What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

時間の止まった家

2006-06-05 22:00:59 | 読書感想文
私たちが普段かかわる困難事例の多くは、『家』が関連している。

ゴミに埋もれて暮らす人、一人では家で生活できなくなってしまった人、家庭内の虐待・・・
時間の止まった家 「要介護」の現場から』は、そんな人・家たちに向き合った、在宅介護支援センターの医師がつづった物語である。

この本の中で、『家』は人間の生き方の固執した部分を映し出す鏡のように表現されている。
あとがきの中で著者は、以下のように言っている。

― 私が訪問し、滞在するなかで見えてきたのは、いわゆる社会的に「典型的な家庭」「標準的な家庭」を目指した、「家」に縛られた人々ほど、自分の家庭にジレンマを抱いてうまくいっていなかったし、反対に、無理せず自分たちなりに身の丈にあった「家」を築き上げてきた人々ほど、家族機能がうまく働いた、落ち着いた家庭を持ち、満足しているという事実であった。―

人は、わが生活において、少なからず理想を持っている/持っていた。
叶えられなかった理想が、大量のゴミ、暴力、何十匹もの猫、ホームレスなどさまざまな形で表れるのかもしれない。
そしてさらに、理想がいびつな形として表れた家に固執していく・・・。

さまざまな事例を通しながら、家の素晴らしさ、家という理想が持つ魔力に触れてみてはいかがだろうか。