もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記・22 ・・・ トーキョー

2016-05-12 08:34:08 | E市での記憶
まだ小さいとき、いっぺんだけ
トーキョーに行ったことある。

おばあちゃんと、おばあちゃんの妹の
「ミドリ屋のおばちゃん」と
おねえちゃんとアタシの4人。

寝台車でおばあちゃんと一緒に寝た。
おねえちゃんはひとりで寝たのに
アタシは「寝相が悪いくて落っこちるからダメ」だって。

アタシは「乗り物に乗ると
すぐ寝る子」って
おかあちゃんに言われる。

赤ちゃんのとき、ユリカゴに乗せて
寝かせたからだって。

寝台車は大きくて
ゴーゴーガッタンする
ユリカゴみたい。

起きてたかったのに
あっという間に寝ちゃった。でも

朝になったらベッドはイスになっちゃって
ぜんぜん面白くなくなった。


ウエノサクラギ町でウグイスダニの
おばあちゃんの「すぐ下」の妹さんの
おうちに行ったの。

アタシは全然知らないヒト。

そこのおとうさんは「職人さん」で
ずっとお仕事する部屋から出てこなくて
アタシは顔も知らない。

でも、おばあちゃんたちオトナは
ものすごーく楽しそうで
みんなずっと、おしゃべりしてた。


女の人たちばっかりで
ありったけのお布団ひいてかけて
み~んなおんなじ部屋で寝た。

どこで寝ても良かったんだよ。

お布団、うちのと全然違って
すごーく重たかった。
みんなアタシの方見て笑って
「埋まらんといてね」って言った。


タカラヅカ、見にいったよ。
アタシの分の席はなくて
かわりばんこに抱っこしてもらった。

遠いところで、白い羽根いっぱいつけて
女の人たちが並んで足をあげてた。
きれ~にそろってた。

途中、タイクツしちゃったけど
キューピーさんたちが出てきて
ヨウチエンか学校みたいな感じで
イロイロあって
最後に水たまりができて
ひとりが「え~ん」て泣いた。
みんなが「どうしたの?」
「もらしちゃったの」って。

おばあちゃんたちが笑って
アタシもおかしくて笑っちゃった。


ハネダで初めて
ヒコーキが飛ぶのも見た。

地面にじっとしてるヒコーキは
すごーく大きいのに
空に上がっていくと、どんどん小さくなって
アタシは「よく見えない」から
すぐにわからなくなっちゃった。
みんなは「まだ見えてる、まだ見えてる」って。


東京タワーも行って
帰り歩いて下りてきたの。

階段下りるたんび
おねえちゃんと下見てた。
はじめは全然変わらなかったけど
いつのまにか家が大きくなってきて
気がついたらもう地面すぐだった。

魔法がとけたみたいで
ちょっとがっかりした。


コーキョも行ったんだけど
もうものすごーく広くって
アタシは歩くのがいやになった。

おばさんとこのおねえさんが
「足がボーになるよねえ」って
抱っこしてくれたんだけど
おねえちゃんは、イトコのミドリさんと
手ぇつないで走ってた。

おねえちゃんはヨウチエンの一番上で
ミドリさんはもう学校行ってる。

一緒に行きたいのに
アタシは行かせてもらえなかった。

なんで? どこにも行ってないから?


ずっとずっと後になって
東京オリンピックのとき・・・

アタシは4年生で
みんな一日中「オリンピック~」で
ミナミハルオのオリンピックの歌が聞こえて
学校のテレビでも見た。

うち帰ってきてからも、もちろん見た。
チャスラフスカよりラチニナの方が
きれいだよねってみんな言った。


「これ、あのトーキョーでやってるんだ」
って、アタシはいつも思った。


トーキョーはとにかく広かった。
「足がボーになる」とこだった。

知らない人が流れてて
どこにいるのかすぐわからなくなって
おうちにたどり着くと
フゥ~って、大息つくとこ。

外国の人たちがいっぱい来て
みんなで跳んだり走ったりしてても
なんか不思議じゃない気がした。


オトナになったら
アタシも行くことあるかなあ。

行くことないような気がしてるけど
・・・わからないよね!






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする