海人の深深たる海底に向いてー深海の不思議ー

地球上の7割を占める海。海の大半は深海。深海生物、潜水調査船など素晴らしい深海の秘蔵画像を紹介。奇抜・奇妙な姿に驚愕!!

切手で見る潜水調査船

2012年09月29日 | 日記
深海調査のシンボルにもなっている潜水調査船は世界中の子供たちに人気の乗り物となっています。これまで多くの国々で潜水調査船が描かれた貴重な切手として発売されてきました。 今回紹介している写真は1960年にマリアナ海溝の世界最深部へ潜航した「トリエステ」の切手です。 他にも芝らしい切手がいろいろな国から発行されています。
 

日本にも核爆弾沈んでいる。

2012年09月28日 | 日記
日本の領海内に核爆弾の落下物

 最近の情報公開によって米軍は沖縄から110キロ離れた海域(日本の領海内)に核爆弾を落としていることが明らかになった。

報告に書かれている内容は以下の通りである。
 ベトナム戦争が行われていた1965年12月5日アメリカ海軍の空母「タイコンデロガ」は横須賀基地へ向かっていた。 
その時「ニュークリアアラート(核警戒)」が発令されて、1基の核爆弾B-43を搭載したスカイホーク戦闘機A-4ESKYHAWK(写真)がパイロットを乗せて空母「タイコンデロガ」飛行甲板へ移動していた。
 移動中に誤って核爆弾を搭載した状態のスカイホーク戦闘機を海面に落下させ、パイロットを乗せたまま水深4,875mの海底に沈めてしまった。
 核爆弾を搭載したスカイホーク戦闘機の落下海域は沖縄諸島の110キロ沖合である。(日本の排他的経済水域は沿岸から200海里(排他的経済水域exclusive economic zone; EEZ)とは、国連海洋法条約に基づいて設定される経済的な主権がおよぶ水域のことを指す。沿岸国は国連海洋法条約に基づいた国内法を制定することで自国の沿岸から200海里(約370km<1海里=1852m>)の範囲内の水産資源および鉱物資源などの非生物資源の探査と開発に関する権利を得られる。その代わりに、資源の管理や海洋汚染防止の義務を負う。)

 核爆弾が落下した海底は4,875mもの深海で地上の約500倍の高い水圧がかかっているので、核爆弾から放射性物質が漏れ出ている心配があったが、これまで放射性物質が検出された事実はない。(落下した海域を詳しく調査されての報告ではないようだ。)

この報告と同様にウィキぺディアの空母「タイコンデロガ」でも日本語で以下のように記載されている。
1965年12月5日、同年11月からのベトナム沖での任務を終えて横須賀へ帰還する途中、北緯27度35分2秒・東経131度19分3秒(喜界島の南東約150キロ)で水素爆弾(B43・核出力1メガトン)1発を装着したA-4Eがエレベーターから海中に転落する事故が発生した。機体は乗員(ウェブスター大尉)ともに水没した。核攻撃アラートに就くために飛行甲板にあげる途中であった。現場の水深は約5,000メートルあり回収は不可能であるとされている。事故は1981年の国防総省の報告書で明らかにされたが、詳しい場所については1989年に明らかにされた。周辺海域の調査によれば放射能汚染は認められていない。

こうした事実が公開されて頭に浮かぶことはスペイン沖の水爆落下事故である。
スペイン沖での水爆の落下 1966年
1966年1月17日米空軍Bー52爆撃機がスペイン南東の沿岸上空で空中
給油機KC-135から燃料補給の訓練中、接触し運んでいた水爆(MK-28 Hydrogen bomb 4個 B-28 RI nuclear bonb 1個)5個を落下させてしまった。この1.5メガトン水素爆弾は広島に投下された爆弾の100倍もの威力あるもので、落下した1個は陸上に放射性物質を558エーカーに巻き散らし8000万ドルもの処理費を使ってアメリカ政府は対応した。
海中に落下した爆弾の捜索は潜水船「アルビン」「アルミノート」「PC-3B
キャブマリン」「デイープジープ」と無人探査機「カーブ」そして150人のダイバーによって行われた。浅い海域は潜水艦救難艦「ぺトレル」(ASR-14)とTringaは水深35mまでを空気潜水で行い、水深65mまでは混合ガス潜水、更に水深105mまでをダイビングベルを使って捜索した。
 最後の爆弾は3月17日に峡谷の急な傾斜水深777mで「アルビン」が発見した。しかし、回収には失敗して更に深い853mへ落した。この後、潜水艦救難艦「ぺトレル」に搭載された無人探査機「カーブ」によって無事回収された。
 このスペイン沖の水爆の落下では米海軍の海中システムの多くが動員され、約80日間の捜索・回収作業が行われた。そしてこの作業で最も脚光をあびたのは無人探査機「カーブ」で、この後、「カーブⅡ」「カーブⅢ」が誕生した。

