴ研究所の採果ハサミ「Dr. Cut(ドクター・カット)®」を紹介します。





 「Dr. Cut®」の最大の特徴は、握り手にシリコン製のゴムカバーが付いていることです。
 そして、よく見るとハサミを閉じた際に柄のぶつかる部分にシリコンの突起状クッションを備えています。

 それ以外は特に変わったことはありません。
 しかし、「Dr. Cut®」の売り文句は『医師が考えた園芸用ハサミ』『握りの部分が手指の負担を1/4に軽減』です。
 『人間工学に基づいて世界初の新しい握りの園芸用ハサミ』と云われても、「正直そこまで効果が期待できるの?」と疑いながら(有)ウド・エルゴ研究所のブースで「Dr. Cut®」を用いて枝の試し切りをさせていただきました。

 細い枝を、ぱちん。
 太めの枝を、ぱちん。

 わずか数回の試し切りで違和感に気づきます。
 「このハサミ、切り終わったときに親指の付け根にくる衝撃がほぼない!」

 思わず、「Dr. Cut®」の価格を確認しました。
 3,000円(税抜き)。
 ハサミ本体の2倍程度に価格設定されている様ですが、果実(野菜)の収穫や剪定時に数百回、数千回とハサミを使った際に利き手を襲う鈍痛を考慮すれば、1,500円程度高価なハサミを購入してもお釣りがくるので・・・?
 私は農業者ではないので、知り合いの農業者に提案するために購入するのですが(笑)。

 第一印象では「思ったよりモノになる気がする」でしたが、次に「もう少し長めに使ってみなければ正しい判断はできない」との感想から「Dr. Cut®」を1本購入しました。

 本当は剪定ハサミでこの機能が付いたものが欲しかったのですが、現在は準備中ということでした。

 そして、次の週末。
 知人の農場を訪ね「Dr. Cut®」を試したい旨を説明すると、「アセローラやピタンガ、フェイジョアの樹なら好きに切って良い」との許可を得ました。
 これらの樹なら枝の太さも採果ハサミでも問題ありません。

 柔らかいフェイジョアの枝を、ぱちん。
 やや硬いアセローラの枝を、ぱちん。
 そこそこ硬いピタンガの枝を、ぱちん。
 一心不乱に1時間程剪定作業を行いました。

 そして、結果は・・・。
 手(指)の傷みがほとんどありません。
 作業開始5分過ぎの状態が1時間続いた印象です。

 「Dr. Cut®」のリーフレットにも「母指の痛み評点」としてグラフが掲載されていましたが、実際の感覚がこのグラフです。



※このグラフは「Dr. Cut®」のリーフレットから抜粋しました。


 また、「Dr. Cut®」試しに使っていただいたオクラ農家の方も「いいね!」と賞賛されていました。
 「採果ハサミを一日中使って手(指)が痛い」って人には「Dr. Cut®」をお薦めします。

 「Dr. Cut®」の改善箇所を提案するとしたら、

 ・沖縄県内で販売代理店を見つけて欲しい(現在は通販でしか購入できない)。
 ・剪定ハサミタイプが試してみたい(本当に手が痛くなるのは太い枝)。
 ・農場内で落としたときに見つけにくそうなので、もっと目立つ色も出して欲しい(現在販売されているのはグリーン、ピンク、ブルーのパステルカラー)。
 ・シリコン製カバーがハサミより先にダメになる気がするので、替えカバーも販売して欲しい。

 と云ったところでしょうか。

 なお、「Dr. Cut®」は「ミドリ安全.com」や「刃物の木屋 ヤフー店(ガーデニング)」でも購入できます。




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クモと一緒にマンゴー栽培 -マンゴー栽培施設内の網を張るクモ-

2016年05月28日 | マンゴー

※今回は、虫やクモの写真が多く掲載されますので、苦手な方は読むのを止めてください。

 雑誌「現代農業」2016年6月号に沖縄県今帰仁村のマンゴー農家 比嘉峯夫さんの「マンゴーハウスにクモを呼ぶ」と題した記事が掲載されました。
 この記事では、野外で小さな虫を補食しているクモを見た比嘉氏が「クモがマンゴーの害虫であるチャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)(以下、アザミウマ)を食べるかもしれない」と期待し、野外からクモを集めてマンゴー栽培施設内に放している、という内容でした。

