Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ロンタル

2008年09月26日 | バリ
 今年1月にバリに行ったときに、シドゥマンというバリの東部の村に出かけ、そこでロンタルを製作できる知人に会って、『カカウィン・ラマヤナ』のロンタルを注文した。それが今回、出来上がってきたのだった。
 ロンタルというのは、ロンタル・ヤシとよばれるヤシの葉を乾燥させて、それを決められた大きさに切り、そこに文字を刻んでいく文書のことで、バリやジャワでは古くから文書はこの形態で継承されてきた。高温多湿では時間とともにロンタル自体も朽ちていくため、常に、筆写されることで次世代に継承されるのである。
 すでに紙媒体が主流になっているバリでは、ロンタルの文字もその内容も重要なものは紙に印刷されているし、若い人はほとんど文字そのものも読めない。ようするにもうロンタルというメディアは完全に過去の遺物といえる。しかし紙媒体になっているのは主要な文献のみで、まだまだ多くの文書はロンタルの状態で保管されているものも多い。つまりロンタルを読み解かなければ、新たな発見はないといってもいい。私自身もそうした文献を今も探し続けている。といっても私自身がこれをすらすら読めるわけではなく、以前に勉強はしたものの、とてつもない時間と労力がかかるのである。
 今、ロンタルに向かって何時間も読み続ける時間はないものの、老後を考えれば絶対にそんなときがやってくるのだ。私の父は、今、一日中、読書をしているのである。そんなときのために今、ロンタルを買ったのだった。だいたいあと10年、20年したらロンタルを製作できるバリ人もどれだけになるかわからないのである。
 次なる試練は、これをいかに保存するかということである。カビを生やさないように美しい状態で保存させなければ、将来はゴミである。さてどうするか?実は、すでにバリの部屋に2週間置いただけでカビが生え、現在、この除去に苦闘中である。