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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

初練りに思うこと~浜松でのゴールデンウィーク後半(6)

2013年05月07日 | バンバン!ケンバン♪はままつ

 初子が生まれた家には、喇叭隊を含む多くの法被を着た自治会の人々がお祝いにやってきて、いわゆる「練り」を行う。これを浜松では「初練り」という。私は今回、二つの初練りに出会い、外部者としてそれを楽しんだのだった。
 「かつて」がどうだったのかはわからないが、この「練り」は私から見れば儀礼行為である。浜松の街で行われる合同練りは観光イベントである一方、この「初練り」は自治会の行事であり、子どもが生まれた家にとっては重要な儀礼の一貫である。今回、二つの自治体の初練りを見ることができたのだが、もちろん自治会ごとにその人数も違うので、派手さはそれぞれ異なるが、規模の大小はあれ「お祝いの行事」であることには変わりはない。
 私の住む自治会の初練りは大人数で、軽く100名は超える。この練りのメンバーに食べ物やお酒を振舞うのだからその経費はたいへんだろう。だからこそそれを行う人々もそれがわかった上で中途半端な気持ちではなく、「本気で」練っているんだと思う。こうした初練りをしきるリーダーの拡声器を通して語る言葉は実に感動的だ。
 「歩道に上がれ、今すぐ歩道に上がれ」
 「中央に注目」
 「盛り上げていくぞ」
 「いただいた酒は最後まで飲み干せ」
 「ゴミを分けろ」
 「ありがとうございます」
 そんな言葉の一言一言に、儀礼に対する静かなる崇敬の念やら成功させなければならないという責任者としての意気込みが感じられて実にすばらしい。リーダーは完全にメンバーを掌握している。きっとこの人は以前、機動隊に勤務していてデモ隊にそんなアナウンスをしていたんじゃないか、と思うほどである。彼の一言、一言に呼応するように喇叭隊の演奏も熱を帯びていくのだ。まるで憑依する寸前の人々が音楽を奏でているようにも思える。当然のことながら、演奏もひじょうにすばらしいものだ。
 ぼくはきっとこの祭りには内側の人間としてすぐに参加することはないだろう。ぼくにはまだその勇気がない。なぜかを説明するのはとても難しいことだけれど、私のこれまでのバリでのフィールドワークの経験がそれを受け入れないのだ。それでもぼくは来年もこの祭りに熱狂し、浜松に住んでいることに満足するだろうし、その熱狂から何かを見出すだろう。そしてそんな何かから勇気をもらって、今年も「がんばっていこう」と大きく一歩を踏み出すのだろう。まさに今年の自分のように…。
 


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