先ず、入って、
「今日の、いちばん、うまいものを出してくれ」
と、いうと、たとえば鮑なんかブツブツと切ってくれる。
そのうまいこと、安いこと、うれしくてたまらなくなてくるのだ。
(散歩のとき何か食べたくなって)
前回記事 ⇒作者の残り香を求めて@浅草 金寿司
池波正太郎の文章そのままに出てくるうまいものをいただきに金寿司を再訪。
ここでは寿司職人でもある女将がひとりで店を切り盛りしているが、
この女将、御歳78であることがわかり驚いたと同時に、店をまわすことがだんだん難しくなっていることも無理もないことだと静かに納得。
池波正太郎フリークであるがゆえ、氏が愛した店を訪れ、その昔の味と雰囲気を楽しむと同時に、作者の人物像に迫れたり、また書き下ろした店のエッセイの続きなどを聞ける楽しさは格別のものではある。
が、おそらく現在の金寿司の状態を作者が見たら・・・というのが正直な感想。
ネタは抜群に良い。そして安い。
まさに “そのうまいこと、安いこと、うれしくてたまらなくなる”んだ。
ただね、高齢なせいか、店のすみずみまで行き届かなくなってしまっているんだよね。
やっぱり鮨屋としてはとても残念。
氷頭なます(鮭の鼻先の軟骨部分)こりこりした食感が楽しめる
あおやぎ 女将曰く、醤油を付けずに食べれば貝の風味をできる。なるほど、ほのかなあまみと磯の香りが鼻腔に広がる
なまこ これまた歯ごたえがすごい。日本酒「白雪」がすすむ
すじこの握り
男のひとり呑みとしてしかお勧めできないかも知れない。
でも、今回も作者のエッセイにでていたこの店の話の謎がわかったり、となりのおっちゃん(実は芸人だった!)と長野の刀屋(蕎麦や)など池波グルメの会話で盛り上がった楽しさは忘れがたい。
女将は築地が移転してしまったら店はもうおしまいだよと言っているが、元気でいてほしいな。