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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

大正琴のおじさんたち

2016年04月20日 | バリ

 この3月、久しぶりにバリで、大正琴を起源とする楽器を使ったアンサンブルのメンバーのおじさんたちと再会した。日本から電話をしただけで、とても喜んでくれて、バリでは僕の教え子の留学中の学生とともに歓待してもらえた。新しいメンバーも加わっていたが、なんだか違和感はまったくなかった。バリではガムランが大好きなおじさん、おじいさんはたくさんいるが、この人たちの気合いも相当である。青銅製の音板のついたいわゆるケンバン楽器のない「ガムラン」を演奏していることを誇りにしているのである。さらに俺たちがカランガッスムの文化を担っているという自信に満ちている。
 大正琴を起源とする楽器、ここではプンティンとよばれているが、バリでは東部アムラプラ県で中心に演奏されている。バリの人々だけでなく、イスラムの人々の中でも異なるアンサンブルの中に用いられる。大正琴を起源としていながらも、まるでギターのように抱えて演奏するし、この楽器の起源が日本で作られた楽器、大正琴であることを誰も知らない。
 王宮(プリ・カレラン)の親族がメンバーにいて、親族に不幸があったことから、儀礼での演奏を依頼された。王宮の家の一角で演奏するグループの一枚。とにかく地味である。派手なゴングとは対極にある。普段はトゥア(お酒)を時々飲みながら演奏するが、この日だけはお酒抜き。ちょっぴり真面目顔も素敵である。僕の研究はそんなおじさんたちに支えられている。
 ところでこのグループ、7月にバリ芸術祭で演奏するらしい。実は2度目だが、もう気合の入り方が半端ではない。新しいメンバーも加わっているし、作曲家に作品を依頼し、毎週金曜日の練習を週末は毎日のスケジュールに変更したそうだ。メンバーに聞いたら、友達と毎日酒が飲めて楽しい、といわれた。なんだか、自分のワヤンのグループみたいだな、と思った。大事なのは、グループの仲間意識、絆、また新しいメンバーを拒まない柔軟さなのだろう。