Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

内と外

2008年07月06日 | バリ
 調査地の村のガムランをちょっと覗いたとき、ガンサとよばれる鍵板楽器の共鳴筒がエンビ管で作られているのが見えた。バリの楽器の共鳴筒は伝統的には竹で作られており、節までの長さや太さを調整しながら、音に合った竹を選択していくのである。音を共鳴させるという機能だけを考えれば、エンビ管というのは実に理にかなっている。その鍵板の音にあわせて共鳴筒の長さを調整し、適当な位置でふたを作ればいいのである。しかも、気温や湿度によって割れる心配もない。そう考えてみると実に機能的なのだ。
 真偽のほどはわからないが、こうした楽器は、最初のうちは竹の取替えの難しい外国人が買っていく楽器に用いられるようになったらしい。確かにヨーロッパで竹を探すのは簡単ではなさそうだ。しかしいつのまにか、バリの人々の楽器もまたエンビ管で作られるようになっていった。もちろん、すべてがエンビ管ではなく、竹にこだわる楽器屋もまだまだ多い。
 個人的な見解だが、正直、鍵板の脇から見える共鳴等が灰色のエンビ管だと「幻滅」である。せめて竹色に塗るとか工夫を施して欲しいのだが、なんとなく味気なさを感じるのだ。楽器の中にエンビ管が使われる一方で、楽器の彫刻や色彩はより華美になっていく現実。外見はバリを着飾って、中からバリを骨抜きにしていこうとする楽器たち。そんな楽器を見ながら、「バリに戻ろう!」と声高に叫ばれている「アジェグ・バリ」という標語も、この楽器と同じように思えてしまう。


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