 マンゴー栽培者にとって、アザミウマはとても厄介な存在です。
 マンゴーの新芽、花、果実と云った大切な部位を加害する上に、大発生しやすく、農薬での防除が難しいためです。



写真1.チャノキイロアザミウマ:成虫(左)、幼虫(右)





写真2.チャノキイロアザミウマに加害されたマンゴーの新芽





写真3.チャノキイロアザミウマに加害されたマンゴーの幼果



 マンゴーの難防除害虫とされるアザミウマを抑制するには、どの様にすれば良いのでしょうか?
 私が着目したのは、農場によりアザミウマの発生量にバラツキがあることです。
 当初、私は「アザミウマの発生初期に農薬散布を行い、初期防除が徹底できた農場では発生が少ないのかな?」と考えていました。
 もちろん、そういう農薬の使い方が上手い農場(決して農薬散布が多い農場ではなく、むしろこういう農場では農薬散布が少ない)では巧くアザミウマを抑えている事例が多い様です。

 ところが、多くの「普通に農薬散布を行っている農場」では、アザミウマに悩んでいることが少なくありません。
 逆に、農薬をほとんど使わず数年間を経ている農場でアザミウマの発生が少ない場合があります。
 
 何故、その様なことが起こるのでしょうか?
 私が思い至ったのは「リサージェンス」です。
 「リサージェンス」とは、「ある害虫を対象に農薬を散布すると、同時に害虫の天敵も減少し、結果として害虫が農薬散布以前より大発生する」と云う現象です。

 「アザミウマの農薬防除はリサージェンスを引き起こしている」という仮説は、マンゴー栽培施設内にアザミウマの天敵がいることを示唆します。
 では、その天敵とは何でしょうか?
 これには未だ正確な答えを見いだしていませんが、農薬散布が少なく、アザミウマの発生も少ないマンゴー栽培施設に共通点がないかと目を光らせていると「クモ(種類、巣数)が多い農場程アザミウマが少ないのではないか」という第2の仮説に至りました。

 そこで、マンゴー栽培施設内で見かけるクモを写真で撮り、名前を調べる(同定)作業を始めました。
 今回は、マンゴーを5年間栽培し(今季で収穫3回目)、これまでアザミウマの発生が確認されておらず、化学合成農薬の散布回数が少ない(2013年5回、2014年3回、2015年2回)マンゴー栽培施設内で確認した「網を張るクモ」を紹介します。
 なお、科の分類および学名については、谷川明男 氏の「沖縄のクモ目録」を参考にしました。

1.コガネグモ科(Araneidae)
(1)トゲゴミグモ(Cyclosa mulmeinensis
 地面とは垂直又は斜めに円形の巣を張ります。
 巣の中央に脚を縮めたクモがいます。
 体長は、♀3-5mm、♂2-3mm程度の小さなクモです。
 クモの上下にゴミ(中には卵嚢があることも)が並んでいるのがゴミグモの仲間の特徴です。
 雌は腹部に2つ(一対)の突起があるのが、本種の特徴です。
 この農場で最も見かける造網性のクモが本種です。



写真4.トゲゴミグモ(♀)



(2) ミナミノシマゴミグモ(Cyclosa confusa
 地面とは垂直に円形の巣を張ります。
 雌の腹部が菱形っぽい形をしています。
 体長は、♀5-8mm、♂3-5mm程度でトゲゴミグモより大きいですが、小さなクモです。
 この農場では、トゲゴミグモより少ないです。



写真5.ミナミノシマゴミグモ(♀)



(3)ナガマルコガネグモ(Argiope aemula
 地面とは垂直に大きな円形の巣を張ります。
 巣の中央に伸ばした脚を2本ずつ揃えX状になったクモがいます。
 体長は、♀20~25mm、♂4-6mm程度です。
 雌の腹部は、幅があるので大きく見えます。
 巣にはクモの脚の先には白く目立つ「かくれ帯」と呼ばれる白いジグザグ状の白い糸で作られた模様があります。
 腹部の縞模様も黄色と黒の細かい横縞模様に加え、白い横縞が2本入るのが本種の特徴です。
 本種の卵嚢は、木の葉型で扁平です(写真7)。



