論文を書くというのはぼくの仕事の一つである。これから逃れるということは、自分の仕事の放棄である。でも演奏や上演することも自分の使命の一つと考えているから、ぼくの人生という骨格には、論文を書く、ガムランやワヤンの上演をすることが複雑に絡み合っているのである。もちろん、ぼくには授業をして会議に参加するという「もっとも仕事らしい仕事」がある。この四つの仕事と使命が、常にバランスを保たれていなければならない。しかし、そのバランスは均等ではなく、自分の中でバランスが保たれる比重というのが存在している。
ぼくの大学に勤務する間の人生は、このバランスの維持に努めることへの努力だということに最近になってやっと気がついた。「遅すぎでしょう?」と思われるかもしれないが、「やっぱり与えられた仕事を背伸びをしてやらなくてはならない」とか、「ここは自分がやらなければ」なんて思うことも多々あったことは事実だ。
いったい何に向かってぼくは進んでいたんだろう?そんな当たり前なことに気がついたとき、ちょっぴり肩の力が抜けた。何もさぼったりはしない。しかし四つのバランスはどれも欠くことなく、いいバランスを保って生き続けることこそ、自分らしい自分をこの先も続けていけることなのだし、そう思ったときから明日が来るのが少しだけ楽しみになった。
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