 これからの課題 核兵器の絶滅を願う日本にとって日本の近海に核爆弾が落ちている事実知った我々は以下のことを行うべきである。
1. 落下しているとされる海域の海底調査
  スカイホークとともに落下したと言われているのでスカイホークの機体の発見
2. 落下している核爆弾の現状調査
  核爆弾の損傷の有無、腐食など劣化の様子、放射性物質の漏えいの有無。


大気圧潜水服システム

2012年09月23日 | 日記
大気圧潜水服システム

 水深200mまでは大陸棚と呼ばれてそこには陸上同様に豊富な天然資源が眠っている。また、豊かな生き物達が生息し、夜間には深海生物も獲物を狙って上昇してくる。 このような海中を手軽に潜って観察したいと思う願望は昔からあった。 今回は宇宙服などの最新技術でダイバーのように水圧で加圧されることもなく、特殊な潜水服を着て海中を自由に動き回れる大気圧潜水服システムについて紹介しよう。

 大気圧潜水服はADS(Atmospheric Diving Suit)と呼ばれ、一人乗りで腕や足の形をした耐圧潜水服である。
腕や足の部分は軟らかい関節で構成され、普段の人間の腕や足の動きのように関節の中に入れた腕と足でほぼ自由に動かすことができる。自分の腕や足の力、つまりマンパワーが動力源になっている。 海底を歩く時は少し前傾姿勢で右、左の足を交互に前に出せばよい、海底の石を拾いたければ、前傾姿勢になって腕を伸ばし、指のようなグリップで石を挟んで拾うことができる。さらに石を持ち上げることで重さを腕に感じ、1キロなのか3キロなのかも実感できるのだ。

 大気圧潜水服の中は加圧されていない大気圧状態で、乗員は普通の呼吸をしていればいい。しばらく呼吸を続けていると服内の酸素が減ってくるが、減った分だけ自動的に酸素ボンベから酸素が供給される。 やがて増えてくる炭酸ガスは服内の空気が循環しているので炭酸ガスが吸収剤によって除去されている。 ちょっとのどが乾いたら腕を関節から抜いて胴の部分に収納されているペットボトルの水も飲める。トイレの小水も同様に処理することも可能だ。 潜っている水深は深度計に表示され、照明をつけたり、テレビカメラで乗員の見ている様子を船上でも一緒に見ることができる。画像も同様に記録できる。海中を移動するなら背中のスラスターを回せば進みたい方向へ進む。これらスラスターの操作は足で行い、これら動力は船上からの電力ケーブルで供給される。他に通信ケーブルなどもあって乗員と船上の交信ができる。

 今、この大気圧潜水服システムが活躍しているのは石油・天然ガスの採掘現場やパイプラインのメンテナンスである。 さらにアメリカ海軍でも水深600mまで潜航可能な大気圧潜水服(ADS 2000)システム(写真)が採用されている。 主な用途は潜水艦の事故時の対応である。乗員100名を超える原子力潜水艦がトラブルを起こした場合、確実に、より早く潜水艦を救出させるための救難システムとして位置付けている。万一潜水艦が浮上できなくなった場合、救難艦などから最初に小型ロボット(ROV)で潜水艦の状態を確認し、次にADS 2000が現状に合った救難作業を行う。ADS 2000は水深600mに沈んだ潜水艦まで海面から20分で潜航し、長時間の作業を行い、母船まで20分で上昇できるのだ。 そして乗員が交代して救難作業を継続して何時間も行うことも可能だ。

 これまで大気圧潜水服システムに興味を持って使用実績を揚げているのは科学者達のグループだ。ある研究者は深海の中層の浮遊生物の観察に優れた手法と評価し、ある研究者は潜水調査船から大気圧潜水服で離脱・揚収して海底調査を行っていた。その結果、大気圧潜水服システムは有人潜水船よりも軽便で運航費用も格段に安く、一人で自由に調査を進められ、対象物により近く接近できるなど利点が多い。このようなことから大気圧潜水服システムの評価は高まって来ている。 




リュウグウノツカイ

2012年09月22日 | 日記
リュウグウノツカイ
 深海には不思議な生き物が多くひそんでいる。 時折海岸に打ち上げられて奇妙な顔や体型が変わっていて話題になる。 これは日頃食卓などで接している魚と形が想像を超えているからだ。 何でこんな大きな口をしているのか?何を食べたらこのような大きさになるのだろうか? どんな生活をしているのだろうか?と深海魚に興味がわいてくる。

 今回は深海の不思議な深海魚を代表するリュウグウノツカイを紹介しよう。
 リュウグウノツカイ(2属4種)は英語名でOarfishと呼ばれている。オールのように長い魚と体型を表した英語名だ。和名のリュウグウノツカイは海底にある竜宮城をイメージして名づけられたもので日本人にはその姿からもなじみやすい名前だ。 
リュウグウノツカイは太平洋、大西洋、インド洋、北海など世界の海に分布し、水深200mから 1000mの深海の中層で群れずに単独行動している。 リュウグウノツカイは目立つような歯のない小さな口で動物プランクトンなど小さな生き物を食べている。 深海の食物連鎖のなかではリュウグウノツカイは深海の肉食サメなどの獲物にもなっている。

