
大気圧潜水服システム
水深200mまでは大陸棚と呼ばれてそこには陸上同様に豊富な天然資源が眠っている。また、豊かな生き物達が生息し、夜間には深海生物も獲物を狙って上昇してくる。 このような海中を手軽に潜って観察したいと思う願望は昔からあった。 今回は宇宙服などの最新技術でダイバーのように水圧で加圧されることもなく、特殊な潜水服を着て海中を自由に動き回れる大気圧潜水服システムについて紹介しよう。
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大気圧潜水服はADS(Atmospheric Diving Suit)と呼ばれ、一人乗りで腕や足の形をした耐圧潜水服である。
腕や足の部分は軟らかい関節で構成され、普段の人間の腕や足の動きのように関節の中に入れた腕と足でほぼ自由に動かすことができる。自分の腕や足の力、つまりマンパワーが動力源になっている。 海底を歩く時は少し前傾姿勢で右、左の足を交互に前に出せばよい、海底の石を拾いたければ、前傾姿勢になって腕を伸ばし、指のようなグリップで石を挟んで拾うことができる。さらに石を持ち上げることで重さを腕に感じ、1キロなのか3キロなのかも実感できるのだ。
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大気圧潜水服の中は加圧されていない大気圧状態で、乗員は普通の呼吸をしていればいい。しばらく呼吸を続けていると服内の酸素が減ってくるが、減った分だけ自動的に酸素ボンベから酸素が供給される。 やがて増えてくる炭酸ガスは服内の空気が循環しているので炭酸ガスが吸収剤によって除去されている。 ちょっとのどが乾いたら腕を関節から抜いて胴の部分に収納されているペットボトルの水も飲める。トイレの小水も同様に処理することも可能だ。 潜っている水深は深度計に表示され、照明をつけたり、テレビカメラで乗員の見ている様子を船上でも一緒に見ることができる。画像も同様に記録できる。海中を移動するなら背中のスラスターを回せば進みたい方向へ進む。これらスラスターの操作は足で行い、これら動力は船上からの電力ケーブルで供給される。他に通信ケーブルなどもあって乗員と船上の交信ができる。
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今、この大気圧潜水服システムが活躍しているのは石油・天然ガスの採掘現場やパイプラインのメンテナンスである。 さらにアメリカ海軍でも水深600mまで潜航可能な大気圧潜水服(ADS 2000)システム(写真)が採用されている。 主な用途は潜水艦の事故時の対応である。乗員100名を超える原子力潜水艦がトラブルを起こした場合、確実に、より早く潜水艦を救出させるための救難システムとして位置付けている。万一潜水艦が浮上できなくなった場合、救難艦などから最初に小型ロボット(ROV)で潜水艦の状態を確認し、次にADS 2000が現状に合った救難作業を行う。ADS 2000は水深600mに沈んだ潜水艦まで海面から20分で潜航し、長時間の作業を行い、母船まで20分で上昇できるのだ。 そして乗員が交代して救難作業を継続して何時間も行うことも可能だ。
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これまで大気圧潜水服システムに興味を持って使用実績を揚げているのは科学者達のグループだ。ある研究者は深海の中層の浮遊生物の観察に優れた手法と評価し、ある研究者は潜水調査船から大気圧潜水服で離脱・揚収して海底調査を行っていた。その結果、大気圧潜水服システムは有人潜水船よりも軽便で運航費用も格段に安く、一人で自由に調査を進められ、対象物により近く接近できるなど利点が多い。このようなことから大気圧潜水服システムの評価は高まって来ている。
水深200mまでは大陸棚と呼ばれてそこには陸上同様に豊富な天然資源が眠っている。また、豊かな生き物達が生息し、夜間には深海生物も獲物を狙って上昇してくる。 このような海中を手軽に潜って観察したいと思う願望は昔からあった。 今回は宇宙服などの最新技術でダイバーのように水圧で加圧されることもなく、特殊な潜水服を着て海中を自由に動き回れる大気圧潜水服システムについて紹介しよう。
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大気圧潜水服はADS(Atmospheric Diving Suit)と呼ばれ、一人乗りで腕や足の形をした耐圧潜水服である。
腕や足の部分は軟らかい関節で構成され、普段の人間の腕や足の動きのように関節の中に入れた腕と足でほぼ自由に動かすことができる。自分の腕や足の力、つまりマンパワーが動力源になっている。 海底を歩く時は少し前傾姿勢で右、左の足を交互に前に出せばよい、海底の石を拾いたければ、前傾姿勢になって腕を伸ばし、指のようなグリップで石を挟んで拾うことができる。さらに石を持ち上げることで重さを腕に感じ、1キロなのか3キロなのかも実感できるのだ。
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大気圧潜水服の中は加圧されていない大気圧状態で、乗員は普通の呼吸をしていればいい。しばらく呼吸を続けていると服内の酸素が減ってくるが、減った分だけ自動的に酸素ボンベから酸素が供給される。 やがて増えてくる炭酸ガスは服内の空気が循環しているので炭酸ガスが吸収剤によって除去されている。 ちょっとのどが乾いたら腕を関節から抜いて胴の部分に収納されているペットボトルの水も飲める。トイレの小水も同様に処理することも可能だ。 潜っている水深は深度計に表示され、照明をつけたり、テレビカメラで乗員の見ている様子を船上でも一緒に見ることができる。画像も同様に記録できる。海中を移動するなら背中のスラスターを回せば進みたい方向へ進む。これらスラスターの操作は足で行い、これら動力は船上からの電力ケーブルで供給される。他に通信ケーブルなどもあって乗員と船上の交信ができる。
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今、この大気圧潜水服システムが活躍しているのは石油・天然ガスの採掘現場やパイプラインのメンテナンスである。 さらにアメリカ海軍でも水深600mまで潜航可能な大気圧潜水服(ADS 2000)システム(写真)が採用されている。 主な用途は潜水艦の事故時の対応である。乗員100名を超える原子力潜水艦がトラブルを起こした場合、確実に、より早く潜水艦を救出させるための救難システムとして位置付けている。万一潜水艦が浮上できなくなった場合、救難艦などから最初に小型ロボット(ROV)で潜水艦の状態を確認し、次にADS 2000が現状に合った救難作業を行う。ADS 2000は水深600mに沈んだ潜水艦まで海面から20分で潜航し、長時間の作業を行い、母船まで20分で上昇できるのだ。 そして乗員が交代して救難作業を継続して何時間も行うことも可能だ。
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これまで大気圧潜水服システムに興味を持って使用実績を揚げているのは科学者達のグループだ。ある研究者は深海の中層の浮遊生物の観察に優れた手法と評価し、ある研究者は潜水調査船から大気圧潜水服で離脱・揚収して海底調査を行っていた。その結果、大気圧潜水服システムは有人潜水船よりも軽便で運航費用も格段に安く、一人で自由に調査を進められ、対象物により近く接近できるなど利点が多い。このようなことから大気圧潜水服システムの評価は高まって来ている。