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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

不思議な店「モロダディ」

2007年09月26日 | バリ
 写真に写った店「モロダディ」は、デンパサール市街のハサヌディン通りのバドゥン川にかかる橋を渡ってすぐ左に曲がる路地の奥にある。看板には何を扱っているか小さく書かれているが、店を外から見る限りは、文房具とスポーツ用品を売っているようにしか見えないのである。しかし二階に上がるとマニアックな本屋なのだ。
 この店、実はバリの宗教関係の書物をかなり並べている。たぶんバリでもっともこの種の本の種類の多い本屋の一つではないだろうか?なぜか店屋は薄暗く、いつ行っても客は一人いるか、いないかである。
 私がこの店の存在を知ったのは、私と同時期にフィールドワークに来ていた人類学者からだった。誰かに教えてもらわなければ絶対にわからない店である。それにしても本屋を全く主張していない店構えは、実のところ、私が留学していた86年から全く変わっていない。ふと、この店の本業は1階で、2階の本屋は道楽なのだろうかと思ってしまうほどだ。
 古い店が次々と姿を消していく中、モロダディもいずれなくなってしまうのではないかという不安にかられ、私は用の有無に関わらず、毎年、この店に足を運んでしまう。そして訪れるたびにこの店が今もあり続けていることを確認して安堵するのである。もちろん今年も、「モロダディ」は昔のままで、あいかわらず午後1時の店内は数本の蛍光灯がついているだけで薄暗く、店員はレジの床にゴザを引いて供物を作っていたのであった。そういうなにげない風景に遭遇すると、ここに来てよかったといつも思う。

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