坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

今年も大規模な印象派展開催

2011年01月06日 | 展覧会
昨年は印象派展の年としてオルセー美術館展やゴッホ展などで賑わいました。今年は、春からオランダ17世紀の巨匠、レンブラントの版画を中心にした展覧会、同じくオランダ・フランドルを代表するフェルメール展が開催されるのが目を引きます。印象派以前にスポットをあてる内容のある企画展が増えています。
今年も大型の印象派展は健在です。ワシントン・ナショナル・ギャラリーの改修に伴い、印象派と後期印象派の絵画作品で名高いコレクションから、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホなど日本初公開作品50点を含む80数点が展覧されます。
・掲載画像エドゥアール・マネ「鉄道」1873年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵
鉄道というタイトルですが、画面上には直接には描かれていません。モネも描いたサン・ラザール駅は印象派の画家たちの格好のモチーフになりました。マネは柵越しに蒸気機関車を見つめる少女とその傍らで読書をする母親の何気ない姿をとらえました。市民階級が台頭してきた19世紀半ば、産業革命に伴い新たな視覚の発見により、現在の私たちの生活に近い日常の光景のスナップが描かれるようになりました。マネはモネら印象派グループのお兄さん的存在で、その軽やかな筆のタッチや色彩の鮮やかさは新鮮な魅力として印象派画家たちの敬愛の的となりました。この作品も鮮やかな色彩と軽やかな色彩のリズムが心を打ちます。

◆ワシントン・ナショナル・ギャラリー展/6月8日~9月5日・国立新美術館/9月13日~11月27日・京都市美術館