写真6.ナガマルコガネグモ(♀)




写真7.ナガマルコガネグモの卵嚢



(4)ホシスジオニグモ(Neoscona theisi
 体長は、♀8-10mm、♂5-7mm程度。
 地面とは垂直に円形の巣を張ります。
 この個体は、腹部の背中側に暗褐色に挟まれた白い星形の太い筋が見られますが、本種は色彩変異が多いことが知られています。



写真8.ホシスジオニグモ(♀)



(5)ヤマシロオニグモ(Neoscona scylla
 地面とは垂直に円形の巣を張ります。
 体長は、♀12-15mm、♂8-10mm程度。
 ホシスジオニグモより大きくて強そうです。
 この農場では、ときどき見かける程度です。



写真9.ヤマシロオニグモ(♀)



(6)チブサトゲグモ(Gasteracantha mammosa
 地面とは垂直方向に大きな円形の巣を張ります。
 体長は、♀8-10mm、♂3-5mm程度。
 沖縄県の野外で最も普通に見られるクモです。
 ゴツゴツした形が面白く、色彩変異が多く、中にはシーサーの顔に見える個体がいることから子どもから「シーサーグモ」と呼ばれ人気があります。
 広い空間を好むためか、マンゴー栽培施設内であまり見られず、施設外に多くいます。



写真10.チブサトゲグモ(♀)



2.アシナガグモ科(Tetragnathidae)
(1) チュウガタシロカネグモ(Leucauge blanda

 地面と斜め方向に円形の巣を張ります(通常は地面と平行に巣を張るそうです)。
 巣の中央に長い脚を伸ばしたクモがいます。
 体長は、♀10-13mm、♂8-10mm程度ですが、脚が長いので大きく見えます。
 シロガネグモの仲間の巣は、中央付近に横糸がなく、巣の中央に穴が空いている様に見えるのが特徴です。
 本種の細長い腹部は銀白色に黒色の縦筋が入り、頭胸部に近いところに一対(2つ)のコブと黒点があります。



写真11.チュウガタシロカネグモ(♀)



(2)オオジョロウグモ(Nephila pilipes
 やや目の粗い蹄型円網を張ります。
 頭胸部は金色で、細長い腹部の地色は黒色、多数の黄色い縦筋があります。
 体長は♀35-50mm、♂7-10mm程度になります。
 本種の雌は、日本最大のクモです。



写真12.オオジョロウグモ(♀)



 これらのうち、どのクモが、どの程度アザミウマの発生を抑えているのかはわかりません。
 もしかすると、網を張るクモ以外にアザミウマの発生を抑制する要因(天敵を含む)があり、網を張るクモは環境指標生物なのかもしれません。

 それでも、農場内のクモ等の生物を同定できる様になれば、さらに高度な環境理解に繋がり、既存の栽培(病害虫防除)技術とは異なる技術体系の確立に繋がると考えています。

 なお、化学合成農薬をほとんど使用していない本農場では、慣行程度の農薬使用している農場では問題とならない害虫の発生が多いことを付け加えておきます。
 また、それらを抑える方法は、慣行の栽培(病害虫防除)技術とは異なる技術体系に頼っています。

 今後は、クモの種類も考慮した網を張るクモの「見取り調査」を実施し、どのクモがどの程度の密度でいるマンゴー栽培施設内では、どの程度のアザミウマが発生するのかを数値で捉えていきたいと思います。


○参考サイト
 ・「ルーラル電子図書館;リサージェンス
 ・谷川明男;「沖縄のクモ

○参考文献
 ・「マンゴーハウスにクモを呼ぶ」.比嘉峯夫.2016.現代農業;2016年6月号.農文協.
 ・「フィールド図鑑 クモ」.新海栄一・高野伸二.1984.東海大学出版会.
 ・「クモの巣図鑑 ~巣を見れば、クモの種類がわかる!~」.新海明・谷川明男.2013.(株)偕成社.
 ・「農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル I調査法・評価法(PDF:20,318KB)」.2012.農林水産省農林水産技術会議事務局・(独)農業環境技術研究所・(独)農業生物資源研究所 .




