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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

トーハク

2015年09月17日 | 東京
 いつ頃から、東京国立博物館は「トーハク」と呼ばれることになったんだろう。いつの間にカタカナで表現されるようになったんだろう。しかしすっかりそのオシャレな響きを持つ名称が若い人々には定着してきた様な気もする。
 子どもの頃、父に東京国立博物館に連れていってもらった記憶がある。何があったかといえば、それは、ずばり「ミイラ」だった。あまりのインパクトの大きさから、僕はそれ以外に何を見たか全く記憶にない。とにかく大学生になり東京藝大に行くときにも、社会人になって上野公園を通るときも、例外なくそのことを思い出した。
 今週の火曜日に出張で「トーハク」に出かけた。仕事のついでにぶらりと「古代エジプト」の部屋に寄ってみた。そこにはあのときと同じように「ミイラ」が展示(安置)されている。しかし子ども時のような衝撃は全くなかった。なんだか初めて見るようでもあり、やはり年齢とともに感動なるものが薄れてしまっているのかと、ある種の「怯え」さえ感じた。
 ふと、子どものときの目線でミイラを見てみようと思った。身長もずっと小さかったし、今の高さからミイラを見ているはずがない。とっさにかがんで、ガラスの展示ケースの横からミイラの横顔を覗いた。その刹那、おそろしいほどの恐怖感が走った。そうだ。この横顔の輪郭を僕は見つめたのだ。その記憶がどこからともなく湧き出てきて、それが突然、記憶の中にぼんやりと蘇ってきた。ぼくはそそくさとその部屋を出た。早く夏の終わりの外の空気を胸いっぱい吸いたかったからだ。

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