むじな@金沢よろず批評ブログ

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アラブ民主革命 当惑する米国・イスラエル、孤立し立ち遅れる中国

2011-02-27 16:55:46 | 世界の政治・社会情勢
神戸大の集中講義がなければ、1月末からタハリール広場に飛んでいたところだったが、まあいい。今年はレバノンとチュニジアとエジプトに行こう。

それはそうと、今回急速に進んだアラブ諸国の民主化の波。まあ本当に行き先が民主主義になるかは予断は許さないのだが、社会的近代化が進んだチュニジアと、もともと多元的なエジプトはそこそこのレベルに達するんじゃないかと思う。

ここで改めて明らかになったのは、中東に対する米国の無知・無理解・不能ぶりだ。
そもそも「民主主義」が旗印のはずの米国が、「親米でイスラエルに融和的」というだけで、まったく民主主義的ではなかったムバラク政権を最後まで援護し、「民主化による反イスラエル、反米政権の登場を恐れる」というご都合主義を顕にしている。
また、日本ではジャパンタイムズも毎日読んでいたんだが、APの転電を読んでいると、どうもイスラームへの偏見とイスラエル擁護が強すぎて、本質を見ていないように思えた。
米国はアラブ世界への理解と研究がきわめて貧弱だ。
これでは、中東の新たな局面には、適切な対応はできないだろう。

ざまあ見ろなのがイスラエルだ。「中東で唯一の民主主義」がウリで、それが米国からの過剰な援護のひとつの理由になっていたのと、エジプトなどの独裁政権との友好関係に安住してきたのだが、もしこのままエジプトなどが順当に民主主義に移行すれば、はっきりいって「要らない子」になるw。
さらにアラブで民意が正当に表明されたならば、反イスラエルは当然のことになるので、イスラエルは窮地に陥ることになる。もともと存在すべきでなかったイスラエルの崩壊はこれで早まるだろう。

中国もざまあ見ろだ。一連の動きは、新自由主義による格差拡大、分配システムの不在、政治的抑圧が原因になっているわけだが、中国政府には心当たりがあるらしく、報道統制して、制限された情報しか伝えていない。「ジャスミン」という言葉そのものすらタブーにしている。
中国でネット族の若者が呼びかけた「中国版ジャスミン革命」も徹底粉砕している。
もっとも、中国では同様の動きは起こらないだろう。
アラブ世界はなんだかんだいって、近代合理主義も浸透していて、文化レベルや市民の素養が全体的にが高い。それに比べて中国は平均レベルではまだまだ後進的、前近代的であり、都市の一部こそは情報に接しているが、面的な広がりではない。
また今回の動きは中東という地理的近似性、イスラームという文化圏に特定された広がりであって、遠い中国には波及するはずがない。
だが、それこそが中国の不幸というものだ。これまで中国が独裁体制であっても、中東や中央アジアにも多くの独裁体制が存在するために、それが異常なものだと思われずに済んできた面がある。
しかし、独裁体制が多かった中東という一角が崩れはじめたことで、中国の前近代性と後進性が浮き彫りになる。中国はいわば孤立した状態となるのだ。
もちろん、アジアにはまだまだ独裁体制は多い。だが中国のような人口大国で、何かと目立つ存在としては、中国だけが独裁に取り残された地域となってしまうのだ。
ネット社会が発達し、情報の自由な流通が当然視されつつあるこの時代に、いまだに体制に都合が悪い情報を政府権力が統制し、統制できると思っている中国の立ち遅れは、明らかとなる。
中国政府が中東の動きを統制するほど、中国自身がムバラクやベンアリと類似性が高いことを認め、恐れていることを証明するものとなっている。

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