普段は深海の中層に棲んでいるが、これまで夜間に漁火のライトに近寄ってきたところや海面を泳ぐ姿が目撃されている、しかしこれは怪我や身体が弱っていたもので健全なリュウグウノツカイが海面付近で目撃されたことはない。
 産卵の様子はまだ情報が少ないが、深海の中層で7月から12月(メキシコ湾)に行われ、卵(直径5ミリ程度)は浮性卵で3週間でふ化すると言われている。ふ化した稚魚や幼魚は動・植物プランクトンなど餌の多い海面で過ごす、この時期は体長も短く、背ビレ、腹ビレは長く、伸縮する口をもっていてリュウグウノツカイの成魚とは似ていないので鑑定するのは難しい。そして成長すると深海へ降りていく。

  リュウグウノツカイの特徴は何といっても長いリボンのような体型だ、身体の表面はウロコがなく、銀色で頭には長いヒレがカンムリのように伸びている。また、胸ヒレも細長く伸びた状態だ。背ビレは細長い体型にそって尾まで続いている。 
リュウグウノツカイは日本では地震を予知する魚として知られている、大地震の前に海岸に打ち上がることが多いからだ。リュウグウノツカイに詳しい千葉中央博物館の宮正樹博士によると、近年日本海側では19匹も打ち上げられ、目撃例などを入れると40匹近くにもなり何か日本海に異変があったのだろうか?と疑問を投げかけている。 リュウグウノツカイはこれまで生きた状態で観察されたことは少ないが日本で幾つかの目撃例がある。それによると長い身体を垂直に立てている様子、身体を平行にして伸ばし、背ビレだけをリズミカルにうねらせて泳ぐ様子が観察されている。海外では2001年にバハマで米海軍のダイバーによって体長5mのものが撮影され、メキシコ湾で2008年7月に水深470mの石油掘削装置(BOP)付近でROV(海中ロボット)によって自然に泳ぐ姿が観察されている。

 リュウグウノツカイは世界で最も体長の長い魚(硬骨魚)と言われている。 日本の水族館などで展示されているリュウグウノツカイの長さは4~5mもあり、昨年の4月29日に沖縄久米島で5mのリュウグウノツカイが夜の集魚ランプに寄せられたところを銛で射とめられている。 リュウグウノツカイのこれまでの最長記録はギネスブックによれば11mと登録されているが専門家であるルイジアナ州立大学のベンフィルド教授によると何と17mにもなると言う。正に世界最長の魚だ。


英国で少年が竜涎香を拾う

2012年09月19日 | 日記
2012年9月1日に英国のDorset beachの海岸で8歳の少年Charlie Naysith君が600グラムの竜涎香拾った。犬と散歩していて打ち寄せられた海藻の中から見つけたのだ。 父親が詳しくネットで調べたところ600gだと63356ドルの価値があると言う。他にも英国ウエールズ北部の海岸で3月に3個の竜涎香が見つかり6700万円の価値があると言う・この時も犬と一緒に見つけたものでどうも犬との散歩が竜涎香の発見に有利なようだ。英国のだけの話題と思わないで下さい。 竜涎香は琉球王朝のころ世界一の輸出国でした。日本の太平洋沿岸でも見つかる可能性が高いので是非愛犬とともに海辺を散策してみて下さい。 

メキシコ湾流の潜航調査

2012年09月17日 | 日記
メキシコ湾流の潜航調査



 今から40年前の1969年は、人類初の月面着陸を行ったアポロ11号の様子を世界中の6000万人がテレビにくぎ付けになった年だった。しかし、アポロ11号の月面着陸とリンクして行われた潜水調査船「ベンフランクリン」によるメキシコ湾流漂流実験は一般に知られることはなかった。

アポロ計画の先を考えていたNASAは有人宇宙で問題となる狭い空間の中で長く滞在した際のストレスと狭い空間でのライフサポート(生命維持装置)に関心を持っていた。 そしてNASAとグラマン社は6名の乗員が32日間もメキシコ湾流を潜航する実験を行った。



 潜水船は1963年に世界最深部へ潜航したスイス人の科学者ジャック・ピカールが設計し、全長14m、幅6m、6人乗り、最高潜航深度 600m、ライフサポート 6人6週間の潜水船「ベン・フランクリン」が完成した。潜水船の名前「ベン・フランクリン」は1770年にメキシコ湾流を発見したベンジャミン・フランクリンに敬意を表して命名された。

この潜航実験はアポロ計画とリンクしていたのでアポロ11号の打ち上げ2日前の1969年7月14日にフロリダ沖で潜航を開始した。乗員6名はジャック・ピカール、建造に関わったグラマン社の社員、操縦士はスイス人、アメリカ海軍のオフィサー、イギリス海軍の音響専門家、NASAの科学者で構成された。 メキシコ湾流は日本で言えば黒潮に相当する。このメキシコ湾流を水深180mから600mの中層を維持しながら一度も海面に浮上することなく、32日間潜航を続けたのだ。



