長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

581 『黎明の海』

2018-05-03 10:34:00 | 日記
   長友くに第五歌集
  長友さんは僕よりほんの少しお若いがかりん創刊の頃からのベテラン。ウチの近くの有名進学都立高校に通っておられたと後から知った。近年は、伊豆の下田や神奈川の秦野の方にお住いのようだ。抒情も叙景もしっかりとした歌を作られる。しかし、長友さんは政治的というか反政権的というか平和主義的というかの発言行動でよく知られている。たまに短歌の場でそれをやりすぎて岩田先生にたしなめられたこともおありのようで、ご本人はそれを自覚し控えようとする面を示すが、やはりこれはやめてはいけないとの意識もよく見えて頼もしくもあり微笑ましくもある(ちょっと失礼)。高校の頃は普通だったのよ、とおっしゃっていた。良い意味での東大出身的矜持がおありなのだろう。この歌集は、今年の憲法記念日に向けて出版されたそうだ。多面的な歌と精神が感じられて優れている。当日にご紹介させていただけて嬉しい。ますますお元気でお互いに長生きを目指しましょうぞ。

曇天は公孫樹の上に重く垂れ信濃の山を燃やす黄葉
あらためて読む『岩田正全歌集』初冬のひと日風邪にこもりて
しどろもどろの法務大臣を「顔」としてモノノ怪のゆく国会審議
普天間をかたどる「平輪ちんすこう」噛みて砕きて飲み込む「基地」を
みっしりと擬木(ぎぼく)の格子に鎖されいる連絡壕の過去の時間は
秋の相示せる雲のたなびきて利島の影のかすかに浮かぶ
作りし物すべて錆ゆく歳月よ歩道橋また橋の欄干
目白かご納屋の奥よりいできたり三十五年前の舅の執着
イノシシの食べ残しなるチューリップ二年育ちて莟をかかぐ
菜の花は咲き終え土に還りゆく実を梅の木の肥やしとなして
木槿の花は咲きて散りたり「革命」が輝きの色持ちし若き日
今ならば上から目線と謗られんナロードニキは農村めざす
見るべきもの見果つることなき世にありて金剛峯寺は閉門間際
釈迦の歯を納めし宝塔仏歯寺に裸足となりて人は時待つ
紅茶のため山を削りしスリランカ地すべり多発とニュースは伝う
『靴音』に平和の鳩笛響かせて岩田正の歌は始まる
ついにスケジュールにのぼりたるか だが「憲法」はまだ生きている
改憲を声高にいう人ら皆「わだつみ」痛哭の歌を聞くべし
「はまかいじ」最終号に乗りてゆく師の亡き後の道探す旅