MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

問題解決ファシリテーター

2006-06-14 | 雑記
掲題の本を読んでいます。(堀公俊著、東洋経済)
タイトルは露骨に左脳系コンサルロジカルシンキング本のように見えますが、内容は少し違います。
(たぶん「問題解決」とつけた方が売れるんでしょうね。編集者からすると…)

「ファシリテーション」というカテゴライズで、他人と効果的に協働するスキルを提唱しています。
中にはロジカルシンキング的な要素もあり、交渉論的な要素もあり、少し広めの概念で捉えられているようです。
問題解決スキルが個人のものだとすると、組織が動くためには問題解決スキルと似て非なる(あるいはそれを包含した)ファシリテーションスキルが必要だ、という位置づけを取っています。

その発想自体は説得力があるし、非常に分かりやすく書かれていて良い本だと思います。
あえて言えば、組織を変える/動かすのにはファシリテーションスキルだけでは足りないよな、という点が気にかかるところでしょうか。
確かに日常の考え方やインタラクションの仕方としてファシリテーションが重要であることは激しく同意、なのですが。

例えば組織のハコを設計する、人事制度を設計する(運用の仕方を考える)、というのはファシリテーションとは全然違う、(個人でなく)組織ならではの洞察と工夫と戦略が必要に思うし、それがなかったらいくらコミュニケーションが良くてもいずれ組織は弱体化するのでは。
「変革への流れ」をファシリテーションで作る、というのも分かるのですが、「変革」の中身が戦略と整合したしっかりしたものになっていないと、結局ほころびが出てきて人がついてこなくなる気もします。
とはいっても組織のハコ論などの分野は既にたくさんの本や研究がある、いわば組織論の「古典」というか「エスタブリッシュメント」みたいになっているので、あえて全然違う切り口で挑んでいるところに価値があるのかもしれませんね。


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