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良き道具にこそ匠あれ04 - パパイアシリシリーを作ろう -

2016年05月06日 | パパイア

 パパイアと云えば、マンゴーやキウイと並ぶ果物だと連想する方が多いでしょう。
 しかし、沖縄県ではパパイアは果物としてより野菜として消費されることが多い品目です。

 野菜で食べる場合は、果皮が緑色の状態(通称「青パパイア」)で収穫し、火を通して惣菜にします。
 代表的なメニューは「パパイアシリシリー(別名:パパイアイリチー)」です。

 今回は、知人より青パパイアと素晴らしいシリシリー器をいただいたので、我が家の晩餐づくりを公開したいと思います。

 準備するのは、まずは青パパイア(2果)。





 果皮をピーラーで剥き、種子をスプーンで取り除きます。





 それをシリシリー器を用いて千切り状になる様に擦り下ろします。
 つまり、果肉を「擦り擦りー(シリシリー)」するわけです。





 ここで、自慢したいのが使用したシリシリー器。
 長さ × 幅 × 厚さ=45cm × 8cm × 1cm の木の板に真ちゅう製の金具が取り付けられています。
 これは通常見かけるシリシリー器と比べると、かなり大きめです。





 金具は彫金で形が整えられ、楕円形の穴が6、5、6、5、6と合計28個開けられています。





 このシリシリー器を斜めに金ボールの底に立てかけて左手で支え、右手にパパイア果肉を持って擦り付けると、みるみるパパイアがシリシリーされます。
 しかも絶妙な太さ!
 道具が良いと料理も楽しい!!

 シリシリーが楽しくなってきたので、さらにニンジンを3本シリシリーしました。





 これらを油を加えたフライパンで炒めます。
 このとき、水分(水や酒)を加えることでパパイア果肉の軟らかさが調整できます。






 しんなりしたところで、フライパンに入りきらなかった残りを加えて、さらに炒めます。






 炒め終わった野菜は金ボールに取り、細かくした鶏肉(モモ肉、500g)を炒めます。
 今回は鶏肉を使いましたが、別にシーチキン缶でもその他肉類でも何でもOKです。





 鶏肉に火が通ったのを見計らって、さきほどの炒めた野菜を加えます。
 野菜も今回はパパイアとニンジンですが、好みの野菜を加えてもOKです。





 味付けも野菜炒めを作るのと同じ様に好みで調味料を加えます。
 今回は、塩コショウ、中華スープの素、だしの素、めんつゆ、オイスターソースを適量用いました。

 全体的に味が馴染んだところで調理完了です。





 
 パパイアシリシリーが好きでよく作られる方、このシリシリー器は上等です。
 私も頂きものなので販売店を知らないのですが、見かけたら購入をお奨めします。




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マンゴー吊り紐結びの提案

2016年01月30日 | マンゴー

 マンゴーの出蕾シーズンになりました。
 国内で生産されているマンゴー「アーウィン」は、花や果実にしっかり日光を当てることで赤く色付くことが知られています。
 そのため、マンゴーの枝先から花芽が出てくると、枝の先に紐の一方の端を結び(又は自作の金具で枝先に紐を引っ掛け)、もう一方の端を予め樹上(栽培者が両手を上げた程度の高さ)に設置した吊り棚へと結ぶことで、花軸が自重で倒れるのを防ぎます。

 この吊り上げた紐は、花軸が伸びた際に再度一端緩めて花軸に巻き付ける様に吊り直さなければなりません。
 このとき、ほどくのは長さに余裕がある頭上の紐の端となります。

 つまり、出蕾から開花までの期間に行う枝(花)吊りの作業手順は、

 1)出蕾時に枝の先端に紐を結ぶ。
 2)もう一方の紐の先端を吊り棚に紐を結ぶ。☆
 3)花軸伸長時に吊り棚に結んだ紐をほどく。☆
 4)花軸に紐をかける。
 5)吊り棚に紐を結び直す。☆

となります。
 作業手順の後ろに☆を付けた作業は頭上で紐を結んだり、ほどいたりする作業(以下、頭上作業)です。
 栽培者によっては、常に花に日光が最適に当たる様に4)5)の作業を繰り返すこともあります。

 栽培者は頭上作業をどの程度の回数こなすのでしょうか?

