坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

耳をすましてー美術と音楽の交差点

2011年01月14日 | 展覧会
今年の冬はここ数年が暖冬だったせいか、本当に冬らしい厳しい寒さに展覧会に出掛けるのも精神力が必要かもしれません。
ルイ・ヴィトン表参道のビル7階にアートスペース「エスパス・ルイ・ヴィトン東京」が明日オープンします。ガラス張りの明るい空間は現代アートの新たな発信地として期待されます。こけら落としはフランス人作家によるインスタレーションということで、また取材しましたらお知らせします。
各美術館も縦横な企画展をスタートさせます。茨城県立近代美術館で開催される本展も五感を刺激する楽しめる企画展となっています。音楽は常に美術にインスピレーションを与えてきましたが、とくに20世紀初頭から抽象表現の確立に対位法やポリフォニックな音楽的要素を絵画に取りいれることで色彩や線の純粋な空間の戯れが生まれました。
そして現在においてもその表現形式の枠組みはより拡大し、美術と音楽はさまざまに交差しています。音楽好きで自らもヴァイオリンを奏でたパウル・クレーは有名ですが、独特の半具象的世界を開いた三岸好太郎「オーケストラ」他シャガール作品などとともに、現代美術家の金沢健一さんの「音のかけら」シリーズのインスタレーション作品では、鉄の板のさまざまなかたちを叩くことで体感する音の響きのバリエーション、八木良太さんの氷で作られたレコードをプレイヤーで奏でる未知なる音の空間、絵画と原初的な音の響きがどのように作用するのか楽しみです。
・作品画像 パウル・クレー「ホフマン風の情景」1921年 高知県立美術館蔵


◆「耳をすましてー美術と音楽の交差点」/茨城県立近代美術館/1月22日~3月6日