 潜航中にはこれまでの潜水船では経験できないことが経験された。 その一つは内部波だ。原子力潜水艦「スレシャー」の事故も内部波と言われている。 水深100mから数百mの水温差のある境が大きくうねることで、「ベン・フランクリン」も潜航中幾度も大きな内部波に襲われて、急激に数十メートルも上下動したのだ。 潜航中の事故らしきものとしては潜航5日目にメカジキ2匹に襲われたことだ。 凶暴な性格として知られるメカジキはこれまで潜水船「アルビン」を襲ったことや石油掘削装置に突っ込んだ4件の例がある。 メカジキが怖いのは長くて強い吻だ、明るいところを目だと思って長い吻を突き刺してくる。 覗き窓も周辺のケーブルもメカジキの攻撃を考慮していないので覗き窓が割れる、ケーブルがショートする危険性もあるのだ。 幸いメカジキの攻撃で被害はなかったが深海の潜航は油断できない。 昼間全ての照明を消して海中に届く自然光を確認したところ水深187mで大きな活字は読めることが分かった。 下着、洗濯物、食事のゴミなどは3日交代とし、カプセルに入れて船外へ放出し、母船で回収した。 覗き窓から眺めるとライトに集まるプランクトンやエビそれを捕食するイカ・魚など飽きることはなく乗員達の心をいやした。こうして32日間の連続潜航で内部環境コントロールとメキシコ湾流などの貴重な調査結果が得られた。






原子力潜水調査船NR-1

2012年09月16日 | 日記
原子力潜水調査船「NR-1」

 潜水調査船とは学術調査のために潜航する潜水船であって軍事目的で潜航する潜水艦とは大きな違いがある。構造的にも潜水艦にはない覗き窓、人工の腕(マニピュレータ)、外部観察用テレビカメラを持っているのが特徴だ。
 潜水調査船で有名なのは日本のJAMSTEC(海洋研究開発機構)の「しんかい6500」(潜航深度6500m、3人乗り)、ロシアの科学アカデミー所属の「ミールⅠ」「ミールⅡ」(潜航深度6000m、3人乗り)フランスのイフレメール海洋研究所の「ノチール」(潜航深度6000m、3人乗り)アメリカのウッズホール海洋研究所の「アルビン」(潜航深度4500m、3人乗り),中国の「蚊竜号」(潜航深度7000m、3人乗り)の6隻である。他にもロシアの「コンスル」やキャメロン監督が乗った「デープシーチャレンギャー」がある。

 アメリカの「アルビン」は一応海軍の所属でもある。そこで米海軍は潜水調査船に原子力潜水艦の機能を加えて1969年に新たな潜水調査船を作ったのが原子力潜水調査船「NR-1」(潜航深度900m13人乗り)だ。
 「NR-1」の凄さはエネルギー源にある。通常の潜水調査船はバッテリー駆動なのに対し世界で初めて原子力駆動の潜水調査船である。 通常の潜水調査船はバッテリー駆動なので潜航時間は10時間ほどである。10時間の制限時間以内で深海まで降りて、海底を調査して、海底から海面へ浮上しなければならない。 浮上した海面で支援母船に揚収できないと事故になってしまう。支援母船の船長は、低気圧はこないだろうか?うねりはないだろうか?海面での揚収に一番気を使っている。 しかし、「NR-1」はこのような心配はいらない。原子力駆動の潜水調査船だから1週間も10日も潜航を続けることができるのだ。

 船内にはトイレ・ベッドはあるし、簡単な調理台、シャワーもある、交代で休めるのだ。 1986年のスペースシャトル・チャレンジャーの捜索、1990年のエジプト航空の捜索では他の潜水調査船や無人探査機が荒天で待機している間も連続で海底捜索を続けて大きな成果を挙げている。 カルタゴ通商航路の考古学的調査や深海生物の生態調査にも連続潜航の威力を発揮した。

 原子力潜水調査船「NR-1」のチームは35名ほどで支援母船「キャロライン」に乗船している、いずれも原子力潜水艦の知識・経験が豊富で優秀な人材でこの中から11名が「NR-1」の乗員が選抜されている。研究者は2名が乗船でき観察・記録に従事している。研究者はこれまで「アルビン」などに乗船した経験はあっても「NR-1」のようにトイレを使用することもベッドで寝るという当たり前のような経験にも感動している。これは研究者がこれまで長年研究してきた深海のフィールドで睡眠を取ることには深い思い入れがあり、深海の中で見た夢などを大切にメモしている。 さらに「NR-1」は連続数日の潜航もあるので支援母船を経由してEメールのやり取りができる唯一の潜水調査船であった、こうして建造以来40年間第一線で活躍し、2008年惜しまれて退役した。


深海からフラィトレコーダーの回収

2012年09月11日 | 日記
深海からのフライトレコーダの回収

 多くの乗客を載せて飛行する航空機の事故は事故原因を究明するために多くの情報を必要としている。 重要な情報は事故を起こした航空機の中に残されているブラックボックス(フライトレコーダとボイスレコーダ)を回収することだ。 今回はこれまで海へ墜落した航空機のフライトレコーダの回収について紹介したい。

