MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

かんかん虫は唄う

2006-04-07 | 雑記
掲題の本を読んでいます。
(講談社、吉川英治文庫)
最近堅い話が続いたのでちょっと気休めに。

舞台は20世紀初頭の横浜。
ドックで働く不良少年(かなづちでかんかん叩くから『かんかん虫』だそうです)たちを主人公に、当時の港町横浜の情景が描かれた小説です。

読んでいて驚くのが、今ではありえない描写というか、社会背景。
まず貧富の差がこれでもかと言うくらい明確に分かれていて、それが当たり前になっています。
乞食や貧乏長屋があり、成金のお大尽がいて、という社会構成は確かに、明治や大正を舞台にした小説には良く出てきます。
とはいえ、かたや食うや食わずやの肉体労働者、かたや別荘やお妾が沢山いる事業家、が同じ町に混在している。
最近「階層社会」「勝ち組負け組」などといわれてきていますが、ついこの前まで日本だってもっと絶望的なまでの階層社会だったわけですね。
当時は中学校にも行けない子供が普通に沢山いたわけで(この小説の主人公もそうです)、それを考えると「最近教育格差が広がっている」等とテレビでいっているのもどんなものかと思わされます。

また、横浜中華街が阿片窟のように描かれてたり(本当にそうだったのかどうかは知りませんが)、居留外人が特権階級として練り歩いていたり、今から見るとつい100年前とは思えない変わった情景が描かれています。
時代が変われば常識が変わるもので、そうしたギャップが非常に面白く感じました。

吉川英治の全集は中学時代にほとんど読んだのですが、今文庫になって出ているのを見るといくつか取りこぼしがあることに気付いたりして、その辺りも本屋に行くと発見があって楽しいですね。