MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

神々の沈黙

2007-04-17 | 雑記
掲題の本を読みました。
(ジュリアン・ジェインズ著、紀伊国屋書店)
いやあ、これが面白い。
やや読みにくく後半はだれてくる文体でしたが、全体を通じて面白い視点が得られた一冊でした。
心理学者である著者が脳科学と考古学と古代文学の観点から、

+人類の先史時代(2000年前まで)は、脳の働きや意識のあり方が現代と全く違った
+その全く違う前提の下に人は生き、社会が構成された
+先史社会の遺物から分かる不思議な特徴も、それを裏付けている
+その脳の働きが徐々に変化していった意味で、2000年前から1000年ごとに人類は新しいステップを進んできた

という論旨を展開しています。

タイトルが昔流行った「神々の指紋」に似ていますが(さらに内容も先史時代を扱う点で似てますが)、こちらの方が仮説がシンプルな一方かなり考えさせられると思います。
検証が状況証拠だけ、の割に「確かにそうかも」と思わせるものがあります。
この本は仮説の面白さで一本勝負、というところがあるので、あえて仮説の内容は詳しく書きませんが、この本が面白いと思ったいくつかのポイントを書くと、

+広い(多様な学問分野からのアプローチ)・時間軸が長い(1000年単位)思考は視野を一気に広げてくれる
+視野が広がると大胆で飛躍的な仮説が出てくる気がする
+そういう雄大な仮説は(たとえそれが真実でなくても)人を感動させる

という感じでしょうか。
この著者は(論文以外は)生涯にこの本しか出版しなかったということなので、それだけ思考が凝縮されているのでしょうね。