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新作組踊「ももたろう」は楽しかった!こののりで楽しい組踊創作はどんどん可能だ!

2011-09-04 05:19:23 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他
(国立劇場おきなわ屋外劇場にて、新作組踊「ももたろう」の前にエイサーが披露された)

国立劇場おきなわ野外劇場(石舞台)で新作組踊「ももたろう」を見た。2004年の初演は見逃したので、是非見たいと思った。三間四方弱の舞台で十分楽しめたのは『沖縄芝居実験劇場』に集う面々が、この間磨き上げた琉球芸能の技量の上にのびやかに楽しげに演じ、踊り、唱えていることである。また若手の地揺のうまさも格別である。夜の帳の中で夕涼みのように芝生ので足を伸ばして観賞できるのは、久しぶりに村踊り(村芝居)を見ている気持ちになった。

この組踊公園内の屋外劇場の立地は決していいものではない。道を隔てた問屋・工場界隈があり、そこを往復する交通量の凄さは、車の排気ガスに弱い者にとっては雑音よりもつらい。この立地条件は決していいものではない。しかし雑音をもみ消す程の面白さで快活な気持ちになって帰路についた。

できれば「国立劇場おきなわ」に隣接する基地を返還してもらって、そこに商業区域とは別に文化共有圏を創設し、車の公害からも無縁で、騒音からも無縁な空域の「屋外ステージ」を造ることである。(浦添市は是非実現を目指してほしい!基地はいりません。文化共有圏はOKです)
(やんばるクイナ、ももたろう、琉球犬)
さて「ももたろう」は日本の昔話「桃太郎」の新作組踊バージョンゆえに日本人ならだれでもよく知っている物語であるゆえに、ただどんな風に鬼が登場するのか、どんな桃太郎、猿、犬、雉が登場するかという事になる。どのように物語が演じられ歌われるかに興味がいく。どんなことばや唱えで、どんな踊りか、どんな古典音曲か、で見せる。
(綱で縛られたキジムナーとその親分のキジムナーがももたろうと対峙する!)
ヤンバル山奥で悪さをしているキジムナーがいてそれを聴きつけたももたろうが、ウスメー、ハーメーから【さーたーアンダギー」もらいクンジャン山奥のキジムナー退治に向かう。琉球犬、さーる、やんばるクイナを供にする。

その前にももたろうは友に集ってもらって談合するのだが、その友が昔話でおなじみのかぐや姫、浦島太郎、一寸ボウシ、眠り姫である。その勢ぞろいしたキャラのやり取りがまた面白い。
(一寸法師や浦島太郎、かぐや姫とももたろう)
悪さをする、歌舞伎の悪役の隈どりのメイクをした赤い色のコスチュームに黒いタイツ姿のキジムナーが3人軽快な足取りで踊るように登場する。佐辺良和が親分で供が岸本隼人、砂川政秀、その出羽の音楽は太鼓である。足を上げたり下げたり、この浮世を自由気ままに生きれる喜びと奢りを群舞で表現する。それから次の場面はももたろう(藤戸曄子)の登場で若按司手事のような軽やかさだったか、やはり踊りの所作で登場し名乗りをあげる。噂に聞くキジムナーの悪さをどうにかしたいという事である。次に友達を招集する。昔話の主人公たちである。写実的な扮装で舞台に登場する。所作が笑いを取る。いかにもの写実性と象徴性が面白い。そしてさーたーアンダギーをあげるウスメーとハーメーとの別れの場面、そこがコミカルリリーフで間の者のお二人で(嘉数道彦、阿嘉修の名コンビ)、あちゃからやかむしねーらん、うらみてんちゃすが、互にうしちりてぃ 踊て戻ら、と笑いを取る。最もこれは日本昔話「桃太郎」のパロディーである。パロディーであるという事からしてすでにそれは喜劇的である。翻案の面白さである。異文化の文化様式への移行でありクロスカルチュラルな試みでもあり文化接触の交差点上の表象とも言える。
(うすめーとはーめー、このコンビが間の者の雰囲気)

そしてももたろうのさーたーアンダギーの匂いにひきつけられてまず琉球犬(上原信次)、そして猿(謝名堂奈津)、やんばるクイナ(金城真次)が登場。いかにもの扮装と所作、4人でキジムナー退治へいざ出立。キジムナーたちは酒を飲んでいい気分の様子、そこへ乗り込んで桃たろう一行は無事成敗する。ただ筋書きを書いているが、物語や所作の合間にたっぷり古典音楽の「上い口説」などが組み込まれる歌舞劇である。耳にここち良く、舞踊劇と独特な唱え、効果音も楽しめた。キジムナーの運命はいかに、かぐや姫が登場し、うまんちゅの話を聴くと肝清いところがあるから許してやって、という嘆願、縄をほどかれたキジムナーは心あらためると約束する。互いに和睦して暮らしていこう。世のふくらしゃや、で皆で入羽である。めでたしめでたし!面白かったで終りにしたいが、戦、つまりキジムナー征伐の場面の効果音楽が実に良かった。三線、箏、太鼓、笛による作曲である。

この独創的な曲想はこの間聞いたことがなく、この沖縄芝居実験劇場に集う若者ら「沖縄文化ヒーローたち」は、古典伝統芸を大胆に乗り越えつつあると言えようか。時代にそった美(総合芸術の花)が確実に花開いているのらしい。
(きじむなーの親分役の佐辺良和のメイク)
歌舞劇=新作組踊=現代組踊の面白さは何回でも子供でも大人でも楽しめる構成になっている。時間も40分ほどか?
大いに遠慮なく演じてほしいものだ。屋外劇場のよさは観衆がビールを飲み、ぜんざいを食べ、お好み焼きを食べながら、おしゃべりをしながら爆笑し、口笛を吹きならし、拍手喝さいをする所に良さがある。民衆の劇場の開かれたおおようさがそこにあった。この空間のおおらかさこそが明日へのまた大きな生きるエネルギーになっていくに違いないね。

演出デビューの川満香多さん御苦労さま!
脚本:嘉数道彦
音楽:玉城和樹
振付:金城真次

地揺:三線 玉城和樹、神谷大輔
   笛 入たけ西諭、箏 池間北斗


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