先日、名著『愛しのアフリカンポップス~リンガラ音楽のすべて』(大林稔著、ミュージックマガジン社。1986年)について記事を書かせていただいた。そしてその中で、ミュージックマガジンについても触れた。
きょうはそのミュージックマガジン関連のバックナンバー。なかでも、非常に貴重な名著について述べてみたいと思う。
『アフリカの音が聞こえてくる』~MUSIC MAGAZINE中村とうようの書きおろし増刊号
(ミュージックマガジン増刊号、中村とうよう著、昭和59年12月、ミュージックマガジン社)
もちろん絶版。昭和59年といえば、ンボテはまだ中学生。すでにマニアックに洋楽には目覚めていたが、アフリカへの興味はまだまだ生まれていなかった。この本はその後、あるレコード屋の古本コーナーで見つけた。
表紙には「世界で初めてのアフロ・ミュージック総合入門書。今注目されているアフリカ音楽と世界の黒人音楽が、この1冊でグンと身近に。」とある。総合書との紹介には同意するが、入門書とは思えない。ンボテにしたらかなり本格的な専門書だ。
かれこれ、もう30年も前の本になるが、今なお古さを全く感じさせない、アフリカ大衆音楽の教科書であり、歴史書であり、辞典ともいえる。地誌、前史、植民地時代から、今日に至るまでの歴史と系譜が詳述されている。その後、この本のソウルを超えるアフリカ音楽本は出版されていないのではないだろうか。
目次内容を眺めてみよう。
●世界のアフリカ音楽
①サニー・アデ(※ナイジェリア)と80年代のアフロ音楽。
②アフロミュージックの展開
③インドネシア音楽とアフリカ音楽
④アフリカは孤立していない
◯カクラバ・ロビ(ガーナ)、ミリアム・マケーバ(南アフリカ)インタビュー
●アフリカ音楽を聴く
セネガルとガンビア、モーリタニア、マリ、ギネア、シエラ・レオーネ、リベリア、コート・ディヴォワール、オートヴォルタ、ガーナ、トーゴ、ダオメー、ナイジェリア、カメルーン、ガボン、中央アフリカ、ピグミーたち、コンゴ、ザイール、ウガンダ・ルワンダ・ブルンディ、ケニヤ、タンザニア、モーリシアスとマダガスカル、モザンビーク、ジンバブウエ、アンゴラとボツワナ、南アフリカ
(ザイールのページ)
●アフリカ音楽録音小史
●国の名前・民族の名前などの表し方、「聞く会」へのアンケート、人名索引、後記
何ページかおきに挿入されるその頃の広告がまた渋くて、めちゃめちゃかっこいいい。時の流れをわれわれに教えてくれる。
(リンガラミュージック専門店、そしてアフリカ旅行の道祖神!)
そしてあとがきに、この本への思いが集約されている。
「アフリカ音楽とアフロ=アメリカ音楽について、これまでいろいろ考えていたことを、思いっきり書きまくり、かた苦しい単行本ではなく雑誌の形にまとめてみた。・・・最初はもっとこまごまといろんな断片的な記事を突っ込んで、うんと雑誌っぽくするつもりだったが、冒頭の書き下ろしに熱が入りすぎ、こんな内容になった。アフリカ系の音楽を愛する人々に、少しでもお役に立てればと願っている。」
著者、中村 とうよう氏。先輩世代のコアな音楽マニアであればご存じない方はいらっしゃらないだろう。音楽評論家、株式会社ミュージック・マガジンの創始者で、元代表取締役。洋楽、ポップス、ジャズから、ワールドミュージック、国内・外のルーツ音楽までを広く取り扱い、その知識、洞察、そして音楽への深い愛には圧倒されるものがある。ミュージックマガジン、またその増刊として出版が重ねられたレコードコレクターズは、マニアにして基本書。ンボテも音楽について多くを学ばせていただいた。
そして中村とうよう氏は2011年7月に逝去した。享年79歳。立川にあった自宅マンションからの飛び降り自殺だった。ミュージックマガジンでは毎号、「とうようズ・トーク」を執筆されていたが、遺書と共に最後の「とうようズ・トーク」の遺稿が残された。
「という訳なので、読者の皆さん、さようなら。中村とうようというヘンな奴がいたことを、ときどき思い出してください。」
これが読者への最期の挨拶となったという。
あまりに深い本の内容に立ち入るには、このブログでは短すぎ、また私の筆が彼の知識や思いに耐える自信がない。追々、ンボテが稚拙にアフリカ音楽を語る時に、とうよう先生の知見にお出まし頂くこととしよう。
