海人の深深たる海底に向いてー深海の不思議ー

地球上の7割を占める海。海の大半は深海。深海生物、潜水調査船など素晴らしい深海の秘蔵画像を紹介。奇抜・奇妙な姿に驚愕!!

カクレガニのオス

2015年05月17日 | 日記
カクレガニ雄の狭き門

 アサリ、ハマグリの中にときおり小さなカニがいるのをご存じですか?
このカニはカクレガニピンノと言う二枚貝などに寄生するカニです。 
 貝の中で見つかるカニは甲羅が1㎝ほどですが、みなメスです。ではどうやって子孫を残しているのでしょうか? このカニの一生は謎だらけですので私の推測を含めて紹介いたします。...
 カクレガニピンノは卵から放仔されてゾエア、メガロパと浮遊生活をおくります。この浮遊生活では豊富な植物プランクトンを食べて、オス、メスほぼ同数で育ちます。 メスのメガロパは貝の入水管から吸いこまれると、入水管に取りついて皮膚を破り貝の中に入り込みます。貝の水管は外の海水を吸い込んで海水の中のプランクトンを消化器を通じて食べています。ですから消化器へ届く前に体内に入り込む必要があります。 メスの殻には突起物やフックのようなものが付いていて水管の内側に引っ掛かると考えられます。貝に食べられているプランクトンの中にはカクレガニピンノのオス、メスも含まれている事でしょう。管の取りつけられたものだけが生き残れるのです。
こうして寄生主の貝に入り込めたカクレガニピンノのメスは寄生主の貝の中で一生を過ごし、外へ出ることはありません。一生「箱入り娘」なのです。
 一方、オスはゾエア、メガロパの後カニの姿で海底を自由生活して大きくなります。繁殖期を迎えたオスは貝の中のメスが出すフェロモンを感じると貝に近づいて貝の中に入りメスの近づきたいのですが目の前は二枚貝の厚い殻があります。 あるオスは貝への侵入を急ぐあまり隙間から身体を入れた途端に閉められ、動けなくなりその後の強い締め付けで押しつぶされて死んでしまいます。 またあるオスは夜間に貝の隙間にハサミを入れてブルブル振動させて外套膜(mantle edge )をシビレさせています。 ブルブル振動は長いと4時間も続けた例もあります、こうしてシビレさせると殻長3mmほどのオスが貝の中に入り込めメスに近づけるのです。まさにオスの狭き門です。こうして繁殖期には幾つもの貝の中のメスを訪れて子孫を残しています。
 カクレガニピンノのメスは1㎝ほど、オスはその1/4 から 1/2ほどと小さく数もメスの1/5ほどになってしまうと言われています。オスは厳しいですね。
 謎の多いカクレガニピンノのオスの一生を文献を参考に推察してみました。