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院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

キャロライン・ケネディ駐日大使のイルカ漁批判

2014-01-28 06:23:47 | 環境
 キャロライン・ケネディ駐日大使が和歌山・太地町の伝統的なイルカ追い込み漁を「非人道的」と批判したことが顰蹙を買っている。キャロライン大使への批判は、「駐在国の伝統文化を大使が批判するのはルール違反だ」と言うにとどめよう。

 「動物の権利」については古代から論じられており、ウィキペディアの記載を大ざっぱにまとめると、アリストテレス、デカルトは動物には理性がないから虐待OK。ルソー、カントは動物に人格はなく単なるモノだけれども、虐待には反対。ベンサムは苦痛を感じるかが問題で、成長した犬や馬より生後一か月の赤んぼうのほうが理性がないから、虐待反対。ショーペンハウアーは人間と動物は本質的に同じだから動物実験にさえ反対ということになろうか。

 このようにさまざまな議論があるのだから、さして考察を深めていない私を初めとする大衆がつべこべ言うのは身のほど知らずかも知れない。

 「動物愛護」の問題は「動物の苦痛」、「動物の人権」という観点のみならず、「生態系の保護」という「動物個人」の枠を超えて論じられたりもするから、たいへん錯綜している。生態系の観点から私はかつて天然痘撲滅をWHOが喜びをもって宣言したことを批判した。(2006-08-12)

 動物虐待は戦争やホロコーストとの関連で語られることも多い。それらは、動物虐待を野放しにすると、やがて戦争やホロコーストさえ正当化されうるというような文脈である。

 1916年、アメリカのサーカスのアジアゾウ、メアリが飼育員を残虐に殺したとされたことから、メアリは「公開処刑」された(下図)。当時の人々はこれを残虐とは感じなかっただろう。なぜなら、時代は第一次世界大戦 (1914-1918) の真っ最中で、人間が3,700万人も殺されたからである。


(ウィキペディア ”メアリ(象)”より引用。)

 とりあえず私は、動物虐待を非人道的と考える派にも、どうせ人間は動物を食べているではないかという派にも同調しない。それらはいずれも農耕の発明を賛美する農耕民族的な考え方に芯まで染まった思考だからである。

 この欄で何度も言ってきたように、人類のそもそもの誤りは農耕の発明にある。諸悪の根源である農耕を是認しておいて、捕鯨にやれ賛成だやれ反対だと論じても無意味なのだ。このブログは分かる人には電光のように分かるが、分からない人は一生分からないと、繰り返し言ってきた。だが、この記事に限っては、いつもは電光のように分かるタイプの人でさえ電光のようには分からないのではないかと恐れている。

(家畜、品種改良、ペットの擬人化や介護、シー・シェパード、ベジタリアンなど、語るべき事柄はまだたくさんある。一回では紙幅が足りないからまた後日に論じよう。)