海人の深深たる海底に向いてー深海の不思議ー

地球上の7割を占める海。海の大半は深海。深海生物、潜水調査船など素晴らしい深海の秘蔵画像を紹介。奇抜・奇妙な姿に驚愕!!

メキシコ湾流の潜航調査

2012年09月17日 | 日記
メキシコ湾流の潜航調査



 今から40年前の1969年は、人類初の月面着陸を行ったアポロ11号の様子を世界中の6000万人がテレビにくぎ付けになった年だった。しかし、アポロ11号の月面着陸とリンクして行われた潜水調査船「ベンフランクリン」によるメキシコ湾流漂流実験は一般に知られることはなかった。

アポロ計画の先を考えていたNASAは有人宇宙で問題となる狭い空間の中で長く滞在した際のストレスと狭い空間でのライフサポート(生命維持装置)に関心を持っていた。 そしてNASAとグラマン社は6名の乗員が32日間もメキシコ湾流を潜航する実験を行った。



 潜水船は1963年に世界最深部へ潜航したスイス人の科学者ジャック・ピカールが設計し、全長14m、幅6m、6人乗り、最高潜航深度 600m、ライフサポート 6人6週間の潜水船「ベン・フランクリン」が完成した。潜水船の名前「ベン・フランクリン」は1770年にメキシコ湾流を発見したベンジャミン・フランクリンに敬意を表して命名された。

この潜航実験はアポロ計画とリンクしていたのでアポロ11号の打ち上げ2日前の1969年7月14日にフロリダ沖で潜航を開始した。乗員6名はジャック・ピカール、建造に関わったグラマン社の社員、操縦士はスイス人、アメリカ海軍のオフィサー、イギリス海軍の音響専門家、NASAの科学者で構成された。 メキシコ湾流は日本で言えば黒潮に相当する。このメキシコ湾流を水深180mから600mの中層を維持しながら一度も海面に浮上することなく、32日間潜航を続けたのだ。



 潜航中にはこれまでの潜水船では経験できないことが経験された。 その一つは内部波だ。原子力潜水艦「スレシャー」の事故も内部波と言われている。 水深100mから数百mの水温差のある境が大きくうねることで、「ベン・フランクリン」も潜航中幾度も大きな内部波に襲われて、急激に数十メートルも上下動したのだ。 潜航中の事故らしきものとしては潜航5日目にメカジキ2匹に襲われたことだ。 凶暴な性格として知られるメカジキはこれまで潜水船「アルビン」を襲ったことや石油掘削装置に突っ込んだ4件の例がある。 メカジキが怖いのは長くて強い吻だ、明るいところを目だと思って長い吻を突き刺してくる。 覗き窓も周辺のケーブルもメカジキの攻撃を考慮していないので覗き窓が割れる、ケーブルがショートする危険性もあるのだ。 幸いメカジキの攻撃で被害はなかったが深海の潜航は油断できない。 昼間全ての照明を消して海中に届く自然光を確認したところ水深187mで大きな活字は読めることが分かった。 下着、洗濯物、食事のゴミなどは3日交代とし、カプセルに入れて船外へ放出し、母船で回収した。 覗き窓から眺めるとライトに集まるプランクトンやエビそれを捕食するイカ・魚など飽きることはなく乗員達の心をいやした。こうして32日間の連続潜航で内部環境コントロールとメキシコ湾流などの貴重な調査結果が得られた。






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