 例えば、直径4mの樹であれば吊り上げる枝数は80枝程度でしょうか。
 そのため300坪程度(10a、1,000㎡)のビニールハウスであれば、60樹植わっているとして約5,000枝の吊り上げとなります。
 このため、夫婦2人で1,000坪のビニールハウスでマンゴーを栽培していたら、出蕾から開花までの期間に2~4万回/人の頭上作業が必要になります。
 さらに、果実が着果したら果実の吊り上げ作業(途中で1回は吊り直しを行う)ので、果実に袋掛けを行うまでに頭上作業は約3万回/人追加となります。

 頭上作業は、首と肩に大きく負担をかけます。




図1.首と肩に大きく負担をかける頭上作業

身長が高い方に合わせた作業は、身長が低い方にさらなる危険と負担が生じます。


 1~5月のマンゴー栽培者は、首や肩の痛みに耐えながら真っ赤なマンゴーを作っています。
 良いものを作るには手間がかかりますね。


 で終わってしまえば消費者向きの「真っ赤なマンゴーには農家の手間暇がかかっているから、敬意を払って食べましょう」みたいな話になりがちですが、今回はマンゴー栽培者向きの「頭上作業を如何に減らすか?」の話題です。

 以下の2つの提案を実行することで、頭上作業は確実に減ります。

【提案1】吊り紐は、(麻紐を用い)長めに使う。
【提案2】吊り紐は、吊り棚の上を通した後に、目~頭の高さで「ほどかずに紐の長さが調節できる結び方」で結ぶ。

 詳細を説明します。

 まず【提案1】について。
通常、吊り紐の長さは「枝の先端の高さ~両手を上げた高さ(吊り棚の高さ)+余裕」だと思います。
 概ね、栽培者の「みぞおち~両手を上げた高さ」程度の長さでしょうか?
 これに「片手の中指の先から肩」程度の長さを足してください。

 次に【提案2】について。
 【提案1】で作った紐は、

 1)出蕾時に枝の先端に紐を結ぶ。
 2)もう一方の紐の先端を吊り棚の上を通す。☆
 3)目~頭の高さで結ぶ。

となります。
 
 このとき 3) の結び方を「ほどかずに紐の長さが調節できる結び方」にするのがコツです。
 この様な結び方は色々とあるでしょうが、1例を示します。



写真2.ほどかずに紐の長さが調節できる結び方

結び方が解りやすい様に太い紐で説明しています。


 この様な結び方をしておくと、結び目を押さえて上下にずらすと、ほどかずに紐の長さが調節できる様になります。

 写真2では解りづらいと云う方のために動画も準備しました。





 こうすることで、出蕾から開花までの期間に行う枝(花)吊りの作業手順は、

 1)出蕾時に枝の先端に紐を結ぶ。
 2)  〃 吊り棚の上を通す。☆
 3)目~頭の高さで結ぶ。
 4)花軸伸長時に紐を緩めて伸ばす。
 5)花軸に紐をかける。
 6)紐の長さを調節する(縮める)。

となり、頭上作業の量は1/5~1/3に縮小されます。
 さらに作業時間も頭上作業で結んだり、ほどいたりすると10秒以上とられますが、結び目を緩めて縮めるだけなら5秒程度に短縮できます(7,500枝×5秒短縮=10時間以上短縮)。




図2.作業は目の高さから胸の高さの間で行える様にしましょう。

身長が低い方に作業の高さを合わせることで、危険と負担を減らすことができます。


 最後に、【提案1】で(麻紐を用い)と吊り紐の種類まで提案した理由を説明します。
 「ほどかずに紐の長さが調節できる結び方」は色々とあるのですが、結び方や紐の種類によって結び目の摩擦係数(緩みやすさ)が異なります。
 マンゴーの吊り紐に用いる場合、私の中のブランド資材は小泉製麻株式会社の「結束用サンリン麻紐 C14×3」です。
 樹が少ない場合は、同じ様な太さのダイソーの「麻ひも(3玉入り)」でも良いです。

