むらぎものロココ

見たもの、聴いたもの、読んだものの記録

ヨットとトランペット

2005-03-06 00:57:00 | jazz
484227CHET BAKER & CREW
 
Chet Baker(tp,vo) Phil Urso(ts) Bobby Timmons(p)
Jimmy Bond(b) Peter Littman(ds) 
Bill Loughbrough(chromatic tympani)
 
1950年代も後半になるとウエスト・コースト・ジャズが全盛期を終え、ハード・バップが台頭する。チェット・ベイカーもハード・バップ的なものを意識しながらこのアルバムを作ったという。ビル・ラフブロウのクロマティック・ティンパニをフィーチャーした曲ではラテン的というよりエスニックな感じにリズムが強調されて、この独特なサウンドがアルバム全体を印象づけているものの、ジェリー・マリガン・カルテットのときと同様、フィル・アーソとのホーン・アンサンブルはスムーズでマイルドだし、ベイカーのアドリブ・ソロも明快で心地よい。マリガンの曲やアル・コーンの曲も演奏しており、リズム隊が多少ハードになっているとはいえ、ハード・バップというよりは、やはりベイカーならではのアルバムになっている。最後の曲 LINE FOR LYONS で彼の歌が聴ける。

収録曲
1.TO MICKEY'S MEMORY
2.SLIGHTLY ABOVE MODERATE
3.HALEMA
4.REVELATION
5.SOMETHING FOR LIZA
6.LUCIUS LU
7.WORRYIN' THE LIFE OUT OF ME
8.MEDIUM ROCK
9.TO MICKEY'S MEMORY(ALT.TAKE)
10.JUMPIN' OFF A CLEF
11.CHIPPYN'
12.PAWNEE JUNCTION
13.MUSIC TO DANCE BY
14.LINE FOR LYONS

bridgeメンバーがヨットに乗りこみ、その後ろでベイカーがトランペットを吹いているジャケットはウエスト・コースト・ジャズの典型的なイメージ・コンセプトで、ブルー・ノートの暗い色調をベースにしたジャケットデザインとはまるで正反対である。とても人気のあるジャケットで、ちなみにフリッパーズ・ギターとともに日本のネオ・アコースティック・シーンを担ったブリッジが、このアルバム・ジャケットを真似ていたりもする。


ピアノなしだったってことは

2005-03-05 20:50:43 | jazz
トマス・ピンチョンの小説「エントロピー」では「デューク・ディ・アンジェリス・カルテット」の楽器なしのセッションが試みられるのだが、デュークがその新しい着想を得たのが、ジェリー・マリガンのピアノレス・カルテットからだった。

「……けど、ふっと思いついたのよ、頭のぐんと冴えたときにな、マリガンの最初のカルテットがピアノなしだったってことは一つのこと以外に意味するはずがないって。」
「和音なしってこと」とベビー・フェイスのコントラバス、パコが言った。
「彼が言おうとしているのは」とデューク――「基本和音がないってことさ。音を横に引っぱって吹いてるときに、頼りにするものが何もないってこと。そんな場合にやることは、基本和音を心の中で考えるってことだ。」
ぞっとする思いがミートボールの心の中に浮かんできた。「そうしてこれを論理的に延長していくと次は」と彼は言う。
「あらゆることを心の中でやってしまうこと」とデュークは飾りけのない威厳をもって告げた――「基本和音も、横に引っぱるのも、何もかも」

867GERRY MULLIGAN QUARTET
 
 
Chet Baker(tp) Gerry Mulligan(bs)
Bob Whitlock(b) Chico Hamilton(ds)

このカルテットのアルバムはチェット・ベイカーとジェリー・マリガンのホーン・アンサンブルが素晴らしい。1曲が短く、コンパクトになっていて、一切の無駄がない。

収録曲
1.BERNIE'S TUNE
2.WALKIN' SHOES
3.NIGHTS AT THE TURNTABLE
4.LULLABY OF THE LEAVES
5.FRENESI
6.FREEWAY
7.SOFT SHOE
8.AREN'T YOU GLAD YOU'RE YOU
9.I MAY BE WRONG
10.I'M BEGINNING TO SEE THE LIGHT
11.THE NEARNESS OF YOU
12.TEA FOR TWO
13.UTTER CAOS#1
14.LOVE ME OR LEAVE ME
15.JERU
16.DARN THAT DREAM
17.SWING HOUSE
18.UTTER CAOS#2




猫とウッド・ベース

2005-03-04 18:08:00 | jazz
redpresenting Red Mitchell
 
 
Red Mitchell(b) James Clay(fl,ts)
Lorraine Geller(p) Billy Higgins(ds)

レッド・ミッチェルのリーダー・アルバム。ピアノのロレイン・ゲラーがバッキングの合間にみせるフレーズがチャーミングなアクセントになっている。このアルバムのジャケットはベースの弦の上に左前足を置いている猫のしぐさがとても可愛いが、ゲラーのピアノも負けず劣らずの可愛さ。ジェイムズ・クレイは「チーク・トゥ・チーク」のようなアップ・テンポの曲では奔放にテナーを吹きまくり、「レイニー・ナイト」のような曲ではフルートに持ちかえて抑制の効いたせつなさを表現している。主役のレッド・ミッチェルは自作曲の「アイ・ソート・オブ・ユー」でメロディアスなベース・ソロを聴かせる。
このアルバムで一番好きな曲はソニー・ロリンズ作の「ポールズ・パル」で、印象的なテーマと軽やかで明るいクレイのフルートソロは聴いていてとても気持ちがいい。

収録曲
1.SCRAPPLE FROM THE APPLE
2.RAINY NIGHT
3.I THOUGHT OF YOU
4.OUT OF THE BLUE
5.PAUL'S PAL
6.SANDU
7.CHEEK TO CHEEK


CHICO HAMILTON QUINTET

2005-03-02 22:16:03 | jazz
chicoChico Hamilton Quintet

Buddy Collette(fl,as,ts,cl) Fred Katz(cello)
Jim Hall(g) Carson Smith(b)
Chico Hamilton(ds)

ウエスト・コースト・ジャズを代表するクインテット。前半5曲は気品ある室内楽的な雰囲気のスタジオ録音、後半5曲はスイング感あふれるライヴ録音。フレッド・カッツのチェロはときに陰鬱、ときに幻想的な響きをもたらすが、それにからむバディ・コレットのクラリネットやフルート、ジム・ホールのギターはとても美しい。とりわけ「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」におけるアンサンブルは絶妙。
このアルバムの有名曲といえば映画「真夏の夜のジャズ」でも演奏された「ブルー・サンズ」(映画ではエリック・ドルフィーがフルートを演奏していた)だろうが、チコ・ハミルトン作の「モーニング・アフター」の対位法的に重なる爽やかさもいい。

収録曲
1.A NICE DAY
2.MY FUNNY VALENTINE
3.BLUE SANDS
4.THE SAGE
5.THE MORNING AFTER
6.I WANT TO BE HAPPY
7.SPECTACULAR
8.FREE FORM
9.WALKING CARSON BLUES
10.BUDDY BOO