海人の深深たる海底に向いてー深海の不思議ー

地球上の7割を占める海。海の大半は深海。深海生物、潜水調査船など素晴らしい深海の秘蔵画像を紹介。奇抜・奇妙な姿に驚愕!!

熱水噴出孔 深海の温泉

2012年09月10日 | 日記
深海の温泉は熱水噴出孔 
 昔、深海のイメージは生き物が棲めず、ただ暗い、冷たい、高水圧というイメージであった。しかし太平洋の深海を研究しているスクリップス海洋研究所では陸上と同様に深海にも必ず温泉があるはずだと考えて、1966年からガラパゴス沖の海底に注目し海底地殻の熱を計測する深海探査を行っていた。 1972年には同研究所の海洋調査船「トーマス・ワシントン」が曳航式のテレビカメラと海底地震の調査に使うソノブイを海底近く降ろして緻密に調査し、世界で最初に熱水活動のサインを確認した。1976年には同じ海域でシロウリガイの大量の殻を見つけ、調査海域が絞り込まれて行った。

 こうしたスクリップス海洋研究所の調査成果をもとに1977年ウッズホール海洋研究所は海洋調査船「ノール」と潜水調査船「アルビン」を派遣し生きたシロウリガイ、ヒバリガイの群落を発見し、「アルビン」は水深2,500mで生きたシロウリガイをマニピュレーターで捕獲し、その海底は深海にもかかわらず8℃を計測して世紀の「ガラパゴス沖の熱水噴出孔」の発見となった。

 1979年にはこの発見をもとにフレデリック・グラッセル主席研究者は有名なロバート・バラードや水中写真家のアル・ギティングスを集めて特別の調査チームを作り最新鋭の撮影装置を搭載した「アルビン」で潜航調査した。最初の発見は背丈ほどの熱水の煙突「チムニー」から32.7℃の温水を発見、続いて「ローズガーデン」と呼ばれる海底では2.4mもの巨大なチューブワームの群落を発見、さらに350℃の熱水噴出孔を発見した。 これまで生き物は生息できないと言われていた深海底には温泉が湧いて、その周囲には誰もが想像すらできなかった新発見の生き物巨大なチューブワームが一杯群れをなして、ヒバリガイやシロウリガイが生息していたのだ。さらに詳しく調べると海底の温泉はマグマに熱せられた熱水が激しく噴出していて、鉱物と硫化水素やメタン、硫黄など有害物質が排出されていて一般の生き物には致死量に達する極悪な環境であった。 

 チューブワームは堅いキチン質の管を作って、その中で生活しているが身体には口、胃、腸などの消化器はなく、真っ赤な羽毛のようなエラを管から出して硫化水素の入ったミネラルスープを身体に取り入れている。身体には共生バクテリアが多く入っていてミネラルスープから硫化水素などをチューブワームの栄養に必要な有機物に替えている。シロウリガイも同様にエラに多くの共生バクテリアを棲まわせて栄養をもらっているのだ。ここにはリミカリス、コシオリエビや目のないユノハナガニなどが特別な生態系を作り、ここの食物連鎖の頂点には細長い魚のゲンゲが君臨している。こうして撮られた潜航調査の映像は世界中に配信され深海の新たな生態系として多くの人々に感動を与えた。

 熱水噴出孔は発見されてから今年で35年目を迎え、世界の海で100か所ほど発見され、最も浅い個所はニュージーランドの水深30m、最も深い個所はカリブ海の水深4,800m、最も高温は大西洋中央海嶺の407℃が発見されている。 高い水圧のかかった海水の沸点は水深1000mでは310℃、2000mでは370℃、3000mでは410℃、4000mでは445℃、6000mでは480℃となるので、更なる高水温の発見が期待されている。海水熱水噴出孔はまだ全体の10%ほどしか調査されていない。これからの新発見が楽しみだ。


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