 話を戻します。
 吊り紐に麻紐を用いる理由は、麻紐で紹介した結び方をすると1kg程度(大玉の「キーツ」マンゴー果実の重さ程度)の負荷でギリギリ結び目が緩まない程度の摩擦係数になるからです。
 「そんなの固く結べた方が良いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、私は動きが雑なので、沢山の紐で枝等が吊られたマンゴー樹の管理をしていると、腕や体が紐に引っかかり引っ張ってしまうことがあります。
 このとき、固く結ばれていると枝の先端や果実を吊った部分に負荷が多くかかり、枝が折れたり、果実が落ちる原因になります。
 しかし、必要以上の負荷がかかると紐が伸びる結び方なら、紐が伸びるだけで枝は折れず、果実は落ちません。

 加えて、麻紐は半年~1年で朽ちるので、果実収穫後に片付ける際に地面に落として片付け損ねても後日足を取られたり、草刈機に絡んだりしません。

 私の様に「吊り紐に引っかかって、枝を折ったり、果実を落としたりしたことがある人」「古い吊り紐に足を取られる等のトラブル経験者」は【提案1】+【提案2】で問題解決です。

 農作業に完全無欠な正解はありません。
 今回のやり方も吊り紐を長くした分だけ資材代がかかるデメリットがあります。
 これら提案は「こうすれば良いよ」ではなく、「こういうやり方もあるよ」程度の軽い話題として受け止め、参考になる部分だけ取り入れていただければ幸いです。





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謹賀新年2016

2016年01月01日 | ブログ運営

 新年あけましておめでとうございます。

 毎年の様に元旦は昨年の目標達成状況および今年の目標設定を行います。
 まず昨年の本ブログにおける目標は「ブログの10回/年程度の更新+5回/月ツイート」でした。
 その実績は、

○2015年の「熱帯果樹写真館」更新回数
 ・ブログ更新・・・・・・・・・・・・・・・・・15回
 ・ツイート数・・・・・・・・・・・・・・・・103回(Twitter)、86回(Facebook

と「ブログの10回/年の更新」、「5回/月ツイート」を共に達成できました。
これも皆様のご愛顧があっての結果です。ありがとうございました。

 また「日本熱帯果樹協会」では「苗木交換会(沖縄支部)」「総会、講演会、現地検討会(全国)」といった支部イベントでの交流の他、支部の有志での「市場見学会」「個別での種苗交換」等の個別での交流ができた年だったと思います。

 今年も当ブログや Facebook やtwitter で情報を発信しつつ、熱帯果樹愛好家の方々と交流を深めていきたいと思います。
 2016年の目標は「ブログの更新12回/年+80回ツイート/年」としたいと思います。
 今年も、宜しくお付き合いください。




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「生産者がこっそり食べるフルーツシークヮーサー。」が旬入り宣言。

2015年12月16日 | 柑橘類

 平成27年12月15日(火)に沖縄県中央卸売市場において、JAおきなわ北部地区シークヮーサー生産部会が「フルーツシークヮーサー 旬入り宣言セレモニー」を開催しました。



写真2.フルーツシークヮーサーの旬入り宣言セレモニー



 生産者代表の方の話では、
 ・今年は台風被害が少なく品質が良い。
 ・出荷量は前年同様の43tを見込んでいる。
 ・出荷時期は12月中旬~2月中旬。
 ・一般消費者への販売のほか、業務需要や学校給食にも対応したい。

とのことでした。

 さて、このセレモニーで JAおきなわ が配布していたリーフレットのキャッチコピーに心惹かれましたので、紹介します。



写真3.フルーツシークヮーサーのリーフレット



 今回の記事タイトルにも引用しましたが「生産者がこっそり食べるフルーツシークヮーサー。」です。

 沖縄県の高酸系柑橘類として名高いシークヮーサーは、夏から秋に緑色の状態で収穫されるイメージが強いですが、年末頃になると果皮は黄色く色づきます。
 この頃になると酸は適度に抜け、甘味も増し、果物として食べやすくなります。

 シークヮーサーの果実はジュース等の加工原料や調理用(生果汁)に使われることが多く、果物としての流通は少ない状況でした。
 それでも黄色く熟したシークヮーサーは「クガニー(黄金)」と呼ばれ、沖縄県民(特に沖縄本島北部地域の方)に長く愛されてきました。

