坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

学術交流から生まれた「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」

2011年01月04日 | 展覧会
新しい年を晴れやかにお迎えのことと思います。今年はより幅広いアート情報などがお伝えできるように努力したいと思いますので、よろしくお願いします。
冬枯れの樹木に薄日がさしてモクレンの冬芽のとんがり帽子が輝いています。自然の命の息吹を感じるときです。


ドイツ・ルネサンスを代表する画家アルブレヒト・デューラー(1471~1528)。画像作品は、有名なデューラーの「野兎」(1502年)の素描作品です。干支にちなんで掲載してみましたが、展覧会の出品作とは関係ありません。〈神の手〉と呼ばれた精密な対象の観察と鋭い写実力が力強い実在感をつくりだしています。
現在開催中の本展は、銅版画のエングレーヴィング手法の大家であるデューラーの魅力が存分に味わえます。デューラーコレクションで有名なメルボルンのヴィクトリア美術館との学術調査の交流の中で生まれた企画展で、〈宗教 肖像 自然〉のセクションで構成されています。エングレーヴィングは、ビュランという先端が斜めに切断された鋭い道具を使って彫る手法で、デューラーは熟練と労力が必要とされる職人技に、深い内面性、洞察力を結実し豊かに深い芸術観を表出しています。

◆「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」/国立西洋美術館/開催中~1月16日