 2009年5月31日にブラジルのリオデジャネイロからパリへ向けて飛び立ったエールフランス447便には乗客216名、乗員12名の228名が搭乗していた。 使われていた機体はエアバスA330-200型機である。 離陸して3時間半後に機内の与圧が低下したと連絡して消息を絶ってしまった。 事故後5日目から墜落海域で大規模な捜索が22日間行われ、海面から51人の遺体、機体の残骸や乗客の遺品などがみつかった。

 フランスは447便のフライトレコーダを回収するべく墜落現場の海底地形に詳しい情報を持っているアメリカのウッズホール海洋研究所(WHOI)に調査を依頼した。 調査海域は水深2000mから4000mの起伏に富んだ地形で広域捜索が難しい場所であった。 このためWHOIは米海軍と共同開発した捜索用曳航体REMUS 6000を3機、3隻の海洋調査船M/V Anne Candies、M/V Seabed Workerなどに搭載して捜索を行った。

 REMUS 6000は長いケーブルで降ろされ左右600m合計1200mの海底を音響(サイドスキャンソナー)で捜索し、人工物が見つかれば近寄って映像で海底に捨てられたゴミか機体の残骸かを目視で確認できる最新機器である。 海洋調査船は捜索海域内を網羅する側線に沿って低速で運航するという捜索を続けた。REMUS 6000は連続20時間の調査が行える。 長時間の捜索が行われては一旦揚収されて調査データの読み取りや整備が行われ、再度降ろされて捜索が行われる。 機体の残骸らしきものが発見されるとマニピュレータを備えた海中ロボットCURV21が投入される。 そして機体の残骸場所へ近づき、海底に一部埋もれた残骸をマニピュレータで掴んで海中ロボットとともに回収するやり方である。

 このような地道な捜索活動が行われて4航海目の執念でエールフランス447便のフライトレコーダが3900mの海底から回収された。 この回収は5月1日で事故後2年がかりの大捜索であり、タイタニック号の発見に匹敵すると専門家は評価している。
 これまで海へ墜落した航空機のブラックボックスの回収は幾つか成功している。1987年にはモーリシャス沖水深4268mに沈んだ南アフリカ航空機のブラックボックスがROVの「GEMINI」(水深6,000m)によって回収された。 1985年にはアイルランド沖に沈んだインド航空機のブラックボックスを水深2042mから回収した。さらに1983年には冷戦の中大韓航空機がソ連のミサイル攻撃で墜落し、米海軍が捜索期間3ケ月、80億円もの経費を使って大規模に捜索したが回収できず、後にソ連からブラックボックスを回収していると発表があり、ソ連の海底捜索技術の高さが証明されたことがある。

熱水噴出孔 深海の温泉

2012年09月10日 | 日記
深海の温泉は熱水噴出孔 
 昔、深海のイメージは生き物が棲めず、ただ暗い、冷たい、高水圧というイメージであった。しかし太平洋の深海を研究しているスクリップス海洋研究所では陸上と同様に深海にも必ず温泉があるはずだと考えて、1966年からガラパゴス沖の海底に注目し海底地殻の熱を計測する深海探査を行っていた。 1972年には同研究所の海洋調査船「トーマス・ワシントン」が曳航式のテレビカメラと海底地震の調査に使うソノブイを海底近く降ろして緻密に調査し、世界で最初に熱水活動のサインを確認した。1976年には同じ海域でシロウリガイの大量の殻を見つけ、調査海域が絞り込まれて行った。

 こうしたスクリップス海洋研究所の調査成果をもとに1977年ウッズホール海洋研究所は海洋調査船「ノール」と潜水調査船「アルビン」を派遣し生きたシロウリガイ、ヒバリガイの群落を発見し、「アルビン」は水深2,500mで生きたシロウリガイをマニピュレーターで捕獲し、その海底は深海にもかかわらず8℃を計測して世紀の「ガラパゴス沖の熱水噴出孔」の発見となった。

 1979年にはこの発見をもとにフレデリック・グラッセル主席研究者は有名なロバート・バラードや水中写真家のアル・ギティングスを集めて特別の調査チームを作り最新鋭の撮影装置を搭載した「アルビン」で潜航調査した。最初の発見は背丈ほどの熱水の煙突「チムニー」から32.7℃の温水を発見、続いて「ローズガーデン」と呼ばれる海底では2.4mもの巨大なチューブワームの群落を発見、さらに350℃の熱水噴出孔を発見した。 これまで生き物は生息できないと言われていた深海底には温泉が湧いて、その周囲には誰もが想像すらできなかった新発見の生き物巨大なチューブワームが一杯群れをなして、ヒバリガイやシロウリガイが生息していたのだ。さらに詳しく調べると海底の温泉はマグマに熱せられた熱水が激しく噴出していて、鉱物と硫化水素やメタン、硫黄など有害物質が排出されていて一般の生き物には致死量に達する極悪な環境であった。 

