海人の深深たる海底に向いてー深海の不思議ー

地球上の7割を占める海。海の大半は深海。深海生物、潜水調査船など素晴らしい深海の秘蔵画像を紹介。奇抜・奇妙な姿に驚愕!!

オオクチホシエソの発光器

2014年11月25日 | 日記
 一般の発光器を持つ深海魚は、遠くまで届く青白い光を発光させて生活しています。発光器は以下の目的のために使われています。獲物を引き寄せるため、自分のシルエットを隠すため、捕食動物から逃げるため、パートナーを引き寄せるためです。
 しかし、このオオクチホシエソは最新兵器の発光器を持っていて獲物を捕食しているのです。この発光器とは、カメラマンなどが野生生物を夜間撮影する時などにも使われている暗視装置と同じ、赤い光の赤外線照射装置と赤外線感知システムを持っているのです。赤外線の光は海中では遠くには届きませんが、一般の深海生物にはこの赤外線の光は見えないのです(人間にはかろうじて見ることができます)。ですから赤い光でオオクチホシエソだけが獲物を見つけて捕食できるのです。赤外線の光は頭の前方の大きな発光器から"煌めく赤色"として発光されています。また、この発光器からは緑色の発光も確認されていますので、"赤"と"緑"を発光していることになります。
 オオクチホシエソは、深海の何も頼るところのない、中層に棲んでいます。この中層に棲む生き物は、身を隠す場所がない、体を保持するつかまる所もない、卵を産み付ける岩場もない、そんな不安定な空間で生きています。ですから捕食者から身を守るために目立たない姿、身(影)を隠す発光など全てに知恵比べをしています。
 オオクチホシエソの体が黒いのは目立たないようにしているのでしょう。発光器の大きなのが目の下にあるのは、体の影を隠すというより、獲物を見つけるためのようです。チョウチンアンコウのように獲物を誘き寄せる"ルアー"は細長いものが顎の下にあります。
 普通の深海魚は、海面からの太陽の光、月の光の方向(上方向)を見ていて、そこを横切る黒い影を注目しています。黒い影が近づいたら大きな口で獲物を呑み込んでいるのです。
 オオクチホシエソは、例えるとアメリカSWAT特殊部隊同様に、闇夜に隠れる犯人ならぬ獲物を赤外線照射装置の発光器で見つけているのです。そこでは誰も見ることができない赤い光ですから、獲物は見られていると感じてはいないのです。このようにして餌となる"赤いエビ"や小魚を捕らえているようです。
 また、クロロフィル(葉緑素)を持つ魚として有名で、このクロロフィルを持つ細菌と特殊な発光バクテリアが共生することで赤外線の赤い光を得たのではないかとも推考されています。ともかく、これまで多くの深海生物の発光が研究されてきましたが、赤外線の光を発する深海生物は唯一このオオクチホシエソだけです。