 このことは、古琉球古謡集である「おもろそうし(1531~1623年編纂)」でシークヮーサーと思われる黄金木が以下の様に詠われていることからも伺えます(金城、2007)。

黄金木の下で(巻2の34)

[本文]
 うらおそいおもろのふし
一 ごゑく あやみやに
   こがねげは うえて
   こがねげが下
   きみのあぢの
   しのくり よわる きよらや
 又 ごゑく くせみやに

[訳文]
 越来※1綾庭に
  黄金木を植えて

  黄金木の下
  君の按司(神女)が
  しのくり※2給う見事さよ
 越来寄せ庭に

 ※1「越来(ごえく)」は、現在の沖縄市にある地名。
 ※2「しのくる」は「踊る」を意味する おもろ語。



 また、比嘉朝進氏が編著した「沖縄怪奇伝説のナゾ」という書籍には、「クガニーを供えるわけは?」というテーマで、沖縄では何故 (お盆や)正月にクガニーを供えるのか、の由来に関わる2つの昔話が記載されています。
 このことから、沖縄では正月にシークヮーサー(クガニー)を仏壇等に供える風習があったことが伺えます。
 因みに、正月にシークヮーサーを神棚や仏壇に供えるのは以下の話の様な「一夜にして大金持ちになった親子にあやかって」なのだそうです。


【一夜にして大金持ちになった親子の話】
(シークヮーサーを正月に供えるわけ)



 フルーツシークヮーサーを食べたことがない方は、この冬に是非挑戦してください。
 年末ジャンボ宝くじをお買いになった方は、シークヮーサーを供えて大金持ちになってください。



写真4.フルーツシークヮーサーを供えよう!



○参考文献
 ・金城秀安.2007.南西諸島の香酸カンキツ「シイクワシャー」.柑橘研究;第17巻;p.137-148.田中柑橘研究場.
 ・比嘉朝進.2005.沖縄怪奇伝説のナゾ.p.65-67.球陽出版.





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甘さで圧巻のマンゴー品種「金蜜」。

2015年11月06日 | マンゴー

 沖縄県中央卸売市場で扱われるマンゴーを品種毎に数量別に見ると1位が「アーウィン」、2位が「キーツ」というのは不動の順位で、3位が「金煌1号」かな?と云う具合でした。
 ところが、2015年は3位に新興品種である「金蜜」が食い込んできました(写真1、2)。



写真2.「金蜜」マンゴーの果実


 今回は、この「アーウィン」より少し小さく、黄色い果皮の「金蜜」の紹介をします。

 市場関係者にお話を伺ったところ、「金蜜」は3年ほど前から少量の入荷が見られる様になり、年々その入荷量が増えてきた注目品種とのこと。
 その入荷量の推移は2013年から2015年の3年間で約10倍に増えたと市場関係者は語ります。



図1.2013~2015年 「金蜜」マンゴーの市場取扱数量
(株)協同青果より聞き取りで作成


 2015年の市場入荷量は約2,300kgとまだまだ少ないものの、この数量の伸びは注目に値します。
 また気になる取引価格ですが、2015年7~8月におけるマンゴーの平均価格が約1,100円なのに対し、「金蜜」は約1,300円でした。

 これまでは、外観が黄色い(赤くない)或いは「アーウィン」より小玉な品種のマンゴーは「アーウィン」より安価で取引される印象が強かったのですが、「金蜜」はそれを覆しました。

 では、何故「金蜜」は市場で高く評価されているのでしょうか?
 それは「とても甘いから」という単純な理由が挙げられます。
 「アーウィン」の場合、糖度(Brix)15%以上が高水準と評価されることは、宮崎県産のマンゴーブランド「太陽のたまご」でお馴染みですが、私がこれまでに測定した「金蜜」では糖度(Brix)が20±2%程度になるものが多く、高いものではBrix24%を記録したものもありました。
 そのため購入者にリピーターが多く、これまで国産マンゴーを買い続けてくださったお客様にサンプルとして1果を入れておくと「あの黄色いマンゴーを送ってよ」と再注文が入った等と云う話を今夏は複数件聞きました。

 まだ、生産量が多いとは云えない品種ですが、甘いマンゴーを食べたい方は「金蜜」という品種名を憶えて損はないはずです。




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