 チューブワームは堅いキチン質の管を作って、その中で生活しているが身体には口、胃、腸などの消化器はなく、真っ赤な羽毛のようなエラを管から出して硫化水素の入ったミネラルスープを身体に取り入れている。身体には共生バクテリアが多く入っていてミネラルスープから硫化水素などをチューブワームの栄養に必要な有機物に替えている。シロウリガイも同様にエラに多くの共生バクテリアを棲まわせて栄養をもらっているのだ。ここにはリミカリス、コシオリエビや目のないユノハナガニなどが特別な生態系を作り、ここの食物連鎖の頂点には細長い魚のゲンゲが君臨している。こうして撮られた潜航調査の映像は世界中に配信され深海の新たな生態系として多くの人々に感動を与えた。

 熱水噴出孔は発見されてから今年で35年目を迎え、世界の海で100か所ほど発見され、最も浅い個所はニュージーランドの水深30m、最も深い個所はカリブ海の水深4,800m、最も高温は大西洋中央海嶺の407℃が発見されている。 高い水圧のかかった海水の沸点は水深1000mでは310℃、2000mでは370℃、3000mでは410℃、4000mでは445℃、6000mでは480℃となるので、更なる高水温の発見が期待されている。海水熱水噴出孔はまだ全体の10%ほどしか調査されていない。これからの新発見が楽しみだ。


メガマウス 謎の深海ザメ

2012年09月09日 | 日記
謎の深海サメ
 海洋の水深200m以深の深海は太陽の光が届かない世界で我々がまだ知らない大型の生き物が棲んでいる。 今回は体長数メートルもあるのに36年前に新発見された珍しい深海の大型サメ“メガマウス”を紹介したい。

 メガマウスを最初に発見したのは、“米海軍の科学者の眼”である。1976年11月ハワイ・オワフ島沖で水上飛行艇のシーアンカーをテストしていた米海軍のアンダーシーセンターの調査船だ。 アンダーシーセンターは海軍の研究所で、工学系や生物系のいろいろな科学者が所属している。水深165mでシーアンカーに絡んだ4.5mほどの特異な体型をしたサメに興味を持った科学者などが海へ捨てることなく甲板に揚収して船内に保管して港まで持って帰ったことがメガマウス発見となった。 通常の工学系の海洋実験では実験機材に絡んだ生き物は興味がないので甲板に揚げられることもなく、海面で外されてリリースされてしまうのだ。
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 こうして米海軍の科学者が発見したメガマウスは体長数メートルもあるのになぜこれまで発見されなかったのだろうか?大型のサメは目立つので打ち上げられても専門家に通報が届く、まして頭が大きく、軟らかい体型は特異な体型であるからなおさらだ。 
 メガマウスはどこに分布しているのだろうか? 発見されてから36年を経て見つかったメガマウスはたった50匹である。二匹目は8年後にカリフォルニア沖で発見された。 ごく稀にしか発見されないメガマウスは謎の存在であった。しかし、近年メガマウスが相次いて発見され50匹もの発見になった。 ではなぜ近年メガマウスの発見が相次いているのか、深海の環境が変化したのかなど、まだ誰も説明できていない。 その中でも日本周辺で11匹が発見され、世界で一番多く発見されている。 第二位は台湾の10件、フィリピンの10件が並んでいる。第四位はアメリカの5件、第五位はブラジルの2件、メキシコの2件がならぶ。

 日本の11件は世界で4例目(89年1月)になる浜松での発見で、体長4mのオスが日本での最初の発見であった。世界で7例目(94年11月)に博多湾で発見されたのは世界最初のメスだった。それ以降、三重沖、茨城沖、東京湾、2006年5月には相模湾でもメガマウスが発見された。 こうして日本各地で発見されると皆さんがメガマウスの第一発見者になる可能性もある。
これまで50匹の記録からメガマウスの分布は西インド洋をのぞく世界に分布していることになる。

 メガマウスの発見例はまだ少なく生態は不明な点が多い、カリフォルニアで捕獲された個体にデータロガーが付けられ2日間の行動が調べられた。その結果、日没から日の出までは水深15mの浅い水域で活動し、日の出後は水深150mへ移動していた。これは動物プランクトンやクラゲなどの移動と同じ水深であった。 確かにメガマウスは身体は大きくとも動物プランクトンなどを食べているのだ 身体の割に大きな口にはフック状の小さな歯が上下50本ほど並んでいる。そして口の内部が銀色に輝いている。口の前面の歯茎の部分には白いバンドがあって口を開くとさらに目立つようになっている。 この口を大きく開いて動物プランクトンなどを食べているがこの白いバンドの役割は不明で仲間同士の認識に使われているのかも知れない。


チョウチンアンコウのオス

2012年09月08日 | 日記
チョウチンアンコウのオス
 私達の知っている動物のオス、メスの違いはなんだろう? 鳥ではオスが飾り羽などを広げてメスの気をひいたり、美しいさえずりでメスを呼んだりしている。オットセイはオスが大きな身体で強さを発揮し、他のオスをしりぞけてハーレムを維持している。百獣の王ライオンは立派なたてがみでメスを誘っている。このように一般の動物はオスの方がメスより身体が大きい、獲物を捕る能力が優れているなどのイメージを持っている。

