院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

その昔、訪問は突然だった

2013-04-25 02:48:00 | 生活
 最近、携帯電話をかける前に、電話をしてよいかと相手にメールを送る人がいる。そこまでやらなくてもという意見があるが、私はやるべきだと思う。

 現在では自宅なり勤め先なりに訪問するときには事前に知らせておくのが普通だ。いきなり訪問しても、相手が忙しかったり不在だったりするからだ。

 私の幼少期には電話の普及率は50%くらいだった。だから、来訪者は前触れもなく突然現れた。隣りの都市くらいの距離ならば、伯父さんも叔母さんも父親の友人も突然に来た。突然に来て「やあやあ、お久しぶり」と互いになんの違和感もなかった。

 電話は無いし手紙で予告するような距離ではない。だから、突然訪問するよりなかった。

 むろん行商人は突然来た。中には押し売りも混じっていて、ひどく迷惑した。中元歳暮は自ら足を運んで直接相手先に届けた。正月には年始回りというのがあって、手土産をもって上役宅を挨拶に訪れた。

 上役は、まあ寄っていけ、酒と肴があるぞと家に上げた。そこでひとしきり呑んで、下役は別の家に回った。上役は別の下役が来るのに備えて、料理と酒を追加した。

 だが、そのとき皆がうすうす面倒だなと感じていたに違いない。リゾートが庶民にも手が届くようになると、上役は正月には家族でスキーなどに行くようになった。正月くらい家族団欒を楽しみたいという理由だったが、真相は年始回りの接待のわずらわしさから逃げたのだ。正月は上役が旅行に出てしまうので、下役も年始回りの面倒から解放された。

 こうして、同じ会社の社員同士でも互いの家を行き来することが激減した。訪問するときには、あらかじめ電話をするのが礼儀となった。今では、それで丸く収まっている。

 携帯電話は時と場所をかまわずにベルが鳴る。その上10回鳴るまでに出なくてはならない。こちらの事情なぞおかまいなしである。そういう時代になったのだ。

 だったら、携帯電話をかける前にメールで知らせておいたほうがよい。それで丸く収まる。丸く収めるべきなのが浮世の付き合いというもので、それは今も昔も変わりがないのである。

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