「帰らなくちゃ・・・」という夢

２週間ほど前だったか・・・久しぶりに鮮明な夢を見た。

初めて見る夢じゃなくて、若い頃から時々見る夢。

目覚める直前に見た時だけ覚えているのだろうけれど
起きてからしばらくは、いつも呆然としてしまう。

要するに、「家」に帰ろうとする夢だ。

ただ単にどこかへ出かけて、帰りが遅くなったので
急いで駅を探して・・・という場合もあるけれど
もっと大がかり？に、知らない土地を放浪していて・・・という場合もある。

自分がオトナのときも、子どもの姿のときもある。

とにかく共通しているのは
夢の中では結局「帰り着けない」こと。

遠くに高い山があって
雪が降っているのが遠目にもよくわかって
「あ、あそこまで行けばいいんだな・・・」

でも、狭い山道を小さな異国のバスに乗って
なんとか辿り着いてみたら・・・

美しい白い山に近づくにつれて

路傍には、奇妙な黒いスジ模様？が増えてきて
延々と続くその気持ちの悪さにたじろいで・・・

もちろんそこは「家」なんかじゃなかったのだ。

帰る途中にも色々なことに出会うため
結局、自分がどこへ行くつもりだったのか
忘れてしまうこともある。

「私・・・何するつもりだったんだっけ」

一番多かったのは、大きな駅やバス停で
切符を買おうとすると売り場が判らず
それでもなんとか買って、乗り場に行こうとすると
今度は混雑で前に進めない・・・

発車時刻が迫る中、立ち往生。

通りかかる人に尋ねようとしても
なぜか声は掠れ、舌は回らず
もどかしくてたまらないのに
相手は気づかず通り過ぎてしまう・・・

そこまで来て、夢の中の私は思う。

「あ、やっぱり（無理なんだ）」

はっきり「諦める」わけではないのだけれど
他のことに気が散って行く、自分の底の方で

「やっぱりか・・・」という
靄のようなものが湧いてくる。

「夢」はそのまま、他の場面に続くこともあれば
そこで目覚めることもある。

それでも大抵は
うなされるというほどにはならない。

ただ・・・現実に戻ってホッとするところ見ると
私にとっては「悪夢」の一種なのだろう。


ところが今回見た夢は
これまでとはちょっと違っていた。

私は、テーマパークとも近未来都市ともつかない場所で
船着き場の雑踏に紛れて、家族とはぐれてしまう。

家族と言っても、現実の家族とは違っていた。
でもその人はとにかく、私の家族のひとりで
繋いでいた手が離れてしまうとき
相手は落ち合う場所を言った（と思う）。

聞き取れなかった私は、それでも
「きっとあそこだ。とにかくあそこまで行こう」と思う。

自分でも不思議なほど、不安を感じないまま
私は他の乗客達と大きな船に乗り込む。
そしてそれから先も、ほとんど行き当たりばったりの行程を
なんでもない小旅行のように続けていくのだ。

・・・結局、家族とは再会できないまま
目覚めてしまうのだけれど。

それでも、眼が覚めたとき
「これは悪夢じゃなかったな・・・」と思った。

私は「家」じゃなくて「家族の一人」を探して
それも当然再会できると信じて
なんでもない旅行の一場面のように
軽い足取りで歩いていたと思うから。


わかりやすい夢というなら
とてもわかりやすい夢だと思う。

ちょっと出来すぎに思えるくらい。
でも・・・

現実の今の私は、自分がこの先どういう風に暮らしていくのか
途方に暮れているような気分でいる。

夢の明るさ、何気なさはそういう意味では
私の現実に合ってはいなかった。
それでも・・・

私は、また小さな灯りを灯してもらった・・・そんな気がした。

若い頃から「帰れる家」は無かったけれど
今では「帰れる場所」なんて、本当に無くなってしまった。

そうして帰れる「家」「故郷」が無くなってしまったからこそ
「帰らなくちゃいけない場所」も消えてしまったのだろう。

私にあるのは、今居る家と
今一緒に住む家族たち・・・


母が亡くなってそろそろ３年。
もうすぐ家屋も解体されるという。

同じことを何度も何度も
こうしてどこかに書き散らすことなしに
今の私は自分を保っていけないらしい。

それでも少しずつ
私は自由になっていくのだと思う。

そのうち（「夢で」じゃなしに現実で）
旅でも始めるのかもしれないな・・・なんて
ちょっとだけ思ったりも？する。