 恐ろしい顔や奇抜な体型で知られる深海生物にはこれまでのオスのイメージを覆す生き物がいる。それはチョウチンアンコウの仲間だ。今回はオニアンコウ、ミツクリエナガチョウチンアンコウなどの奇妙な生き方を紹介したい。
 オニアンコウなどは深海の中層で産卵する。卵はゼリー状の帯のような形の中にあって浮力があるので深海から海面に浮いてくる。海面でふ化した仔魚はオス:メスは1:1である。海面付近には植物プランクトンや動物プランクトンが多くふ化した仔魚の餌には困らない。こうして育った仔魚はやがて本来の生息場である深海へ下って行く。
 深海生物であるチョウチンアンコウのメスは頭の先に獲物を捕るための疑似餌であるルアーや発光器官が備わっている。メスはこのルアーを巧みに動かし、近寄ってきたエビや小魚を食べる。胃袋も大きくなるので多くの餌を呑み込んで30センチと大きく育ちオスを寄せるフェロモンを放出している。 一方オスはルアーも発光器官も備わっていない。メスより鋭い目と発達した感覚器官、咬む力の強い口で餌を捕えるのだ。オスは優れた視覚で餌を見つけて襲い、咬みつくと鋭い歯で相手を逃がさない。胃袋など消化器系はあまり発達していないので身体は大きくなれない、せいぜい数センチどまりである。

 オスは大人になると、狭い行動範囲の中からするどい嗅覚でフェロモンをかぎ分け、目で大きなメスを見つけて近寄る。しばらく一緒に泳いで同種のメスと判断すると大きな身体に咬みつくのだ。メスの身体は軟らかく、しっかりした歯でぶら下がれる。咬みついた顎をレバーで固めて外れないようにもする。こうしてくっついたオスは背中であったり、腹側であったり、下半身であったりする。オスの姿勢も様々でひっくり返ったり、横を向いたりまちまちである。
 咬みついたオスの口から酵素がメスの皮膚に入ると、メスの身体から皮膚が伸びて来てオスの口は皮膚に取りこまれてオスはメスの身体と一体化してしまう。まるで雌雄同体のようである。

 一体化したオスにはメスの血管から栄養が届けられるのでガリガリに痩せたオスはしだいに精巣も発達し、太ってくる。一方使わなくなった胃腸や目はやがて退化してしまう。こうしている間にも他のオスがメスの身体に咬みついてくるので数匹のオスが一匹のメスに附着していることがある。
 メスが成熟して産卵時期が近付くとオスの身体にもホルモンが伝わり、精巣の準備が整うのだ。こうして深海の闇の中で複数のオスを身体の一部としたメスが孤独?の中でも産卵し、オスの精子と受精して子孫繁栄が続いているのだ。  このチョウチンアンコウなどの子孫繁栄の戦略は、厳しい深海の環境の中で、メスの身体を大きくして産卵数を増やす、オスとメスの遭遇の機会が少ないからオスはメスの身体に寄生させる、オスは嗅覚でメスのフェロモンを嗅ぎつける能力とメスを見つける目を発達させることに重点を置いている。
 しかし、チョウチンアンコウのオスは、なぜこんなにも厳しい、過酷な生活を強いられているのだろうか? つくづく人間の男性に生まれてきて良かった!と思う。


深海の忍者ダルマザメ

2012年09月07日 | 日記
 深海生物の中には奇抜な行動をしている生き物が多い。今回紹介するダルマザメはとても個性的な深海生物である。 ダルマザメは体長30~50センチほどの小型のサメで通常水深3,000mほどの深海に生息している。身体には腹側に発光器官があって他の深海生物のように自分の姿を消すのに使っているようだ。

 ダルマザメの体型は“葉巻型”と呼ばれるようにやや細長い体型に小さな尾びれがついている。この体型から想像すれば、速く泳ぐことはできず、くねくねと身体を動かしてゆっくり泳ぎ、深海の中層で発光器官を巧みに使ってエビや小魚を獲物としているイメージである。しかし、歯を確認すると下あごの歯は身体の割に大きく鋭い歯が並んでいる。エビや小魚を食べている普通の歯ではない。

 一方、マグロやクジラの身体に削ったようなキズがあることが昔から知られていた。大きな身体に500円玉程度の丸いキズで深くえぐられている。深くえぐられているが小さいキズなので致命傷にはならない。クジラなどには古いキズや新しいキズまで数十か所も見られる個体もある。 この丸いキズの正体が分かったのは1981年である。「マグロの噴火口状のキズの犯人は体長50センチ程度のダルマザメだった」と報告されたのだ。

 マグロの丸いキズとダルマザメの歯型は確かに一致していて犯人がダルマザメであることは理解できた。 しかしどうやってダルマザメが高速で泳ぐマグロを襲えるのかまだ納得できない。
ダルマザメの体型はどう見ても磯の魚のようでマグロ並みの高速遊泳ができないからだ。通常捕食者は獲物より速く泳いで獲物を襲う、あるいは待ち伏せして突然襲い掛かっている。深海にはダルマザメの身体を隠すようなものは無く、獲物より速く泳ぐ方法しか想像できない。なのになぜマグロやクジラを襲えるのだろうか?