(またいつかの記事に、つづく)
きょうはそのミュージックマガジン関連のバックナンバー。なかでも、非常に貴重な名著について述べてみたいと思う。
『アフリカの音が聞こえてくる』~MUSIC MAGAZINE中村とうようの書きおろし増刊号
(ミュージックマガジン増刊号、中村とうよう著、昭和59年12月、ミュージックマガジン社)
もちろん絶版。昭和59年といえば、ンボテはまだ中学生。すでにマニアックに洋楽には目覚めていたが、アフリカへの興味はまだまだ生まれていなかった。この本はその後、あるレコード屋の古本コーナーで見つけた。
表紙には「世界で初めてのアフロ・ミュージック総合入門書。今注目されているアフリカ音楽と世界の黒人音楽が、この1冊でグンと身近に。」とある。総合書との紹介には同意するが、入門書とは思えない。ンボテにしたらかなり本格的な専門書だ。
かれこれ、もう30年も前の本になるが、今なお古さを全く感じさせない、アフリカ大衆音楽の教科書であり、歴史書であり、辞典ともいえる。地誌、前史、植民地時代から、今日に至るまでの歴史と系譜が詳述されている。その後、この本のソウルを超えるアフリカ音楽本は出版されていないのではないだろうか。
目次内容を眺めてみよう。
●世界のアフリカ音楽
①サニー・アデ(※ナイジェリア)と80年代のアフロ音楽。
②アフロミュージックの展開
③インドネシア音楽とアフリカ音楽
④アフリカは孤立していない
◯カクラバ・ロビ(ガーナ)、ミリアム・マケーバ(南アフリカ)インタビュー
●アフリカ音楽を聴く
セネガルとガンビア、モーリタニア、マリ、ギネア、シエラ・レオーネ、リベリア、コート・ディヴォワール、オートヴォルタ、ガーナ、トーゴ、ダオメー、ナイジェリア、カメルーン、ガボン、中央アフリカ、ピグミーたち、コンゴ、ザイール、ウガンダ・ルワンダ・ブルンディ、ケニヤ、タンザニア、モーリシアスとマダガスカル、モザンビーク、ジンバブウエ、アンゴラとボツワナ、南アフリカ
(ザイールのページ)
●アフリカ音楽録音小史
●国の名前・民族の名前などの表し方、「聞く会」へのアンケート、人名索引、後記
何ページかおきに挿入されるその頃の広告がまた渋くて、めちゃめちゃかっこいいい。時の流れをわれわれに教えてくれる。
(リンガラミュージック専門店、そしてアフリカ旅行の道祖神!)
そしてあとがきに、この本への思いが集約されている。
「アフリカ音楽とアフロ=アメリカ音楽について、これまでいろいろ考えていたことを、思いっきり書きまくり、かた苦しい単行本ではなく雑誌の形にまとめてみた。・・・最初はもっとこまごまといろんな断片的な記事を突っ込んで、うんと雑誌っぽくするつもりだったが、冒頭の書き下ろしに熱が入りすぎ、こんな内容になった。アフリカ系の音楽を愛する人々に、少しでもお役に立てればと願っている。」
著者、中村 とうよう氏。先輩世代のコアな音楽マニアであればご存じない方はいらっしゃらないだろう。音楽評論家、株式会社ミュージック・マガジンの創始者で、元代表取締役。洋楽、ポップス、ジャズから、ワールドミュージック、国内・外のルーツ音楽までを広く取り扱い、その知識、洞察、そして音楽への深い愛には圧倒されるものがある。ミュージックマガジン、またその増刊として出版が重ねられたレコードコレクターズは、マニアにして基本書。ンボテも音楽について多くを学ばせていただいた。
そして中村とうよう氏は2011年7月に逝去した。享年79歳。立川にあった自宅マンションからの飛び降り自殺だった。ミュージックマガジンでは毎号、「とうようズ・トーク」を執筆されていたが、遺書と共に最後の「とうようズ・トーク」の遺稿が残された。
「という訳なので、読者の皆さん、さようなら。中村とうようというヘンな奴がいたことを、ときどき思い出してください。」
これが読者への最期の挨拶となったという。
あまりに深い本の内容に立ち入るには、このブログでは短すぎ、また私の筆が彼の知識や思いに耐える自信がない。追々、ンボテが稚拙にアフリカ音楽を語る時に、とうよう先生の知見にお出まし頂くこととしよう。
(またいつかの記事に、つづく)