 潜水艦のソナードームのゴムカバーも同様に500円玉ほどの穴を開けられたことがある。米ソが対立していた頃だから米軍はソ連のスパイにやられたキズと長く思われていた。水中を20~30ノット(10~15m/sec)で航行している潜水艦もこのダルマザメが襲っていることが分かって米海軍は愕然とした。世界最強の兵器である最新鋭の潜水艦がたった50センチのサメにやられてしまったからである。 潜水艦以外にも海底石油開発のストリーマーケーブルも被害にあっている。 ここまでくるとダルマザメは海を荒らす人工物に立ち向かっているようにも思える。

 ダルマザメがマグロを襲う行動について研究者は、ダルマザメは胸の発光器官をチラつかせて自分を囮にしてマグロを誘き寄せている。高速で近づいてきたマグロに襲われる直前、身体を反転させてマグロの身体に下あごの鋭い歯を食い込ませる。流される身体の力で肉を食いちぎっていると書かれている。 本当だろうか? まだ我々の想像力からは小さなダルマザメがマグロを襲うシーンを想像できていない。


人喰いザメの被害

2012年09月04日 | 日記
人喰いザメによる被害
 海面に浮いているゴミの周りにサメの背びれが見えることがある。 サメが浮いているゴミをチェックしているのだ。サメの中でも肉食のサメはいつも獲物を探していて、海面に浮いているものは生き物の死がいではないか、弱って飛べなくなった海鳥ではないかと近寄って確認しているのだ。

 食物連鎖の上位にランクされる大型ザメは、体長5m以上のサメでクジラ・イルカなどの弱った生き物を狙っている。 海の中は弱肉強食と言われているが基本は弱った生き物が狙われている。身体の大小ではなく、弱って泳ぎがおかしくなったもの、群れについていけないものが狙われる自然界の厳しい掟、自然淘汰なのだ。 私達人間は海に適応していないので海の生き物のように速く泳げず、息こらえも長くない、このため大型のザメからは弱った生き物、飛べなくなった海鳥などと同様に見えて世界で毎年十名近くがサメに襲われて命を落としている。

サメに襲われた人は、サーファー(57%)、海水浴客(36%)、ダイバー(7%)の順である。
 人を襲う大型のサメはホホジロザメ(Great white shark)イタチザメ(Tiger shark)
 アオザメ(Mako shark) ヒラシュモクザメ(Great hammer head) メジロザメ(Sandber shark)などがいる。

 世界的にサメの被害を調査している組織はフロリダ自然史博物館にあるISAF(International Shark Attack File )で1500年代からの情報を収集、分析、電子データ化している。 これによると毎年世界中で60~70件ほどのサメに襲われた被害報告がある。目の前でサメに襲われ行方不明になってしまった方、サメに襲われ手足を咬まれ死亡、重体になった方など被害報告である。

2000年から2011年の世界のサメの被害を見ると2011年は75件、10年は81件、09年は64件、08年は52件、07年は70件、06年は58件、05年は51件、04年は65件、03年は55件、02年は65件、01年は68件、00年は79件でほぼ横ばい状態で増えもせず、減りもせずである。この10年のサメによる死亡事故は51名で平均年間数名である。 

 サメの被害の多い国の一位はアメリカで世界の被害の約50%、死亡事故は15%を占めている。二位はオーストラリアで世界の被害の15%、死亡事故は25%を占めている。三位は南アフリカ、四位はブラジルである。これらサメの被害の多い国では海水浴場にサメよけネットを張ったり、サメの背びれを確認すると警報が出されて遊泳禁止になるなどのサメ対策が講じられている。

 私が調べた日本でもサメの被害例は1982年から2005年で、12件の被害のうち7名の方が死亡、3名の方が重傷であった。具体的には熊本県でヨットから3人の子供を曳いて走らせていたところ1人がサメに襲われて死亡した事故、沖縄県宮古島で素潜り漁の最中、サメに襲われて重傷を負った事故、愛媛県でヘルメットダイバーがタイラギ漁の最中、サメに襲われ死亡した事故、沖縄県宮古島でサーファーがサメに襲われて死亡した事故などがある。これら被害を与えたサメはホホジロザメ、シュモクザメ、オオメジロザメ、イタチザメ、ネブリブカと言われている。日本ではダイバー、サーファー、海水浴客が被害にあっている。

 日本でのサメの被害は数年に一度程度であるが、サメのいる海域でボートから泳いだり、潜ったりする際の被害を出さぬためには、水面を叩く音を出さない、トイレの水を流さない、魚介類を調理した水を流さない、ボートから遊泳者を曳いたりしないなどサメに好奇心を持たれない工夫が必要だ。